チキチキマシン猛レース ケンケンとブラック魔王のイジワル大作戦

【ちきちきましんもうれーす けんけんとぶらっくまおうのいじわるだいさくせん】

ジャンル インタラクティブ・ムービー
対応機種 3DO interactive multiplayer
発売・開発元 フューチャー・パイレーツ
発売日 1994年3月20日
定価 9,680円
プレイ人数 1人
判定 賛否両論
ポイント ハイパーメディアクリエイター、ゲーム業界参入
良くも悪くも3DOの方向性を印象付けてしまった国内ローンチ
プレイヤーはレースを見守るだけ
純粋なゲームとしてはとても評価できないソフト
映像ソフトの延長やファングッズとしては高評価の声も


概要

第5世代ハードの初陣を切った3DOの、日本向けローンチタイトル。
本記事ではジャケット側面に準拠してサブタイトルも併記しているが、他サイトでは単に『チキチキマシン猛レース』と表記されることが多い。

今作を手がけたのは、当時のテレビで何かと目立っていたハイパーメディアクリエイターこと高城剛氏。
ワークステーションや本格的CGを手掛けていた、周囲のクリエイターが3DOに興味を抱いたことがきっかけで、今作の開発に至ったという(3DOマガジン 創刊準備号のインタビューより)。
企画には大手広告代理店も関与しており、大々的な宣伝の元で送り出された。その結果、初期の3DOソフトとしては大きなセールスを記録したが……

原作

『チキチキマシン猛レース』(原題:Wacky Races)とは、1968年に制作されたアメリカの人気テレビアニメである。
制作は『トムとジェリー』でおなじみのハンナ・バーベラ・プロダクション。
11台の個性的なマシンが奇想天外なレースを繰り広げるギャグアニメで、かの『スーパーマリオカート』は本作から着想を得たとも言われている(ただしソースは確認できず、推測の可能性も高い)。
2017年にはリブート版が作られた。

物語は11台のマシンに代わる代わるスポットを当てて描かれるが、中でもズルい作戦を仕掛けては裏目に出てしまう悪役・ブラック魔王は作品の中心的な立ち位置で描かれている。
彼の相棒にして愛犬のケンケンは90年代半ばにキャラクターコンテンツとして一大人気を得ていたので、『チキチキマシン』を知らない人でも一度は見た事があるのでは無いだろうか。口に手を当てて笑うシーンは象徴的で、ゲーム作品でも『ダックハント』『ライブ・ア・ライブ』などでケンケンの影響を強く受けたキャラクターが登場する。

日本では幾度となく再放送やソフト化が行われており、世代によっては高い知名度を誇る。
ユニークな題名、耳に残るオープニング、そして原語を無視したアドリブという思い切ったローカライズは好評を博し、本国を凌ぐ人気を集めることに成功。
しかし残念ながら2022年1月現在は日本語版を配信している動画サービスが無く、著作権も切れていないので、まともに視聴するにはワーナー発売の映像ソフトを購入するしかない*1
このソフトもまた、日本語版を原作としている。

開発背景

  • 今作は「ゲームに馴染みのなかった層」をメインターゲットにすべく企画された。
    • 高城氏は母と妹がゲームに触れていない事を引き合いに出し、既存のビデオゲームを「限られた層にしか相手にしないマニアックなもの」「テレビやビデオのように気軽に見ることができない」と評した上で、「みんなが遊べるようなもの、ぱっと見た目に、これかわいい! って思えるようなもの」を目指して今作を手がけたという。
  • 高城氏はRPGのような俯瞰視点が現実にありえないことを指摘し、主観視点からのアングルにこだわった描写を重点的に採用している。
    • 彼曰く「32ビット時代では、目のサイズに入る物、テレビを通した視点に近いものが作れるようになる」とのことで、テレビやビデオに近い馴染みある表現を目指したらしい。
      • この特徴は、後発の高城作品全般にも取り入れられている。

ソース:3DOマガジン創刊準備号のインタビュー

記事内容に関する注意事項

本記事ではゲームの乱数に関する話題を扱うが、その厳密な仕様は公表されておらず、あくまで推定である点には注意。
もし統計的に有意な情報を手に入れるのであれば膨大な時間が必要となり、検証は困難を極める*2
以下「Races TVモードで各マシンが優勝する確率は等倍」という仮定のもとで記述する。


特徴

  • 背景設定
    • 世界征服に乗り出すため10人に分身したブラック魔王。プレイヤーの目的は彼らを全員倒し、野望を阻止する事である。
    • 魔王を倒すには、今作オリジナルの相棒マシン・T-BORN WREXの協力が不可欠となる。
      • このマシンはドクターH*3による発明品で、今作の案内役としてプレイヤーに色々と話しかけてくる。担当声優は、日本語版のナレーションでもお馴染みの野沢那智氏。
      • WREXには「秘密メカAI・NA-CHI」を搭載しているとのこと。何とも直球なネーミングである。
    • 今作ではブラック魔王があらゆる時代・世界に移動して悪さを始めるが、この移動もドクターHから盗んだ発明品によるものらしい。
    • これら裏設定はいずれも、3DOマガジン創刊準備号のインタビューに掲載されていた。
  • ゲームの流れ
    • ブラック魔王を倒すには、『チキチキマシン』でおなじみのレーサー10人に対応したドライビング・カードを手に入れる必要がある。
      • プレイヤーはまずRaces TVモードに挑戦し、勝利することでカードを入手できる。
      • 3DOマガジンのインタビューによると、T-BORN WREXの動力は「ベッティング・エネルギーシステム」なるものを採用しているとのこと。優勝者を的中させなければ、魔王を倒しに行くためのエンジンがかからないらしい。
    • カードを手に入れたら各レーサーの世界に突入可能となる。冒険を進め、一番奥に潜むブラック魔王を捕まえればその世界をクリア。
    • これを繰り返し、10人の魔王全員を捕まえれば晴れてゲームクリアとなる。
  • 作風
    • テキストは日本版のノリに準拠しており、再現度はかなり高い。
      • ただし原作と比べて言葉遊びのような言い回しが多く、独特な雰囲気を作り出している。
      • 特にキザトト君*4は語尾で変なダジャレを連発する謎なキャラ付けになっていて印象深い。
    • ブラック魔王の作戦は原作と比べ、ドラえもんチックな超科学的な兵器を持ち出すものが多い。
      • 「マシンを小さくする」「動けなくする」「空中浮遊させる」など、CG素材を増やさなくて済む作戦が多く、限られた工数で映像を増やす工夫が垣間見えるのは興味深い。
    • 声優は基本的に原作準拠だが、一部キャラは異なる声優が担当している。

