POWER倉庫番
【ぱわーそうこばん】
ジャンル
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アクションパズル
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア (NP版)
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NP版
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SFメモリカセット Fブロック×2 (8Mbit)+Bブロック×4(64Kbit)
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ROM版
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8Mbitロムカセット
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発売元
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任天堂
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開発元
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任天堂 アイオン アトリエドゥーブル
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発売日
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NP版
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1999年1月1日
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ROM版
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1999年6月25日
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定価
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NP版
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2,500円(税5%)
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ROM版
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4,200円(税別)
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判定
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良作
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ポイント
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任天堂風にアレンジされた倉庫番ライク
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概要
SFC末期に任天堂から発売された、『倉庫番』(以下、本家と記載)の亜種とでも言うべきアクションパズル。
プレイヤーは主人公である鬼の子供を操作し、日本を襲いに来た西洋の妖怪を退治すべく奮闘する。
ざっくり言えば、『ゼルダの伝説』のような固定画面スクロール方式のダンジョン内で、うろつく敵に対処しながら倉庫番ライクなパズルを解くゲームである。
かつて『倉庫番』にはまったというおじさん(失礼)には違った味わいの『倉庫番』として、
まだ一度も遊んだことのない若者たち(君たちはラッキーだ)には遊びやすい初めての『倉庫番』として楽しんでもらえるぞ。
(任天堂公式HPより抜粋)
特徴
本作では押して動かすのは「荷物」ではなく「岩」。
岩を「指定ポイントまで運ぶ」「押せるが引けない」「同時に押せるのは1個のみ」は本家と変わらないが、それ以外は別物と言える程のアレンジとなっている。
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指定ポイントである「地面の穴」に岩を落として塞ぐ。塞いだ所は通れるようになる。
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穴の上は主人公が通過することが出来ず、また後述する敵が湧くポイントでもある。
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本家では指定ポイントに置いた荷物は相変わらず障害物でもあるのだが、本作では逆に「通り道を確保する手段」であり、岩を消化するほど攻略が楽になっていく。画面内の穴を全て塞ぐとステージクリアとなり、再びそのステージに入っても敵は出現しなくなる。
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「詰み」などの状態になってリトライしたい場合は、隣の部屋に出てから入り直すか、セレクトボタンを押して「やり直す」を選ぶと初期配置に戻る。
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ステージクリアの際、画面内に明示された報酬が得られる。
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青い魂: 10個集めると、体力の最大値が1つ増える。初期値1→最大8。
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赤い魂: 10個集めると、攻撃力が1段階UPする。同上。
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対ボス専用武器: 主人公の攻撃力に依存せず固定の大ダメージを与えられる、使い切りの飛び道具。ボス戦に入ると自動的にこれを優先使用する。
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敵が出現する。
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ステージ内に最大4体の雑魚敵が出現する。どの穴から湧くかはランダムである為、無暗に倒さない方がいい場面も。
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倒すとアイテムを落とすことがある。「体力を1つ分回復」「敵の動きを一定時間止める」「画面上の全ての敵にダメージ」の3種類。
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また、各エリアの最後にはボスが待ち受けている。
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敵を攻撃する手段がある。
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Aボタンで「速射弾」を撃つ。連射可能であり、壁か敵に当たるまで直進する。
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雑魚敵なら1~2発で倒せるので、普段の主力攻撃である。
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Aボタン押しっぱなしで「誘導弾」を撃つ。速射弾より与ダメージが大きく、岩に当てると1ブロック分動かせる。
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その上、Aボタン押しっぱなしの間は方向キーで弾の移動方向を制御可能。言わば主人公の分身を遠隔操作して岩や敵に干渉できるという、本家からすればチートとも言える能力である。ただし制御中は主人公が動けない為、使う場合は主人公の安全を確保する必要がある。
