World War II GI
【わーるど うぉー つー じーあい】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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MS-DOS
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発売元
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GT Interactive Software 【Steam】Ziggurat
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開発元
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TNT team Nightdive studio(移植)
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発売日
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1999年8月1日
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定価
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【Steam】698円
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配信
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Steamにてダウンロード販売中
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判定
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クソゲー
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ポイント
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初のノルマンディー上陸作戦FPS 何もかもが時代遅れ 無駄にリアルな諸要素
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概要
ベトナム戦争を題材にした『NAM』に続き、TNT teamが手がけたBuild engine製FPS第二弾。
舞台は第二次世界大戦中のフランスとなっており、オマハビーチへの上陸から破壊工作、防衛、潜入などといったさまざまな任務をこなしていく。
第二次世界大戦を題材にしたFPSは多く存在するが、本作はかの「ノルマンディー上陸作戦」を題材にした世界初のFPSという宣伝で販売されている。
ゲームシステム
操作方法
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アローキーで前後旋回、</>キーで左右移動、Ctrlで発砲、Shiftでダッシュ、Altでストレイフ切替。Aキーでジャンプを行い、Zキーでしゃがむ。
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[/]キーでアイテムを選択し、Enterキーで使用。一部アイテムにはファンクションキーが設定されており、Mキーで即座にメディキットを使用するなどの動作が可能。
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Tabキー1回で線形マップを表示し、その状態でもう一度Tabを押すことでテクスチャ付き俯瞰マップを表示する。
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Uキーでマウスエイムをオンにし、Iキーでクロスヘアを表示。デフォルトでは上下反転状態だが、オプションで解除は可能。
武器
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トンプソン、MP40、BAR、バズーカ、手榴弾、M1911(二丁拳銃)、スナイパーライフル、TNT(時限式)、M1ガーランド用グレネード、火炎放射器の計10個+アイテム枠の爆弾。
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バズーカ、手榴弾、TNT、M1ガーランド、火炎放射器、爆弾で鉄条網や対空砲などの配置オブジェクトを破壊できるが、戦車の破壊はTNT、バズーカ、爆弾でのみ可能。
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スコープやアイアンサイトの概念はなく、デフォルトではオートエイムが働く。
アイテム
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爆弾、メディキット、地雷探知機の三つのアイテムが登場し、状況に応じて使い分けることになる。爆弾は設置して数秒後に爆発し、メディキットは徐々に回復していくため15秒ほど立ち止まらなければ完全回復できず、地雷探知機は装備して接近時に音で知らせるほかマップ画面で確認が可能、と効果はそれぞれ。
ゲーム進行
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『Duke Nukem 3D』と同じくステージ方式であり、ゴール地点に配置された無線機を使用することでクリアとなる。一部ミッションでは「対空砲を爆破する」「二等兵を回収地点まで護衛する」といった特殊な目標が設定されているが、条件を満たしていないと消えない板がゴール前に配置されているだけで結局はステージクリア方式と変わらない。
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銃撃で敵兵を倒し、爆発物で戦車や対空砲を破壊する。一部ステージでは防衛戦となり、一定数の敵兵を仲間と共に倒すことで板が消え、先に進む道が解放される。
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ステージ各所には地雷が敷設されており、地雷探知機で探せるほか凸型のグラフィックでギリギリ目視可能。上に乗るとスイッチ音が鳴り、その状態で足を放すと爆発する。
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上に乗ってしまってもその場でSpaceキーを押すことで解除を試みることができるのだが、一定確率で解除に失敗し爆死する。