問題点

  • 本作はレースゲームでは無く、プレイヤーの選択肢に応じてゲーム展開が変わるだけのアドベンチャーゲームである。
    • 格好の題材にもかかわらず、プレイヤーがレースに参加する要素は無い。確かに映像美に特化したハードではあるのだが…
    • 3DOマガジンの5月増刊号によると、レースができない事を指摘するユーザーの声は開発元にも多数届いたという。
  • 一応過去にもレースでないシリーズ作品*5は出ていたのだが、今作はただレースしないだけに飽き足らず、アドベンチャーゲームとして見ても問題がある。
    • 今作は推理したり謎を解いたりと言った要素が一切無く、選択肢による攻略の成否は大半がランダムに決まる。言うなれば3DO版『マインドシーカーとも呼ぶべき代物である。
    • 確かにライトユーザー重視の企画主旨には沿っているが、従来のゲームユーザーからは強く否定されている。
      • 高城氏は3DOマガジンのインタビューで「3日徹夜で終わらせてほしくは無く、家から帰って(アニメ放送を見る感覚で)30分とかで遊んで欲しい」と答えていたが、こうしたコンセプトはゲーム内や説明書で全く提示されていなかった。
  • 要所要所で入るムービーやボイスのほぼ全てがスキップできない。
    • たとえばゲーム起動後、開発会社のロゴムービーを毎回のように見せられ、セーブデータを続きから遊びなおすたびに1分近くかかってしまう。
    • プレイヤーが何か選択を行うたびにナレーションやT-BORN WREXが喋るのだが、その数秒間プレイヤーは一切操作不能。
      • レースや格闘などの対戦ゲームでキャラ選択時にボイスが入る作品は数多くあるが、その間でも操作できるのはごく当たり前の仕様である。
  • 家庭用ゲーム機にもかかわらず、PCソフトのようにポインタカーソルを動かすUIを採用。
    • 後述のマルチ展開の都合と思われるが、カーソルが遅くて単純に不便である。
    • 普通のゲームならボタン数回で済む操作に対し、わざわざ方向キーを押しっぱなしにしてポイントを動かす手間を求められる。何度も行うモード選択もファイル読み込みも煩わしい。
      • Yes/Noで答える質問も、いちいちカーソルを遠くまで運んで選択しなければならず、テンポが悪い。
      • ボーっとしていると勢い余ってポインタが遠くに移動してしまい、選びたくない項目を選択してしまうことも。
    • しかも当時は3DOマウスが発売されていなかったので、コントローラー操作一択である。
  • 後述する本編と対照的に、オープニングの出来は悪い。
    • BGMがぶつ切りでリピートされる上、何の説明も無く突然10人に増えるブラック魔王はどこか不気味。

