ドキドキ文芸部プラス!
【どきどきぶんげいぶぷらす】
ジャンル
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サイコロジカルホラービジュアルノベル
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対応機種
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Windows Xbox One Nintendo Switch プレイステーション5 プレイステーション4
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発売元
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【Win/One】Serenity Forge 【Switch/PS5/PS4】PLAYISM
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開発元
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Team Salvato
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発売日
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【Win/One】2021年7月1日 【Switch/PS5/PS4】2021年10月7日
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定価
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【Win】1,520円 【One】1,750円 【Switch/PS5/PS4 PKG】4,200円 【Switch/PS5/PS4/ DL】1,980円
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レーティング
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CERO:C(15才以上対象)
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判定
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良作
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このゲームは子供や刺激に弱い方には適していません。
This game is not suitable for children or those who are easily disturbed.
概要
アメリカのゲーマーでもあるDan Salvato氏が率いる小規模開発チーム「Team Salvato」が作成し、2017年に公開したPC向けノベルゲーム『Doki Doki Literature Club!』が原作。
日本では原題を直訳した『ドキドキ文芸部!』という名前で展開されているが、略称は原題ベースの『DDLC』となっている。
Steamでの数々の高評価に加えてネットミーム化したこともあり、一時期PCゲーマーの間で話題となった。
本作『プラス』は上記の作品の決定版およびCS移植版となっている。
海外展開およびそれに準ずる各Win版のパブリッシャーはアメリカ・コロラド州に拠点を置くゲーム会社のSerenity Forge、国内の家庭用機版はPLAYISMからの発売となっている。
本Wikiの執筆ルール上、企業ではない同人チームがパブリッシャーとなっている『Doki Doki Literature Club!』(以下「オリジナル版」と表記)に関する情報は、本作との比較という形で記述する。
なお、本作はネタバレが特に注意されるゲームであるため、本記事でもネタバレとなる記述はなるべく隠しながら紹介をする。
特徴
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基本的なシステムは一般的なよくあるノベルゲーム。基本的にはテキストウィンドウに表示される文字を読み進める。
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ヒストリー(バックログ)・既読スキップなど、昨今のノベルゲームに存在する機能は一通り搭載されている。
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サヨリ(Sayori)
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元気いっぱいな主人公の幼馴染であり、文芸部の副部長。朝起きるのが苦手でよく寝坊してしまう。CGのコンプリートをせずにエンディングを迎えると・・・?
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ナツキ(Natsuki)
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かわいいものが好きな勝気な性格の一年生。実は主人公と同じくマンガが好き。父親に経済的かつ精神的なDV(虐待)を受けている。
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ユリ(Yuri)
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ファンタジー小説が好きな大人しいミステリアスな女の子。ナイフで、ある事をしてストレス解消をしてる。
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モニカ(Monika)
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文芸部の部長。後述の詩の作成パートではモニカに対応する単語はなく、モニカに詩を見せた場合、書いた詩が誰の好みかを教えてくれる他、執筆のアドバイスもくれる。本作における出来事は、大体こいつのせい。
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詩の作成パート
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ランダムで表示される単語を20個選び、詩を作成する。
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単語にはサヨリ、ナツキ、ユリの3人に対応したものがあり、選んだ単語によってどのヒロインと仲良くなるか分岐する。
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と、ここまでならよくある普通の恋愛ノベルゲームのように思う方もいるかもしれないが、ストアページや公式サイトを覗いて見たり、ゲームを起動してみると、ところどころに不穏な情報が垣間見える。
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公式ジャンル名のサイコロジカルホラーというジャンル、海外でのやたら高い対象年齢、Steamストアページのタグにある「精神的恐怖」というタグ、等々…。事前情報だけでも普通の恋愛ゲームにはない「何か」があることだけは察することができる。
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ゲーム初回起動時にも、「不安症やうつ病に苦しんでいる人は本作をプレイすべきではないかもしれない」と警告され、お住まいの地域のレーティングの対象年齢以上であることと、本作に刺激的な表現があることに留意することを同意させられる。
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オリジナル版からの変更点・追加点
