Ib
【いう”】
ジャンル
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探索型アドベンチャー
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対応機種
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Windows(Steam) Nintendo Switch プレイステーション5 プレイステーション4
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発売元
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PLAYSM
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開発元
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kouri
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配信日
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【Win】2022年4月11日 【Switch】2023年3月9日 【PS5/PS4】2024年3月14日
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定価(税込)
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ダウンロード版 【Win】1,300円 【Switch】1,500円 【PS5/PS4】1,540円 パッケージ版 【Switch 通常版】3,980円 【Switch 限定版】4,980円 【PS5/PS4 通常版】4,400円 【PS5/PS4 豪華版】5,500円
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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30個 |
レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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良作
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ポイント
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名作フリーゲームのリメイク版 洗練されたホラー演出の数々 原作に忠実な出来栄え
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概要
2012年に配信が開始されたフリーゲーム『Ib』の商業リメイク。
異変の起きた美術館に閉じ込められた少女・イヴが脱出を図るために奔走する。
原作版の配信からちょうど10周年を迎える時にリメイク版が発売された。
システム
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RPGのようにキャラクターを操作して、出口を求めて美術館の施設内を探索する。
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美術館を探索する道中には、絵画やオブジェなどの美術品が無数に存在する。これらによるパズルや謎解きをこなしながら、扉を開く鍵などを入手し先に進んでいく。
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美術品の中には、謎解きとは無関係だが調べると変化やアクションが起きるものも存在する。当たり前のように言葉を話す美術品も居る。
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一部の美術品は動き回りこちらを追いかけてくる敵でもある。基本的に倒す手段はなく、逃げるしかない。
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大半の美術品にはそれぞれ固有のタイトルが添えられており、調べると表示される。
ただしイヴは幼く難しい言葉が読めない設定のため、大人のギャリーが同伴した状態でないと正しいタイトルがわからない場合がある。
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所持アイテムの概念があるが、必要となる場所で自動的に使用されるか、使用できるタイミングで確認が行われる方式であり、プレイヤーが能動的に使う場面はない。
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主人公たちの命が薔薇の花弁として表現されており、花弁の枚数がライフとなっている。主に選択肢のミスや追いかけてくる敵との接触で減っていき、当然尽きるとゲームオーバー。
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少なくなったライフは、美術館内に置かれている花瓶の水に漬けて回復が可能。一度しか使えない通常の花瓶と、使用回数に制限のない水色の花瓶がある。
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セーブはオートセーブ付きの手動方式であり、美術館内に設置された机に置かれたノートとペンがセーブポイントに当たる。
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セーブスロットは30個。一番上がオートセーブ用のスロット、それ以外が手動セーブ用スロットとなっている。
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マルチエンディングであり、行動によって展開のルートが分岐する。
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ゲームクリア後は2周目要素としてさらなるルートの解放と、ギャラリーモードである「真・ゲルテナ展」が解放される。
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バッドエンディングでは解放されないので注意。
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「真・ゲルテナ展」ではプレイ中に調べた美術品も展示されている。
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ただし、操作キャラがイヴのときに調べた美術品で、かつ正式なタイトルを知っていなければ展示されない。
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画面のズーム機能がある。小さなモニターでのプレイやオブジェクトを見回したい際に便利。
登場人物
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イヴ
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主人公である9歳の少女。両親と共に美術家であるゲルテナの作品を見に美術館へ訪れたが、そこでゲルテナの絵画を見て周囲に異変が起き、奇妙な世界へ迷い込んでしまう。子供故に読めない文字がある。所持する薔薇は赤。
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『ドラクエ』のような「喋らない主人公」であり、台詞は選択肢にだけ用意されている。
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ギャリー
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同じく異変に巻き込まれた20代の青年男性。ボロボロのコートを着用している。イヴに対して面倒見が良く、読めない文字も代わりに読んでくれる。いわゆる「オネエ」であり、口調や立ち振る舞いは女性的。所持する薔薇は青。
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メアリー