Races TVモード

本編のTripに必要なドライビング・カードを集めるモード。

  • プレイヤーがレース対決を行うのかと思いきや、ゼロゼロマシンを除く10台のマシンのうち2つにベットを賭け、その後始まるレース映像の動向を見守るだけのモードとなっている。
    • 賭けたマシンのどちらかが優勝すれば、レーサーに対応したカードを獲得できる。ただし推測の余地は一切無い。
      • 競馬や競輪のように戦績などを参考に賭ける要素は無く、完全な運。
    • いちおう選択時にレーサーの調子がナレーションで読み上げられるのだが、戦績と関係あるのかどうかは怪しく、再度選択し直すと別のメッセージになる場合がある。
      • しかも内容はデタラメで、たとえばヒュードロクーペ*6に賭けた際に「今日はドラゴンお休みらしいよ」というナレーションが入っても、その後のレース映像にドラゴンが出てくる場合がある。
    • なおエンディングを見るには全員分のカードを手に入れなければならない。つまりレース結果を10回も当てる必要がある。
      • 当たる確率はわずか2/11で、それまでにかかる時間の期待値は12分ちょっと(後述)。全部当てるには2時間超かかる地獄である。
  • レース映像は本作オリジナルの3DCGアニメーションとなっている。クオリティは時代相応に良い出来栄えで、原作の雰囲気も踏襲されており、動画を楽しみつつゲームとしても味わえる3DOの方針が活かされている。
    • しかし収録されているアニメは25本しか無く、再生内容はランダムで変化するため、遊んでいるうちに何度も同じレース展開を見せられる。
    • アニメ映像は冒頭からレース結果まで地続きとなっているために一度見た映像は序盤で結果がわかってしまう。
      • それなのにゲームを進めるほど既に見た映像を引き当てやすくなるため、高城氏の推奨した方法でじっくり遊ばない限りどんどん退屈になっていく。
    • また異なるアニメ映像でも展開の使い回しが散見され、新しいパターンかと思ったら既視感のある内容を見せられる事も。
      • 10台中5台は2つある勝利パターンの両方で同じ勝ち方をし、残りのうち2台も直前に同じ場面が入る。
    • 本作はアニメーションに関しては評価が高いのだが、こうした難点の数々により楽しめる密度は薄くなりやすい。
+ 参考:期待値計算の詳細
  • 今作のプレイ時間は以下のデータを元に算出。
    • Races TVモードで1レースを見る時間は2分14秒とする(後述)。
    • レース映像は10人×2種類の勝利パターンに加え、ブラック魔王の勝利パターン5種が確認でき、映像は25本ある。
    • 上記のデータを元に、全レーサーが等確率で勝つものとして計算すると、勝者を1人当てるのにかかる時間の期待値は12分17秒(ラスト1人を当てる場合のみ24分34秒)となる。
    • よってRaces TVのクリア時間期待値は2時間15分である。
  • ゲーム部分をもっと酷くしているのがUI。30分程度のアニメに対して2時間以上も遊ばなければならない原因は、テンポの悪さにも起因している。
    • 賭けマシン選択からレース終了まで、具体的な流れは以下の通り。
      行動 所要時間(秒)*7
      ベットする車をポインタで選ぶ。 5
      ナレーションが選んだ車に対して解説を行う(操作不可・スキップ不可) 5
      選んだ車をベットするかどうか、画面下にある確認用のボタンまでポインタを動かして押す。選び直す意味は無さそうなのに手間だけかかる。 6
      2つ目の車を選ぶようナレーションがまくしたてる(操作不可・スキップ不可) 3
      1〜3を再び繰り返し、レース開始。 16
      1分半ほどレース映像が流れる。一度見た映像が来たら再び見る意味は無いのだが、内容の如何を問わずスキップ不可。 84
      10秒ほどの結果発表シーン。外れた場合はブラック魔王が勝った場合を除きナレーションが必ず同じセリフで煽ってくるが、もちろん例によってスキップ不可 15
    • これら全て合わせて2分14秒。アニメ本編以外で毎回50秒使うのもさることながら、一度見たパターンを引き当てると、テレビでCMが入ったときと同じくらい待たされることに。
      • その酷さは「FF7のINT版スーパーノヴァより長い」と言えば、伝わる人には伝わるのではないだろうか。
      • ナレーションの内容はレーサー選択を除いて毎回全く変化が無いので、これも単調さを助長している。
+ 参考:流れるレースのパターンとそれぞれの再生時間
  • ※それぞれ1秒程度の誤差あり。
  • ※全パターン共通で流れる序盤のシーンも含む。
  • ※ゼロゼロマシンのみパターンが多いが、1つ1つの出現確率は明らかに低い。先述の通り、本記事では11台のマシンが等しい確率で優勝するものとして扱う。
優勝マシン 内容(ブラック魔王の悪だくみ) 再生時間
1.ガンセキオープン 地雷を設置 1:17
巨大な球でボーリング攻撃 1:37
2.ヒュードロクーペ 瞬間移動装置 1:14
ワイヤーネットで進路妨害 1:21
3.マジックスリー 瞬間冷却装置 1:41
重力異常装置 1:26
4.クロイツェルスポーツ ミニミニマシン 1:31
なし(8番が橋を落とす) 1:10
5.プッシーキャット ニセ看板で洞窟に誘い込む 1:20
なし(9番の優勝予告で始まる) 1:18
6.タンクGT タイムマシン 1:20
岩を落とす 1:06
7.ギャングセブン なし(全マシン全力疾走) 1:03
大量のタイヤを落とす 1:49
8.ポッポSL ダイナマイトを投げ込む 1:35
いい夢見せるマシン 1:38
9.ハンサムV9 橋を爆破 1:26
時間停止装置 1:16
10.トロッコマシン 瞬間接着剤入りミサイル 1:28
ネタ切れでまじめに走る 1:21
00.ゼロゼロマシン なし(崖崩れで生まれた坂を上る) 1:11
なし(序盤でエンスト) 1:18
ゴムを張って反動で移動 1:31
地雷を設置(1番優勝版とは微妙に違う) 1:13
まじめに走る 1:31
  • これらの値より、レースにかかる時間の期待値は1分24秒である。
  • 地味なところだとマシン選択時にいちいちサイケデリックな点滅が入り、ポケモンフラッシュのような不快感を覚える。
  • ちなみにこのモードを始める度に毎回オープニングが流れるのだが、これも1分くらいあるのに飛ばせない。

Tripモード

本作のストーリーモード的な立ち位置。
Races TVモードで手にしたドライビング・カードに対応する世界へ突入し、最深部のブラック魔王を倒せばそのステージはクリアとなる。