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このように2種類の攻撃の使い道が明確に分けられている為、「雑魚敵を倒そうとAボタンを連打したら、意図せず岩を動かしてしまった」という事故は起こらないようになっている。
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岩を敵に向かって押し付けたり、段差の上から敵の頭上に落とすことでも一撃で倒せる。
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全体的なシステムは、同社のFCからSFC期における『ゼルダの伝説』シリーズを彷彿させる。
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本作は「地下牢」「山」「森」「城」の4エリアから成る。各エリアが1画面分の部屋が多数繋がった構造になっており、各部屋につき1つのパズルが配置されている。パズルは全部で100面ほど。
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中盤以降に「特定のポイントから飛び降りる」「途切れた梯子を修復する」などが可能となり、以前通れなかった場所に引き返すことで探索可能範囲が拡大する。
なお、パズルが難しい・面倒だと感じたらスルーして次の部屋に行ける。但しあまりに主人公の強化が足りないとボス戦での難儀が必至となるゲームバランスな為、ある程度はパズルを解く必要がある。
評価点
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名作パズルに加えられた、任天堂らしいアレンジ
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初代の時点で「シンプルながら奥深い」システムが完成されていた『倉庫番』シリーズだが、同時に思考パズルゲームとして極めて高難度なステージもあり、幾多の挫折者を生んだのも事実である。そこで本作はパズル部分の難易度を大幅に下げ、代わりにアクション要素を加えることで新たなゲーム性と達成感・適度な緊張感をもたらす事に成功した。操作はAボタンで攻撃、Bボタンでダッシュとシンプル。
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スタートボタンでポーズをかけ、パズルの攻略法をじっくり考えられる。またセレクトボタンで今いるエリアの全体マップが表示され、未クリアの部屋が一目で分かるなどUIも快適。ボス戦中以外なら、いつでもセーブ可能。
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初めて入ってきた方向からだと絶対に解けないが、一旦スルーして先の部屋から戻ってくると解けるステージがある等、本家のような一面完結型でないシステムをうまく使った工夫が光る。
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『ゼルダの伝説』以外にも、当時の任天堂を牽引した人気作品の要素が見られる。
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各エリアのグラフィックとBGMが醸し出す雰囲気はそれぞれ大きく異なり、それらのエリア間を往来するのはどことなく『メトロイド』シリーズを連想させる。
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仲間の妖怪や主人公の愛敬ある外見は、まさに『新・鬼ヶ島』である。
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様々なプレイスタイルに対応
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時間はかかるが全てのパズルを解いて主人公をしっかり強化すれば、各エリアのボスは秒殺できる。逆にパズルをほとんどスルーすれば劇的な時間短縮になるが、ボス戦が文字通り死と隣り合わせの超長期戦となる。それらの間を取って「回避には自信があるので、攻撃力だけ取る」「専用武器をうまく当てるのが得意なので、体力と専用武器だけ取る」など、プレイヤーの腕前や好みに応じたプレイが可能となっている。
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ボス戦中でも手前の部屋に引き返せるため、主人公の強化が足りないと感じたら仕切り直すことも可能。使った専用武器も元の所持数まで補充される。
問題点
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初心者向けのパズル部分と比較すると、ボス戦の難易度が若干高い
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主人公とボス共にダメージ後の無敵時間が長く、またこちらの無敵時間の前半中に放った攻撃はダメージを与えられない仕様のため、ゴリ押しが通用しない。
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各エリアのボスは専用武器4~7発で倒せるが、入手できる専用武器の数は「倒すのに必要な数+1~2」と余裕は少ない。専用武器で仕留めきれなかった場合、貧弱な速射弾での戦いとなる。
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一応、ここでも『ゼルダの伝説』譲りの「最初は難しいが、何回か戦ううちに攻略法が閃き撃破できる」バランスとなっているが、それでも「パズルゲームは好きだがアクションゲームは苦手」という人は苦戦するだろう。
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オブジェクト同士が引っ掛かりやすい
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本作のグラフィックは本家のような(立体要素を感じさせない)真上からの視点ではなく、高さの表現を含む描写である為、特にY座標の把握に慣れが必要。また、オブジェクト自体の当たり判定も大きめ。これらの複合要因により、下記のような事態が起こりがちである。
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岩の横を主人公や誘導弾が通ろうとした際、岩に引っ掛かって岩を取り返しのつかない方向に押してしまう
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誘導弾の制御中、当たらないと思っていた壁や敵にぶつかり撃ち直しとなる
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そもそもこの問題は「床の1ブロック単位」で管理される倉庫番要素と、「ドット単位」で管理されるアクション要素が混在することに起因している。例えば「岩を押すにはYボタン押しっぱなしの状態で方向キーを押す」など、使用するボタンを増やしてでもイライラ発生の低減に努めて欲しかったところである。
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エンディングが無い
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ラスボス撃破後、ちょっとした演出後にスタッフロールへ直行する。やや味気ない。
総評
弾を撃つというアクション要素の追加と、穴に岩を埋めると通れるようになるというパズル性の変化によって、新しい手触りのゲームに生まれ変わった『倉庫番』。
取っつきやすい難易度で、パズルゲームファンにもアクションゲームファンにもオススメできる隠れた良作である。
発売時期が時期だけに、知名度が極めて低いのが惜しまれる。
最終更新:2024年07月27日 15:05