タイトーグランプリ 栄光へのライセンス
【たいとーぐらんぷり えいこうへのらいせんす】
| ジャンル | レース・RPG |  | 
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| 発売元 | タイトー | 
| 開発元 | ナウプロダクション タイトー
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| 発売日 | 1987年12月28日 | 
| 定価 | 5,500円 | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 判定 | 良作 | 
| ポイント | 憧れたF1レーサーへのサクセスストーリー 66種類もの豊富なレースコース
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概要
1987年末にタイトーが発売したカーレースゲーム。
当時は日本人初のF1レギュラードライバーとしてロータスから中嶋悟がデビュー、10年振りにF1日本グランプリが開催されるなどF1ブーム幕明けの年であり、本作に限らず同時期にはレースゲームが急増していた。
レースゲームを軸として、それを通してレーサーとしての知名度を上げ、得られた賞金でマシン性能を上げグレードアップしていくRPGのスタイルを兼ね備えたものになっている。
レースのみを自由に行うモードもある。
内容
レースの基本仕様
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マシンはミニクーパー、フェラーリ、F1とあるが、いずれも3段変速。
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基本的にそれぞれのギアで出せる速度の9割ほどのスピードに達しなければ、シフトアップしても加速しない。
 
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ライバルや障害物に激突するとクラッシュとなり空中高く舞い上がり、ダン!ダン!と地面に弾む。
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この時、スピードが遅かったり道路上ならば、そのまま加速して立て直せるが、高速でコース外に弾んでしまうとほぼ停車状態まで減速する。
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もちろん障害物がなくてもラフゾーンに踏み込めばスピードが殺される。
 
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トンネルには見えないが側壁があり、これにぶつかってもクラッシュとなる。
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一応外側線が目印になっており、その少し外側に壁がある。
 
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BGMが3通りで、それにBGMなしのエンジン音という4通りから選べる。
ノーマルモード
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プレイヤーはわずかな資金と一台のミニクーパーを手にF1レーサーへの成り上がりを目指すサクセスストーリーのモード。
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その中に「ノーマルレース」と「F1レース」があり最初は「ノーマルレース」しか選べない。
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「ノーマルレース」各地で行われるレースに参加して賞金を稼ぎマシンをパワーアップさせ、同時にレーサーとしての名を上げていきボルドールカップを制してF1への参加資格を得ることが目的。
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F1への参加資格を得たら、セーブデータにF1グランプリのデータが作成され、それまでのモードとF1グランプリのモードを選択できるようになる。
 もちろんそれまで通りノーマルレースも選ぶことができる。両方のモードは同時に行き来できないので、中断して切り替えたいならリセットして選び直す必要がある。
 
 
ノーマルレース
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各地をめぐって新しいパーツを購入してグレードアップしたりレースに参加したりする。
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プレイヤーは最も低い「ランクD」からスタートする。
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レースはその時点でのランクを満たしていないと出走できない。またパーツにもそれぞれ必要ランクがあり、それに満たないといくら金があっても買えない。
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またボルドールカップは「ランクA」となっているが単にAランクになっていればいいわけではなく、特定のポイントに達していないと出走できない。また、他のレースを全て制している必要がある。
 
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パーツは「エンジン」「タイヤ」「チャージャー」「マフラー」「ボディー」「エアロ」「ドライブ」「ニトロ」「ミッション」「ブレーキ」「ハンドル」「サス」に分かれている。
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これらのパーツのうち「タイヤ」と「ニトロ」は消耗品で、一度使うとなくなってしまう(デフォルトのタイヤ「T-10」のみ無制限に使える)。
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パーツだけでなくマシンも上位のフェラーリが購入できる。
 
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レースのルールとしては道中にチェックポイントが1ヶ所もしくは2ヶ所あり、与えられた制限時間内にそこを通過すればタイムが延長される。
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タイムがゼロになると強制的に減速され、止まってしまうとその時点でタイムアップとなり失格。減速されながらもチェックポイントを通過できればタイムが延長されると同時に再度加速可能になる。
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手っ取り早く言えば任天堂の『F1レース』(1984年)等と同等の方式。
 
