本記事は、最初に発売された3DO版を解説しています。
後発の各移植版は差異が大きいためご注意ください。


オーバードライビン

【おーばーどらいびん】

ジャンル レーシング
対応機種 3DO interactive multiplayer
発売元 エレクトロニック・アーツ・ビクター
開発元 エレクトロニック・アーツ・カナダ
発売日 1994年12月16日
定価 8,800円 (税抜)
プレイ人数 1人
レーティング 3DO用審査 E(一般向)
備考 後にMS-DOS/PS/SS/Windowsに移植(内容は別物)
日本向けSS版は大きなローカライズあり
後にPS版も類似のローカライズ版が発売
判定 良作
ポイント 後に老舗シリーズとなる『Need for Speed』の第1作
臨場感を徹底追求したドライブシミュレーター
スピード感よりリアリティを重視
実在のスポーツカー8台を使いこなせ
原題の通り、最高速チャレンジが熱い
Need for Speedシリーズ

概要

エレクトロニック・アーツから1994年に発売された3DO用レースゲーム。
日本語版は独自の邦題が付けられているのだが、原題は『The Need for Speed』。実は今作、言わずと知れたあの老舗レースゲームの一作目である。

3DO社代表がEA出身であったためか、同社は3DOの主力としてハードに大きく貢献したメーカーとして知られている。
(代表作は『ショックウェーブ*1』『ロードラッシュ*2』『痛快ゲームショー ツイステッド』『バーチャルスタジアムシリーズ*3』など)
特に今作は3DOにおけるレースゲームの金字塔として高く評価されており、欧米・日本問わず3DOの名作タイトルの一つとして名前が挙がりやすい。

今作はアメリカのスポーツカー専門誌『Road & Track』とタイアップして開発されている。
ゲーム内では8台の実在するスポーツカーが運転可能となっているが、これらは同誌の監修のもと、マシンごとに詳細な設定が施されており、開発陣のこだわりが詰まっている。


