パーマン

【ぱーまん】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 アイレム
開発元 タムテックス
発売日 1990年12月14日
定価 5,500円
プレイ人数 1人
判定 なし
ポイント 遅すぎたゲーム化
飛ばない上に普通の人間に負ける弱いパーマン
初心者向きなアクションゲームとしてはそれなりに良い作り
藤子不二雄関連作品シリーズ


概要

1990年12月にアイレムが発売したアクションゲームで藤子・F・不二雄氏による同名の原作漫画とのタイアップ。
原作は小学館の「週刊少年サンデー」で1967年2号~44号に連載された旧作、アニメ2作目に合わせて「コロコロコミック」などで連載された新作の2種類が存在し、現行の文庫版などでは両方のエピソードを混ぜた内容となっている*1
アニメは1967年4月から1968年4月の1年間放送され、本作の元になっているのは15年を経た新シリーズ(1983年4月~1985年7月放送)。
1985年4月から「藤子不二雄ワイド」の第一部として扱われ、更に一通りの放送を終えた1985年7月からは同番組が終了する1987年10月までは既存話が再放送されていた。 そのため、アニメ放送終了から3年の時を経てのゲーム化作品である。

なおタイトルはパッケージとカートリッジ、説明書では『パーマン』で統一しているが、ゲーム中のタイトル画面のみ表記が『パーマン えんばんをとりかえせ!!』となっている。


内容

ストーリー

  • 乗ってきた円盤がマッド博士に奪われてしまい、バード星に帰れなくなったバードマン。
    パーマンはバードマンに頼まれ、円盤を取り戻しに出発した。

ゲーム内容

  • 全7ステージ構成で、各ステージを突破した先で、原作でパーマンと戦った単発キャラがボスとして待ち構えている。
    • 基本的にアクションゲームながらボスとはすごろくで戦うという一風変わった方式。まるで『ワギャンランド』のようだ。
    • ラスボスのマッド博士のみは、アクションで戦う。
    • ステージ3と5はブービーでプレーすることも可能。ブービーの方がジャンプ力で優っているのでこちらを選んだ方がいい。
  • アクションステージでは最初は基本的に向かってくる敵をパンチで倒すのだが、ジャンプしての踏みつけも有効。飛べないが…
    • 道中でパワーアップアイテムを取れば、動物に変えるビームや、衝撃波を放てるようになる。
  • アクション面でのアイテムは下記の通り。
    • 細胞変換銃
      取るとビームを放てる。ビームを浴びた敵は動物になる。ただし岩を壊せない。
    • POW
      パンチや細胞変換銃の威力が3倍になる。パンチの場合、衝撃波が放てるようになる。
    • ソフトクリーム
      体力が1つ回復。
    • ホットケーキ
      体力が全回復。
    • パーマンマスク
      一定時間無敵になる。
    • 1UP
      人数が一人増える。
    • パーマンバッジ
      ボスとのすごろくバトルで仲間を呼べる。ただし4つまでしかストックできない。
    • ゲンコツ
      細胞変換銃を持っている場合、放棄してパンチに戻る。岩を壊す必要がある場合は必ずこれが取れるようになっている。
    • バナナ
      ブービーでプレーしている場合のみ出現。一定時間、周囲をグルグル回るバリアが出現する。

豆ゲーム

  • 俗にいうミニゲームで、間違い探しとモグラたたきがある。
    • ステージ内の扉に入ると、これになる。
  • 間違い探し
    • パーマンの並んだ顔グラや一枚絵から間違っている個所を探す。
      • ステージ1はパーマンの顔グラが規則的に並んでいるため簡単だが1枚絵は細かい部分があったりするので1回でのクリアは難しい。
  • モグラたたき
    • 6ヶ所の穴からブービー、パー子、パーやんとほっかむりを付けたドロボウが出てくる。
    • 最初のステージではドロボウのほっかむりは青だけなのでミスしにくいようになっているが、後半のステージはオレンジ、ピンク、緑のほっかむりを付けてくるようになる。
      • 色からしてわかるようにパーマンの仲間3人の色と同じになっており、それに惑わされずにドロボウを一定数叩くとクリアとなる。青ならばフェイクがないので色だけ見て迷わず叩ける。
  • 豆ゲームはどちらも時間切れ、または3回のミスで失敗終了となるが、ペナルティは一切なく成功するまで何度でもチャレンジできる(成功した場合はその扉が消えて入れなくなる)。
    • クリアできるとアイテムが貰え、ここでしか貰えないものもあり、それはボスとのすごろくバトルで優位になる。
      • コピーロボット
        パーマンの体力が2倍になる。
      • いかさまサイコロ
        必ず5か6が出るサイコロ。

