ナイトムーブ
【ないとむーぶ】
ジャンル
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アクションパズル
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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任天堂
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開発元
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JV DIALOG
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発売日 ()は書換開始日
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1990年6月5日(1990年6月22日)
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プレイ人数
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1~2人
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定価
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2,600円(片面)
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判定
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良作
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ポイント
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重厚RPG全盛の時代に真逆なシンプル路線 シンプルながら使い勝手が良く対戦がアツイ 今ではマイナーなテトリスの兄弟作品
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テトリスシリーズ
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概要
1990年6月に任天堂がディスクシステム用ソフトとして発売したパズルゲーム。
落ちモノパズルの始祖的存在『テトリス』生みの親であるアレクセイ・パジトノフ氏が考案したもので、チェスのナイトのコマの動きに基づいたアクションパズルである。
1990年ともなればディスクシステムが下火だったのは勿論のこと、ロムカセットでも3Mや4Mの容量を用いた世界観設定やストーリーあるゲームが当り前だった中、ファミコン草創期のように純粋にハイスコアを目指したり対戦を楽しむシンプルなゲームになっている。
内容
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チェスのコマ「ナイト」の動き(将棋で言う「桂馬」を8方向にしたもの)でハートを集めてラウンド(ステージ)をクリアするシンプルなパズルゲーム。
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ラウンドが進むごとにナイト(プレイヤーキャラ)のスピードは少しずつ速くなっていく。
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Aボタンを押すことで『テトリス』の「ドロップ」のように着地までのスピードを速めることができ、それに応じて得点が入るがこれは微々たるもの。
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床は最初すべて白い色だが、一度着地すると水色になり、もう一度着地すると青になり、青の状態で着地すると穴が開き、同時にボーナス点が入る。
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穴を開ける時のSEは音階になっており最初は「ド」で得点は50点、連続して開けるごとに「レ」(100点)、「ミ」(150点)、…と続き「シ」(350点)を越えて8連目で1オクターブ高い「ド」になると、SEが派手なものになると同時に獲得できるボーナス点も飛躍的にアップする(1000点)。更に8連して、もう1オクターブ上がった場合も同様。
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途切れる(青以外の床に着地する)とまた「ブー」と鳴り、次に穴をあけても最初(低い「ド」)に戻ってボーナス点もまた50点からとなる。
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また、穴を開けたとしてもそれがステージクリアと重なった場合は「ブー」こそないものの、またカウントは1(低い「ド」)からし直す形になる。
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穴に着地してしまうと落ちてゲームオーバーとなる。
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つまり穴を増やせば増やすほど得点が高くなるが、落ちるリスクが高くなる。そしてハイスコアを目指すにはいかに連続で開けるかがカギとなる。
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ラウンドクリア時(後述)、空いていた穴は全て白い床(あと3回踏める初期状態)に戻る。
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ゲームモードは3通り。
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Aタイプ
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Bタイプ
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ハートを既定の数(最初のステージ3つで、ステージが進むと増えていく)を取るとラウンドクリア。
ハートには数字が表示されており、ナイトが着地する毎に1つずつカウントダウンされ0になると違う場所に移動する。
ハートを踏んだ場合も、新しいハートは違う場所に現れる。
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2P(対戦ゲーム)
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このモードではスコアはなく、完全な対戦モードで先に4ラウンドを取った方が勝ちとなる(1Pイエロー・2Pレッド)。
ラウンド単位での勝利条件は下記いずれかで成立。
1・相手が穴に落ちて自滅。
2・ハートを5つ集める。ハートは上記Bタイプと同じで6カウントで移動する方式(1P2Pどちらが踏んでも1ずつカウントダウンされる)。