  • 根本的な問題として、Races TVモードをクリアしないと遊べない。裏を返すと、これを遊ぶためだけに平均12分もかかる。
  • 中身はクリック式アドベンチャーだが、この手のジャンルにありがちな推理要素やパズル要素は全く無い。画面に大きく映っている物を片っ端から調べていけば何も考えなくてもゲームが進む。
    • そしてゲーム進行の殆どが運で決まる。
      • ブラック魔王とギャンブル対決しなければ進めなかったり、分かれ道の正解をノーヒントで突破しなければならなかったり、酷いものでは1/4の確率でゲームオーバーになってモード選択画面に戻されるというものも。
      • 正解が固定となる選択肢もいくつかあるが、初見では判断する余地が無い。
    • 本作が総じて運ゲーなのは既述の通りだが、前情報無しで遊ぶのであれば「こっちも運ゲーか…」と失望すること間違いなし。
  • 実は時間制限が付いているのだが、設定がかなりルーズで、間に合わなくなることはほとんどない。
    • この点を上手く調整していれば、まだゲーム性のある物になっていたかもしれない。
  • こちらもテンポが最悪。
    • モード選択画面から自分の望むステージで操作可能になるまで4分もかかる。
    • 具体的な流れは以下の通り。
      行動 所要時間(秒)
      Tripモードを選び、ロード終了を待つ。 8
      突然ドアの画像が現れ、数秒程度の操作不能期間ののち、ポインタをドアに合わせてボタンを押す。 6
      部屋の中に入る映像のあと、画面真ん中に位置するマシンにポインタを合わせてボタンを押す。 5
      マシンから降りてきた梯子にポインタを合わせてボタンを押す。 10
      WREXのおしゃべりのあと、ロードを経てステージ選択画面へ。ここまで約40秒かかるのだが、一連の流れをやらされる意味は無きに等しい。 10
      出発したいステージをポインタで選択する。 8
      そのステージで良いかどうか確認が入るので、画面左下までポインタをわざわざ動かして選択する。キャンセルする意味は全く無く、無駄でしかない。 5
      カードをマシンに挿入する演出。地味に長い。 20
      WREXのおしゃべり(毎回パターン固定)が再び入り、たとえ初回プレイでなくてもチュートリアルを聞くかどうか選択を求められる。 12
      例によってわざわざポインタを動かし、出発を選ぶことで、ようやくステージに出発する(この出発演出もかなり長い)。しかしここで謎の魔女が登場し、2分近くに渡って出発先のステージにいるブラック魔王の様子をわざわざ見せられる(例によってスキップ不可)。この魔女は原作に全く登場しないオリジナルキャラクターで、姿形すら存在せず、無理やり挿入した感じが強い。初見プレイ時はともかく、ゲームオーバーになってやり直しを余儀なくされた場合はじれったいことこの上無い。 約150
    • 問題なのは、ステージをクリアしたりゲームオーバーになったりする度にこれをやらされるということ。魔女パートを除いても2分浪費するのはあんまりである。
      • 冒険の最中にゲームオーバーとなる機会は多く、この冗長な流れを何度も求められる。
      • これだけ長いくせにプレイヤーがやることは実質ステージ選択だけ。他のゲームなら数秒で済む行動なのだが。
      • コイン損失に備えてセーブすると、さらに30秒かかる。
  • ゲームシステム周りも難あり。
    • このゲームには通貨の概念があり、各ワールドをクリアするごとにコインを1枚入手できるようになっている。
      • ゲーム開始時は2枚持っている。
    • ゲーム中、このコインが無いと進めない箇所がいくつかあるのだが、運が悪いとコインを全て失い、クリア困難になってしまう。
    • 基本的にロード機能を駆使すればこのような問題は起こらないが、万が一この状態でセーブしてしまった場合、再びRaces TVでカードを入手し、一度クリアしたステージをもう一度踏破してコインを入手しなければならない。
      • リカバリーにはおよそ30分はかかるだろうか。
  • アドベンチャーゲームの要となるストーリーも、裏設定を知らないとかなり雑に見えてしまう。
    • 今作のストーリーは「ブラック魔王があらゆる場所で世界征服を目論んでいる」と謳われているが、実際はやる気を疑うような脱力ものの作戦ばかりを行っており、しょうもない悪巧みを阻止するためだけにプレイヤーは駆り出される。
      • その作戦はと言うと「お化け屋敷を爆破する」などは(世界征服要素ゼロだが)まだマシな方で、「通りがかりの人に片っ端から岩を落とす」「街中の人に手当たり次第惚れ薬を盛って混乱させる」といった世界征服と通り魔を履き違えたようなもの、「色んなレーサーにファンシーなパーツをあげて脱力させる」といった意味不明なもの、挙げ句の果てには「とりあえずそれっぽいからピラミッドを建てる」「とりあえずそれっぽいから地下帝国を作る」といったいい加減な物も。
      • それどころか「賞金獲得のためにレース用のマシンをチューニングする」といった悪事と言えないものまで阻止しなければならない。
    • 「ブラック魔王の世界征服を阻止しなければ大変なことになる」というのはオープニングから強調されているのだが、頑張ってRaces TVをクリアした末にこの内容はあんまりである。
      • 上述の魔女の下りでは、こんなストーリーを聞くために毎回2分間待たされる。
    • 3DOマガジンのインタビューによると、ブラック魔王の目的は「時空を超えたあらゆる世界で同時多発的に大暴れすることにより、その世界の人々を自分と同じ愉快犯に変え、愉快悪の世界征服を企んでいる」とのことらしい。
      • この事情を踏まえると一連の行動も納得なのだが、ゲーム本編や説明書では一切解説されていないので意味不明なことになっている。