特徴

  • システム
    • 今作は主観視点・一方通行型のレースゲームである。
    • レースの舞台は3セクションで構成された公道。CPU1台とレース対決を行い、ゴールまでの総計タイムで勝敗を競う。
      • 難易度EASY時はセクションが2つに減少する。
    • 道中では一般車両(いわゆるアザーカー)が通行の邪魔となり、道中のパトカーに見つかると追跡される。
    • アザーカーはただの壁ではなく、衝突するととんでもなく吹っ飛ばされてタイムロスとなる。好記録を残すには、是が非でも避けなければならない。
    • パトカーに捕まると違反とみなされ、一定回数捕まればその場でゲームオーバーとなる。どれだけ優勢だろうと強制終了させられるので、高難易度プレイ時に違反を切られると気が抜けない。
      • パトカーの位置は画面左上のセンサーで把握可能。距離が近づくにつれ、アラームがけたたましく鳴り始める。
      • 低速移動していると見逃してもらえるが、律儀に違反を避けると大きなタイムロスになるため、基本的には高速で逃げ切らなければならない。
    • 残機制を採用。
      • マシンは4回までクラッシュが許されており、それ以上クラッシュするとレースは棄権扱いとなる。
      • クラッシュせずに一定区間を走り抜けると、残機が追加される。
  • 最高速チャレンジ
    • 完走時にはクリア時間だけでなく、平均時速と最高時速も算出される。特に最高時速は今作の肝と言っても過言ではなく、『オーバードライビン』の魅力の一端として認識されている。
    • 今作は最高速度に達するまでの時間が長く、速度の上昇が攻略のカギを握る。カーブ時や敵避け時、いかに減速しないよう気を使うかが基本で、プレイヤーの運転技術と、敵避けに対する柔軟な対応が結果に直結する。
    • 今作は一回あたりのレース時間が長い上、タイムは運に左右されやすい。敷居が低くて直感的にもわかりやすい最高速チャレンジは、思わず挑みたくなるやりこみ要素に仕上がっている。
      • 特に日本のゲーム雑誌では、ちょっとしたムーブメントが起きたことも(後述)。
  • ゲーム内容
    • コースは全3種。
      • CITY:ハイウェイを駆け抜ける基本的なステージ。対向車がなく、地形もカーブも単純なため、初めて遊ぶにも記録を目指すにももってこいのコースとなっている。
      • ALPINE*4:峠道を登り降りするコース。地形が邪魔で前が見えなかったり、下り坂で急加速したりと、障害は多い。今作の最難関コースである。
      • COASTAL:海沿いの道を優雅にクルージングするコース。気球の見える海や林道などを通過することになり、ここだけの旅情に溢れている。
    • マシンは8台。いずれも実在のスポーツカーである。
+ 登場車一覧
  • Lamborghini DIABLO VT
    • 何かと激動の時代を生きたランボルギーニ社による4WDマシン。
    • デフォルト設定のマシンだけあり、性能にクセがなく使いやすい。最高速も今作のトップクラスに入り、「スピードの限界を目指す」という今作の基本に自然と触れられる。
  • Porsche 911
    • 丸いフォルムが印象的な、1960年代生まれの今作最古参。
      • ちなみにかつてのポルシェは、EAがゲーム出演の独占契約を結んでいたことでも知られている。
    • ランボルギーニとうって変わって、速度控えめな代わりにコントロールがしやすい。デフォルト位置から順番に選ぶことで、マシンごとの個性を自然に理解することができる。
  • Chevolet Corvette ZR-1
    • 43台のテストカーを犠牲に作られたという、4代目コルベットの最強形態。
    • 最高速は比較的大きいものの、クラッシュした際はどうしようもないくらいスピンするリスキーな一台。
  • Ferrari 512TR
    • 赤い車体が印象的な、最新型のフェラーリ(当時)。
    • ライバルカーはデフォルトでこれに設定されている。変える機会はそうそうないので、おそらく今作で一番多く目にするマシンである。
    • ランボルギーニ以上にとんでもない速さで爆走できるが、制動が厳しめ。エンジン音も暴力的で、えもいえぬスリルと恐怖を味わいたい人におすすめである。
  • Dodgh VIPER RT/10
    • 1991年という比較的新しい時期に生まれたばかりのマシン。日本で唯一輸入されたダッジ・バイパーでもある。
    • ギアチェンジまでの速度域が広く、MTでも扱いやすいマシン。どうしてもHARDがクリアできないときは、これを使うと突破口が切り開けるかもしれない。
  • Acura NSX
    • ホンダによる、ドライバー意識をモットーに開発されたスポーツカー。
    • 最高速は控えめだが加速は速い。一方でギアチェンジの回数は増えやすく、MTだと意外に苦戦を強いられることも。
  • Mazda RX-7
    • サバンナの異名で知られる四輪駆動車。
    • 加速が遅く、ギアチェンジの頻度も多くなるなど、今作では下位に入る性能。それだけに勝利すると達成感を得られる、上級者向けのマシンである。
  • Toyota SUPRA TURBO
    • 名前の通り「上級スポーツカー」として販売された、トヨタの代表的なフラグシップカー。
    • 同じ日本車のRX-7とは対照的に、重量感があって最高速も高い。エンジン音も重々しく豪快なので、重量級マシンのロマンに惹かれる人におすすめである。
  • オプションではアンチロックブレーキ*5・トラクションコントロール*6のON/OFF切り替えが可能。
  • 難易度はEASY/NORMAL/HARDの3段階。
    • 今作はAT/MTの設定が無く、代わりにNORMAL以下はAT、HARDはMTで固定となる。
    • ただ操作方法が変わるだけでなく、露骨に敵の強さも変化するため、HARDは全くの別ゲーとなる。

