本項目ではPSV版『VARIABLE BARRICADE』と、Switch版『VARIABLE BARRICADE NS』について併記します。
VARIABLE BARRICADE
【ばりあぶる ばりけーど】
ジャンル
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逆攻略系ラブコメADV
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対応機種
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プレイステーション・ヴィータ
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メディア
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PlayStation Vita専用ゲームカード ダウンロード販売
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発売・開発元
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オトメイト(アイディアファクトリー)
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発売日
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2019年4月4日
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定価(税込)
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通常版
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6,930円
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限定版
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9,130円
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ダウンロード版
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6,380円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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箱入りお嬢様VS超個性派ダメンズ 良くも悪くもアクの強いキャラ達
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VARIABLE BARRICADE NS
【ばりあぶる ばりけーど にゅーすてーじ】
対応機種
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Nintendo Switch
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メディア
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Nintendo Switch専用ゲームカード ダウンロード販売
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定価(税込)
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通常版/ダウンロード版
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6,930円
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限定版
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9,130円
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発売日
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2020年6月18日
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判定
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なし
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※共通項目は省略
概要
アイディアファクトリーとその子会社であるデザインファクトリーが共同設立した女性向けゲームブランド「オトメイト」の一作。公式の通称は「バリバリ」となっている。
本作はヒロインを落としたいヒーロー達と、落とされてたまるかと心の「バリケード」を張るヒロインとのハチャメチャな日々を描くラブコメディ。
女性主人公視点で男性攻略対象キャラとの恋愛を楽しむいわゆる「乙女ゲー」であるが、本作は一般的な乙女ゲーとは逆に主人公が攻略される側に回る。
そして、主人公自身は攻略されたくないという特徴的な作品となっている。
Switch版のタイトルの「NS」は「Nintendo Switch」ではなく「New Stage」を指す。
ストーリー
――出会って5秒でプロポーズ!?
名門東条家の一人娘・ヒバリの前に現れた謎の美形男子たちは、
彼女の天敵である祖父が差し向けた花婿候補だった。
ヒバリの勘は告げていた。この話、きっと裏がある。
何故、今なのか。そもそも彼らは何者なのか。
どう考えても怪しすぎる話に断固拒否の姿勢を見せるも、祖父の決定は絶対。
あれよあれよという間に別邸を与えられ、結婚を前提とした共同生活が始まった。
4人の男たちはあの手この手で彼女を口説き、婿の座を狙う。
めくるめく誘惑の日々の中、ヒバリは固く決意した。
絶対落ちてやるものか、と――
(パッケージ裏および公式サイトより)
登場人物
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詳細
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東条ヒバリ(CV:藤田咲)
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本作の主人公。名門・東条家の令嬢。17歳。一般家庭に生まれたが、両親の死後に祖父であり東条家当主である東条鷹宗に引き取られ、東条家に入る。名前のみ変更可能。
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一見、大人びた模範的優等生で学校でも憧れの的であるお嬢様だが、実はかなりの世間知らずでコミュ障気味のツンデレ娘。色恋沙汰にも疎い。
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光森壱哉(CV:鳥海浩輔)
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本作のメインヒーロー。甘いマスクの恋愛特化型美男子。26歳。スマートな大人の余裕を武器とするが、その実態はドン引き級に愛情過多且つ弄られ体質という残念なイケメンで、毎度のように主人公をクサい台詞で口説いては玉砕を繰り返す。料理が得意な為、共同生活では主夫のような役回りに。