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BGMは「TRAIN」「Horse Man」「馬酒場」から好きな曲を選べる。またBGMのオフも可能。
評価点
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シンプルながらもハマるゲーム性。
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ルール自体は至って簡単なので、エントリー層の間口が広い。
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ゲームクリアはハートを目指すだけなので、これも簡単でスコアとの両立を目指すことで、難易度を上げている。
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リスクを負うほどに高得点のチャンスが得られるシステムもゲームの基本にしっかり沿っている。
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ハイスコアを目指すには、いかに多く青を用意して連続で穴を開けるかというシンプルながらも非常に思考をめぐらせる必要があるなど、思考力とスピードの両立が必要な点も『テトリス』に通ずるものがある。
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BGMが3通り用意されており、いずれも個性的なものになっている。
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中でも演歌調の「馬酒場」は現在でもゲームサウンドの名曲に数えられている。
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サウンドと得点の絶妙な連動。
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上述の通り音階になっており8連続して1オクターブ上がると、それに伴い加算されるスコアも上がる仕組みなのだが、そのポイントでもSEが一気に豪華になったりと、ボーナスを取った高揚感を盛り上げてくれる。
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シンプルながら駆け引きが要求される対戦。
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単に早くハートを目指すだけでなく、相手に取られそうになったら、とにかく跳びまくってハートのカウントを減らして動かしたり、相手が向かっていく先のハート付近を穴だらけにしてハメたりと、1Pとは違う考え方が要求される。
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こういった点でも思考力とスピードの両立を活かした絶妙な対戦バランスを実現している。
問題点
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対戦はシンプルながら熱くなれるゲーム性なのは非常に良いが対CPUで行うことができない。
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当時の標準仕様とはいえ、他に人間がいないとできないのは勿体なさがある。
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スピード(レベル)が上がっても得点が上がるようなことはない。
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そのため、ハイスコアを狙う場合序盤で連続大量の穴開けをする必要があり、進めば進むほどチャンスがなくなる。
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ゲームボーイの『テトリス』のように、それがあるだけでも後半のラウンドの価値を高めることができただけに詰めが甘い。
総評
ファミコンでも3Mや4Mを活かしたRPGなど重厚なゲームが増えてきた中、かなり簡素な作りではあるが1人でハイスコアを突き詰めていくのもヨシ、対戦はシンプルな中でも、いろいろと駆け引きが生まれるゲーム性で、まさに「シンプルイズベスト」を現したようなゲームである。
シンプルながら既存のどのゲームもないオリジナリティがあり、BGMは3種類用意され、連続で穴を開けていく小気味よいSEなどはファミコン円熟期らしくプレイの気持ちよさ高める演出として申し分なし。
片面ソフトという少ない容量で内容的には数年前クラスながら独自性があって、シンプルイズベストな形で適度な時間で楽しめたり、とっつきやすくハマリやすいゲーム性を見事に実現している。
余談
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アレクセイ・パジトノフ氏考案のゲームとしては同年4月にアーケードで『ハットリス』というゲームが登場している。
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コンシューマではファミコンで1990年7月6日、PCエンジンのHuカードで1991年5月24日、ゲームボーイで1991年7月19日、PC-9801で1991年10月18日と幅広く発売された。
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ファミコン版のテレビCMで「テトリスからの第2弾」と呼ばれたが、こちらは「テトリスの発展形」というより同じ帽子を5つ重ねると消えるというものであり、横のラインではなく縦のラインが主軸に据えられているという点から言うと『コラムス』(セガ)に近い。
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独特なゲーム性と運の要素の強さが災いし、テトリスと比較してかなり賛否が分かれたゲームとなっている。
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同じ生みの親を持つ『テトリス』と異なり、残念ながらこの発展形となるようなゲームは生み出されていない。
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また移植も現在実現しておらず、ディスクシステムのそのものも衰退期だったため現在の知名度は任天堂ソフトながらあまり高くない。
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同時に当時は4Mの大容量を用いたストーリー重視のRPG真っ盛りの時代だったこともあって注目度も低かった。
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上記の通りシンプルながら対戦ゲームとしても、初心者から上級者まで分け隔てなく楽しめる内容なだけに惜しまれる。後に注目されなかった要因としてキャラクターの地味さなども災いしたと言えるだろう。
最終更新:2022年12月18日 14:50