評価点

  • 臨場感たっぷり、リアリティを突き詰めたレースシーン
    • 今作は運転席から低めの視点でゲームが展開され、迫力あるドライブ体験を味わうことができる(第三者視点にも切り替え可)。
      • 車内アングルの都合、視線の上下は大胆に隠れているが、あまり狭苦しさは感じさせない。かえって実車のプライベートな雰囲気が色濃く表現されている。
      • 同様のレースゲームはアーケードゲームの『ラッドモビール』などが先駆けて実現していたが、今作は家庭用ゲーム機でいち早く同じ体験を提供している。
    • レースゲームとして見ると、今作のゲームスピードは控えめな方である。しかしその適度な重さが逆にリアリティを演出しており、ユーザーからの評価は高い。
      • 今作で求められるのは反射神経よりも、重みのある車体をテクニカルに扱う技術力である。ハンドルを切ってから曲がるまでにはちょっとした時間差があり、大きな車を自分で動かす感覚が味わえる。
      • 単にスピード感を求めたレースゲームには無いリアリティがあり、今作はもっぱら「シミュレーター要素に力の入ったレースゲーム」と評されている。
    • なおスピードが遅めと言っても、決して疾走感の無いゲームではない。実車相応に高速なゲーム展開はきちんと保証されている。
      • 速さを求めてアザーカーを的確に避けるには、画面の奥を見て微妙なボタン操作を決めなければならない。一瞬の判断力が成否を分けるゲーム性は十分に保証されている。
    • カメラワークの作り込みも入念で、リアリティの演出に一役買っている。
      • 微妙な地形の傾きがカメラの揺れに反映されたり、ハンドルを切った際に車体が反動でほんの少し戻ったりと、細かい部分までこだわりが見られる。おかげで没入感は高く、3Dゲーム黎明期としては中々の出来。
  • レンダリング3Dの質は3DOの中でも上位に入るクオリティ。
    • 3DOは自由にポリゴンを扱えるようになった最初期のゲームハードだが、それゆえ高速な処理はまだ難しく、滑らかな表現を実現したメーカーは稀であった。
    • 今作はゲーム内のポリゴンが違和感なく動き、先述したスピード感を十分に感じられるクオリティに仕上がっている。
      • 処理落ちはほとんどなく、次世代ハードのアドバンテージを活かし切っている。
  • 敵車は1台だけだが、AIがアグレッシブでなかなかのやりごたえ。
    • 隣接すると積極的に追い抜こうとしてくる(しつこくクラクションまで鳴らしてくる)ほか、逆にこちらが抜きたいときも露骨に妨害を図ってくるなど、妙に人間臭くて立ち向かいがいがある。
      • 厄介なだけあって、妨害を上手く決めたり、アザーカーに衝突させて切り抜けたりして上手く巻いたときは爽快である。
  • スポーツカーの監修はかなり本格的である。
    • 車内のグラフィックは実車のそれを忠実に再現しており、スピードメーターやギアのグラフィックは8台それぞれに個別に用意されている豪華仕様である。
      • それどころか、エンジン音や走行開始時のタコメーターの動き、果てはギアを切り替えた時の効果音まで差別化されている入念っぷり。
    • 単に走らせるだけにとどまらず、今作はスポーツカーの電子カタログとしても謙遜ない仕上がりである。
      • 8台のスポーツカーには全て音声解説付き。ゲームと無関係な専門用語が飛び出す本格的な内容で、レースの合間にボーッと聞いているだけでも飽きさせない。
      • 3DOらしく、各マシンには実写のプロモーションムービーが用意されている。マシン選択画面からいつでも見られ、ゲームだけでは表現できなかったカッコいい走りも存分に味わえる。

賛否両論点

  • 自動難易度調整を搭載
    • この手のシステムには賛否が付きものだが、今作の場合もメリットとデメリットがはっきり現れている。
      • この機能はHARDではそこまで発動せず、NORMAL以下で顕著に働く。
    • 今作のライバル車は、プレイヤーと差がつきすぎないように補正がかかるシステムとなっている。
      • 距離がある程度近い時は普通の性能となるのだが、一定距離離れると実力が均衡するようにスピードが変化する。ライバルが一定以上の距離を引き離すことはなく、逆にライバルが一切追従してこなくなるような事もない。
    • このため、今作はレース中に大きなミスをしても勝ち目が消えにくく、最後までチャンスが残された親切設計となっている。
    • 逆に自分が有利な状況でも、少し気を抜けば追い抜かれてしまうため、常に緊張感のある展開を楽しめる。
    • 裏を返すと、敵が自分に合わせて動いてしまい、実力を発揮している感触が薄れるのが難点である。
      • 特に、戦況によってはライバルがとんでもない速度で追い上げてくるケースもある。最高速が遅いマシンで先制すると勝ち目が無くなり、理不尽な思いをすることも多い。
    • 補足しておくと、マシンごとの強弱はある程度差別化されており、全くゲーム性が無くなるほどではない。