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すべてのアートワークの解像度のフルHD化。
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6つのサイドストーリーの追加。
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刺激的な描写を事前に警告する警告機能の追加。
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CGなどのアートワークやBGMを視聴できるギャラリーの追加。
評価点
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非常に凝った演出とギミック
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ネタバレになってしまうので詳細は書けないが、普通のノベルゲームではまず見られないような演出やギミックを採用しており、プレイヤーをいい意味で驚かせてくれる。
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魅力的なヒロインたち
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本作のヒロインたちの性格は一見王道のように見えるが、ストーリーを進めるにつれて、心情や抱えている悩みなどが見えるようになり、プレイヤーをのめり込ませる。
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しかし、本編のある事でモニカの事を嫌うプレイヤーも多数いるのだが…(詳細は後述)。
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追加されたサイドストーリーも好評
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ヒロインたちの関係性や性格の掘り下げがされており、オリジナル版プレイ済の人からも好評である。
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サイドストーリーは本編と違って、「他者理解」「関係の築き方」「友情」をテーマとした話となっており、純粋に読み物としての評価が高い。
故に本編とのギャップが著しいが。
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なお、サイドストーリーは本編との直接的な繋がりはないことが仄めかされており、実際に本編との矛盾がいくつか見受けられる。
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アートワークの視聴機能の追加
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ゲーム中で見れるもの以外にも、条件を満たせばオリジナル版リリース後に外部で公開したアートワークや、開発途中のスケッチなども見れる。オリジナル版のファンも必見。
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衝撃のストーリー展開
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本作の本編ストーリーは大まかにACT1・ACT2・ACT3・ACT4の四段階に分けられている。
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これらの内、ACT2以降はノベルゲームはおろか、あらゆるコンピューターゲームと比べても、類稀なる演出とストーリー展開が差し込まれ、特徴にて記述した不穏な情報の意味をプレイヤーは理解することになる。
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ストーリー展開に関する詳細(重大なネタバレ注意)
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ACT1のラストにおいて、
サヨリが自殺
し、そのまま終わってしまう。
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その直後、タイトル画面へと戻されるのだが、そこには明らかな異常事態が起こっており、プレイヤーは必然的に「二周目」をプレイすることになるのだが……。
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ACT2のストーリー展開(本作の核心に触れるネタバレであるため、閲覧注意)
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ACT2では、それまでの恋愛ゲームのような雰囲気とは打って変わって、プレイヤーを驚かせるホラー演出が差し込まれるようになる。
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突如バグったようなノイズが入ったり、壊れたグラフィックが表示されたり、ストーリーの合間において「特別な詩」が読めるようになったりと、それまでとは明らかに毛色の違う作風へと変貌する。
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ヒロインたちの抱えている秘密も徐々に明かされていき、これらが更にプレイヤーの精神を抉ってくる。
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そしてACT2の終盤において、これらの出来事を引き起こした黒幕が本性を現すのだが……。
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これ以降の展開は是非とも、あなた自身の目で確かめてもらいたい。
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賛否両論点
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一部の刺激的な描写について
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本作には後述のホラー演出とは別に刺激的な描写が多数あり、人によっては不快感や嫌悪感を感じてしまう可能性も多大にある。
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具体的には「うつ病・自殺・自傷・いじめ」(ネタバレのため反転)などである。これらの要素に不快感・嫌悪感を感じる方は要注意。
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サイドストーリーにも、これらの描写が少なからず存在する。
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警告機能について
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本作にはオリジナル版と違い、刺激的な描写が入る直前に警告をしてくれる機能が搭載されている。
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しかし、警告機能をONにすると結果的にストーリーのネタバレがされてしまうので、一概に良機能とも言い難い。
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そのため、前述した描写がよっぽど苦手という方以外は警告機能をOFFにしておくことを推奨する。