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完走すれば賞金が貰え、そのレースを初制覇した場合はポイント(経験値)が獲得でき、以降そのレースに「制覇済み」ということでカップのマークが表示される。
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「制覇済み」のレースを再び完走してもポイントは獲得できないが賞金は貰える。
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ポイントが一定に達すればランクが上がるが、そのためには基本的に対象のレースを全て制覇しなければならない。
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Bランク以上のレースでは、走破タイムと最高速が記録される。
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一定以上のタイムを残して完走すると賞金額が多く貰える。
 
 
F1グランプリ
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F1グランプリのモードは現実のF1世界選手権同様16戦構成になっており、順番にレースを消化してチャンピオンを目指す。
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全レース2周のタイムを競う。
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このモードでは、ノーマルレースモードにあったような資金やポイントのようなRPG的な要素は一切ない。
 
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このモードではセッティングはギヤとタイヤのみとなる。
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ギヤ
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スポーツ(バランス型)
 ハイギアード(最高速重視)
 クロス(加速重視)
 
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タイヤ
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スリック(晴天時用)
 インターミディエイト(中間・主に小雨時用)
 レイン(雨天時用)
 
 
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天候などのコンディションがあり、レース前に天候の情報が表示され雨天の度合いが強いとコースに水たまりができる。
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レインタイヤ以外でそれを踏んでしまうと、スピンしはじめスピードも落ちてしまう。
 
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F1グランプリではタイムはカウントダウン式ではなく、カウントアップ式になっており完走タイムと道中でのクラッシュ回数に応じて順位がつけられる。
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順位に応じたポイントは優勝で15点、2位から6位までは順に10-7-4-2-1点を獲得する。
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終了したレースの順位とタイム、現在のポイントはゲーム開始時に確認できる。
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16戦終了時、一定のポイントを上回っていればチャンピオンとなりエンディングが見られる。
 
フリーモード
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上記のモードで使われているミニクーパー、フェラーリ、F1からマシンを選んで、様々なコースでフリー走行できるモード。
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ルールも上記のままで、その内の24種類に限られる。
 
    
    
        | + | クラスごとの詳細 | 
ミニクーパー(16通り)
ピッグスリープグリーンパークラン
 アルピナルラン
 キティホークラン
 ロックンループ
 ビッグアップル
 ビッグストーン
 デザートデューン
 フォレスタン
 ドラグーンカップ
 ダイナストカップ
 ロメロナイトメア
 スリックフィールド
 シーズリーズ
 キリングムーン
 コリドールカップ
 
フェラーリ(8通り)
トリスタンズランオーバーウッド
 ルーインズカップ
 クラウンズゲート
 キャニオンロード
 ダブルニッケル
 モノタウンレース
 キングダムカップ
F1(8通り)
ブラジルサンマリノ
 ベルギー
 モナコ
 デトロイト
 フランス
 イギリス
 西ドイツ
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評価点
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とにかく豊富なコースの数々。
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ノーマルレース50通り、F1グランプリ16通りと全66種類とファミコンではトップクラスのバリエーション。
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F1はこの年開催された全16戦、ブラジルのジャカレパグア・サーキットからオーストラリアのアデレード市街地コースまで非常に高い再現度。
 
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レースは非常に多いながらもゲームとしてはダラダラな展開にならないバランス。
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翌月発売するナムコの『ファミリーサーキット』を思えばF1グランプリでもたった2周というのは少々物足りなさがあるかも知れないが、ゲームとして考えると冗長にならない適度な時間に抑えられている。
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何よりノーマルレースでは金のために膨大なレースを走らなければならないので、そのあたりも含めてバランスは取れている。
 
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レース自体も非常に変化に富んでいる。
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トンネルでは、それに併せてエコーのようなエンジン音になるなど細かい演出まで気が配られている。
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また、当時恒例のコース脇に障害物というのは恒例だが、それがすべてではなく所によってはそれがなく、ラフによるスピードダウンのみだったりと、それを活かした減速もできるなど様々な戦略を生み出している。
 
