オリュンポスの戦い 愛の伝説
【おりゅんぽすのたたかい あいのでんせつ】
| ジャンル | アクションRPG |  | 
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| 発売元 | イマジニア | 
| 開発元 | インフィニティー | 
| 発売日 | 1988年3月28日 | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 定価 | 5,300円 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 『リンクの冒険』とは似て非なるもの リーチは短くても武器の振りが速い
 細かいところまで描き込まれたグラフィック
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概要
1988年にイマジニアから発売されたファミリーコンピュータソフトのアクションRPG。
アクションRPGとあるが、経験値によるレベルアップがなくパワーアップは主にアイテムの取得に依存するタイプで、エネルギー消費の概念も少なく、お金の要素も薄いなど、どちらかといえば純粋なアクション寄りの内容となっている。
ストーリー
遥か遠い昔、まだ人と神々が共に暮らしていた頃。
人の住む地「アルカディア」。
静かで平和な村「エリス」に住む美しい娘ヘレネ、優しく逞しい若者オルフェウスは永遠の愛を誓いあっていた。
ある日、ヘレネは毒蛇の牙にかかり、命を奪われてしまい、ヘレネを失ったオルフェウスは三日三晩、嘆き悲しんでいた。
すると、どこからともなく愛の女神アフロディーテの声が聞こえてきた。アフロディーテによるとヘレネの死はタルタロスの死神ハデスが后にするために、毒蛇に化けてヘレネの魂を奪ったのだ。
だがアフロディーテは3人のニンフたちがタルタロスへの道しるべとなり、ヘレネを救い出すことができると教えた。そしてヘレネへの愛が真なら、ヘレネを救い出すことができると…
その言葉に導かれるようにオルフェウスの冒険、そして「愛の伝説」が始まろうとしていた。
内容
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アクションRPGに属し、アイテムは多彩だが経験値によるレベルアップなど戦いで成長する要素はない。そのためRPGの要素は薄くアクション寄りな構成。
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全フィールドがシームレスにつながっているため、街や洞窟といった概念はない。
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具体的には画面の端(海含む)や洞窟のような入り口でフィールドが繋がっており、他に階段の昇り降りがある。
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アイテムでジャンプ力を上げたりして行動できる範囲を拡大していく方式。
 
 
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舞台は古代ギリシャで、スタートのアルカディア、アッティカ、アルゴリス、ペロポネソス、ラコニア、プティオティス、クレタ、プリュギア、タルタロスの9地区に分かれている。
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それぞれの地区に入ると、全体地図で名称と、その場所の英語表記が点滅して示される。
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地区間移動は普通に歩いて行える(一部海を渡ることなどもあるがこの時もマニュアル操作なので実質徒歩と同じ)。
 途中で入手できる「アポロンの竪琴」を特定の場所で使うとペガサスが現れ、ワープ形式で移動できる。
 
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様々な場所で人からヒントが貰え、その情報を基に冒険を進めていく。
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お金にあたるものとして「オリーブの実」がある。
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死亡でのコンティニュー再開時は半分(端数切捨て)というRPG恒例のデスペナルティあり。
 
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神殿では、しゃがんでAボタンを押すことで神と話すことができる。
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この時、アイテムを貰えることがあるが大体は上記の「オリーブの実」を要求される。
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中断時は上記の神々(一部)からパスワードをもらうことで行う。
 
    
    
        | + | 武器 | 
オオウイキョウの杖攻撃力は棍棒よりも高く条件を満たせば「プロメテウスの火」が放てる。「プロメテウスの火」は離れた敵にも攻撃ができ、特定の障害物を焼きはらったり、暗い洞窟内を明るくすることもできる。
 
神剣最高の攻撃力を持ち「アルゲスの力」(一直線に飛ぶビーム)が使えるようになる。
 「力の腕輪」を持つまではこの力を使うたびに体力消耗する。
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        | + | 持っているだけで有効なアイテム | 
アテナの盾敵の物理的飛び道具を防御できる。これがないとグラフィックで持っている盾は何の効果もない。
 
サラマンドラの皮の盾敵の火炎攻撃を防御できる。
 これを入手する前は、サラマンドラの皮の数がアイテム欄に表示されている。
 
ヘルメスのサンダルジャンプ力が上昇。
 更に、左右のどちらかに移動しながら思いっきりジャンプすると天井に着地し、逆さ状態で移動できる。
 
力の腕輪攻撃力を2倍にし、「アルゲスの力」を使っても体力を消耗しなくなる。
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        | + | 使用するアイテム | 
アポロンの竪琴太陽の石碑の前で使えば、ペガサスが現れ特定のエリアへワープできる。
 
グライアイの目不思議な力を持つ水晶玉で、主に隠れ入り口を見つける。
 
オカリナ海辺で吹くとイルカを呼んで海を渡ることができる。
 
トロイアの水瓶ネクタルを入れるための瓶。これがないとネクタルをストックできない。
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評価点
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操作のレスポンスは非常によい。
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武器のリーチは短いが、高速で攻撃を連打すること可能で、ある程度カバーできるのであまり気にならない。
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更に序盤のうちに飛び道具で無制限に使える火を放てる「オオウイキョウの杖」が手に入るなどある程度フォローされている。
 
