このページでは『Summer Pockets』及び『Summer Pockets REFLECTION BLUE』を扱っています。
Summer Pockets
【さまー ぽけっつ】
Summer Pockets REFLECTION BLUE
【さまー ぽけっつ りふれくしょん ぶるー】
ジャンル
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恋愛アドベンチャーゲーム
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対応機種
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Windows 8.1/10/11 Nintendo Switch プレイステーション4 iOS/Android
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発売・開発元
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【Win】Key 【iOS/Android】株式会社ビジュアルアーツ 【その他】プロトタイプ
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発売日
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【Win】2018年6月29日 【Steam】2020年2月6日 【Win(RB)】2020年6月26日 【Switch】2019年6月20日 【Switch(RB)】2021年7月1日 【PS4】2022年7月21日 【iOS】2018年12月17日 【Android】2018年12月19日
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定価
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【Win】8,800円 【Win(RB)】9,800円(初回版)/7,800円(通常版) 【Switch】7,200円/(RBモード追加)3,000円 【Switch(RB)】8,800円 【PS4】8,800円 【iOS/Android】基本無料(ルートごとに買い切り)
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レーティング
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Windows
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ソフ倫:一般ソフト
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CS機
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CERO:C(15才以上対象)
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iOS
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12+
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Android
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16+
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判定
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良作
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ポイント
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『AIR』を生んだKeyが送るもう一つの夏の物語 Key作品らしさと新しさを両立した一本
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Key作品
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概要
大手美少女ゲームメーカーである株式会社ビジュアルアーツのブランド「Key」の第13作及び第14作の恋愛アドベンチャーゲーム。
第13作『Summer Pockets』(通称:サマポケ)に新ヒロインやシナリオの追加、ヒロインの昇格など新たに内容を追加したものが第14作『Summer Pockets REFLECTION BLUE』(通称:REFLECTION BLUE、RB)である。
メインの原画担当はNa-Ga・和泉つばす・永山ゆうのんの各氏に加えて、RBではサブ原画担当だったふむゆん氏がヒロインの昇格に伴い追加された。
原案は麻枝准氏、シナリオ担当は、魁・新島夕・ハサマの各氏となっている。
Switch版は無印版を所持しているとDLC『RBモード追加』を購入することでソフトを買い直すことなくRBにアップデートすることができる。
iOS/Android版は基本無料で、個別ルートを買い切り購入する形式。ただし、しろはルートは無料で最後まで遊べる。
あらすじ
亡くなった祖母の遺品整理のために夏休みを利用して、鳥白島にやってきた主人公の鷹原羽依里。
祖母の思い出の品の片づけを手伝いながら、初めて触れる「島の生活」に戸惑いつつも、順応していく。
海を見つめる少女と出会った。
不思議な蝶を探す少女と出会った。
思い出と海賊船を探す少女と出会った。
静かな灯台で暮らす少女と出会った。
島で新しい仲間ができた---
この夏休みが終わらなければいいのにと、そう思った。
キャラクター
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鷹原 羽依里
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本作の主人公。
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夏休みに亡くなった祖母の遺品整理のために、鳥白島にやってきた少年。
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かつて水泳に取り組んでいたが、ある事情から泳ぐことから距離を置くようになった
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マイペースな性格で、つかみどころがない。
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鳥白島に上陸する際に、自分を「傷ついた渡り鳥」にたとえるなどエキセントリックな行動が随所で見られる。
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鳴瀬 しろは
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本作のメインヒロイン。
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クールで、人見知りをする島の少女。
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親しいのは肉親である祖父ぐらいで、島では孤立している。いわゆるぼっち。