すごろく

  • ラスボスのマッド博士を除く各ステージのボスとはすごろくで戦うことになる。
    • 先にゴールに到達(ピッタリで到着する必要はない)するか、相手の体力を攻撃で削り切れば勝利となる。
    • 後述の通り、体力や攻撃の概念があり、単なるすごろくではなく、それでバトルしている感覚である。
  • それぞれのマス目の効果は下記の通り。
    • 無印
      攻撃を繰り出す。下記のマスも一度止まった後は無印になる。
    • POW
      強力な攻撃を繰り出せる。

    • 1回休みか相手を戻すのどちらかが発動。相手を戻すになった場合、サイコロを振って出た目の数だけ戻せる。
    • ソフトクリーム
      体力が1つ回復。
    • ホットケーキ
      体力が5つ回復。
    • パーマンバッジ
      プレイヤーがここに止まるとバッジを消費して仲間を呼び出すことができる。バッジがないと何もない(普通の攻撃もできない)ハズレマスになる。 敵が止まった場合、バッジを1つ奪われる。
      • それぞれの仲間を呼び出した時の効果はステージごとに決まっていて、回復、小ダメージ、大ダメージのいずれかが割り振られる。
      • ブービーを使っている時の1号は攻撃しかしない。

評価点

  • パーマンでの登場人物はマイナーな者まで採用されている。
    • 各ステージのボスはいずれも一度しか登場しなかったキャラである。
  • それぞれのキャラはしっかり原作やアニメでのグラフィックが踏襲されている。
    • ファミコンなので限界はあるが、アクション面のパーマンや千面相などのサブキャラなども、細かい所まで描けている。
    • ミニゲームでの一枚絵、エンディングでのパーマン仲間やバードマンたちのようなアップになった顔は、特によく描けている。それだけに後述の通り勿体ないところも…
  • BGMも3年前まで放送されていた主題歌がアレンジされている。
    • エンディングでは、それがフルに聴ける。
  • アクションゲームとしての操作性は良い方である。
    • デフォルトのパンチの有効距離が短すぎるという難点はあるがジャンプで踏みもできるし、大抵はその前に飛び道具で攻撃できるアイテムが手に入り、それが無限に使えるのであまり気にならない。
  • 豆ゲーム(ミニゲーム)はちょっとした気分転換にもなれば、パスして進むことも可能。
    • ただし、序盤はともかく後半戦ではこれを取っておかないとボスとのすごろくバトルがきつい戦いになるので必須に近い。
    • 上級者は敢えてスルーして苦しい戦いを挑んで楽しむというのも悪くない。
    • 内容自体は少々難しいところもあるが、何度でもリトライができるので初心者に優しい。
    • 難易度の上昇もステージ毎にジワジワ上がっていくような格好になっていてバランスが良い。

賛否両論点

  • 難易度自体はかなり低い。
    • 特に序盤のアクション面に関しては極端に低難度で低年齢層でもクリアする達成感を味わえる。
    • ラスボスは少々手強いが、ちょっとのコツで勝てるようになるし、このステージではアイテム自体滅多に出ないがPOWが出て衝撃波が放てるようになれば、弱くて話にならないレベルになる。
      こうなるとパーマンらしい強さといえばそうだが、後述の通りそれまでのボスとの戦いはパーマンなのに普通に負けたことを思うと、ここだけパーマンらしい強さがあっても「再現度が高い」と褒められたものではない。
    • またゲーム的観点では、手慣れた者からすればかなりヌルイゲームになっている。そんなステージがラスボスを含めても7ステージでは手応えのなさが如実。