評価点

  • 「普段ゲームを遊ばない層に向けた作品」というコンセプト自体は、これ以上無いほど成立している。
    • 今作にはテクニックなどが介在する余地が一切ないが、裏を返すと誰でも遊べるゲームなのは間違いない。
    • 同じ方向性は後に任天堂も『Touch! Generationsシリーズ』で模索することになる。今作も(やり方こそ極端ではあったが)先見性がある試みだったのは確かである。
      • 特に3DOは家電としての側面もあったため、普段ゲームに触れない層へのアピールとしては有意義なものがあったと言える。
    • 後述するが、今作を強く支持する層はそれなりに確認されている。
      • 発売後、高城氏に届いた手紙の中には90代のユーザーからの声もあり、その内容は「初めて孫とできるゲームができた」という心温まるものであった(3DOマガジン'94年11月号より)。
  • ライト層で無くとも、Races TVモードは初めのうちなら問題なく楽しめる。
    • 賭けたマシンの行方を見守るのは、たとえ運ゲーであっても十分にハラハラできる。
      • ゴール寸前で結果が変わるパターンもあるため、初見の映像ならスリル満点のレースを味わえる。ゲームとしてプレイヤーが介入できる都合、この点は単なる映像ソフトには無い長所であり、3DOの目指した「インタラクティブ」が正しく実現できている。
    • とはいえ同じ映像を何度も見るうち、他の運ゲーよろしく単調になるのも長くはかからないのだが。
    • 元々日本での放送時はレース結果を当てる懸賞企画を行なっており、時代を超えてこれを再現したのは評価できるかもしれない。
  • 問題点でも軽く触れたが、Races TVモードの映像自体は評価が高く、ハイパーメディアクリエイターの面目躍如と言ったところ。
    • 独自のシナリオでありながら雰囲気は原作に忠実で、この点は評価が高い。
      • ブラック魔王が自分で仕掛けた罠に引っかかったり、ニセ看板を用意したり(しかも他のレーサーはあっさり騙される)等、原作のお約束はきっちり踏襲されている。
      • プロペラから下がった紐に掴まるブラック魔王、上半分だけ吹っ飛んでいくタンクGT、氷の上をスケートで移動するギャングセブン、車体が伸びるハンサムV9など、原作で見覚えのある展開も細かく拾っている。
    • 3DCGも当時としては悪くない出来栄えで、原作がアニメの世界からそのまま飛び出してきたかのような完成度を誇る。元が平面的な画風なのに、違和感はあまりない。
    • また原作で希薄だったゴール寸前のデッドヒートが色濃く書かれているのは、制作陣の工夫がうかがえる。
      • 原作でのゴール直前はブラック魔王がドジをかましてオチがつくことが多く、他のマシンの動向が描かれない事が多かった。今作ではゴール寸前の魔王がドジをかますパターンが無く、予想が主体となるシステムに合わせて他のマシンにスポットが当てられているので、上述した盛り上がりを生み出すのに一役買っている。
      • しかしこの配慮をなぜUIに生かせなかったのか…
  • 理不尽ゲーの常だが、レース結果が当たった時の嬉しさは並みのゲームで味わえないほど大きい。
    • 十数分に一度しか当たらない計算なので、たまに当たろうものならそれこそ万馬券を当てた時のような嬉しさが待っている。
  • ブラック魔王の優勝シーンを拝める。
    • 原作の彼は毎回のようにドジを踏み、優勝を逃してしまう。悪役とはいえちょっとかわいそうに見えてしまう一面もあり、そんな彼の勝利をifルートの一環として見られるのはキャラゲーとして間違いなく評価点である。
      • 『トムとジェリー』でたまにトムが勝つ回はファンから愛されているが、今作のそれも同じ魅力を味わえる。
    • その展開も「まじめに走ったことで勝利する」「優勝はしているがどこか締まらないカッコ悪い終わり方になる」など、彼のキャラクター性を理解した内容に仕上がっている。
    • システム上はハズレ扱いなのだが、どのみち当たる確率は大して高くないので些細な欠点である。
  • Races TVのオープニングは、時代に合わせてオシャレにアレンジされた日本語版テーマ曲を聞ける。
  • Tripモードのチュートリアルが懇切丁寧でわかりやすい。
  • Tripモードでは原作のレーサーが総出演し、要所要所で顔を見せてはちょっとユニークな語りを見せてくれる。原作のキャラ付けを一歩掘り下げたような形で楽しむことができ、この点に関してはファン必見の要素である。
    • 原作はあわただしいレースの最中に喋るところしか確認できなかったのに対し、今作では日常的な様子を覗くことができ、レーサー達の隠れた一面を楽しめる。
  • オリジナルキャラクターのWREXは違和感の無い仕上がり。
    • カートゥーンらしからぬ派手なデザインをしているものの、ナレーションと同じ野沢氏が声優を務めているだけあり、世界観に溶け込んだセリフ回しを見せてくれる。
    • マシンでありながら人格を持っているが、この点は日本語版OPの歌詞にある「かわいい相棒」を文字通り体現している。
      • このOPテーマは原語版に存在しないもので、日本語版準拠のアレンジ作品ならではのキャラクターとも言える。

総評

仮にもローンチタイトルでありながら、ゲームとして手に取ったユーザーから極めて低い評価を受けている作品。
「レース題材なのにプレイヤーは見るだけ」「全部運ゲー」「映像と音声のほとんどがスキップできない」という破綻が3つも揃っており、ゲームに必要なノウハウ全般が欠けてしまっている。ゲームと映像の融合を目指すにしても、なぜ無難にLDゲームなどにしなかったのか、そもそも高城氏がそういうジャンルを知っていたかさえ疑われる。

