もと子ちゃんのワンダーキッチン

【もとこちゃんのわんだーきっちん】

ジャンル クリックアドベンチャー
対応機種 スーパーファミコン
発売元 味の素
開発元 不明
発売日 1993年
定価 非売品
プレイ人数 1人
備考 懸賞ソフト
判定 バカゲー

概要

大手食品メーカー・味の素が関わった唯一のゲームソフト。ゲーム起動時に味の素のCMコールが入るゲームなど後にも先にも本作のみだろう。
市場で販売されたものではなく、味の素マヨネーズの懸賞として配布されたものである。その為、ゲームを通して味の素マヨネーズがやたらとプッシュされており、ゲームそのものがコマーシャルとなっているとも言える。
非売品ではあるが、3,000本×6回の計18,000本と少なくはない数を配布。その為、中古市場には意外と流通しており、懸賞ゲームながら知名度はそれなりに高い。
保護者が懸賞に応募して当選したのをきっかけにプレイした人もいるだろう。

プレイヤーは案内人の女の子「もと子ちゃん」に味の素マヨネーズを買ったお礼として「ステキなところ」に案内されるが、何故かそこでメモを探すように指示される。
ゲームの目的は、そのメモに書いてある材料を集め、料理を作ってもと子ちゃんに食べさせる事である。

特徴

  • 販促作品だけあって、ゲームを始めると早速リアルに描かれた味の素マヨネーズが登場する。しかも袋はしっかり透過処理されているという拘りぶり。
  • ゲームとしてはポインタを操作して画面を調べていくクリックアドベンチャーにあたる。
    • 画面上のオブジェクトはクリックすると様々なリアクションを返し、先に進むためのフラグになったり、食材が手に入る事もあるが、多くはその場限りのリアクションとなる。これらの反応を見ていくのもこのゲームの楽しみ方の一つ。
    • 基点となるキッチンには三つのメモが置かれており、それぞれに料理の材料が書かれている。それに応じて、三匹の動物(ペンギン、ゾウ、サル)と共に各ワールドに赴いて材料を集める。
    • 材料を全て集めると料理パートに移る。画面上の指示に従って、調理器具や材料をクリックしていき、料理を作る。全ての料理を作るとゲームクリアとなる。
    • ゲーム進行に難しい箇所は無い。画面上のオブジェクトをクリックしていけばクリアできる。そのエリアにある材料を全て集めるまで先に進めないので迷うこともない。サル編のあるマップでは制限時間内に正解のオブジェクトをクリックしないと前のマップに戻されるという仕掛けはあるが、その程度である。
      • 料理パートも適宜指示してくれるので何も難しい事は無い。
  • これだけならまともなゲームに思えるだろうが、本作はその世界観の異質さから非常にカオスな様相と化しているのである。