問題点

原作ファンには疑問に思える点が多い

  • 飛ばないパーマン。
    • ラストステージ前のデモでは飛んでいるように、元々飛べるのにゲーム中で飛ぶ機会がまったくないのはパーマンらしくない。
    • そもそも原作ではパーマンは飛んで移動するのが基本スタイルであり、時としてスキを見せてマントを奪われ飛べなくなったことも何度かあったが、本作ではそのような設定はないしグラではマントもある。飛行ありきのゲーム性にできなかったものだろうか?
  • 不自然に弱いパーマン。
    • 敵はいずれも普通の人間なので、パーマンが戦って負けるはずがない。
      いくら正体の須羽ミツ夫は弱いとはいえ、その力はパーマンになると6600倍になる。戦車や兵器での攻撃だというならまだしも普通の人間相手にダメージを喰らうようなヤワな体質ではないのに、ゲームとはいえあっさり負けすぎる。
      • 特にボスとのすごろくバトルでは負けを味わうことが多い。これがただのすごろくならまだしも、設定上ではバトルをしているわけなので人間相手に戦っていると考えると不条理な負けを何度も味わうこともある。
      • 原作では、このゲームに登場するような敵とはスキをついてマントを奪われたり雪山で目が見えなくなったりしたケースでは苦戦しても、普通に満足な状態ではいずれもひとひねりだった。生身ながらパーマンを苦戦させたのは忍者の鳥助*2や、映画版で登場したサイコマンくらいである。
      • そのため、敵もそういった兵器や武器などで戦った相手の方が、その強いイメージを壊さずに済んだことだろう。
    • 何故か細胞変換銃を武器として使うパーマン。
      • 動物に変えてしまう細胞変換銃は原作ではバードマンのもので、パーマンが他人にその正体を知られた時、その悪用を防ぐためにパーマンに使われるわけであって、パーマン自身が武器として使うものではない。
        その上原作では使われそうになったことはあっても結局は最後まで使われた描写はない*3
        しかもゲームとしてもPowマークによる衝撃覇と違って岩が壊せないので下位互換でしかなく原作を壊してまで採用した割には、それならではの活躍の場が作られていない。
  • 各ステージのボスの台詞が完全に使い回し。
    • ワニザメ船長や猿蚤鳥助まで一人称が「おれ」はおかしい*4
    • ストーリーのバードマンにしても、ゲーム中のような大事な円盤みすみす奪われて部下であるパーマンたちに借りを作るようなおバカなキャラではない。

ゲーム性の面での問題点

  • すごろくのバッジマークが回復か攻撃かがノーヒント。
    • 弱攻撃に充てられたキャラだと無印マスでのパーマン1号やブービー自身の攻撃よりも弱い。
    • 回復だった場合、全快状態ならムダでしかない。
    • もちろんバッジ切れ状態で止まれば何もなく終わるのでただのハズレマスになる。
      • こんな具合にバッジを消費する代償を払っていながらこのようなハズレ同然の効果が多発するため、とどのつまりデフォルトの無印マスによる攻撃の方がマシなぐらいで特別マスならではの利点が弱い。
    • しかも、この効果の振分けはボス毎に異なり原作を見ていてもヒントがあるものではないためファン優遇要素というわけでもない。
  • ステージ6の即死ポイントが、無音で呆気なさすぎる。
    • 当該のステージでは動く岩があり、それにパーマンが挟まれると即死となるのだが、当該のケースでは無音でいきなり死ぬ。
      • もちろんファミコンでは恒例の微差で挟まれても即死なので、何か効果音があった方がそれらしかった。
      • ついでに原作の観点では、これぐらいでやっとダメージを感じる程度というのがパーマンの強さである。

総評

キャラゲーとして原作再現の観点ではアクションゲーム化したことによるバランスを取る都合上、多少弱くなることは仕方ないにしても、敵キャラを普通の人間ではなく兵器や機械主体に使うことでパーマンらしい強さのイメージを維持できたにもかかわらず、そのような発想に及ばなかった点には工夫の足らなさがある。
また原作に反して飛べない点などは飛行ありきのゲームにすることで補えたにもかかわらず、そうしていないのは言い訳ができたものではない。
かつて様々なアニメ作品がゲーム化され容量が少なかったが故に再現度が低かったり、主人公が弱かったりしてクソゲーの謗りを受けた前例はいくらでもあり当時にしても不満があったのに、再現度が高まったこの時期になってそのような点が多々見られるようでは満足な出来とはいえない。
ただし「パーマンのゲーム」と考えると不釣り合いだが1つのアクションゲームとしての出来そのものは決して悪くはなく、ちょっとしたミニゲームもあるなどこの当時のゲームらしいボリュームはある。
また、スーパーファミコン発売以降は市場の主役が交代しファミコンは初心者のエントリー向けゲームマシンという立ち位置に転換しようとしていたことを考えると初心者向けに低難易度のゲームという路線も間違いではない。


その後の展開

  • 1991年12月20日に続編の『パーマンPART2 秘密結社マドー団をたおせ!』が同じくファミコンソフトとして発売。
    • こちらではパーマンは飛ぶようになったが、ゲーム自体はやっぱり微妙な作り。
    • スーパーファミコンが完全に軌道に乗った時期ということもあって売上でも低迷し、結局パーマンのゲーム作品はこれで終わりとなった。