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好物はスイカバー。
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空門 蒼
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本作のヒロインの一人
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男女分け隔てなく友達感覚で接してくる島の少女。
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島の駄菓子屋でバイトをしていて、子供たちから「師匠」と呼ばれている。
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島のあちこちで寝ているところを目撃されているが島民には日常茶飯事らしい。
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耳年増であり、思春期の男子よりも脳内がピンク。
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久島 鴎
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本作のヒロインの一人
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島で出会った不思議な少女。
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いつでも大きなスーツケースを引いている。
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いつも手にしている古い地図を片手に、何か探しものをしている。
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紬 ヴェンダース
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本作のヒロインの一人
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島の灯台の近くに現れる少女。
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真面目で素直なドイツ系ハーフで、夏休みを利用して『やりたいこと探し』をしている。
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口癖は「むぎゅ」で、異国の古い歌をよく口ずさんでいる。
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加藤 うみ
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羽依里の又従姉妹に当たる少女。
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夏休みを使って都会から一人で憧れの田舎である鳥白島に来た。
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チャーハンに並々ならぬ熱意を持つ。
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名前は漢字で「羽未」と書くが、作中ではほとんど「うみ」と表記される。
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『RB』にて個別ルートが追加された。ただし、年齢の都合上恋愛展開はない。
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三谷 良一
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島に住んでいる少年。
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いつでも、どこでも服を脱ぎたがる傾向があり、島中のあらゆる場所で脱いでは野村 美希に狙撃されている。
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脱衣バカ
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加納 天善
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島に住んでいる少年、その2。
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真面目でクールな性格だが、卓球に全てを捧げすぎていろいろ言動がおかしい。
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卓球バカ
以下は『RB』からの昇格・追加ヒロイン。
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野村 美希
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昇格ヒロイン。
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鳥白島少年団の治安維持執行部隊に所属している少女。
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自作の改造水鉄砲「ハイドログラディエーター改」で島の風紀を乱した者を容赦なく撃っている。
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この夏休みは地方新聞に掲載される鳥白島の観光記事の依頼を受け、島中を走り回ることになる。
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愛称はのみき。
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水織 静久
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昇格ヒロイン。
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本土にある、島のみんなが通う学校の生徒会長。
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夏休みは紬と会うために島にやってきている。
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おっぱいというものに対して異常な愛情と敬意を抱いている。
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かつてこの島にあった海の家を再建するために奮闘する。
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神山 識
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追加ヒロイン。
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鳥白島にやってきた旅好きの少女。
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日本各地の鬼の昔話を集めていて、鳥白島にも鬼の伝承を聞きに訪れた。