変な点

  • まず拠点のキッチンからして現実離れしている。「ワンダーキッチン」のタイトルは伊達ではない。
    • 時計の針は鳥になって飛び立ち、冷蔵庫(野菜室?)からは音楽が流れ、プリンはバレリーナへと変異して壁の絵の中に入っていく。そして冷凍庫は雲の上に、オーブンからはサバンナに、流し台の下の戸棚からは魔女の寝室へと繋がっている。
    • 各ワールドも、雲の上の城に入れば何故かそのまま海に落ちて目の前に海賊船が現れたり、その海賊船の大砲からはキャベツが飛び出したりなど、常識の通じない世界となっている。
    • 中にはサバンナでライオンに喰われたと思ったら、そのライオンが捕まって一緒にサーカスに連れて行かれる。というややブラックな展開も。
  • 食材もどれもフリーダムなものばかり。
    • 海中ではしいたけがクラゲに混ざって泳ぎ、サーカスではキーウィ()がキウイフルーツへと姿を変え、海賊船のパラソルはミサイルのように飛び立った後にスイートコーンに変化する。…本当に食べていいものなのだろうか?
  • プレイヤーが操作する指ポインタも単なるアイコンと思いきや、指を足に見立ててタップダンスや玉乗りを披露する、扉に挟まって痛がるなど、やたら自由な振る舞いを見せる。
  • 料理一品分の食材を揃えると、もと子ちゃんの祖父の「もとじろう」が現れ、マヨネーズに関する諸々を聞かせてくれる。
    • しかし「味の素と他社のマヨネーズを通行人に食べ比べしてもらったら味の素の方が美味しいという人が多かった」「味の素マヨネーズは何故美味しいのか」と、モロに宣伝込みの内容である。
      • 一応、マヨネーズの起源(の一説*1)と言ったまともなトリビアもある。
    • ちなみにもとじろうは料理に応じて衣装が変わる。誰得
  • 料理パートでは全ての料理で勿論、味の素マヨネーズを使用。袋から開封するといちいち「デデデデン♪」という大袈裟なSEが入る。
    • また、何故かスイートコーンも味の素製という事になっている。上述の通り、元は海賊船のパラソルなのだが…。
  • ちなみにこれだけ味の素マヨネーズ推しながら、マヨネーズ自体は料理パートで使う調味料に過ぎず、この混沌の世界には一切関わってくる事はない。
    • 精々オープニングで顔と手足の付いたキャラになっているそしてロケットの如く飛んでいく程度で、本編中はマヨネーズの国だとか魔法のマヨネーズだとか言ったファンタジックなものは存在しない。

評価点

  • クリックポイントは多く反応も様々で、この世界観に馴染める人なら楽しんで探索できる。
  • 料理パートは結構本格的で、デフォルメされながらも本当の料理を作っている気分が味わえる。
    • 基本指示に従うだけなので失敗したり違うものができる事は無いが、器具を毎回水洗いしたり、塩胡椒を異常に振りかけたりと色々と遊ぶ事もできる。
    • また、フライパンに事前に油を引いたり、仕上げにマヨネーズをたっぷり掛けた場合*2など、もと子ちゃんのセリフが変わるという作り込まれた部分もある。
    • 勿論、どれも現実で調理可能。また、料理パート後やエンディングでは他にもマヨネーズを使った簡単な料理を教えてもらえる。
      • ちなみにレシピの中では「マヨネーズ」ではなく「 味の素 マヨネーズ」としっかり強調されている。コマーシャルは忘れていない。
  • マヨネーズの使い方はそれぞれ「生のフルーツに合える」「完成した料理にかける」「具に乗せてオーブンで焼く」といった具合に、それなりにバリエーションがある。
    • 当時、マヨネーズは野菜やお好み焼きに付けるくらいにしか使わなかった家庭も少なくなかったので、いずれも新鮮なレシピであった。
    • ただし料理完成後にもと子ちゃんから教えてもらえるのは全て「混ぜて作るソース」とシンプルにまとめられている。
  • 魔女の寝室ではオセロがプレイ可能
    • 勝っても何も無いがCPU(魔女のおばば)はそこそこ手強く、本作プレイヤーからは食材集めよりオセロに夢中になってしまったという意見も少なくない。

問題点

  • もとじろうの講釈が長い
    • しかもスキップもメッセージ送りも不可。文字スクロールも遅く、ただひたすら終わるまで待たなければならない。
    • 繰り返しプレイしてやり込むようなゲームではないとは言え、毎回宣伝込みの講釈を聞かされるのは苦痛である。さっさと料理させて下さい…。
    • 調理後に聞けるもと子ちゃんのメッセージも同様だが、こちらはもとじろうほどしつこくはない。
  • ボリュームは薄い
    • 懸賞ゲームだけにゆっくりやっても一時間程度で終わる。食材探しも1ワールドは3マップ程度で済む。
    • そのくせ前述の通りもとじろうの講釈が長いので、手早くプレイするとプレイ時間を講釈が相当占める事に。
    • また、これは調理方法の都合だが、「パイナップルのサラダ」は材料を切って混ぜるだけなのであっと言う間に終わってしまう。
  • セーブ、パスワードは無い
    • 短いゲームではあるが、料理パートだけプレイしたかったり、レシピを聞きたかったりしたらまた最初からやらなくてはならない。そしてその都度、爺の長話を聞く羽目に…。
  • 本編とは関係ない小ワールドでは、一つ前のマップに戻れる「ホウキ」と、キッチンに戻れる「ランプ」が入手可能だが、短い上に戻る必要の無いゲームなので利用価値は乏しい。
    • 「ホウキ」は一つ前のマップでもっと遊びたい場合になら使えるが、「ランプ」は入手した小ワールドから帰るぐらいにしか使い道が無い。
  • クリアしてももとじろうからレシピを二つ教えてもらえるだけで、あとは作中のマップが映し出された後にタイトルに戻る。スタッフロールは無い。

