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【こんぱうんど】

ジャンル ローグライトVRFPS
対応機種 Windows (SteamVR)
Meta Quest*1
対応VRヘッドセット HTC Vive
Oculus Rift/Meta Quest *2
Valve Index
Windows Mixed Reality
発売元 Bevan McKechnie
開発元 notdead
発売日 2022年12月9日(Quest版)
2022年7月20日(SteamVR版 v1.0)
2018年5月15日(SteamVR版アーリーアクセス)
備考 Steam版のみ体験版あり
定価 1,980円
プレイ人数 1人
レーティング IARC:12+ (12歳以上推奨)
判定 良作
ポイント VRでは珍しいガッチリとしたレトロな高難易度シューター
Hotline Miami』や『Wolfenstein 3D』、『Duke Nukem 3D』の香りがする、レトロな雰囲気満載

概要

Unityで開発されたローグライトVRFPS。FPSのサブジャンルで言えば、『DOOM (2016)』『Dusk』『Cultic』『Ion Fury』と同じように『Boomer Shooter*3』にカテゴライズされる本作。
開発は2016年からHTC Vive向けソフトとして始まっており、2018年にアーリーアクセス開始、2022年に正式版リリース……と、長い年月をかけて作り込まれた。

特徴

ローグライトシューターであるが故、マップはすべて自動生成。 下水道、研究所、オフィスなどマップにテーマが存在し、1テーマに2層フロアが存在する。
その1フロア目にはランダムスポーンされた武器、2フロア目には中ボスが存在する。 ローグライト故、一度死んだら最初の階層からやり直しである。その際、マップ生成のシード地が同じではない限り*4マップの構造は変化し続ける。
プレイするたびに武器などが開放される場合があり、その追加要素は死んだあとも持続される……が、くり返し遊んでもステータスが上昇するわけではなく、クリアできるかはプレーヤーの腕前次第である。

本編とは別に、練習用に銃の撃ち方をゆっくり練習できる「シューティングレンジ」と、敵と実践的な撃ち合いが出来る「プラクティスゾーン」の2つがあり、それぞれのプレーヤーに合わせたやり方でゲームの練習ができる。

評価点

多彩、そして作り込まれた武器

  • 『H3VR』や『Gun Club VR』といった銃シミュレーターを除き、ゲームとしてデザインされたVRシューターとしては武器の数は非常に多い。
    • ただ数が多いだけでなく、 「レーザーピストル」「サブマシンガン」、「アサルトライフル」、「スーパーショットガン」 ……といったVRFPSで標準的なものから、「ロケットランチャー」、「レールガン」、「オートショットガン」といったVRFPSでは割りと希少な武器、はたまた「音速パルスガン」、「弓」……などかなりバラエティーに富んでおり、プレーヤーを飽きさせない。
      • 武器の手動リロードも非常に手が込んでおり、初期ピストル以外は、マガジンを落とす、つける、銃を弾いてマガジンの蓋を閉める……などリロードにもかなり造り込まれており、武器への所有感が湧く。『Half-Life: Alyx』や『BONEWORKS』と比べても、武器の作り込みに並ぶどころか、上回るまでさえある。


多彩な敵キャラクター

  • ザコ敵一つ挙げても「プラズマ兵」、「サブマシンガン兵」、「ショットガン兵」、「ドローン」、「カミカゼ・ドローン」、「タンク」、「ストーカー」と、AIはシンプルながら数多く、攻撃の手段もバラエティに富んでいるため、戦い甲斐がある。
    • それだけでなく、一周は短めなシューターながら、中ボス戦、ラスボス戦もしっかり備えており、しかもどれも歯ごたえがあるため、気が抜けないのもポイント。


レトロゲームに迷い込んだような雰囲気

  • 80年代……90年代などのレトロな世界観をベースとしたVRタイトルなら『Oculus First Contact』、『BONEWORKS』などが挙がるが、ローポリなモデル、ドット絵なテクスチャ……といった要素を含んだ、レトロゲームの雰囲気を再現したVRゲームは本作を除いてあまりないだろう。
    • Duke Nukem 3D』のように色々と触ることができるボクセルオブジェクト……『Wolfenstein 3D』のような迷路探索をして進むワールド……少しレトロゲームとは違うが、『Hotline Miami』のネオンな雰囲気と高難易度……と、レトロゲームの特徴をしっかり持ちながら、リロードといった面でVRという先端技術を利用してつくられた本作には両者の良い特徴が出ている。

様々なゲームモード

  • 武器を2・3個しか持ちはこべない、でも敵も弱め……な本作に慣れるためのデフォルトモードから、『初代DOOM』のように武器をたくさん持ち運べる・大量の敵・高速移動といったオールドスクールモード、『Hotline Miami』のように敵もプレーヤーも一撃死のインスタントデスモードなど、好みや気分に合わせて様々な遊び方ができる。
    • それぞれに合わせて立ち回りなどが大きく変わるため、かなりプレイ感覚は変わってくるのも特徴。

高いリプレイ性

  • 本編を一回クリアしても、先述の多彩な武器や、様々なゲームモードに加え、スコアアタックやマップシードなどのクリア後の様々な要素が存在し、繰り返し遊べる。20ドルの値段としては十分すぎる程のボリュームである。
    • また、ハードモードをクリアすれば、最高難易度のスパイシーモード……実績をすべて開放すれば、ミニガンが開放されるなど、非常にやりこみ甲斐がある。

VR酔い設定

  • 一応VR上級者向けに設計された本作だが、VR初心者にも遊べるよう配慮のためのVR酔い対策が施されており、テレポート移動が存在し、上級者向けにスムースターン機能も存在。幅広いユーザーで、難易度はともかくちゃんと遊べる。

