ローラーボール

【ろーらーぼーる】

ジャンル ピンボール
対応機種 ファミリーコンピュータ
開発・発売元 ハル研究所
発売日 1988年12月20日
プレイ人数 1~2人
定価 5,600円
判定 良作
ポイント 正統派ピンボールの発展形
4段構成の盤面はギミックいっぱい
ちょっと変わった対戦モード


概要

1988年12月にハル研究所から発売されたハイスコアを目指す正統派のピンボールゲーム。
発売元のハル研究所はファミコン草創期の無印版『ピンボール』(1984年2月発売・任天堂)の開発を担当しており、実質その発展形となっている。


内容

  • 操作は任天堂の無印版『ピンボール』と同じ左側フリッパーは十字ボタン、右側フリッパーはA・Bボタンで動かす。
    • プレイスタートのストライカーがAまたはB長押しで打ち出す(スカイスクレイパーのみ)。
  • モードは王道なピンボール「スカイスクレイパー」と対戦モード「マッチプレイ」の2通り。

スカイスクレイパー

  • 王道なピンボールのモードで盤面は4段構成になっている。
    • ピンボールゲームらしい純粋にハイスコアを目指していくゲーム性。
    • ストライカーで弾き出したボールは最上段ではなく2段目に送り込まれる。
  • 特定の条件でボールが2つになった場合、同じ段にいる場合は2つを同時にプレイするのだが、片方が上段に打ち上げられたり下段に落とした場合、しばらくは1つのみでプレイする。
    • そして、先に当該の階層を離れたボールがあるはずの段に今プレイしているボールが送り込まれて追いついた時、先行しているもう1つのボールが特定のホールに待機しており、そこから発射され再び2つ同時プレイとなる。
  • 各階層のギミックは下記の通り。

最上段

  • ターゲット1
    • 左上に4つあり、全部を押すと後述の「セーバーポスト1」が出編。
  • セーバーポスト1
    • 上述の「ターゲット1」をすべて押すと出現する。
    • 左側の落ちる空間に出現し、そこから落ちるのを防いでくれる。ボールが5度当るまで有効。
      • 4度目(あと1度で消える)で中の色が透明になる。
  • ターゲット2
    • 右上に4つあり、全部を押すと右下のゲートが開いて後述の「ホール2」にボールが入れられるようになる。
  • ロールオーバー
    • 8つあそれぞれに文字があり、そのうちの1つが点滅している。
    • 点滅している文字の上をボールが通過すると点灯状態になる。
    • 全点灯させて後述の「ホール1」に入れるとロールオーバーが全て後述「ロールバンパー」に変化する。
      • 後述の「ホール2」にボールがストックされている場合、これと同時にボールが弾き出され落とすまでボール2つでプレイできる。
  • ロールバンパー
    • ぶつけてボールが跳ね返り得点が入るピンボールの王道ギミックだが、これは10回ボールをぶつけると壊れる。
    • 8つすべてを壊してもう一度「ホール1」に入れると「SHOOT AGAIN」の表示が点灯し、一度落としてももう一度ボール数を減らさずリトライできる。同時に再び元の位置に「ロールオーバー」が復活する。
  • ホール1
    • 「ロールオーバー」「ロールバンパー」によるボーナスを確定させる。
  • ホール2
    • ここにボールが入ると一旦閉じ込めてストックされ、再びストライカーから新しいボールを打ち出して再スタート。
      • 前述の通り「ロールオーバー」のボーナスを確定させると、ストックしていたボールが弾き出される。
    • 「ロールバンパー」が出ているボーナス状態や既に2つのボールでプレイしている状態では入ってもそのまま蹴り出される。