ただしアニメ自体の評価(特に原作再現度)は高く、今作のキャラゲー要素を重視した層からは「評判は悪いけど楽しめた」という声が少なからずある。映像ソフトの延長やファングッズとしては、必ずしも評価が低いわけではない。
こうしたポテンシャルに対し、数々の惨憺たる問題点が足を引っ張るという、何とも勿体無い一作になってしまった。


反響

  • 作者や原作のネームバリューに加え、大手広告代理店が広告費をかけていたこともあってか、3DOソフトのセールスランキングでは常連として名を連ねていた(3DOマガジン調べ)。
    • 3DOにはゲームと縁が無い企業も多数参入していたが、日本の大手広告代理店も2社ほど参入しており、3DOローンチに大きな影響を与えている。
  • 売り上げが好成績だっただけではなく、支持する層も無視できないほど存在していた。
    • 3DOマガジンのアンケートで「買ってよかったソフト」を集計した際は、'94年12月号では9位、翌年3-4月号では7位にランクインしていた。
    • 同誌では最も良かった3DO作品を投票で決める「3DOアワーズ」が2回行われたが、'94年発売のゲームを対象にした第一回では12位にノミネートされた。
    • '95年春、パナソニックが「3DOソフトグランプリ'95」と銘打って行った人気投票では、今作が『ストIIX』に次いで2位を記録した。
      • これは投票者にプレゼントが当たる応募企画で、大々的に広告が打たれていた。
    • ただしどの結果にしても、購入者が多いソフトほど有利なアンケートである点には注意。
  • こうして結果を出していたためか、当初の3DOマガジンは高城氏をかなり肯定的に扱っていた(『チキチキマシン』自体も同様)。
    • インタビューも何度か掲載されており、誌面では長らく否定側の意見は扱われていなかった。
    • 中にはケンケンとブラック魔王を点描で描いた、力の入った読者イラストが届いた事も。
      • そのイラストではケンケンが「ゲームも面白いよ!」とアピールしていた。
    • この頃の高城氏は3DO全体のTVCMでも解説役として登場しており、3DOそのものの顔役としての役割も果たしていた。
  • しかし3DOマガジン編集部も一枚岩では無かったのか、高城氏が劣悪な後発作品を生み出してからは今作に対する感情が浮き彫りになり始めた。
    • 特に顕著なのが3-4月号のコラム「The Story of 3DO「ソフトの価値を測るもの」」。
    • このコラムは3DOのソフトの貧弱さを憂いた記事だったが、そこでは以下のような文面があった。

      中には4か月程度で作り上げた作品もあって、キャラクタや宣伝だけで売っているものも目立つ。以前からこの業界にいる人間なら「世間をなめている」としか思えないような作品が話題になったりしている。

  • そしてそのすぐ下には、『チキチキマシン』の写真と共に「見かけは派手だが、たった4か月で作ったソフト。それなりである*8。」と書かれている。直接的な言及は避けているが、あからさまに『チキチキマシン』を揶揄していた。
  • このコラムには「情熱を持って作られた素晴らしいソフトを、つまらない成りゆきからできてしまったつまらないソフトに埋没させるな」「広告や、キャラクタなどで選ばない」「ゲーム本来の面白さで選んでいただきたい」と厳しい論調が書かれており、3DOの好セールス作品(および『チキチキマシン』に売り上げをもたらした大手広告代理店)を強く糾弾する姿勢が見られた。
    • 3DOソフトに対してよくある否定的な意見として「映像美を謳うばかりでゲームとしての中身が無い」という物があるが、ローンチである今作はその印象を強めた側面がある。
    • 後述するが、この記事では他の高城作品も暗に批判している。
  • 編集部の態度が決定的に現れたのが、翌号の増刊号。
    • ここでは徳間書店の10人の編集者が様々なソフトを遊び「買おうと思ったソフト」を選んでもらう企画で、10点から0点まで様々な点数が付けられていた。しかしそこでは『チキチキマシン』に「買いたい」を選んだ編集者は10人中1人しかいなかった。
      • 他の人気作が5点以上は付けられる中、明らかに辛辣な評価となっている。
      • このレビューの信頼性に議論の余地はある*9ものの、少なくとも編集部が本作に良い感情を持っていなかったのは確かである。
  • この時期を境に、3DOマガジンでは『チキチキマシン』を好意的に扱わなくなった。
    • 上記増刊では「期待しているゲーム」の歴代アンケート結果に対して「マスコミがいかにユーザーを扇動しているのかがよくわかる結果だと思う」というコメントが添えられた。
    • 先述のパナソニックのアンケート結果にも「松下ならではのタイトル*10がランクインした」とユーザーの総意では無い事を訴えるような紹介が書かれていた。
  • 3DOで『Dの食卓』をヒットさせた飯野賢治氏は雑誌「ゲーム批評」において、本作がユーザーからも批判が集まっていた事を明かした。
    • ワープ(飯野氏の会社)へ届いたアンケートによると、「3DOで一番つまらなかったソフト」の内訳は、今作がダントツ一位だったとのこと。
      • ただしこちらも、売り上げが多い作品ほど不利なランキングである点には注意。
    • また「3DOマガジンのアンケートでは高城作品の中古売却率が高かった」とも告げていた。
      • なおこの情報は雑誌で公表されたわけでは無い。おそらく編集部経由で知った情報と見られる(当時の飯野氏は3DOマガジンで頻繁にインタビューを受けていた)。
  • 不評の陰で支持者もいた要因には、3DOユーザーが「映像」を重視していた点も大きいと思われる。
    • 3DOマガジン読者はM2(3DOの後継機)に対し、ゲーム性より映像要素を求める傾向が多く見られていた。
      • '95年9-10月号によると、一番期待しているのは「3Dポリゴン格闘ゲーム」だったが、2位はアニメを使ったゲーム、そしてRPG、レースゲームと続き、5位は映画のゲーム化(インタラクティブムービー)だったという。
      • 3DOで乱造されたインタラクティブ・ムービーはゲーマーから厳しい目で見られたとされているが、3DOユーザーからは好意的に受け止められていたことがわかる。
    • 『チキチキマシン』と同時発売された3DOソフトの一つに『京都鞍馬山荘殺人事件』が存在するが、ネット上での本作のレビューは「実写で推理アドベンチャーが遊べる」という観点の賞賛がかなり多い。
    • ゲーム面に問題はあるがアート方面の評価が高い『鉄人』も、3DOマガジン読者からは好意的な反響を得ていた('94年12月号の「買ってよかったソフト」ランキングで6位を記録)。
  • 時期が経った現在、ネット上では「クソゲー」と扱う意見は多いものの、当時楽しく遊んでいたというプレイヤーや、好意的に推す声も散見されている。
    • 否定的なファンの意見には、GB版*11とセットで酷評する物もある。
    • 好意的な意見としては「家にあった物を遊んでいた」「映像ソフトとしては悪く無いと思う」といった、宣伝効果とは関係無い評価も少なからず見られる。
      • ライトユーザーを視野に入れた方針自体は、ある意味成功していたと言えるのかもしれない。
    • ネットニュースメディアのねとらぼでも、「世間で酷評されているゲームを愛するユーザーを紹介する」という企画の中で、本作を取り上げた回がある。(参考