問題点

  • 主観視点でのプレイ中、HUDが一切表示されない。
    • 具体的に言うと、現在速度は背景に書かれたスピードメーターでしか判別できず、ギアに至っては確認する手段がない。
      • 一応、ギアチェンジ時には画面右下で切り替えアニメーションが流れるのだが、いちいち現在のギア数をカウントするのは困難を極める。
      • 特にAT時、減速でギアが一気に下がると今の設定がわからなくなる。
    • どうしてもギアを確認したいときは主観視点を解除し、第三者視点に切り替えなければならない(このときはHUDが表示される)。
      • しかしカメラが切り替わる都合、通行量の多いタイミングでは危険すぎて切り替えできず、やはり不便である。
    • 現在速度が背景のメーターでしか見られないのもかなり痛い。
      • 今作は最高速の追求がやり込み要素として評価されているのに、具体的な数値が見られないのは何とももどかしい。
      • 特にカーブ時はハンドルが邪魔でメーターが見えない事があり、MTの場合はギアチェンジの妨げになる。
  • 隠しコマンドを使わない限り、アザーカーやパトカーを消すことができない。
    • このコマンドを知らない限り、記録を目指すとどうしても運が絡んでしまう。
    • しかもこのコマンドはゲーム内で明かされないうえ、使用中は結果を保存することができない。
  • モード数は控えめ
    • 今作はライバルカーのレースと1人用タイムアタックのみ収録されており、コース数もわずか3つという、当時の業務用レースゲームのような規模に収まっている。
    • 『Need for Speed』シリーズはカスタマイズ要素もウリとされているが、今作はまだ実装されていない。
    • また難易度調整とAT/MT設定が一緒くたにされているのも不便である。
      • NORMAL(AT)とHARD(MT)では難易度差がとてつもないため、「ATで最高難易度の練習をする」「低難易度かつMTでカジュアルに車種の違いを味わう」といった遊び方には向いていない。
  • ゲーム中のBGMは無い。
    • 寂しい時は近くに音楽再生機器を用意しよう。
  • メニュー画面は「UIの悪い見本」と言っていいレベルで出来が悪く、慣れが必要となる。
    • 画面によって決定ボタンがAボタンだったりPボタン(他機種でいうスタートボタン)だったり、項目の選択に左右キーが使えずいちいちLRボタンの使用を強要されたり、ライバルカーの項目だけ画面遷移が無かったりと、統一感がなく混乱する。
      • それでいて、操作の割り当てられていないボタンを押してもSEが鳴るため、どういう操作が行われたのか直感的にわかりづらい。
    • ちなみに、日本語版はこれでも改善された方である。
      • 日本語版はメニューの各項目に「カーセレクト」「オプション」などのテロップが表示されているが、原語版はそれすらなく、写真が淡々と並べられているだけだった。おかげで説明書を読まないと何をすればよいのかわからない始末である。
  • ゲームオーバー時に煽ってくる警察が妙に棒読みで、なんともシュール。専門外のゲームスタッフが読み上げたのではないかと思えるくらいに演技がひどい。
    • 結果的に煽り度が増しており、ゲームオーバーならではのペナルティとして上手く機能しているかも……?