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罪状は「結婚詐欺師(未遂)」
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石動大我(CV:岡本信彦)
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口が悪く野生的な俺様系自由人。23歳。主人公に対して容赦が無く態度も粗野でデリカシーも無い一方、面倒見が良く思慮深い一面を見せる。世界中を旅しているために見識も広く、主人公にも多くの影響を与える。しかし海外のカジノで相当スっている模様。
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罪状は「ギャンブル狂の疑い」
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黛汐音(CV:野島健児)
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モデルでも通用するほどの容姿を持ち、自身を愛する多くのパトロンを持つ美青年。22歳。ファッションや美容に精通するが、一般常識とかけ離れた独自の価値観で生きており、主人公に対しては際限なく甘えさせる一方、テリトリー外の相手には極めて無関心。そして絶対に働かない。
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罪状は「天性のヒモ」
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八神那由太(CV:下野紘)
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明朗快活で人懐っこい健康優良児。20歳。常人離れした身体能力の持ち主だが、猪突猛進且つ極めて単純な性格で精神年齢も低く、主人公に忠実なその様は飼い犬そのもの。
放し飼い野放しにすると騒動を巻き起こす。しかし「仕事モード」に入ると別人のように豹変するらしい。
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罪状は「歩く借金製造機」
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春日(CV:田丸篤志)
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主人公の幼少期から公私を支える専属執事。19歳。非常に有能であらゆる仕事を完璧にこなし、主人公には厳しく接しつつも全てを捧げるかの如く奉仕し続ける。しかし時には行き過ぎな行為に出る事も。
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ゲームシステム
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バリケードボード
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本作のシナリオは双六などのボードゲーム状の画面で表現される。個々のイベント(エピソード)はボード上のマスで表現され、イベントをクリアすると次のマスが選択可能になる形式である。ボード一つにつき一つの大きなストーリーが展開される。
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『スーパーマリオブラザーズ3』のようなワールドマップ&ステージ選択型のゲームをADVでやったようなものと思えば良い。それらのようなゲームで言えば、イベントのマスがステージ、ボードがワールドに相当する。
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ゲームを開始すると共通ルートにあたる「共通ボード」が始まる。その後、花婿候補に応じた4種類のボード(個別ルート)へと分岐していく。本作はこの5種類のボードで進行する。
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候補一人につきレベル1~3までの3つのボードが存在する3章構成となっている。しかしレベル1のボードは全員必ずプレイしなければならない。
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全員のレベル1ボードをクリアし、共通ボードの最後のマスに到達すると、そこで誰のボードに進むかを選択する事になる。以降はその選んだ候補のレベル2、レベル3のボードをプレイする事になる。
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2周目以降は候補を選ぶ場面までスキップすることが可能。バリケードバトル(後述)の結果も設定できる。
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全員のボードを全てクリアすると、そこからトゥルーエンドルートにあたる6種類目のボードに分岐可能になる。
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クリアしたイベントはタイトル画面の「GALLERY」から見返すことが可能。
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バリケードバトル
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主人公が「攻略される」関係上、一般的な恋愛ゲームのような好感度は存在せず、選択肢で上昇する主人公の「理性値」と相手側の「恋愛値」が用意されている。これらはボード毎に個別で、ゲーム全体には影響しない。
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花婿候補のボードのラストではその候補が主人公を落とそうと戦いを挑む「バリケードバトル」が発生する。「理性値」は主人公の防御力、「恋愛値」は候補の攻撃力にあたり、それに応じて主人公側の防壁と候補側の武器が変化する。
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バトルが始まると王子様姿の候補がお姫様姿の主人公の防壁を武器で攻撃し、恋愛値が理性値を上回っていれば敗北(=落ちる)。理性値が恋愛値以上であれば勝利(=お断り)となる。その結果に応じて以降の展開が変化する。
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武器は棍棒から伝説の剣まで。防壁は柵から城壁、結界まで進化する。
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RABI
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ウサギ型ロボット「RABI(ラビ)」を使って花婿候補達の様子を覗き見るシステム。候補達はRABIに録画機能が付いている事を知らないため、ありのままの姿で過ごしている様を主人公が見る事になる。