2段目

  • スロット
    • スタートとなる「スロットゲート」は最上段へのルートの両側にあり、どちらから通してもその中央を通過することでスロットがスタートする。ストップはオート。揃った絵柄によって効果が変わる。
      ベル3つ揃い…最下段の「マルチスプライヤー」が1段階アップする。
      チェリー3つ揃い…最上段の「ホール1」、最下段の「ホール5」に繋がるゲートが開いてボールが入れられるようになる。またホール4の矢印が常に上向きになる。
      ゾーニ(ナスビ)3つ揃い…チェリーで得た効果が消滅するハズレ当り。
  • ワープホール
    • 「HAL」と書かれたバンパーの右下にあるホール。
    • 最上段の「ホール2」にボールがワープしてストックされる。すでにストックしてある場合は下記「ホール3」から打ち出される。
  • ホール3
    • 「HAL」と書かれたバンパーの左下にあるホール。
    • ボールを打ち出すのみだが、ここから打ち出されたボールは前述の「ワープホール」に入りやすい。
  • ボーナスランプ
    • ストライカーから弾かれたボールが必ずここのいずれかを通って盤面に入ってくる。反対に盤面側から入れることも可能。
    • 「H」「A」「L」の3つのランプがあり、通過した箇所のランプが点灯、全部点灯でボーナス表示がランクアップする。
  • ホール4
    • 左下隅に存在する。
    • ここに入ると矢印の方向にボールを打ち出す。つまり上を向いていれば、ここに落としてもこの2段目に留まっていられる。
    • 基本的にここに入ってボールを打ち出したら矢印の上下向きが入れ替わるが前述のチェリー揃いの恩恵がある状態や、2つボールがある状態ならば常に上向きで固定となる。
  • ホールキッカー
    • 右下の広い空間でタテに2つ並び、下が真上向き、上が左上向きになっており、それぞれの方向にボールを蹴り出す。
    • ここの空間は広いが、このホールの拾う範囲が広いのでここから落ちることはあまりない。

3段目

この段では左上にサブフリッパーがあり、これは左(十字ボタン)と連動して動いている。

  • ホール4
    • 2段目に見えているものと同じ。この階層では左上に位置している。
  • レーンランプ
    • 「H」「A」「L」の3つのランプがあり2段目の「ボーナスランプ」に似ているが、ここでは常に1つが点滅している。
      • 点滅してる部分はA・Bボタンで変えられる(Bなら左へ・Aなら右へ)。点滅している部分にボールをとせば下記「ボーナスパネル」に表示されたボーナス点が入る。
  • ボーナスパネル
    • 最初は3,000からスタートし、下記の「ターゲット345」を倒すごとに増えていく。最大は1,000,000。
  • ターゲット345
    • 中央左端と、上記「ボーナスパネル」の上に3つ一塊で配置されている。
    • 9つ全部を倒すと上記「ボーナスパネル」の得点表示が上昇。

最下層

この段では右上にサブフリッパーがあり、これは右(A・Bボタン)と連動して動いている。

  • ABCレーン
    • 中央バンパーの上にあり、「A」「B」「C」3レーン構成で通過した部分のランプが点灯し、3つ全て点灯するとボーナス点が入り左下の「ゲート2」が解放(同時にABCは再度消灯)。
    • 3段目の「レーンランプ」同様に転倒している状態をA・Bボタンで変えられる(Bなら左へ・Aなら右へ)。
  • ゲート2
    • 左隅のアウトへ通じるレーンにあるゲートで、これが開いているとアウトへ落ちず再び打ち出して事なきを得られる(1回のみで一度弾き出したら閉じる)。
  • ボーナスポイント
    • 様々な景気で点灯するポイントランプで1K×4・5K×1・10K×4・50K×1・100K×1で最大は全点灯で199K。
    • ミス時に1Kあたり1000点が入る。これに「マルチスプライヤー」の倍率が適用され最大の「×5」なら1Kあたり5000点でマックスの199Kならば995000点となる。
  • ターゲット6
    • 上記「ボーナスポイント」の上にあるターゲットで、これを全部倒すとフリッパーの間に30秒間「セーバーポスト2」が出現して、フリッパーの間から落下しなくなる。
  • スピナー
    • 左上に存在し、ここにボールを当てると回転し、それに合わせて「チャンスパネル」(後述)の表示が変わる。
  • ターゲット7
    • スピナーの左下にあり、ここに当てると10秒間「ロールオーバー」(後述)が点滅。
  • ロールオーバー
    • これが点滅中に、ここをボールが通ると「チャンスパネル」(後述)の内容が実行される。
  • チャンスパネル
    • 上記の通り、ロールオーバー通過時の内容を表示。
      BUMPER…一定時間中央のバンパーの反発力とその得点が上がる。
      KICK BACK…上記「ゲート2」が解放。
      EXIT HOLE…「ホール5」(後述)左下の「EXIT」ランプが点灯。
      50000pts…50000点獲得。
      100000pts…100000点獲得。
      POST SAVER…フリッパーの間に30秒間「セーバーポスト2」が出現して、フリッパーの間から落下しなくなる。
  • ホール5
    • サブフリッパーの左上にある。つまりサブフリッパーで弾けばまず入る。
    • その下の「EXIT」ランプ点灯中に入れるとボールはストライカーレーンにワープする(実質2段目までの復帰)。
    • 非点灯時はそのまま右下に蹴り出されるだけ。
  • セーバーポスト2
    • フリッパーの間に出現し、そこからの落下アウトを防いでくれる。有効時間は30秒。