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サバイバル能力に長けているはずなのに、島のいたる場所で腹を空かせて行き倒れている。
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おむすびに目が無い。
特徴
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選択肢により話を分岐させるノベルゲーム。
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Keyのほかのフルプライスタイトル『リトルバスターズ!』や『Rewrite』のように選択肢は多めで、2種類のミニゲームや称号などのやりこみ要素も用意されている。
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称号は全250個あり、シナリオ内で特定の選択肢を選択すると入手できるほかに、ミニゲームを遊ぶことでも入手することができる。
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ギャラリーやサウンドボックスだけではなく、背景やキャラクターの立ち絵を自由に設定しSNSに投稿できる機能も搭載されている。
評価点
シナリオ・演出
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Key作品の特徴である『楽しい日常と、泣ける物語』というコンセプトは本作でも健在。
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本作の最重要の売りポイントといっても過言ではなく、プレイヤーを笑わせ、涙させる。
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どのルートでも特別に目立つ荒はなく、安定して高い評価を得ている。
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舞台設定が夏の海辺の田舎町ということで同じKeyの作品である『AIR』を意識させるものとなっているが、シナリオライターを担当した魁は『AIR』というよりは『ぼくのなつやすみ』を高校生版に置き換えた感じに近いと考えており、ノスタルジックな遊びの風景の中にKeyならではの日常を織り込むと同時に、ヒロイン同士の横のつながりや魅力的な男性キャラクターを描き、『AIR』との差別化を図っている。
BGM
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ノスタルジーをテーマにKey所属のクリエイター総出で制作されたBGMは同社作品の例に漏れずやはり安定のクオリティ。
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OPとEDの『アルカテイル』、『アスタロア』、『Lasting Moment』は人気アニソン歌手の鈴木このみ氏を起用。ボーカル曲はどの楽曲もストーリーと密接に関わり合っていて評価が高い。
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Keyの顔とも言える麻枝准氏は当時病気療養中だったこともあり参加楽曲は少ないが、それぞれ印象的な場面で流れる『Sea,You & Me』、『Sea,You Next』、『ポケットをふくらませて』の3曲を担当していて、絶大なインパクトを残している。
グランドルート - ALKA - 及び - Pocket -
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エンディングは全6ルートで、うみを除く全員のシナリオをクリアした後にさらに2つのグランドシナリオである「ALKA」と「Pocket」が順番にプレイできるようになる。いわゆるトゥルーENDであり、このルートが本作最大の見所。
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エンディングを見るごとに、攻略したヒロインがタイトルからいなくなる演出は話題を呼んだ。
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物語の根幹に関わる重大なネタバレ注意
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本作はうみが何度もタイムリープすることによっての繰り返される夏が舞台であり、『リトルバスターズ!』の「1学期を永遠に繰り返す虚構世界」と似たような仕組みとなっている。
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うみは羽依里としろはの子供で、しろはの持つ「時編み」の能力が遺伝しており、耐えがたい寂しさから逃避するために、未来よりも強く過去にすがった時、心を過去に飛ばすことができる。(しろははこの能力のことを未来予知の能力だと考えていた。)
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未来のしろはが妊娠した際、能力によって自身が「出産の際に亡くなってしまうこと」「未来でうみがしろはを求めてあの夏(この作品の時間軸)へ遡ること」を知る。しろはは身重の身でありながら、うみが力を得ないようにするための方法を探し続けたが、そうした無理がたたり出産時に亡くなってしまう。
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しろはを亡くした羽依里は、うみをしろはの思い出から遠ざけることで能力を発現しないようにと考え、結果児童虐待(ネグレクト)のような状態になり、またうみは自分が生まれなければ母親は生きていたと考え、父親に踏み込むことを恐れ、逃げてるようになった。
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母親を知らないことから母親がどのような人なのか知りたがったうみは、しろはの十三回忌の法事に羽依里に黙ってついてきてしまい、記憶の還る場所である鳥白島で未来よりも過去にすがってしまった結果時編みの能力が発現してしまい、自身が存在しない過去にやってきてしまう。
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しかしこの夏でも父親に対して逃げ続け、母親へ踏み込む勇気が出なかった結果何度も同じ夏を繰り返し、代償として記憶が抜け落ちることで幼児化してしまう。
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作中でヒロインを攻略していくとうみが幼児化していくのはこのためである。
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つまり、この世界は未来のうみが意識を過去に飛ばすことでタイムリープしている状態であり、各ルートはありえたIFのストーリー、ALKAは皮肉にも幼児化していくことで素直になり、羽依里としろはに向き合えるようになったルートである。
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無印版のPocketのエピローグは良く言えば想像の余地を残した余韻のある、悪く言えばシリ切れトンボな結末なのだが『RB』ではここに更なるエピローグが追加。
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無印と全く異なる読後感を残すようなインパクトの強いもので、これだけの為にRBを買う価値があるという声も。