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動きも素早く、広いマップでもダラダラすることなるスイスイ移動できる。
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メッセージの表示も速くキリのいいところで止まるのでしっかり読める。反対に遅くてイライラするようなことはない。
 
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非常にスピーディーなアクション。
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上記の通り武器の振りが速く、全てにわたってスムーズな操作性となっている。
 
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アクションゲームながらもアイテムが非常に豊富で、それぞれが明確な役割を持っておりムダなものはない。
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経験値による成長システムこそないものの、これにより主人公の成長が感じられる。
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また進行エリアの拡大とも紐づいており、内部ストーリーとゲーム要素がしっかり融合できている。
 
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9地区それぞれが明確な特徴を持っており、プレイヤーもその違いを感じやすい。
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また、それぞれの舞台にマッチした敵のバリエーションまでしっかり徹底されている。
 
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グラフィックは細かい部分まで描き込まれている。
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特に背景に関しては目を見張るものが存在する。
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キャラクターも人物こそ粗めとはいえ、大型モンスターは部位までかなりしっかり描かれている。
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敵の「アマゾネス兵」「アマゾネスの騎士」も兜をかぶっていながら一目で女性と分かるほど。
 
 
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サウンドも良質で作品とマッチしている。
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地区すべてに独自のBGMが当てられており、場面場面の雰囲気を上手く演出している。
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またSEの出来も良く、歯切れのいい音が攻撃の決まった快感を生み出せている。
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サウンド担当はテクノスジャパンのくにおくんシリーズなどで知られる澤和雄氏。
 意外と思われがちだが、人によっては耳に残りやすいメロディや絶妙なスウィープ音の使い方から氏の作風を感じ取れる。
 
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上記に付随して、冒険の途中で得られるキーアイテム「ハート」を取ると、ヒロイン(恋人)からのメッセージが得られるなど、細かい部分での演出も抜かりない。
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全体的に難易度がかなり高いので、途中途中で小さい達成感が味わえるのは、クリアまでのモチベーション維持にもつながる。
 
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デフォルト名はあるものの、主人公とヒロインに名前を付けられる。
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これにより一層感情移入したプレイができる。
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ただし4文字までなので公式名「オルフェウス」は入力できない。
 
 
問題点
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盾の扱いが少々難しい。
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攻撃をしている時、盾はひっこめているので無効になるのは仕方ないにしても、歩行中にも左右に振っている動きのせいで無効状態が断続的に発生してしまう。しゃがみ状態ぐらいでしか安定して使用できない。
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扱いとは少々意味が違うがグラフィックでは最初から盾を持っているのに「アテナの盾」を持っていないと何の効果もないのは紛らわしい。
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説明書には「あなたが最初に持っているものは棍棒だけです。」とあるが、それならば盾装備無しのグラフィックの差分を用意するべきであろう。また「アテナの盾」は「敵の攻撃を防御することができます。」と説明されているが、「グラフィックで持っている盾はアテナの盾を手に入れるまで効果がない」などの注釈は存在しない。
 
 
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コンティニュー時のデスペナルティ「オリーブの実半減」(実質「所持金半減」)はRPGの王道スタイルながら、アクション寄りのゲーム性である本作では実はかなり厳しいバランス。
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例えばプティオティス地方ではちょっとしたことで落下死が多発してしまう。
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このため、大量のオリーブの実を持っていても半減半減を繰り返してしまい、アッと言う間になくなってしまう。
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パスワード再開時点からのリトライならばそのリスクはないが、予めそのポイントでパスワードを取るメタ読みが必要なので初見でできるものではない。しかもパスワードを取得できる場所も限られている。
 
 
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オリーブの実の要求数が過大。
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「力の腕輪」以外にもゲーム進行に必須のアイテムを何個も神様たちからオリーブの実と交換してもらう必要があるが、その数が最低でも50個、最大で80個。
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最大所持可能数が99なので常に最大の半分以上ということになる。
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おまけにオリーブの実は敵を数体倒して1個落ちるかどうかという程度のドロップ率で、宝箱等のまとまった入手手段はなく1つずつコツコツ貯めるしかない。そして先述の通りミスすると所持数が半減する。
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つまり
オリーブの実を要求される度に数十分~数時間かけて集めなければならず、さらに交換に向かう途中で死んだら数十個失ってやり直し
となる。
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普通にプレイしていれば集まった段階でパスワードを取るからパスワード入れ直しの再スタートで済むが。
 