軽い

  • レトロなグラフィックから分かるよう、本作はVRゲームの中では極めて軽い部類に入る。
    • ヘッドセットにもよるが、VR Readyに満たないGTX 1050/Steam Deckでもパフォーマンス不足なく快適に遊べる。

バリエーション豊かなマップ

  • 先述したよう下水道、オフィス、研究所、ビジネスビル……など、マップのロケーションは豊か。
    • テーマごとにそれぞれ独自のボスキャラクターがいるなど、進み甲斐がある。

劣化がほぼ無いQuest移植

  • GTX 1060を搭載したVR ReadyのゲーミングPCとの極めて大きい性能差ゆえ、VRゲームでは基本避けられないQuest向けタイトルのグラフィックの劣化。
    • 本作はQuest 2移植版とPC版で、軽いがゆえにグラフィックの差が極めて少ない。ネイティブ4K・80fps・2x MSAA、TEAA*5で安定した動作が可能。敵が全方位からやってきて、ワイヤレスでケーブルに引っかかる心配なく遊べるため、QuestユーザーであればSteamVR版ではなくQuestネイティブを選択したほうが良いだろう。
  • ただ、PC版と差異が無いわけではなく、操作性に微妙な変更がある。指が動かない。パワーアップエフェクト中に画面の端に色付き・透明の縁が付かない。*6、という少しの変更がある。

賛否両論点

難易度が高い

  • 本作のロゴにA Hardcore VR Rougelite FPSがついてるから分かる通り、本作の難易度はVRゲームの中でも高め。決して一筋縄ではいかない。
    • 比較するならば本作デフォルトの最低難易度、"EASY AS PIE"は『Half-Life: Alyx』の"ハードモード"を上回るほど。
      • ローグライト設定ゆえ、死んで何度もリトライ……という手段は通用しないため、慎重かつ大胆なプレイが求められる。
    • 「高難易度で歯ごたえがあって良い」か「難しすぎる」と捉えるかはプレーヤーの腕前次第か。一般的なプレーヤーであれば、イージーモードで一周クリアに10時間以上はかかるだろうか……。
      • 何回もプレイして死んでいくうちに武器も新モードも開放されていくため、難易度は少しではあるが軽減される。とはいえ、クリアできるか、クリアできる時間は完全にプレーヤーの腕前に掛かっている。

問題点

好きなタイミングでセーブが出来ない

  • 本作のセーブは一面をクリアしたあとでエレベーター前のレバーを引くことのみであり、それ以外のセーブ手段は存在しない。
    • そのため、途中でプレイを中断したいときにはやや不便。

時にバランスがやや悪い

  • 多彩な武器があるとは言え、癖の強い武器、使えるシーンが限られる武器も多いことも意味するため、武器のランダムスポーンで状況次第ではあまり使い物にならない武器を引いてしまうこともある。
    • 雰囲気的にもゲームバランス的にも初代『Hotline Miami』らしいといえばらしいのだが……
      • ゲームモードに同じように言え、武器のアンロックに必要な即死モードはかなり難易度が高かったり、弓モードでは武器の追加が弓以外に無い上に、テンポが早い本作の戦闘故、おまけ程度でしか無い。

特定の武器のアンロック条件が厳しい。

  • ある武器で『即死モードでキャンペーンを一回でもクリアする』という解放条件がある。
    • ただでさえ難しいゲームなのにもかかわらず、一回でもダメージを受ければ即死の更に高難易度なマゾヒスト向けな難易度であるため、達成は非常に難しいだろう。
      • そしてミニガンに関しては、実績完全解除を求められるほど。

総評

VRでは珍しい、高難易度でハイスピード・そしてレトロゲーム風味な本作。グラフィックこそローポリでドットではあるが、ゲーム性は一級品。
銃・敵などが、しっかりゲームとして楽しめるよう造り込まれており、ゲーム性が浅い傾向にあるVRゲームに対し、一線を画した。
Quest 2単体でも遊べるため、ゲーム不足であまり使わなくなり、ホコリを被ってしまった人でも再び手にとって遊んで欲しい良作。

余談

  • シューティングレンジを見れば、別のVRゲーム、『Hot Dogs, Horseshoes & Hand Grenades』別名「H3VR」とのコラボポスターが見える。
    • 実際、そちらにもCOMPOUNDのプラズマピストルがカメオ出演している。
  • Questストアでスタンドアロン動作可能なアプリでユーザー評価のレビューで★4.81という高い評価を受けた。これはQuestで販売されているゲームの中で2023年時点で8番目に高い数字である。
    • Steamでの評価も1700件近くのレビューのうち、97%が好評で「圧倒的に好評」で非常に高い評価を得ている。これはSteamで販売されているVRタイトルの中で17番目に高い数字である。(SteamDB調べ)

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VR FPS
最終更新:2023年11月03日 21:56

*1 初代Quest非対応。プレイの際はSteamVR接続・もしくはSideQuest等特殊な手段を通せば起動可能

*2 初代QuestはQuest LinkでのPC接続必須。Quest 2、Quest Proでは単体動作可

*3 自動回復なし、一度に多くの武器が使える、カバー無し、ストーリー浅めというゲーム性重視のFPS。Call of Duty、Battlefieldなどの現代戦シューターと区別される。

*4 シード値の要素はクリア後に開放される。

*5 Texel Edge Anti-Aliasingの略。Compoundのために独自に開発されたアンチエイリアス効果。テクセルを基準とし、アンチエイリアスを行う。こうしたレトロ3Dゲームのテクスチャを潰さずアンチエイリアスがかかる。

*6 これはAndroidの3Dレンダリング仕様で、半透明のテクスチャなどを上手に扱えないという問題から。