総評

元来3DOは「既存のゲーム機や映像ソフトになかった新たな体験を提供する」というのが売りであった。
今作はそのアンサーを打ち出した、渾身のソフトの一つと言えるかもしれない。

今作は処理速度の限界を逆手に取り、リアリティの徹底追求に舵を切っている。
取材を基にした実車再現要素、カメラや操作感のこだわりが惜しみなく盛り込まれており、プレイヤーは家の中にいながらドライブ感覚を味わうことが可能。
「体験」を突き詰めた方向性は、起動時に表示される「A 3DO Experience from Electric Arts」というメッセージにも現れている。
グランツーリスモ』に先駆けること3年、実車再現に力の入った本作は、世界中のユーザーから高い評価を獲得した。

今作の完全移植は存在せず、3DOを入手した際に優先的に購入推奨される作品の一つである。
可能であれば大きめの画面で、好きな音楽をカーステレオ代わりに流しながら遊んでみよう。


余談

  • 3DO版発売当時、雑誌『3DOマガジン』の編集部宛には、今作を手に取ったプレイヤーによる最高速記録が特に募集していないのに次々と届いた。
    • 文字通り、あまたのプレイヤーが「Need for Speed」の名の通り、速さの探求に魅入られたということなのだろう……
    • 完走タイムではなく、あくまで「最高速度」であるところに今作の特異性が現れている。
    • 最終的な記録は327.2km/h(約203.3mph)であった。
  • 今作のルーツは、EA(と当時のAccolade)が出したPCゲーム『Test Drive』シリーズである(米誌『Play Station Magazine』1998年5月号のインタビューより)。
    • 開発スタッフの一部は、『オーバードライビン』にも参加している。
    • こちらも1987年に第1作が出てから現在の『Test Drive Unlimited(シリーズ)』に至るまで多くのシリーズ作が出ている。
    • 画面構成やゲームシステムはこの作品が基になっており、実在のスポーツカーを使用しているのも同様である。
      • 登場している車は、今作で運転できる車の先祖にあたる車種も多い。
  • リアリティを重視した作風にもかかわらず、ケレン味全開のクラッシュ描写が印象的。
    • 今作はアザーカーやパトカーに少しでも接触すると、縦に180度回転してひっくり返ったり、横に360度スピンしたりなど、『マリオカート』さながらの大胆なアクションを見せる。
      • あれだけカメラワークや微妙な動きにこだわっておいて、ここだけ物理法則ガン無視なのはシュールそのもの。
      • これらの挙動は移植版も同様だが、ゲームスピードが異なるせいかそこまで違和感はない。3DO版のみ何とも言えない雰囲気に仕上がっている。
    • ふざけているのはスタッフも承知の上らしく、画面に映る車すべてを強制的にふっとばす隠しコマンドまで用意されている。
      • コマンドが成立すると、ボタンひとつで各車が猛烈に回転し、重力そっちのけで左に右に吹っ飛んでいく。負けが続いて嫌になったらこのコマンドでストレスを発散すべし。
  • 作中のパトカーはプレイアブル車両同様に実在する。
    • このFord Mustang SSPは、前年に出たばかりの第3世代にあたる。
      • 警察に捕えられた際のムービーシーンでも実物が使用されている。
  • 原語版ではレース終了後にライバルカーのレーサーが語りかけてくる要素があったが、日本語版では何故か廃止されている。
    • これによりメニュー画面の構成も変わっており、ライバルの顔が描かれていた場所にはライバルカーが配置されている。

その後の展開

ユーザーから熱い支持を得た本作は、EAの人気シリーズの一角として同社を支えていく事になる。
後発作品やシリーズ全体の詳細はNeed for Speedシリーズを参照のこと。本項ではシリーズ1作目と関わりの深い要素のみ解説する。