 
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全般的に被ダメージが高めで上記に付随して難易度はかなり高い。一般的なRPGのように弱い敵をコツコツ狩ってレベルアップしたりなどでカバーするようなこともできない。
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序盤のモンスター『シャクトリン』はジャンプしてくる所を狙わないと攻撃が当たらない。上記の通り振りの速さである程度カバーできている。またジャンプで避けるだけなら簡単なので無視することもできるとはいえ、最初の敵がこうも倒しにくいのはバランスを疑問視される。
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地味に耐久力があり攻撃力も高く、その時点での主力武器である炎が効かず、次から次へとうじゃうじゃ湧いて出るサラマンドラあたりも相当なクセモノ。
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後述の「アレス神殿」あたりになると、タフで動きも狡猾な敵が当り前のように大量に押し寄せてくる。
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一応、コンティニューが無制限に可能で、それにより戻されるポイントも比較的直近に限られるのでデスペナルティが気にならないほどオリーブの実がない状態なら繰り返して敵の動きに慣れていけるのは救い。
 
 
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不必要なほど理不尽なペナルティの存在。
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上記の「ヘルメスのサンダル」はかなり序盤に貰えるのだが、終盤で行く「アレス神殿」でアレスから「力の腕輪」を貰う時にオリーブの実を80要求され、足りないと罰として「ヘルメスのサンダル」を没収されてしまう。
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もちろん「ヘルメスのサンダル」は再び「ヘルメスの神殿」→「ゼウスの神殿」と序盤で貰った時の流れを繰り返せばもう一度もらえるので詰みではない。とはいえ、この「アレス神殿」自体これがないと敵を飛び越して通過することも難しいため、様々な強敵を正攻法で倒さなければならず、おまけに神殿の構造も複雑で迷いやすい。
 
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オリーブの実が足りていないとわかっているなら「オリーブの実を80貢いでくれ」の要求に正直に「いいえ」と答えれば問題ないので「噓つきの罰」もわからなくはないのだが、こうも重いペナルティはやりすぎな感が否めない。
 
総評
操作性が良くグラフィックやBGMの出来は非常に高いクオリティでできており古代ギリシャらしい雰囲気は存分に出ている。
しかしながら難易度に関してはファミコン初期作品によくあった「トライ&エラーを繰り返して上達していくバランス」と考えても高く、初心者クラスのプレイヤーからすればミスを繰り返してモチベーションが保てないことも往々にしてある。
とはいえゲーム根幹はしっかりしており、このようなゲームにしては珍しく名前入力が可能で感情移入しやすいシステムなどもあって、その達成感は申し分なしなものが得られるだろう。
ラクに倒せるザコなどを狩っての地道なレベルアップなど初心者救済になる要素がもう少しあれば文句なく良作だっただけに惜しいがエキスパートにとってはやりごたえ抜群で、中級者クラスでも折れない心でチャレンジする価値は充分にある。
余談
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本作を語る上で大抵話題に上がるのが『リンクの冒険』との類似性でパクリと言われることも多い。
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ただし、それは主人公のオルフェウスが上記の主人公リンク同様に緑ベースのカラーリングをしていることや一部背景グラフィックに類似が見られるだけでゲームの構成そのものは別物と言い切っていい。
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またオルフェウスの武器のリーチがリンクの剣同様短いという点や、攻撃モーションが「突き」である点も共通している。前者は『リンクの冒険』でも問題点に挙げられている要素であるため、仮に参考にしたのなら「何もこんなところまで再現しなくても…」という声もある。
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良い点としては前述通りグラフィックやBGMの出来で『リンクの冒険』の海外版と比較しても本作は決して見劣りはしない。
 
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神殿のBGMにはバッハの「トッカータとフーガ ニ短調」が使用されている。
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元はオルガン楽曲ゆえ荘厳な雰囲気を演出したかったものと思われるが、後の1992年に同楽曲のイントロを原曲とした「鼻から牛乳」(嘉門達夫)がヒットして以降、その歌詞やメルヘンチックな絶望のイメージを想起させる曲として認知されるようになったため、現在のプレイヤーの感覚ならば妙な雰囲気を感じてしまうかもしれない。
 
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海外ではゲームボーイ移植版が4年後の1992年に発売されている。
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パッケージ下に「WAVEJACK JR.」と表記されている。
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「WAVEJACK」とは1986年~1987年にファミコンディスクシステムで展開された『銀河伝承』『消えたプリンセス』『聖剣サイコカリバー』の3作を指している。
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これらはストーリーの本やカセットテープを同梱して、そちらでストーリーのパートをゲーム本編とは別口のメディアで視聴するという趣向が取られており、現在で言う「メディアミックス」の走りでもある。
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ただ本作では、そのようなものは一切ない。
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なお、上記三部作は第1号の『銀河伝承』がバグだらけなクソゲーだったことで、後の2作まで巻き添えでクソゲー呼ばわりされることもある不憫なシリーズである。
 
 
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タイトル画面では見られないので気付かない人も多いだろうが本作のクレジットは1987年表記になっている。
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元々前年のうちに発売する予定だった名残だろうが4月近くにもなってこのような前年クレジット持越しは非常に珍しい。
 
最終更新:2024年07月11日 02:45