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イヴと同じくらいの年の少女。人懐っこい性格であり、外にいる父親と会いたがっている。所持する薔薇は黄色。
実はゲルテナの最後の絵画そのもの。ギャリーから真相を知らされると、彼を殺害し自身が現実世界に存在する人間になろうと暴走してしまう。
評価点
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幻想的かつ静かな恐怖を感じさせる美しい世界観
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美術館の内部は不気味な造形の美術品や絵画が展示されているなどホラーテイストが強く、移動中に突然大きな音が鳴ると共にオブジェクトが動き出すなど、プレイヤーの恐怖を煽る演出も多い。
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美術館が舞台ということでオブジェクト類は非常に豊富。ドット絵も凝っている他、美術品に関して記載した本やクレヨンで描いたようなグラフィックなどもある。
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一定の確率で発生する小ネタも豊富。PS5/PS4版ではトロフィー獲得にも関わっている。
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BGMも良曲揃いであり、どことなく儚げな曲も多く「狂った美術館」という本作の舞台にマッチした内容である。
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難しすぎない謎解き
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謎解きの内容に動体視力や難しいテクニックを求められる場面はほとんどなく、ゲーム初心者でも時間をかければ確実に進められる構成となっている。
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一部の仕掛けの内容が原作から差し替えられており、意識的な難易度調整と思われる傾向がある。
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リメイク前の原作には、狭い空間内で追ってくる敵から逃げるリアルタイムのアクションが求められる場面や、記憶力が必要なパズルが多く存在した。
リメイクではその手の仕掛けの大半が、じっくり考えて解く論理性を重視した謎解きに差し替えられている。
皆無ではなく、緊迫感を煽るここぞという場面にのみ残される形になっており、逆に敵に追われる箇所が新規に追加された場面もある。
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操作と結果の因果関係がわかりにくい謎解きや、何をすればいいのか見ただけではわからない謎解きは、連動性がわかりやすい全くの別物の仕掛けに差し替えられている。
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謎解きの内容自体は同じだが、手順が大きく省略されているものもある。
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これらの調整により、原作からフロア構成が変わったり、一部の美術品が新登場、または廃止された箇所もある。
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豊富な会話パターン
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ギャリーやメアリーとの行動時に会話が可能なのだが、展示物を調べたり部屋を移動したりする度に会話パターンが更新されるため、なかなか飽きない。
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序盤で読めない文字があった箇所をギャリーを連れて来た際に読み方を教えてもらえるようになるなど、寄り道箇所もある。
問題点
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基本的に原作に忠実なリメイクであり、一部内容が変わった謎解きもあるが全体的な構成やボリュームは原作とほぼ変わってない。
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ただし、原作は制作エンジンの問題でパソコンによっては起動できない問題があったため、現在では「原作版で十分」という言い分も少々苦しいものはある。
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原作版では「真・ゲルテナ展」の解放は2周目以降にさらにある条件を満たす必要があった上、オートセーブも無かったため、気軽さや快適性ではこちらの方が勝っている。
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設定上、仕方がないが、ギャリーとメアリーが共存するエンディングが存在しない。
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ネタバレになるので詳しい詳細は伏せるが、原作及び本作のどの脱出エンドに於いても、ギャリーとメアリーのどっちだけしか一緒に出られる事は出来ず、共存は不可能。
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ギャリーとメアリーの両方を思い入れのある一部のプレイヤーからすれば、何とも歯痒い気分にはなる。
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原作がフリーゲームかつロープライスという事もありボリュームは1周につき3時間程度と控えめ。
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もっとも「真・ゲルテナ展」のコンプリートには倍以上の時間はかかるため価格相応とはいえる。
総評
「美術館」を舞台とした独特な世界観と魅力のあるキャラクターが話題となり、雰囲気ゲーとしての完成度の高さはリメイク版でも健在。
雰囲気重視のインディーズゲームが好みならば世界観にどっぷりと浸れるであろう。
余談
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リメイク制作の経緯
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原作版は『RPGツクール2000』と原作配信の時点で既に古くなっているツールでの制作だったため、年月が経つにつれて新しいパソコンで起動できないという声が多く寄せられるようになった。
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同時にリメイク制作の要望も多くなっていったため、どうせやるならきちんと作り直した方が良いとリメイクに踏み切ったという。
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また、制作へのモチベーションを維持するために対価を得た方が良いとの理由で、原作とは異なり有料となった。
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なお、使用エンジンは『ツクール』からUnityへと変更されている。
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登場する美術品のうち、「真・ゲルテナ展」には展示できない美術品が存在する。
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概要にある登録の条件を絶対に満たせない場面でのみ登場する美術品がひとつだけあり、これはどう頑張っても「真・ゲルテナ展」に展示されることはない。
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これが無くとも「真・ゲルテナ展」はコンプリート扱いとなる。登場場面と美術品を見るに示唆的な内容であり、バグではなく意図した仕様であると考えられる。
最終更新:2024年08月20日 03:30