余談

+ エンディング
  • エンディングは原作と同じパーマン1号がバード星への留学するという終わり方。
    • 原作では仲間たちが餞別をくれる中でパー子だけは「あたしは何もあげられないけど」と誰にも見えない所へ誘い出して、今まで仲間に誰も明かさなかった正体を見せてくれるという子供漫画とは思えないほどグッとくる展開だが、残念ながらゲームではこの部分は採用されていない。
      • この展開自体は2度目の連載の最終回で描き加えられたもので、旧作では正体をほのめかす要素をちりばめつつも最後までパー子の正体は明言されなかった。制作陣がそちらの展開しか知らなかった可能性もあるが、どうせならこれも取り入れてもらいたかったところではある。
  • 上記の通りバードマンが大事な円盤を奪われて泣きついてくるおバカキャラになっていたり、またその奪った犯人であるラスボスも円盤を奪ったぐらいで「もうパーマンなど恐くはないぞ!」などとでかい口を叩きながらあっさり叩きのめされ「円盤はお前に返そう今度は自分で作るさ」などとのたまう始末で「だったら最初から自分で作れよ」とツッコミたくなるほどでストーリーはご都合主義の勢い任せな一面がある。
    • ゲーム自体は初心者向けアクションゲームとして悪くはない出来ながら、不十分な再現やゲーム化が遅すぎたことに加えて、このような粗があることも本作が名作として扱われない要因として挙げられる。
  • ボスとのスゴロクバトルでパー子が回復になるとケーキをくれるのだがパー子は近年よくある「女の子なのに料理がヘタなヒロイン」の走りでもある。
    • そのため、もしこのケーキが彼女の手作りなら回復どころかダメージを受けてもおかしくないのでパー子が家から持参したものと思われる(正体である星野スミレは金持ちの令嬢)。
  • 藤子不二雄作品は『オバケのQ太郎 ワンワンパニック』(1985年12月:バンダイ)『忍者ハットリくん ~忍者は修行でござるの巻~』(1986年3月:ハドソン)『ドラえもん』(1986年12月:ハドソン)『プロゴルファー猿 影のトーナメント』(1987年5月:バンダイ)『キテレツ大百科』(1990年2月:エポック社)『ドラえもん ギガゾンビの逆襲』(1990年9月:エポック社)といずれも、アニメ放送中にゲーム化されたが、本作はかなり遅れてのゲーム化だったため少々浮いた存在になっており、同時にソフト売上面でも振るわなかった。もちろん前月にスーパーファミコンが発売された影響を受けたのも痛手だった。
    • 原作のネームバリューは高く、メーカーも一流で実績充分なアイレムであることを考慮するとさんざんな結果と言って差し支えない。
    • パーマン放送時期のリアルタイム作品は、藤子作品以外でも『キン肉マン』『ゲゲゲの鬼太郎』『北斗の拳』『タッチ』といった様々な作品がアニメ放送中や終了直後にゲーム化され、クソゲーも少なくはなかったながらソフトの売上ではほぼすべてが及第点な成果を上げた点からしても、やはりリアルタイムでの商品展開は大事なことといえるだろう。
  • 本作がゲーム化されたことで「藤子不二雄ワイド」での放送作品の中では『エスパー魔美』のみがゲーム化されなかった唯一の作品となった。
    • しかもこの作品は1987年4月~1989年10月と終了はほんの1年前でしかなく、後継番組や関連番組にあたる「藤子不二雄ワールド」「藤子不二雄劇場」(ただし双方とも放送の時間は異なる)も含むと、最も直近まで放送されていたものである*5
  • 移植などはまったくされていないが、パーマンのネームバリューからして今後の可能性は決してゼロとは言い切れない。
    • だが平成期以降、言い回しが問題視された「言葉狩り」の影響は藤子作品も受けており「狂う」の巻き添えで「マッド」という文言が引っかかっている*6こともあってラスボスの名前は変えられる可能性がある。
  • CMではパーマン役の三輪勝恵氏がナレーションをしている。
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最終更新:2024年04月13日 14:01

*1 違いとしてはパーマン5号「パー坊」の存在、一部設定の変更、作風の変更など。

*2 一応、刀や手裏剣を使っていたので一概に生身ではないが

*3 パーマンへの罰に使われるものは他に本当のパーにしてしまう「脳細胞破壊銃」というのもあるが、これも使われたことはない。

*4 忍者猿蚤鳥助は「拙者」で、ワニザメ船長は「わし」だった。

*5 『パーマン』は「藤子不二雄ワイド」枠と同時の1987年10月で終了。『忍者ハットリくん』は「藤子不二雄劇場」に移行後(1987年4月から)の1987年12月に終了。『プロゴルファー猿』は「藤子不二雄ワールド」移行後(1987年10月から)の1988年6月に終了した。

*6 例えば『ドラえもん』でもひみつ道具「マッドウォッチ」が「驚時機(きょうじき)」とムリムリナ変名がされている。