マッチプレイ

  • 1画面のみで行われる2人対戦専用モード。
  • 最初に初期スコアを1000・3000・5000・9000から選択する。
    • 右を押しながら選択すると、今選んだのは1Pのものとなり2P用の初期スコアを別に選ぶことになる(ハンデをつけられる)。
    • スコアというよりもHPのような感覚でこれが0になった方が負けとなる。
      • 増える契機もあるにはあるが非情に少なく、基本的にはどんどん減っていく形式。
      • またボールは1つ落としたら終わりではなく、中央からドンドン射出され画面内には常に2つのボールがある。
    • 勝った方には勲章が与えられ、先に10勝した方の勝ちとなる。
  • 後述の通り、ギミックにぶつけると基本的にスコアはマイナスなので、相手側のギミックを狙ってぶつけていく。
  • プレイヤーは1Pが「ぞうさん」(左側)、2Pが「きりんさん」(右側)。
    • 盤面は1Pと2Pが左右対称に半々になっている。
  • 画面上部のゲージ「レベルメーター」で両者の優劣を表示。
    • 他にお互いのフリッパー上にいるキャラでも、優劣に対応したアクションをする。

ギミック

位置は1P側に準ずるものとして表記。2P側は反対側(1P左上なら右上)となる。

  • スピナー
    • 左上に配置されている。ここにボールを当てると回転し、1回転ごとにスコアが-1。
  • バンパー
    • スピナーの右下にあり、ここにボールを当てるとスコアが-30。
  • ターゲット1
    • 中央上部左に配置。ここに当てるとスコアが-10され、同時に「コマンドパネル」(後述)の内容を実行。
  • ターゲット2
    • 中央左端に配置。ここに当てると「コマンドパネル」がルーレット式に変化する。
  • キープホール
    • 「ターゲット2」の左下にあり、ボールを1つのみ入れておける。
  • サイドレーン
    • 左端にあり、そこを通ったボールは左フリッパーへ導かれる。通すと同時にスコアが-10。
  • サイドバンパー
    • サイドレーンに付随している三角形のバンパーで、ここにボールを当てるとスコア-10。
  • 逆転ボタン
    • 中央に4つ配置。ボールを当てると白←→青と変化し、全部青になると1Pと2Pのスコアがそっくり入れ替わる。
  • アウトゾーン
    • フリッパーの間にあるアウト穴で、ここに落とすとスコアは-100。
  • コマンドパネル
    • 上記「ターゲット2」にぶつけることで変化し「ターゲット1」にぶつけることで効果を発揮する内容を表示。内容は下記の通り。
      -10Pts…スコアが10点マイナス。
      -50Pts…スコアが50点マイナス。
      -100Pts…スコアが100点マイナス。
      +50Pts…スコアが50点プラス。
      点線フリッパー…片方のフリッパーが一定時間消えてしまう(透明になるのではなく完全に消えるのでダダ空きになってしまう)。
      「G」のついた錘…実行された側のみボールが重くなり、落下速度が速くなる(もう一度実行するまで持続)。
      半分に裂けた「SCORE」…スコアが半分になる。