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RABIの散歩コース(部屋や廊下など)を設定すると、そのコースに応じたショートシナリオを見ることができる。内容は候補達の赤裸々な日常や男の友情など様々。最後はその録画映像を見た主人公がツッコミを入れて終わる。
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翌年に発売されたSwitch版はシステムの利便性の向上の他、後日談となる追加シナリオや新規CGの追加が行われている。
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PSV版の方にアップデートやDLCでのフォローは無いためPSVプレイヤーにはあまり愉快な話ではないが、そちらを既にクリアした人向けとして、Switch版には本編クリア済みの人なら分かる質問に答えて追加要素を全て解禁する「フルオープン」機能が備わっているため、追加要素目当てで再度周回する必要はない。
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なお、質問に間違えると春日からの手厳しいツッコミが返ってくる。
評価点
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色々な意味で濃いキャラクター
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花婿候補達は容姿だけは完璧なのにとにかく中身は残念且つ濃く、しかも全員無職。そんな彼らの織りなす物語はひたすらにハチャメチャなものになっている。
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そもそも乙女ゲーで、しかも「主人公にぞっこんのイケメン達に迫られる」というシチュエーションでありながら「誰にも攻略されたくない」「全員お断り」と思わせる舞台設定の時点で常軌を逸している。
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名家のお嬢様がどこの馬の骨とも知れぬ無職達と突然の共同生活という無茶苦茶な設定だが、その理由はしっかり作中で説明されており、何故このような事になったのか、彼らがどのような意図を以て花婿候補に立候補したのかは自ずと明らかになっていく。
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主人公との絡みだけではなく候補同士のやり取りもおかしく、見た目からは想像し難いほどのドタバタ劇が展開される。
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無論、残念なだけではなく、ルートを進める毎に彼らの優れた点や別の面も見えてくる。そんな彼らの前に主人公が「落ち」ていく様子や逆に主人公から寄り添っていく過程もまた見所である。
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また、ストーリーが佳境に入る(=主人公の気持ちが決まりつつある)頃には、選ばなかった候補達は嫉妬の表情一つ見せず潔く負けを認め、主人公達の応援・バックアップに回るのも好感が持てる。
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候補達を演じる声優陣も数々のアニメやゲームで主役級のキャラを演じた有名声優ばかりで、そんな声優陣が彼らをイケメンとしてもダメンズとしても生き生きと演じる。
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特にメインヒーローである壱哉は「残念なイケメン」を全身で体現したようなキャラであり、乙女ゲーのヒーローとは思えないほど「ダメ男」として描かれる。
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共通ルートの時点で色々とダメな姿を見せつけられる事になるが、当人のルートに入るともっとダメな内面に直面する事になる。それだけに彼のルートはハードルこそ高いものの、「自分が付いていなければ」と思わせる感情移入度の高い展開であり、彼自身も自分のコンプレックスと向き合い、成長していく様子も描く本作でも濃い内容となっている。クライマックスも盛り上がり、エンディングは綺麗な着地点とコミカルさを併せた清々しい結末を迎える。
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作中屈指の感情移入を促すキャラなので、最初に壱哉ルートをやってしまうと以降のルートで彼を選ばない事への罪悪感を抱いてしまうほど。それに加え、攻略対象としてのハードルの高さも然ることながらストーリーの根幹にも関わるルートなので、最後にプレイする事が推奨される。
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元々は別の声優が担当する予定だったが、諸事情で鳥海氏に変更されたとのこと。その結果、氏に寄せてシナリオがより派手でドロドロした方向に修正されたという。
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主人公だけではなく、候補の視点で展開されるシナリオも多く、双方共に感情移入を促進させる作りになっている。
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主人公自身もかなりキャラクターが固まっており、つっけんどんに「バリケード」を張りながら簡単に落ちたり、候補達を叱りつけたりなど作中でも多彩な表情を見せる。男性視点で見ると
中の人が初音ミクという事もあり確かに「攻略したい」と思わせるキャラで、候補達の気持ちが分かること請け合い。
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凜とした優等生のはずが、実際はかなり初心で精神的に未熟な面が多く、その主人公自身も候補達と共に成長していくのが本作の醍醐味の1つと言える。
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主人公故に普段は立ち絵は無いがメッセージウインドウの横に顔が表示されるため、表情が常に分かる。オプションで非表示にする事も可能。
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また、完璧過ぎる執事だがどこかおかしい春日を始めとする、主人公や候補以外のキャラもいずれも個性的。
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春日については攻略対象ではなく主人公と結ばれる事も無いが、実質的には5人目のヒーローとも言え、彼自身が関わる最後のトゥルールートでは実は候補達顔負けに残念であった事が判明する。
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ちびキャラが可愛い
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コミカルなイベントで表示されるスチルでは主人公達がデフォルメされたちびキャラで描かれる事が多く、更に漫符や書き文字も加えて漫画のように表現されており、よりイベントのコミカルさを強調している。
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そしてこのちびキャラがちょこちょこ動くバリケードバトルは、結果が分かっていてもつい見てしまうような微笑ましい演出となっている。
