【あうとばーん ときお】
ジャンル | 高速3Dポリゴン・カーレースゲーム | ![]() |
対応機種 | 3DO interactive multiplayer | |
発売・開発元 | サンアイエンタープライズ | |
発売日 | 1995年12月22日 | |
定価 | 6,380円 (税込) | |
プレイ人数 | 1人 | |
レーティング | 3DO用審査:E(一般向) | |
判定 | クソゲー | |
ポイント |
日本の3DO市場末期を代表するガッカリゲー 死に体のハードに悲願の『リッジレーサー』代替品が登場 蓋を開ければグラも音質も前世代機レベル 思わずボタンの圧が強くなる重さ これはこれでプレイヤースキルが試される? |
3DO末期、年末商戦の真っ只中に発売された3Dレースゲーム。
販売は3DO REALの発売元であるパナソニックから直々に行われ、発売前には体験版も配布されるなど、力の入ったタイトルであった。
しかしいざ発売されると質の低さが露わになり、日本の3DOユーザーの間では悪い意味で伝説扱いされている一作である。
『アウトバーン トキオ』を深く知るうえでは、発売当時3DOが置かれていた状況も知る必要がある。
今作が発売された95年末は、3DO市場が完全に冷え切っていた。
94年3月の発売当初こそ先行ハードとして一定の需要を得ていたものの、同年末にセガサターン・プレイステーションが発売されると状況は一転。
まともなゲームの多くはそちらで展開され、価格が高くて売れ筋ソフトも少ない3DOは一気に居場所を失ってしまった。
95年になるとゲーム市場全体で注目を集めたのは『Dの食卓』などごく一部しかなく、同年末には雑誌「ゲーム批評」で3DO自体の反省会的な記事が書かれていたほどである。酷いときには雑誌の売り上げランキングの上位がアダルトソフトで埋まる有様であった。
ハードの終焉はもはや秒読み段階となっており、実際この半年後に3DOはソフトの供給を完全に終える(*1)。3DOを選んでしまい、他のハードを買わなかったユーザーは、他ハードをうらやむような状況となっていた。
そんな状況の中、今作はあからさまに『リッジレーサー』を意識したタイトルとして送り出された。
当時の『リッジレーサー』と言えばゲームセンターの一大人気タイトルであり、プレイステーションの移植版はハードを支えるキラータイトルとみなされていた。
セガサターンで出た『ゲイルレーサー』『デイトナUSA』も『リッジレーサー』の対抗馬と扱われるなど、当時の次世代ハード戦争においては重要な位置付けを担っており、3DOにおいても発売当初から移植希望タイトルとして雑誌に名前が挙がっていたソフトである(*2)。
その代替品が3DOで遊べるとなれば期待値が大きくなるのも必然で、プレイステーションを持っていなかったプレイヤーにとっては悲願とも言うべき作品であった。
大きな期待を伴って送り出された今作だったが、いざ世に出たそれは95年末のゲームとして著しく質の低いものであった。
ポリゴンゲー黎明期並の処理速度、重すぎる操作感は、第5世代据置機のレースゲームとして致命的。
ひとたびやりこめばボタンの圧が強くなる操作感を強制され、最終的には不自由なハンドルで車体を壁にこすりながら進むという、爽快感のないレース展開がプレイヤーを待ち受ける。
この操作性を難易度の一環と捉えれば楽しめる余地はあるが、もっと爽快な3Dレースゲームは今作以前にもいくつかあるため、おすすめできるとは言い難い。
3DO最後のクリスマス商戦、死にゆくハードに聖夜の奇跡は起きなかった。
多くのユーザーが今作を通じて語るのは、「3DOはプレイステーションに勝てない」という残酷な事実である。
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*1 ただしこれは日本市場の話。英語圏では商機を完全にすぎた9月に『Casper』が発売されている。
*2 ただしプレイステーションへの移植を前提としたようなゲームだったため、実際は移植困難であることが当初から明らかであった。
*3 プレイ動画のコマ送りで確認可能な数値。最初のステージに当たるCircuitにおいて、第三者視点にすると7fps、主観視点にすると10fpsほどになる。これは画面内のポリゴン数に応じて微妙な変化あり。
*4 序盤のミニゲーム中に全内容を読み込んだ後は、リトライ含めほぼすべての画面遷移が一瞬で行われる。
*5 ソースは当時の広告より。同じ3DOスタジオが手掛けた作品の説明書で確認可能。
*6 『Need For Speed』シリーズ最初の作品である『Road & Track Presents: The Need for Speed』の日本版タイトル
*7 ただし同『4』収録の改良版は60fpsで動作する。