評価点

  • 4段構成で非常にギミックに富んだピンボール。
    • 草創期の無印版『ピンボール』のように急に別台にワープしたりする突飛な点こそないとはいえ、これだけの大ボリュームはアナログのピンボールで再現はまずありえないほど充実した内容。
    • 実際、これまでのピンボールゲームでこのような濃密な構成は初めてである。
    • 加えて多彩なギミックのおかげでスコアアタックの幅が非常に広い。
  • サブフリッパーの活用でよりスコアアップを効率化。
    • 3段目と最下層にあるサブフリッパーは実は使わなくてもプレーに支障はきたさないのだが、これを上手く使えるようになることでより一層スコアアタックの幅を広げられる点はシンプルな中にも奥深さがある。
  • ボールの動きは非常にスピード感があり、同時に自然な動きが再現されている。
    • このあたりはファミコン草創期ながらも、それがしっかりできていた『ピンボール』から引き継がれ、それが発展したものになっている。
  • マルチボールの無理のない採用。
    • このような4段構成にあって2つのボールを同時にプレイするというシチュエーションは非常に難しいものの、打ち上げたり落としたりで先行したボールに追いつくと特定のホールから再開と無理のない形で実現できている。
  • ピンボールの特性をしっかり活かした上で、一味加えた対戦モード。
    • 相手のスコアを減らす手段も基本は相手側にボールをどんどん打ち込んでいくというスタイルでゲームの根幹をしっかり活かしている。
    • 次々とボールが出てきて常に2つのボールで打ちあう形もテンポの良さと煩雑にならないお手軽なバランスを両立できている。
    • キャラもその状況に応じて表情が事細かに変化するなど、こういった小さい部分の演出でも抜かりがない。
  • 2段目のすぐ落ちそうで実は意外と落ちにくいバランス。
    • 実質的なスタート地点にあたる2段目は右側から入り、その下が一見ダダ空きですぐ落ちてしまいそうだが、実は2つのホールキッカーのカバーしている範囲が広く、見た目よりは落ちにくい。
  • BGMの出来も非常に秀逸。
    • スカイスクレイパーの王道なBGMはマイナーコードな曲調ながらもノリが良く、最上段でロールバンパーを破壊するパートでは一転、一気にハイテンポになりスコアの上昇度合いの急加速する気分をより高めてくれる。

賛否両論点

  • 対戦モードにおけるスコアがまるまる入れ替わるシステム。
    • これによりワザと自分の得点を減らして自滅寸前で入れ替えて逆転するという荒業が有効になる。
    • ただ全体的には相手側にボールをどんどん送り込んでスコアを減らすシステムでバランスが取れているので相当なバランスブレイカーに感じられる。
      • また、それだけトンデモな手段ならその契機も滅多にないかと思いきや、相手側にボールを送り込むように打っていれば大抵さわってしまう4つの「逆転ボタン」を全て青にするだけと、それなりに発動機会もある。
    • とはいうものの基本短時間で決着する対戦なだけに、これぐらいはあった方が面白いという見方もある。
      • また慣れることによって、それを阻止する対策も取れる。

問題点

  • ビデオゲームならではという要素では、今一つ活かし切れていない。
    • リアリズムで言えばしっかりらしい動きとスピードができているのだが、無印版『ピンボール』ではマリオのボーナスステージ、1988年8月発売の『スーパーピンボール』(ココナッツジャパン)の秘密面など、まったく別物な盤面へワープするといったビデオゲームならではなことを盛り込んでいるのに対し、本作はそういったものはない。
    • 最上段が一応それに該当するとはいえ、物理的にボールを送り込む以外にない。
  • ピンボールの王道要素「揺らし」がない。
    • そこは同じハル研究所開発ということもあって「してほしくない」という意図なのかもしれないが。

総評

リアルなピンボール感覚に寄せすぎたため、別ステージに変わったりするビデオゲームならではな点が無い事は多少気になるがギミックがたっぷり詰まった4段構成の盤面でスコアアタックの幅は非常に広くピンボールの醍醐味を存分に味わえる。
加えてその特性をそのまま活かした対戦モード「マッチプレイ」も、これまでのピンボールでは味わえなかったシンプルながらも白熱した対戦ができるゲーム性でピンボールゲームに新しい一味を加えている。
BGMやグラフィックなどもこれまで任天堂発売作品を含めハル研究所らしいクオリティの高さがしっかり見られ、正統派ピンボールとしてきれいに高次元でバランスの取れた形になっている。


余談

  • 本作のプロトタイプと思われるファミコン草創期の無印版『ピンボール』は半年後の5月30日にディスクシステムの書換専用ソフトとして移植されることになる。
  • 翌1989年10月にハル研究所がゲームボーイで発売するピンボール作品『ピンボール 66匹のワニ大行進』は本作から一部のSEなどが流用されている。
    • この作品にも対戦モード「マッチプレイ」があり、プレイヤーの並びが左右と上下の違いはあるもののスコアマイナス式という本作のスタイルが引き継がれている。
    • そして1993年末に任天堂から発売されたピンボールゲームの名作『カービィのピンボール』は『66匹のワニ大行進』をベースに作られているため、ある意味本作こそそのルーツと言えるかもしれない。

最終更新:2024年03月09日 15:14