総評

混沌としたゲーム内容は大人から見たらサイケデリックであり、怪作・奇作などと評される事が多く、あながち否定も出来ないが、本来対象としていたであろう未就学児(特に女児)からしてみれば夢のある世界と言える。流し台や冷蔵庫が別世界に繋がっているなど、なんともメルヘンな設定である。
書籍『超クソゲー』に載せられた所為もあってかクソゲー扱いされる事もしばしばあるが、料理パートも含め、小さな子供の知育ゲームとして見ればなかなかによく出来たゲームという見方もできるだろう。

余談

  • パッケージを見ないと分からないが原案は料理やお菓子作りをテーマとした児童文学『こまったさん』『わかったさん』シリーズ*3を手掛けた寺村輝夫、絵は『わかったさん』シリーズの作画担当の永井郁子が関わっている*4。本作がこのような世界観になっているのはその影響が大きいと思われる。
    • 寺村氏は『ぼくは王さま』シリーズ*5でも知られており、本作の不可思議な演出は同シリーズに通じる部分が多い。また、もと子ちゃんもどことなくわかったさんに似ている。
    • これらを踏まえれば、本作のカオスな作風が味の素の乱心という訳ではなく、このような作品に親しむ層に向けて意図されたものである事が窺えるだろう。
      • しかし本作にスタッフロールが無い所為か、この両名が関わっている事はあまり知られておらず、カオスさばかりが知れ渡っているのが実情である。
    • ちなみにこの二人、味の素のマスコットキャラクターとかそういうものではなかったりする。同社のマスコットキャラクターは2005年に生まれた「アジパンダ」だけで、もと子ちゃんももとじろうも本作だけのオリジナルキャラクターである。
  • もとじろうの講釈の中で「マヨネーズが菌に強い」という話が出るのだが、その際にバイ菌として何故かドクターマリオ』の三色のウイルスが出て来る。
    • この事から、開発は任天堂ではないかという噂も囁かれている。
  • タイトル画面でしばらく待つと、もと子ちゃんから笑顔が消え、もとじろうと入れ替わる小ネタがある。しかもタイトルも「もとじろうのワンダーキッチン」になってしまう。
    • 勿論、ただのネタなので、もとじろうの為に料理を作る内容になったりはしないのでご安心を
  • スーパーファミコン用のマウスに対応している。
  • 2020年現在、味の素マヨネーズは「ピュアセレクト」シリーズとして販売されている。本作で紹介されている料理を作る時は必ずこれを使うように。
    • 味の素の公式サイトで多数のレシピが公開されているが、その中に本作の「トマトカップのサラダグラタン」とよく似た「トマトカップマヨグラタン」がある。具材は異なるが、調理方法はほとんど同じ。

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最終更新:2021年05月07日 20:45

*1 過去にある視聴者参加型クイズに出題された際にそれで不正解になってしまった視聴者が不適切問題であると訴訟を起こしたこともある。

*2 オムレツが見えなくなるほどマヨネーズ塗れにしても「おいしかった」と。やはりマヨラーらしい。

*3 『こまったさん』は主食・おかず、『わかったさん』はデザート作りをメインテーマとしている。

*4 なお、『こまったさん』シリーズの作画担当は『カムイ伝』などで知られる白土三平の妹の岡本颯子。

*5 ごった煮の世界観で我が儘な王さまが奇想天外な物語に巻き込まれる児童文学。