問題点
理不尽・雑なマップ構造
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パズル要素はないものの敵配置はどのマップもいやらしく、初見の場合予想外の方角からの射撃で頻繁に死亡する。
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本作最初のステージはよりによってかのノルマンディー上陸作戦・オマハビーチから始まる。尋常でない猛攻をまともに命中しないトンプソン一丁のみで掻い潜り、砂浜の東側に放置された爆弾を回収、銃撃を掻い潜ってステージ北西部の鉄条網と壁を爆破し、初めて内部に突入可能。
味方は追従せず、内部突入後はたった一人で海岸の塹壕制圧に挑まなくてはならない。
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敵の機銃で死ぬ・味方の誤射で死ぬ・ベストタイミングで頭上に降ってくる爆撃で理不尽に吹き飛ぶなど日常茶飯事。大抵の場合、プレイヤーはまずこのステージでいきなり躓く。
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オマハビーチ以降のマップも初見殺しや雑な敵配置が多く、後述のさまざまな仕様も相まってクリアへの道のりは険しい。最終面ともなると敵配置数は100人を越え、プレイヤーはたった一人だけでそれらを殲滅していくことになる。
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農村や軍港といった複数のマップで世界の端が見えるようになっており、空のテクスチャだけが広がる何もない空間を通常プレイで頻繁に目にすることになる。本来は壁で隠すべきだが、そういったものは用意されていない。
強すぎる敵AI
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本作の敵であるドイツ兵は発砲までに猶予はあるものの、一度発砲を始めるとほぼ即死級の銃弾を確実に当ててくる鬼畜仕様。大抵の場面で回復するヒマもなく即死する。
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主人公以外の米兵を認識できないため、スクリプト演出を除く全ての敵兵・敵戦車は常時プレイヤーだけを狙って攻撃してくる。この仕様が一番問題となるのはステージ1のオマハビーチであり、プレイヤーは塹壕やトーチカからの一斉射撃をモロに食らう羽目になる。
間抜けすぎる味方AI
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味方キャラクターは沢山登場するがまったく役に立たない。プログラムされた単純な行動に従うだけであり、ほぼ全ての米兵は正面方向に向かって銃を発砲する以外の行動が不可能。敵を狙って撃つことすらできず、後ろどころか斜め前から敵が迫ろうが全く対処しない。
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マップによっては明らかに敵のいない方角に向かって撃つ米兵も散見される。ステージ1のオマハビーチですら壁に向かってひたすら銃を撃つ兵士が複数登場する始末。
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フレンドリーファイアが有効になっており、射線上に出ようがお構いなしに発砲するため味方の銃撃でも死ぬ。特にオマハビーチで顕著。
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途中で二等兵を回収地点まで護衛するミッションがあるが、二等兵のAIはプレイヤーとの直線距離のみ認識するため途中で壁に引っかかろうがプレイヤーのいる方向に向かってひたすら動き続ける。もちろん(?)敵に遭遇しようが一切発砲しない。
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前述の通り敵はプレイヤーしか認識しないため誤射以外で二等兵が死ぬことはないが、万が一二等兵が死んだ場合任務未達成と見做され主人公が爆発四散する。
ショボすぎるグラフィック
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1996年の2DエンジンであるBuild engineは流石に時代遅れ感が否めず、リアルさの欠片もないチープなグラフィックも合わさって酷評された。
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1999年といえば『Medal of Honor』『QUAKE III Arena』『Unreal Tournament』『Rainbow Six: Rogue Spear』『AVP』『System Shock 2』といったフルポリゴンのFPS作品が相次いで発売された3DFPS全盛期。他のBuild engine製タイトルもグラフィックの描き込みによって2Dの欠点を補っていたが、本作のグラフィックはそれらと比較しても到底及ばない。
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2Dグラフィックのためモーションの概念がなく、敵兵士は待機中微動だにしない。このため狙撃兵やMG42兵といった動かない敵の場合、発砲を開始するまで非常に見えにくい。
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よく見ると何故か負傷兵を除く全ての米兵がハゲ。通常時はヘルメットで隠れているが、死亡時にはヘルメットがすっぽ抜けてツルツルの頭を晒しながら倒れる。ドイツ兵も同様にヘルメットが落ちるが、こちらは全員茶髪。
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武器のグラフィックもテクスチャのない3Dモデルを取り込んだのっぺりしたものとなっており違和感が強く、手だけ手書きなのか手榴弾の指の数が明らかに少ないなど妙な部分もある。
チープなBGM
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どのステージもMIDI音源1曲のみで構成されており、お世辞にも出来がいいとは言えない。特に最終ステージで顕著。
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拡張パックではシンセザイザーを利用したオープニングテーマが流れるが、音量がやたら大きい上に音割れしている。