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賛否両論点
作品の設定が過去作と類似している
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本作は舞台が夏の海辺の田舎町である点や、上記の格納に含まれる物語の根幹の設定など、過去のKey作品と類似している点が見られる。
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この設定について、よく言えば良いとこ取り、悪く言えば使いまわしとも捉えられる。
グランドシナリオに到達するまでが長い
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本作の本番とも言えるグランドシナリオへ進むためにはうみを除くすべてのヒロインのシナリオをクリアしなければならず、グランドシナリオに入るまでに時間がかかる。
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『RB』によるシナリオやヒロインの追加により単純計算で2倍ほど増えており、長時間遊べるようになった一方、グランドシナリオに到達するまでに中だるみしやすくなった。
問題点
選択肢やシナリオの選び方による差分が非常に豊富だがバックログジャンプの制限が強い
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本作は、かなりやり込み要素が豊富なのだがバックログジャンプが少ないせいでセーブを残しておかないともう一度最初からやらないと差分やレコードを回収できなくなる箇所が多発する。
シナリオの攻略順によってほかのヒロインのルートの核心部分がネタバレされてしまう
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本作では重要な存在として蝶が要所に登場するが、とあるヒロインのルートにて蝶がどのような存在が言及されるため、シナリオの攻略順によってはほかシナリオの展開が予想できてしまう。
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特に、『RB』追加シナリオは無印版の対応するキャラのシナリオを攻略済みなことが前提となっている箇所がある。
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ただし、その言及もグランドシナリオで判明する事実と比べると本当の意味では核心に触れていない不完全なものであり、早期に明かすことで意図的にミスリードを誘っているとも言える。
シナリオの整合性
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シナリオについて(ネタバレ)
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-Pocket-にて七海が過去に遡ることにより、しろはが時編みの能力を発現させない世界を作りだしたが、グランドエピローグにてヒロイン全員が登場する際、なぜか鴎と紬が普通に存在している。
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二人は人間ではなく、鴎は病気により本作開始時点で亡くなっており、主人公が交流していた鴎は七影蝶が作り出したまぼろしのような存在。紬はツムギ・ヴェンダースという少女のもっていたぬいぐるみが意識をもって擬人化した存在である。
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しろはが能力を発現させないことと鴎と紬が存在していることについての関係の説明がなく、ハッピーエンドにするために無理やり登場させたように感じられる。
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無印版から『RB』への引継ぎがない
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データの引継ぎがない。よって獲得したレコードやシナリオの既読を『RB』に持ち越せない
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追加シナリオはあるものの、追加分だけ見たい無印版プレイヤーも大量の無印版シナリオを手動でCtrlスキップしなければならない。
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追加部分は完全新規のシナリオルートだけでなく、既存のシナリオの箇所でも一部新規のシーンがあり一緒にスキップしてしまいやすい。既読の引継ぎがあれば避けられたのだが特にフォローはなく、全体通してもう一度読むことを半ば強要される。
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豊富なやりこみ要素のレコードはコンプリートにミニゲームをやり込んだり特定箇所でのセーブ&ロードを駆使しなければいけないなどかなりの時間と手間がかかる。無印版のレコードをやり込んだ人にとってはかなり苦行である。
総評
Key完全新作のフルプライスタイトルとしては『Rewrite』以来、約7年ぶりとなる待望の新作であり、王道の感動に回帰した作品。
Keyの持ち味であるシナリオや音楽といった点は残しつつも、新しいシナリオライターを加えることで懐かしさと新しさを両立させ、初めて美少女ゲームを触れる人や昔からKey作品を触れてきた人のどちらにもお勧めできる内容となっている。
また、高いクオリティのシナリオや、ミニゲームや称号、サウンドボックスといった様々な機能を完備するなど総じて全体的に高水準な作品となっている。
シナリオ面などでやや突っ込みどころはあるものの評価が大きく損なわれるほどのものではなく、キャラクターに感情移入できるポイントや日常シーンでの笑える要素はしっかりと存在し、Key作品らしい良作ゲームであると言えるだろう。
余談
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本作は、Getchu.com主催の美少女ゲーム大賞2018の総合部門とシナリオ部門の1位にランクインしたほか、システム部門においても7位にランクインした。また、萌えゲーアワード2018の大賞とユーザー支持賞を受賞した。
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無印版の公式サイトでは、登場キャラクター12人の前日譚やサイドストーリーを描いたショートストーリーが公開されている(リンク)。読めばより物語への理解度が深まるが、個別ルートのネタバレが満載なので、ALKAルートをクリアした辺りのタイミングで読むのを推奨。
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PS2版『Kanon』以降、Key作品のコンシューマー移植はソニー製ハードをメインに展開されるのが通例だったが、本作は初めて任天堂製ハードで最初にコンシューマー版が発売された。
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feel.制作のテレビアニメが2025年より放送予定。
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作品の舞台のひとつである男木島ではKeyと男木島観光協会が協力し、限定商品の販売や聖地ツアー、シナリオライターによるトークイベントなどを行う「男木島灯台サマポケ祭り」を不定期で開催している。
最終更新:2024年08月13日 16:38