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レベル3ボードにあるルート最後のバリケードバトルでは短いながらもオープニング主題歌『Sixteen』がBGMとして流れる。ストーリー的にもクライマックスでバトルに突入するため、盛り上げる演出として作用している。
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個別エンドのスタッフロールは主人公と花婿がリビングでテレビを見る形であり、テレビには作中のスチルが流れ、それを見る二人の様子がちびキャラで表現される。スチルに応じて二人の表情が変わるのも、EDテーマ『三等星の恋』の曲調も相まって甘ったるくてGOOD。
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BGMも作風や場面の雰囲気によく合っている。
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主人公、花婿候補、春日の6人にはテーマ曲が設定されており、各々のイメージに合致しているのは勿論の事、序盤に映る候補達の履歴書に書かれた「好きな音楽」のジャンルがそのまま彼らのテーマ曲になっているのも芸が細かい。
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最も聴くであろうタイトル画面、およびバリケードボードでのBGMが変更可能なのも地味に嬉しい点である。
問題点
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キャラの濃さは悪い意味でも強烈
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花婿候補達の癖の強さは本作の長所であると同時に短所にもなり得る。当人のルートに入ると、当初の印象すら霞むようなそのキャラの本質的な欠点が浮き彫りになってくる。
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壱哉は上述した通りなので、乙女ゲーのヒーローでありながら開発スタッフをして「無理」と言わしめ、公式サイトの声優コメントでも「上級者向け」などと言われるほどに難易度が高い。それを乗り越えられれば良いのだが、その前に脱落しても仕方ないほどに彼の癖は強い。
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特にレベル2ボードのとあるシーンの姿は主人公も他の候補も誰もが引いており、プレイヤーも間違いなく同じ反応になるだろう。これを乗り越えられるか否かに壱哉攻略が掛かっていると言っても良い。
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他も、普段は常識人で大人の姿を見せておきながら自分が迫られると逃げに走る大我、価値観が独特過ぎて常識がまるで通じない汐音、根本的にズレている那由太と、徐々に見えてくる彼らのネガティブな癖はかなり人を選ぶ。
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基本的に彼らも精神的に成長することでそれらを克服していく訳だが、汐音に限っては最後まで自分を曲げることが無く終始主人公を掌の上で踊らせ続ける。女子の立場で「攻略される」という点ではそれらしく、担当声優が公言している通り乙女ゲー的な「糖度」で言えば本作で最も高いとは言えるが、単純に物語として見ると消化不良感を抱いても仕方ない。彼の「動物が苦手」という弱点も序盤以外では特に活かされない。
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そう言った関係もあり、クライマックスの盛り上がり方もルートによってかなり差がある。壱哉ルートを最後にした方が良いと上述したが、彼のルートを最初にやってしまうと以降が盛り上がらないという理由もある。
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主人公も主人公で、「なぜそこで?」というような行動に出たり、煮え切らない態度を取る事が少なくない。
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それでいて周りは
癖が強い完璧超人だらけで、なおさら主人公や花婿候補達の精神的幼さ、未熟さが際立っている。
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主人公の親友である「鹿瀬紬」は一見、お淑やかなお嬢様だが、実態は暴走オタク女子で公私共にゴーイングマイウェイを突き進むトンデモキャラであり、隙あらば主人公を百合作品ばりに愛で、しかも共同生活が始まって早々に「品定め」と称しては候補全員を翻弄して疲弊させるなど、かなりやりたい放題にやっている。気に入った人には好かれる一方、そうでなければ鼻について受け入れ難く、癖の強いキャラである。
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もう1人の友人「有村乃愛」は主人公や紬とは全く別の観点から恋愛関係の助言を送るキャラであるが、これまたズケズケと容赦無く指摘する。それが主人公や候補を動かす切っ掛けになっていくのは事実である。
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しかし、この2人はやたら設定を盛っている割には、身の上話や過去談が幾らかある程度で当人自身のドラマを描いて掘り下げるようなエピソードは無く、全ルートに渡って終始主人公を応援するセコンド…を通り越して常に正しく導く都合の良い賢者キャラになっている。
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時には主人公のみならず候補にすら助言を送る賢者ぶりで、主人公も困ったら彼女達を頼る事を繰り返すため、話の流れがパターン化・ご都合主義化している部分もある。
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春日や謎のお兄さん「カズ」や、主人公の祖父などと言ったキャラも賢者的存在ではあるが、これらは特定ルートでストーリーに絡んだり内面の掘り下げは行われている。ただ、春日に関しては別の問題が(後述)。
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全ルートを攻略するとトゥルーエンドルートに入るのだが…。
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若干ネタバレ
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ある事実が判明して花婿を選ぶどころではなくなり、花婿候補達が協力して事態の収束に当たる。各ルートで個別に明かされていた事実が全て明かされ、物語は大団円を迎える。それ自体は良い。
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しかしこのルートで判明する春日に関する事実や、その後の彼の行動などが超展開気味。元々ぶっ飛んだシーンの多い世界観ではあるが、ここはシリアスな場面で突飛な設定が飛び出すため、付いていけなくなる可能性も。また、ボードが一つしか無い関係か展開が早く決着もかなりあっさり付いてしまう。