無駄に鳴り続ける効果音
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Duke Nukem 3Dでも搭載されていた環境音システムが取り入れられているが、音量が無駄に大きくプレイの邪魔になることが多い。銃撃音や断末魔、航空機のエンジン音が至近距離と変わらない音量で流れるため、しばしば奇襲や爆撃かと勘違いしてしまう。
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escキーでメニュー画面を開いた際にもランダムでゲーム内効果音が流れるという謎の要素があり、途中セーブしようと思った矢先に狙撃銃やマシンガンの銃声、爆撃音が流れるなど勘違いを引き起こしがち。なおなぜかこの時のみ本編には存在しない「吼える犬」の効果音が聴ける。
古臭い操作系
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デフォルトではWASD操作やマウスエイム、クロスヘアが有効ではなく、『DOOM』と同じアローキーによる前後旋回を要求される。一応Steam版はキーコンフィグが別に搭載されているため、これを利用して現代標準の操作体系に編集しなおすことは可能。
狭すぎる描画範囲
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エンジン限界からか、マップの描画範囲が異様に狭い。ほかのBuild engine製タイトルよりも交戦距離が全体的に広いのもあり、余計に不便さを感じることが多くなっている。
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暗いのではなく距離に比例してテクスチャの明度を落としているため、目を凝らそうが敵が発砲しないかぎり視認不可能。キルカメラで敵のおおよその方角を覚えるまでは、何度も暗闇からの狙撃や機銃掃射で死ぬことになる。
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なお例外として明度だけを落とすという仕様上、ナチス親衛隊のみ彩度の高い真っ赤な腕章だけは暗闇でも浮いて見える。
空気な士気システム
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アーマーに代わる新要素として「Molare(士気)」ゲージが実装されたが、数値に関わらず即死するためまったく意味を成していない。
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『NAM』に存在したアーマーがリストラされたことで実質的なHPが1/2になり、敵の攻撃で死にやすくなっているなど本末転倒。
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士気の上昇するアイテムとして用意された嗜好品も邪魔でしかなく、デメリットとしてHPが減る仕様のせいで瀕死の状態でタバコを踏むと死ぬなどの事故が起こりやすい。
任意で行えないリロード
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残弾数の概念は存在しているわりに手動リロードが不可能。更には今銃に何発入っているかすらも表示されないため、残弾が分からないまま気がついたら弾切れでリロードになった、という事故が非常に多い。
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当時既にRキーによる再装填は登場しており、リアルさを意識するにしても装填済みの弾丸が弾倉ごと破棄されるだけで事は足りる。無駄なmolareゲージでUIが占有されているわりに、一番知りたい情報は表示されないという本末転倒な仕様になっている。
敵の無敵化
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「こちらを視認していない敵は常時無敵」というFPSにあるまじき仕様が搭載されており、遠距離狙撃や角ギリギリからのはみ出た部位を狙った銃撃といった手段がことごとく無効化されるようになっている。狙撃銃ですら例外ではない。
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プレイヤーが敵に攻撃を与えたい場合、最初に姿を晒して敵を攻撃態勢に移らせなければならない。現実的に考えればあり得ない仕様であり、ゲームプレイの観点から見ても足かせにしかなっていない。
使えない火炎放射器
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エピソード終盤の特定地点では火炎放射器を入手可能。連続で火炎を発射でき、見た目は有用そうなのだが、敵兵には火だるまどころか延焼ダメージの概念すらないため実質的に低威力・低射程のロケットランチャーを連射しているだけの状態となっている。
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マウスエイムを有効にしようが水平発射しかできないため、「地上に火炎を発生させて触れた敵にダメージを与える」といった戦法も不可能。接近戦では倒す前に反撃を食らう上に壁に当たると連射による爆風ダメージでプレイヤーが即死するなど、非常に使いにくい。
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火炎ピストルで敵を火だるまにできる『Blood』という前例もあるため、エンジンの仕様上は不可能ではないはずである。火だるまの死亡モーションすらも実装されておらず、火炎放射器で炙った敵はなぜか爆発四散する。
エンディングがない
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最終面をクリアしてもムービーやねぎらいの言葉が表示されることもなく、当時のパリ解放時の写真が表示された後リザルト画面が表示されそのままタイトルスクリーンに戻される。
要素の少なすぎる拡張パック
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前作『NAM』の素材を流用した『Platoon leader』というタイトルの拡張パックが追加されているが、その内容はたったの3ステージのみと極めて薄い。やることも1面で丘の塹壕を制圧し、2面で一定時間塹壕を防衛し、3面でジャングル内の敵拠点を制圧するだけとストーリー性は一切ない。