余談

  • 原作はアメリカ発のコンテンツだが、今作は意外にも日本国内でしか発売されていない。
    • 3DOマガジン創刊準備号のインタビューによると、当初は北米での展開も想定していたという。
    • ただし3DOはリージョンフリーなので、北米ユーザーが本作を遊ぶこと自体は可能である。
      • 日本語のリスニング能力が前提になるうえ、日本語版を前提とした作風になっているため、まともに理解する敷居は高いが……
  • ややこしいことに、本作がレースゲームでない事はパッケージにも帯にも明示されていなかった。*12
  • 「3DOのローンチ」という立ち位置から専売タイトルと誤解されやすいが、Mac版(タイトルは何故か原題の『Wacky Races』)やWindows版(タイトルはサブタイ無しの『チキチキマシン猛レース』、後述のPSとのマルチとは別)も発売されたことが確認されている。
  • 上述のねとらぼの記事では、プレイヤーが「クリアに40時間かかった」とレビューしていたが、誤情報の可能性がある。
    • Races TVのクリア時間期待値は2時間ちょっとで、Tripモードもせいぜい2~4時間あればクリア可能である。相当非効率な遊び方をしても10時間超過するとは考えづらい。
      • プレイヤーの発言を信じるなら「別のゲームと混同した」「何らかの思い込み」「乱数が極端に偏るような未知のバグに引っかかった」のいずれかと思われる。
  • 今作には多人数用のプロトタイプ版が存在し、一般公開されていたことがある。
    • 「LOGiN」93年9月17日号によると、展示場「トヨタオートサロン アムラックス大阪」において、最大16人で遊べるインタラクティブムービーとして公開されていたようである。
      • この記事は3DO発売より前に書かれたものだが、画面写真に写っていたのは今作と同じ3DCGであった。3DOマガジンの創刊準備号で高城氏が述べたところによれば、今作は多人数に作ったソフトを改変したとされており、発言と一致する。
      • このコンテンツは『オートドローム』と呼ばれていた。
      • なお当該の施設は2003年6月に閉鎖されたらしい(関係者のmixiコミュニティより)。
    • 後にトヨタは非売品3DOソフトをいくつか展示場に置いており(参考1参考2)、パナソニックや高城氏と蜜月関係にあったものと見られる。
    • 体験した報告はネット上になく、幻のゲームと呼んで差し支えなさそうである。
  • その後の展開
    • 高城氏率いるフューチャー・パイレーツ社はその後も3DOのソフト開発・販売に力を入れていた。
      • 本作の後には週刊少年チャンピオンの人気漫画『マカロニほうれん荘』、当時NHKで放送していた海外アニメ『モンタナ・ジョーンズ』をゲーム化したほか、『チキチキマシン』も2作目となる『チキチキマシン猛レース2 イン・スペース』をリリースしている。この『イン・スペース』はまともなゲーム要素が追加されたことに加え、レースを行うモードもきちんと追加されている。
    • テレビから離れて久しい高城氏だが、表舞台を去った後は悠々自適な生活を送っており、令和に入ってからも自著の出版などで活動している。
      • かつての「ハイパーメディアクリエイター」という肩書きは流石に使用しておらず、20年以上経った現在では良くも悪くも時代を象徴する"死語"として話のネタにされやすい。
  • 高城氏のプッシュをやめた3DOマガジンは彼の作品に対し、かなり辛辣な評価を繰り返していた。
    • 『チキチキマシン』を暗に批判したコラムでは『マカロニ』の写真に「コミックの人気キャラを使用、吉本総出演という豪華さだが、それは確実に制作費に跳ね返っている」との説明があり、『モンタナ』の写真には「フューチャー・パイレーツの低年齢向けゲームだが……」と書かれていた。
      • コラム掲載号では『マカロニ』『モンタナ』の紹介記事も書かれていたが、お構いなしであった。
    • 『チキチキマシン』に1点が付けられたレビューでは『マカロニ』に対しても1点が付けられ、『モンタナ』に至っては0点という辛辣な結果が現れた。
      • 後者に対しては「ゲームとは言えない」とまで吐き捨てられている。
    • 真骨頂は最終号掲載のコラム。
      • 筆者は『マカロニ』『モンタナ』を3DOの価値を下げた作品群と評したうえで、『モンタナ』に対しては以下の文を綴っていた。