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最終的に花婿を決める必要も無くなるのだが、候補達はまだまだやる気でしかも人数も増えてしまう。様々な出来事を経て彼らを見直した主人公だったが、その様子を見て前言を翻し「やはりこいつらはロクデナシだ。こんな人達から選ぶなんて無理」とゲーム冒頭の精神状態に戻ってしまい、(少なくとも今は)「絶対落ちてやるものか」と改めて決意する。
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ドタバタラブコメのラストらしい結末ではあるのだが、個別ルートで散々落ちておいて最後の最後でこのような結末を「トゥルーエンド」として持ってくるのは些か違和感が否めない。
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しかもスタッフロール後の後日談は春日とのものと、女子会の2つだけでトゥルーエンドなりの候補達のその後は描かれない。精々、主人公が「もっと騒がしくなった」と愚痴る程度。
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挙句、これ見よがしにある最後のマスはおまけCGの開放でしかないため期待すると見事に肩透かしを喰らい、特に後日談シナリオの無いPSV版はクリア後の虚無感が大きい。
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エンディングの水増し
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各候補毎に「MARRY」「LOVE」「ANOTHER」「BAD」の四種類のエンディングが存在する。リストだけ見ると「MARRY」は結婚まで至り、「LOVE」は恋人になる結末と思えるかもしれない。確かにそれは間違いではないのだが…。
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実は「MARRY」エンドは最初に花婿候補達と会った時に彼らの差し出したバラを取った際に見られるネタ的なエンディングであり、しかも中身は全員マイナーチェンジ。わざわざそれっぽくエンディングリストに載せるようなものとは言い難い。各ルートのハッピーエンドは「LOVE」エンドである。
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バリケードバトルの意義が薄め
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バトルの勝敗で「理性ルート」と「恋愛ルート」に分岐する、という触れ込みだが実際のところはそこまで大きな分岐は無い。バトル直後の展開が若干変わる以外では、バトルに勝ち続ける(=いつまでも意地を張っている)とバッドエンドルートに進むのと、ルート最後のバトルに負けるか否かでエンディングが「LOVE」か「ANOTHER」に分かれる程度。
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選択肢を選んだ時点で理性値と恋愛値のどちらが上がったかが分かるし、ロードやバックログで戻れば選び直せる。勝敗は簡単に操作できるので、バトルと言いつつただの演出にしかなっていない。
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また、やり直す場合にしてもボードを攻略し直す必要があり、しかも本作はスキップ速度が遅いので手間が掛かる。
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途中から完全に形骸化するRABIシステム
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ショートシナリオ自体は面白いのだが、その数が少なく、しかもボード上のマスを消化する度にどんどんシナリオが解禁されていくため、1つのルートを攻略し終わる頃にはとっくに全解禁されており、後はショートシナリオを見返すだけの機能と化す。
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ショートシナリオをコンプリートしたコースは選択肢から消える上、そのまま放置しているとなんとRABIが勝手に移動して自動的にショートシナリオを回収してくれる親切設計の所為で、コンプリートの難度も非常に低い。
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挙句、RABI自体このシステムが解禁されて以降は全くと言っていいほどストーリーに絡む事は無く、精々、主人公が外出するための口実に利用される程度でしかない。
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また、回収するショートシナリオは完全にコース依存なので、本編ストーリーの状況は関係無い。
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立ち絵の種類がやや寂しい
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主人公、花婿候補、春日には2種類のポーズ差分があるのだが、それ以外のキャラには無い上に全体的に特徴的なポーズが多いため、違和感を覚えてしまうことも。
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特に主人公の友人2人は全編に渡って登場するキャラなので気にしてしまうと特に目に付く。彼女達にも衣装差分はあるのだからポーズもあっても良かったのではないだろうか。
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バックログ関連
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作中ではいわゆるLINE的なSNS「WHIS」が存在し、ストーリー中やバリケードボード選択中にこれで他のキャラとやり取りができる(返答は固定)。
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これがストーリー中でWHISを使うシーンの場合、WHIS画面が開いている間は本来のシステムからは切り離されているらしく、その部分のテキストはバックログで見返す事が出来ない。また、WHIS使用中もバックログは使えない。
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例えば、WHISでやり取りをしながら主人公が独り言を呟くシーンだったとすると、バックログからはその独り言が丸々消えてしまう。WHIS画面を見ながら喋るシーンは結構あるので、見返したくなった時に不便である。
総評
逆攻略系というだけではなく、そこに癖の強いヒーロー達を揃えることで「落とされたくない」ヒロインの立場を体験するという実にユニークな一作。
それ故に良くも悪くも強烈なキャラが揃っており、単純に乙女ゲーとしてのハードルは上がり、ADVとしても人を選ぶ面があるのは否めない。
その分、キャラの個性が気に入った人にとってはそれを存分に楽しめる作りとも言える。
ちょっと変化球のある一風変わった乙女ゲーをプレイしたい人は手に取ってみても良いだろう。
最終更新:2022年04月07日 16:03