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なぜかマップ上に弾薬が配置されておらず、倒した敵からも武器を強奪できないため補給が不可能。更に史実に従ったのか拡張パックでは地雷が不可視状態になるため、本編より更に爆死事故が増える。
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AIは共通しているため、拡張パックにおける防衛戦で出現するベトコンも塹壕のほかの米兵には目もくれず全員プレイヤーのみを狙って攻撃してくる。正規の攻略法での目標達成は不可能に近い。
雑なオンラインCO-OP要素
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デスマッチは勿論のこと、皆でオマハビーチに上陸したり、軍港を制圧したり、ドイツと連合軍に分かれて浜辺を巡って対戦を繰り広げるなど、オンラインマップのバリエーションは豊か。
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マルチプレイCO-OPモードでは兵科を選択できるようになるなど、本編とはまた違ったゲームが楽しめる。
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...のだが、まともに調整を行わなかったのか兵科ごとのバランスがおかしい。「A-Guuner」「Pointman」「Squad leader」は装備が共通しており、「Grenadier」は爆発武器のみ、「Engineer」は火炎放射器のみという尖りすぎる仕様。「Medic」は自分用の救急キット2つと拳銃のみ支給され、「Sniper」に至ってはなぜかグレネード1個だけで戦場に送り込まれる。
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まともに1兵科として差別化されているのはBARが支給される「Machine Gunner」のみ。もっとも、本作を複数人で遊ぶプレイヤーも皆無だったためこの部分はさほど指摘されなかった。
敵の種類が少ない
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人間の敵はMP-40兵、狙撃兵、MG42兵、将校、親衛隊(MP40)
、米兵の5体しかおらず、将校と親衛隊以外の3Dモデルは全て共通。グラフィックのチープさも相まって、同じ兵士が延々出現してくる防衛パートなどは特に違和感が大きい。
評価点
リアル要素
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地雷を踏むとスイッチ音が鳴り、その状態で離れると初めて爆発する、負傷の治療に時間が掛かる、銃撃や爆発などで頻繁に即死する、リロードシステム搭載など、スポーツ系FPSをベースとしつつもリアルさを意識したであろう要素が多数盛り込まれている。
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もっとも、NPCのAIやグラフィックといったチープな要素によってそれらのリアルさは全て帳消しになっているのだが。
高速な任意セーブ&ロード
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当時のFPSの例に漏れずオートセーブは存在しないが、任意セーブ&ロードは高速で行えるためそれらを駆使することでクリア自体の敷居は比較的低くなる。
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死亡時にプレイヤーを殺害したキャラクターにカメラが向くため、わざと死亡することによる索敵が戦略として有効。見えない狙撃兵の位置を割り出すために一回死んでみるなど、戦略的に遊ぶこともできる。
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もっとも、ひたすらロードを繰り返す作業がこのタイプのFPSとして正しいかといえば疑問符が残る。ほぼ同一のシステムを採用した『Duke Nukem 3D』なども別にゲームバランスの崩壊は起こっていない。
敵が柔らかい
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全体的に敵の体力は低めに設定されており、マシンガンの機銃掃射で簡単に薙ぎ倒せる。このため集団を一気に薙ぎ倒すなどの爽快感はある。
総評
紹介ページの「This is D-Day!」の宣伝文句に偽りはなく、死亡率に関してだけはノルマンディー上陸作戦を忠実に再現した世界初のFPS。
それ以外の要素は当時の水準をはるかに下回っており、到底1999年のFPSとは呼べない出来となっている。
既にWindows 98が発売され、3DFPSが当たり前となった1999年に旧式のOSであるMS-DOSでのみ発売された2DFPSということもあり、知名度は皆無。
その出来からビルドエンジン四天王のようなカルト的評価を得ることもなく、2000年代以降数多く発売された二次大戦FPSに埋もれていった。
余談
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本作、及び前作『NAM』を開発したTNT teamは、もともと『Duke Nukem 3D』において映画プラトーンをベースにした「Platoon Total Conversion」というMODを公開していたMOD製作グループ。
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MOD製作で培われた技術の一部は本作にも流用されており、無線機を利用した爆撃要素や拡張パックなどにその名残が見られる。
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前作および本作はFPSとしてゲーム市場での真っ向勝負を目論んでいたわけではなく、かの『Big Rigs: Over the Road Racing』と同じく家電量販店やディスカウントストアで売られる低価格PCソフトとしての販売が想定されていた。日本で言うところの『SIMPLEシリーズ』に近い立ち位置だが、対応機種が古すぎたせいか注目されることもなくひっそりと消えていった。
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『DOOM 64』『System Shock』『SiN』など数多くのオールドスクールFPSを復刻したNightdive studiosによって復刻され、現在ではSteam上で配信されている。しかしその出来から評価は低い。
最終更新:2022年01月16日 13:27