  • 移植版
    • この1作目はPC移植を挟んだ後、PSとSSに移植されている。
      • 特に1996年の『オーバードライビンDX』(PS)はハードの普及率からしても、一番多くの人が手にしたバージョンと思われる。
      • この他、Atari Jaguar CDにも移植される計画が1995年のE3で発表されていたが、実現はしていない。
    • これらはタイトルこそ3DO版と同じで、コースや車種も引き継がれているが、ゲーム性は全くの別物。移植というよりはリメイクと言っても過言ではない。
    • 最も大きな変更点は格段に向上したゲームスピード。
      • 実車の重量感を意識した3DO版とはうってかわって、移植版はF1レースさながらの高速展開が繰り広げられる。クラッシュ時の停止時間も短く、ゲームテンポは爽快なものとなった。
      • 同ジャンルの作品で例えるなら、『マリオカート』と『F-ZERO』くらいにスピード感が異なっている。
      • ただしゲームスピードの向上によって難易度がかなり上がっており、ライバルの強さも3DO版のHARD相当に固定されているため、1人プレイ時のゲームバランスは悪化している。のんびり最高速を目指す敷居は高くなり、操作が軽くなったことでリアリティが失われるなど、一概に改良とは言い切れない変化となっている。
    • この他、以下のような変更が行われた(PS版を元に解説)。
      • コースの追加。公道だけでなく、新たにサーキットも走れるようになった。
      • HUD表示、レース中BGM、UI構成など、本記事の問題点で挙げた不備は軒並み改善されている。
      • モード数も増え、新たにトーナメントや8台対戦、対人戦ができるようになった。特にPS版は、対戦ケーブル*7に対応した数少ないソフトの一つである。
      • スピン後の復帰が容易になった。3DO版はギアをバックに切り替え、実車の発進さながらに慎重なリカバリーをしなければならなかったが、移植版はその場で車体の向きを変えられるようになり、すぐレースを再開できるようになった。
      • 残機制が廃止され、何回クラッシュしてもレースを継続できるようになった。
      • マシンの解説が3DO版から一新され、かなりボリュームが増えた。日本語版は長寿番組である「カーグラフィックTV」でナレーションを務めている声優の古谷徹氏が、さながら同番組を見ているかのようなナレーションで各マシンの解説を読み上げている。
      • アンチロックブレーキ・トラクションコントロールのオプションは廃止。
      • 警官に捕まった際のムービーが廃止されたため、これを惜しむ声も。移植版は「GAME OVER」と書かれた違反切符を出されるだけの簡素なものになっている。
    • 総合すると、移植版は3DO版に対する大きな長所と大きな短所が両方あり、どちらかのバージョンが上位互換というわけではない。手に取ったユーザーからはそれぞれが別物とみなされており、双方に異なる魅力があるため、両機種遊べる環境があるなら遊び比べてみるのも一興である。
  • 日本向けセガサターン版は独自のローカライズで知られている。
    • こちらは原語版より後に発売されたのだが、なんと車種全てを日産の車両に差し替えての発売となった。タイトルも『オーバードライビン GT-R』と、マイナーチェンジであることを意識している。
    • この日産車仕様のバージョンは後にPSユーザー向けにも『オーバードライビン スカイラインメモリアル』のタイトルで移植された。大きな違いは登場車種が『~スカイラインメモリアル』のサブタイトルにもあるようにシークレットカーのR390*8を除き、 全てスカイラインの歴代車種だけである ことがSS版と異なる。
  • 邦題の「オーバードライビン」は、その後のコンシューマ向けシリーズ作品のタイトルにもしばらく継承された。
    • 1999年の『オーバードライビンIV』(PS)を最後にこの名称は使われなくなり、コンシューマ作品のローカライズも一旦打ち止めとなるが、2003年の『Need for Speed: Underground』からは日本でも『Need for Speed』として発売されるようになった。
    • なおPC向けに発売されたタイトルでは「オーバードライビン」の名称が使われておらず、日本でも1作目から『Need for Speed』として発売されている。
最終更新:2025年04月27日 22:19

*1 3Dシューティング。間をおかずして2作目も発売された。PSにも移植されている。

*2 メガドライブ生まれの爽快バイクレースゲーム。同名作品はいくつかあるものの、3DO版はそのスピード感から特に評価が高く、ハードの代表作にも数えられている。

*3 スポーツゲーム。日本ではJリーグを題材にしたローカライズ版が2年連続で発売され、大々的な宣伝も加わって広く受け入れられた。

*4 一部の移植版はMOUNTAINとなっている。

*5 急ブレーキ時にタイヤがいきなり止まるのを防ぐ機能。

*6 エンジン始動時のタイヤ空転を防止する機能。

*7 複数のテレビで個別に画面を用意して対戦できるようになる拡張機器。環境を整える大変さもありあまり普及しなかった。

*8 1990年代後半にル・マン24時間レースに参戦するためにTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)との協力体制で開発されたスポーツカー