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ビギナーにはやさしいバランス。
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ライバルマシンや障害物に激突してのクラッシュのダメージは速いほど大きいため、初期のミニクーパーでは多少減速する程度でしかない(ダンダンと弾んで大体持ち直す)。
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そのため、クラッシュのダメージが大きくなる頃には大体操作に慣れていることが多い。
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「ノービスワン」のように出走に参加費のいらないレースもあるためスッカラカンになっても詰む心配がない。
 
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最低のDランクとはいえ初期装備ではまるで歯が立たないレースもあるがゲームスタートした最初の場所からは離れており、開始地点から順当にこなしていけば多少のクラッシュがあっても完走できる水準になっている。
 
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ゆっくりながらも確かなグレードアップを感じられるパーツ交換システム。
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小さなものでも確かな効果があり、それを装備することでスピードが上がり今まで走れなかったレースを走れるようになるため、1つ1つに小さいながらも達成感を得ることができる。
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このあたりは当時のRPGのレベルアップの感覚によく似ている。特にランクが上がった時などはパーツの選択肢も増えるので、その達成感もひとしお。
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エンジンのセラミックターボなどは急激に高額になるが、このようなレベルアップの達成感を感じた後なので、その効果が楽しみになる。
 
 
賛否両論点
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レース中にコースの確認ができない。
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一応F1グランプリ中は最初にコースが表示されるし、ノーマルレースでも説明書に載っているとはいえ、それまでのレースゲームではもれなく画面上でリアルタイムに自分の位置を確認できたので不便に感じる。
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しかし、実際のレーサーはコースマップを頭に叩き込んでおかなければならずレーダーのように一目でわかるのは不自然なので、リアルなレーサーの感覚という意味では間違っていない。
 
問題点
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F1グランプリのセッティングバリエーションが少ない。
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公道レース時ではあれだけ豊富だったのがギヤ比とタイヤをそれぞれ3通りしか選べないというのは劣化したように感じられる。
 
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F1よりもフェラーリの方が速い。
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F1グランプリの最高速重視のギアでもやっとこ400km/hだが、ノーマルレースのフェラーリは最高の装備を揃えれば444km/hに達する。
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目指すべきF1に辿り着いても、そのスピードが劣っているのは少々いただけなく感じる。
 
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フリーモードがあまり練習にならない。
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まずコースが全体の1/3程度しか使えない。
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ボルドールカップの対象がミニクーパーになっているが、ノーマルモードで普通にプレーしていればまずフェラーリで臨む。
 
総評
豊富なコースの数々や、駆け出しから成りあがっていく本物のレーサー気分が味わえるという、当時の少年たちが憧れたF1レーサーへのサクセスストーリーを体感させてくれるという点では、既存のどのレースゲームにもなかったオリジナリティである。
またレース単体を取ってみても、トンネルでの演出など細かい部分にまでリアルな再現への拘りが見えておりファミコンレベルながらそのクオリティの高さは目を見張るものがある。
全体のバランスもゲームとして冗長にならず、また1つ1つに達成感が得やすい点なども含めてビギナー層の手の出しやすさから、やり込み層のやりごたえまで両立した好バランスが保たれている。
ファミコン中期の作品ながら後発作品に対しても見劣りしない良質なレースゲームに間違いない。
余談
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本作に限ったことではないが、ゲームでのマシンはとんでもないオーバースペックになっている。
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実際のF1は翌1988年に初めて350km/hを突破したばかりというレベルで400km/h超えが現実になったのは2006年。
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ゲームでのF1マシンの異常なオーバースペック例として真っ先に上がるのは上記『F1レース』(任天堂)のハイパーターボ(497km/h)なので、それを思えば可愛く見えるかもしれないが、本作の400km/hや444km/hでも充分すぎるほど現実を凌駕している。
 
最終更新:2023年05月06日 14:34