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なお、警告機能をONにしていても、後述するホラー演出に対する警告は出ない。あくまでも「刺激的な描写」しか警告されないため、勘違いしないように。
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一部の登場人物について
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主人公について
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成人向けゲームや一部の少女漫画ではよくある事だが、「主人公の幼馴染であるヒロインの家の前に別のヒロインを連れて行ってしまい、結果的に悲劇を招いてしまう。」という描写がある。
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特に主人公においては、幼馴染に対して少々ではあるが辛辣な態度も取る、己のエゴのために文芸部に入るなど、僅かながらに人間性に問題のある場面があり、一部のプレイヤー達からは不評を買っている。
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この手の話で良くあることだと片付けてしまえばそれまでだが。
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モニカの人物像について
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(重大なネタバレ注意)
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根本的なネタバレになるので行動面については伏せておくが、攻略対象外のヒロインであるモニカは、己のエゴを満たしたいが故に全編通して目に余る「行動」をして事態を悪化させている。そのため、ヒロインの中で唯一と言えるほど非難の声が多い。
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だが、この「行動」こそが本作のストーリーの根幹をなすものであり、本作を本作たらしめるものとなっているのも事実である。そのため、一概に問題点として切り捨てすることはできないだろう。実際、モニカのキャラクター性に対して魅力を感じ、真のヒロインと評価する人も決して少なくない。
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ついでに言えば、フォローできる点が全く無いわけではなく、CGをコンプリートしていない状態でのエンディングにおけるサヨリの暴走を顧みると、一概にモニカだけに問題があるとは言い切れない可能性もある。もっとも、ゲーム側からは明確な説明はされていないため、これもプレイヤーの考察の域を出ないが。
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ホラー演出について
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ホラー演出に関する詳細(ネタバレ注意)
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本作の主なホラー演出は一言で表すと「ビックリ系」である。
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雰囲気がおどろおどろしいとか、狂気に満ちているとか、そういった要素で怖がらせるというよりは、プレイヤーを驚かせる演出が、いつくるかわからないため、ビクビクするタイプの「恐怖」である。
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このような手法を「ジャンプスケア」と呼び、古来よりホラー映画やフリーのホラーゲームなどではよく使用されている手法でもあるが、「サイコロジカルホラー」を名乗っておきながら、ビックリ演出で怖がらせる内容であることに批判意見は当然存在する。
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無論、ビックリ演出に頼りっぱなしというわけでもなく、公言している通りのサイコロジカルホラー要素も存在する。プレイヤーにとってはビックリ演出の方が印象に残りやすいが。
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セーブ機能が若干不親切。
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ストーリー演出の都合上、ACTが変わると以前のセーブデータは全て削除されてしまう。そのため、「気に入ったシーンを保存して後で再び見る」といった用途では使えない。
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そのため、使う場面といえば「ゲームを中断したいとき」か「コンプリート条件を満たしに行くとき」に限られるが、それにしてはやたらとセーブデータのスロット数が多い。
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また、サイドストーリーではセーブは一切不可能。それぞれのパートは比較的短めではあるが。
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ゲームの雰囲気を際立たせているのは確かだが、アドベンチャーゲームとしての利便性が下がってしまっているのは否めないだろう。
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オリジナル版からの仕様変更
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仕様変更についての詳細(軽いネタバレ注意)
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オリジナル版はプラットフォームがPCであることを活かした演出やギミックも魅力の一つだったが、本作はCS機への移植に伴い、PC版でも独自のデスクトップ上でゲームを起動するという、少々特殊な形態でプレイすることとなる。
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要するにオリジナル版の演出やギミックをなるべく損なわないようにCS機へ移植するための苦肉の策なのだが、オリジナル版と比較してしまうと、やはり没入感や衝撃は薄まってしまう。
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他にもCS版でプレイする場合は、元々がPCゲームであったことを知っておかないと理解しづらい演出・ギミックが存在する。また、CS版ではプラットフォームの都合上、PC版から削られてしまっている演出やギミックがある点にも注意。
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オリジナル版にあった一部のウイルス対策ソフトに引っかかってしまう問題点が解消されているなど、メリットがないわけではないが。
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問題点
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日本語ローカライズがやや手薄
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英語(原語)版ではユリが書く詩は筆記体だったのだが、それが日本語フォントに反映されていないため、作中のセリフと齟齬が生じてしまっている。
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特に詩の日本語フォントが全てのキャラで同じフォントであり、フォント自体も全体的に丸っこいもので「!」の点がハートマークになっているなど、キャラクターによってはミスマッチなものとなっていた。