        今だからはっきり言う。最も許せないソフトである。こんなソフトを作るヤツも、売るヤツも人間性を疑わざるを得ないのである。

  • かつて3DOを中心に活動していた飯野賢治氏は、雑誌「ゲーム批評」で「エビスからの手紙」という連載コラムを開始したが、その一発目で高城氏の作品を大きく非難したことで知られる。先述のユーザーアンケート結果もこのコラムで明かされたものだった。
    • 曰く「この人はホントに好きでゲームを作っているのか?」「「緑を守ろう!」っていってる人が山火事起こしているようなもの」とのこと。特に『モンタナ・ジョーンズ』に対しては「この5年遊んだゲームの中で一番つまらなかった」とまで吐き捨てた。
    • これには共感の声が大きく集まり、知人からは「自分もおかしいと思っていた」との声も届いたという。
    • このコラムで味をしめたのか、飯野氏はこの連載コラムで方々に喧嘩を売るようになり、読者からの批判を強めるきっかけになっていく。
    • コラムでは毎回のように高城氏からの返信を催促し、しまいには自分が作ったゲームのパッケージでもネタにし始めていた。
    • しかし散々アピールし続けたゆえか、ゲーム批評ではとうとう二人の対談が実現した。
      • 2人は険悪なムードになるどころか、海外渡航を頻繁に経験している者同士で意気投合し、意外と平和な形で対談を終えていた。
      • 飯野氏は何かに付けて多方面と喧嘩していた事で知られているが、個人レベルでは他人の長所を絶賛するなど人当たりの良い一面もあり*13、今回のケースもそうした一面が現れたのかもしれない。
      • なおゲーム批評と飯野氏は『エネミー・ゼロ』がきっかけで絶縁となったため、この対談が同誌最後の出演となった。
  • 完全な3Dレースゲームとしての『チキチキマシン猛レース』は2000年にフランスのインフォグラムが出した『Wacky Races』(PS/Win/GBC)まで待つことになる*14
    • こちらは道中に配置されているアイテムを取って使いながら競うという「マリオカート」ライクなスタイルとなっている。
    • 見下ろし型の2Dレースゲームとしては1992年にアトラスより発売されたGB用ソフトが、一本道かつ一方通行の『ポールポジション』ライクなレースゲームとしては前述の続編『イン・スペース』が存在する。
最終更新:2025年03月20日 00:07

*1 映像ソフトにおいて日本語字幕に切り替わる箇所があるが、これは本放送当時尺の都合上カットされ元々音声が無い為、及びクルクルパーやキチガイといったセリフが時代にそぐわないとされVHS版の販売を担当した日本コロムビアがカットした音源をワーナーがそのまま使用している為である。

*2 今後クイックセーブ可能な3DO互換機が生まれれば、検証が容易になると思われる。

*3 3番「マジックスリー」を操る発明家。メカニックの知識に長けており、マシンを様々な姿に変形させて優勝を狙う。日本語版では彼の技術に対して「忍術」という秀逸な訳が付いている。

*4 9番「ハンサムV9」のレーサー。5番「プッシーキャット」のミルクちゃんにぞっこんで、レースの最中にいいところを見せようとする事が多い。マシンはことあるごとにすぐ壊れ、ブラック魔王の代わりにオチを務めた回もある。

*5 FC版はケンケンを主人公としたアクションゲームだった。

*6 エントリーナンバー2番。お化け屋敷をモチーフにしたマシン。屋敷の窓からたまにドラゴンが出てきて、様々なギミックを披露する。

*7 次の行動に移るまでのロード時間を含む。

*8 この記事では「1年という短期間でも良い出来に仕上げたソフトもある」として『鞍馬山荘』『バーニングソルジャー』を挙げており、「4ヶ月でもきちんとした出来になった」と読めるように予防線は張ってある。

*9 教育ソフト系や洋ゲーの得票数が完成度関係なく明らかに少なかったり、ゲームジャンルそのものを根本的に否定している的外れなレビューも確認されている。ネットで見られる各種レビューとの乖離も大きい(例を挙げると、目的を全うしている実用ソフト・教育ソフトが妙に低い)。あくまで「買いたい」「買わない」を基準に選んでおり、大量のゲームを遊べる時間は限られているため、ファミ通のクロスレビューよろしく参考程度にしかならないと思われる。

*10 3DOソフトは全てのゲームが松下から販売されたわけではなく、一部は三洋電機など他の企業からも販売されていた。

*11 こちらもファミ通クロスレビューで最低点スレスレを記録した、筋金入りの不評ソフトである。

*12 一応「DIGITAL FILM」と書かれてはいるが、造語なので正しい理解を求めるのは難しい。何よりきちんとゲーム要素が追加された次回作にも同じ単語がついているくらいに適当である。

*13 自伝では自社のソフトを手がけたスタッフを所々で絶賛しており、各種作品で仕事を共にしたスタッフからも好意的な意見が見られたりする。

*14 日本では2001年にPS版とGBC版がそれぞれインフォグラムハドソンとシスコンエンタテインメントから発売された。また、Windows版も「日本語マニュアル付き英語版」という形でサイバーフロントから発売された。