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オリジナル版では公式対応していたのは英語のみで、本作ではそこから更に日本語を含む11言語に対応させているので、そこまで手が回らなかったかもしれないが、少し残念に感じる部分ではある。
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他にも、文章の末尾に「,Must」と表示されたり、キャラごとの口調が安定しなかったりと明らかな翻訳ミスも見受けられる。
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PLAYISMから発売されたPS5/PS4/Switch版では、明らかな誤訳が修正される、詩のフォントがキャラごとに違ったものになっているなど、多少ではあるが改善はされている。
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PS5/PS4版のみ、一部の演出に中途半端な規制が入っている
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規制内容の詳細(重大なネタバレ注意)
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ユリが自らにナイフを突き刺し自殺するシーンで、流血に規制が入っており、血の色が黒くなっている。
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そのシーンの規制自体の是非はここでは触れないでおくとして、意味不明なのがその直後の死体。何故かそちらの方には規制が全く入っておらず、死体の傷と血の色は赤いまま。何のための演出変更なのか、まるで理解できない。
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本作には他にもサヨリの首吊り自殺やユリの自傷痕やユリの遺体を見てショックを受けたナツキの嘔吐などの刺激的な描写は多数存在するのだが、これらに規制は入っていない。故にここだけ規制されたことがますます疑問。
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上記の規制により、恐怖感が減ったかと言われると、正直微妙。規制自体の是非はともかく、規制が中途半端過ぎて演出変更の意味が良くも悪くもほとんどないのは、どうなのだろうか。
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もちろん規制が強すぎる影響で、該当シーンを暗転させるなどの雑な演出変更をされて、恐怖感が大幅減少してしまうよりは遥かにマシである。
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これらの演出変更でストーリーの理解に支障が出たり、矛盾が発生していることもないため、初見のプレイヤーならPS5/PS4版でも感じ方はそこまで変わらないだろう。
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One/Switch版ではこのような規制は入ってない。そのためSIEによる規制と推測されるが、公式からの発表は今のところない。
総評
ホラー演出もさることながら、ストーリー展開なども合わさり、あらゆる意味でプレイした人の度肝を抜いた一作。
ホラー演出自体に賛否はあるものの、本作を最後までプレイしたプレイヤーからは概ね高評価を得ている。
事前情報や初回起動時の警告から単純に驚かせる・怖がらせるだけのゲームではないかと、警戒する人もいるかもしれない。
だが設定面や演出面、ストーリー面の評価も高く、単なるギャルゲーの皮を被ったホラーゲームであると切り捨ててしまうのは勿体ない。
ただし、前述した通りホラー演出以前に刺激的な描写がそれなりにあるため、公式でも警告しているように精神的に不安定な方や対象年齢未満の子供は、本作をプレイすべきではないかもしれない。
成人のユーザーでも単に話題のゲームだからと軽い気持ちで購入するべきではなく、ある程度の覚悟を持って本作をプレイすることを推奨する。
余談
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本作の海外CS版の対象年齢が高いのは前述した通りだが、PLAYISMから発売されるアジア版の日本でのレーティングはCERO:C(15歳以上対象)。他国のレーティング機関では17~18歳以上対象であるのに対し、少しではあるが対象年齢が下がっている。
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海外のレーティングと比べて対象年齢が下がっていることから、発表当初は「何かしらの要素が規制・削除されているのではないか?」と心配する人も存在した。
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その後、PLAYISMのTwitterから「アジア版の内容は海外版と差異はなく、レーティングも全要素を提出した上でCEROが審査した結果である」と説明され、公式サイトの紹介ページにも「海外版と内容は同じ」という旨の注意文が加えられた。
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ただし、問題点で記述した通りPS5/PS4版には海外版の時点で規制が入っており、アジア版でもPS5/PS4版に同様の規制が入っている点には注意。
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なお、オリジナル版を含めたプレイ済の人からは「CERO:Cで大丈夫なのか」「最低でもCERO:D(17歳以上対象)くらいは必要なのでは」など、15歳以上対象は低すぎるという反応が多数出ている。
CERO仕事しろ。
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概要でも少し触れたが、本作を作成したDan Salvato氏はゲーマーとしても有名(参照)。
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本作の日本語訳はオリジナル版の非公式日本語化パッチをベースにしている。そのため、クレジットに非公式日本語化パッチの提供元の名前が記載されている。
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「週刊ファミ通 2021年10月21日号」では本作が表紙を飾り、特集が組まれた。
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特集では公式日本語訳に関するインタビューも行われ、上記の日本語訳を非公式パッチベースにしているのは「開発元のTeam Salvatoがファンベースを大切にしており、それを活かしたいという想いがあったと思われる」とPLAYISMから語られている。
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中でも作中で登場する一文「Just Monika」をどう翻訳するかは苦労したらしく、この文章が海外圏でミーム化していることもあって、あえて翻訳しないという案も出てたそうだ。
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2023年2月22日に本作の売上が全世界で100万本を突破したことが公式に明かされた。
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加えて、開発元のTeam Salvatoはこの売上を資金に新作を開発中であることも発表した(参照)。
最終更新:2024年06月10日 10:52