ソニック・ザ・ヘッジホッグ殺人事件
【そにっくざへっじほっぐさつじんじけん】
ジャンル
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ADV
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対応機種
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Windows10 Mac 10.13
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発売元
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セガ
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開発元
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セガ(Sega Social Team)
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発売日
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2023年3月31日
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定価
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無料
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プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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ポイント
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ソニックが殺された!?(エイプリルフール) 無料&ジョークゲームとは思えないほどの出来栄え 日本語非対応なのが実に残念
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ソニックシリーズ
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概要
現地時間のエイプリルフールに合わせて、米ソニック公式Twitterの告知と共に突如としてSteamで無料公開された、ソニックシリーズ初のビジュアルノベル。セガ・オブ・アメリカのソニックのSNS担当が中心となって制作された、公式二次創作的な立ち位置のジョークゲームである。
原題の「Murder of Sonic The Hedgehog」から取って、日本のファンからは「マダソニ」とも呼称される。
プレイヤーは旅客列車「Mirage Express」の新人スタッフとなり、テイルスたちと共にマーダーミステリー(殺人推理ゲーム)の謎を解き明かしていく。
ストーリー
エミーの誕生日を祝うため、ソニックをはじめとする彼女の友人たちはイベント用の列車Mirage Expressで行われるマーダーミステリーに参加する。
列車の新人スタッフであるプレイヤーは長年この列車と共にしてきた車掌(Conductor)に乗客たちのゲーム進行をサポートするよう任される。
ゲーム開始時刻の直後、列車は突如急加速し、プレイヤー、テイルス、エミーは食堂車の倉庫に閉じ込められてしまう。
倉庫から脱出したエミーたちは「犠牲者役」に選ばれたソニックが倒れているのを発見する。ところが、プレイヤーはソニックの様子がおかしいことに気づく。彼は本当に衰弱しているようだった。
果たしてこれは本当に無邪気な推理ゲームなのだろうか?プレイヤーは探偵役のテイルスの助手となり、このマーダーミステリーに潜む謎を解き明かしていくことになる。
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登場キャラクター
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プレイヤー(Barry、名前設定可能)
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主人公。Mirage Expressで今日から働くことになった、新人スタッフ。電子レンジで料理を温める係。あまり頭が冴える方ではないが、車掌の指示に従い、テイルスの助手として推理をしていくことになる。
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デフォルト名は「Barry」のため、ファンからは「Barry The Quokka(バリー・ザ・クオッカ)」という愛称で呼ばれている。
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ソニック・ザ・ヘッジホッグ
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エミー・ローズ
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「記者」役。パーティーの主催者。車両の全ての鍵を開けられる「バースデーキー」を持っている。
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マイルス“テイルス”パウワー
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「探偵」役。テイルスとエミーの2人はマーダーミステリーのシステム上犯人役にならないことが明かされている。
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ナックルズ・ザ・エキドゥナ
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ルージュ・ザ・バット
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ブレイズ・ザ・キャット
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エスピオ・ザ・カメレオン
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ベクター・ザ・クロコダイル
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シャドウ・ザ・ヘッジホッグ
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車掌(Conductor)
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32年間Mirage Expressを運転してきた車掌の犬の老人。今日で定年退職を迎え、スパゴニアに妻とバカンスに行く予定。
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ロボットアーム
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Mirage Expressに搭載されたロボットアーム。ハイテクノロジーが搭載されており、車内の掃除からおもてなしまでをこなす。
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システム
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オーソドックスなポイント・アンド・クリック式のアドベンチャーゲームのシステムを採用しており、列車内の怪しい場所をクリックして証拠となるアイテムを集めていく。
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十分な証拠が揃ったら容疑者役のキャラクターにアリバイを尋問することができる。
正しい証拠をつきつけると、主人公が推理をまとめるため、「DreamGear」という架空の携帯ゲーム機を使ったリング集めのミニゲーム(Think!パート)が始まる。
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ミニゲームはソニックシリーズ本編のスペシャルステージのような構成で、ソニックを操作しトゲや攻撃を避けながら規定数のリングを集めなくてはならない。
落とし穴に落ちたり規定のリングをゴールまでに集められなかった場合は、ミニゲームを最初からやり直すことになる。
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これを繰り返しながら、事件の真相を追っていくこととなる。
評価点
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ミステリーとしてもシリーズ作品としても非常に良質なシナリオ。
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最大の評価点である。密室もののミステリーとしてトリックや伏線も練り込まれており、かつソニックシリーズの個性豊かなキャラクターを活かした笑いあり、シリアスあり、アツい展開ありの物語が繰り広げられる。「主人公はソニックたちとは初対面」という設定のため、ソニックシリーズのファンはもちろん、シリーズの経験が浅い人でも個性的なキャラによるミステリーADVとして楽しむことができる。
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Mirage Expressも密室ものの舞台として魅力的な作り。西部劇風のサロンや秘密の金庫が隠されたカジノなど様々なシチュエーションが用意されており、またある驚きの秘密が隠されていることからプレイヤーを飽きさせない。
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また、本作ならではの点として、今まで冒険とは縁遠かった一般人の目線から見たソニックと仲間たちの破天荒さが描かれていることも挙げられる。主人公の目線から見たソニックのクールさにはしびれること請け合い。
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メインライターは過去作で好評だったWebアニメやIDW版アメコミの脚本なども手掛けたイアン・マトラー氏。その丁寧な仕事ぶりも納得と言える。
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ネタバレ注意
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物語の終盤ではシリーズ最新作からある意外なキャラクターもカメオ出演する。当該キャラクターは『フロンティア』のエンディング後の消息が不明だったため、ファンを大いに喜ばせた。
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ADVに不慣れなソニックシリーズファンに対する配慮として、選択肢を間違えることによるペナルティはなく、間違えたとしてもヒントが出されるため気軽に物語を楽しむことができる。
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アートスタイルも優れており、ビンテージコミックを彷彿とさせるカラーで描かれた、推理ゲームでの役柄に合った衣装に着替えたお馴染みのキャラクターたちがかわいらしい。要所要所で丁寧な作画で描かれたスチルも挟まり、物語を盛り上げてくれる。
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シリーズ伝統の良質なBGMも健在。
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豪華列車でのマーダーミステリーという雰囲気に合った煌びやかなBGMから、ソニックシリーズらしい疾走感あふれるビートまで、良質なBGMが揃っている。
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クライマックスに向かう場面では過去作のある名曲もアレンジして使用されており、物語を盛り上げてくれる。
賛否両論点
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Think!パートの難易度。
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Think!パートはソニックシリーズに慣れたファン向けの難易度として調整されている。
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ストーリーが進行していくにつれて目標リングも多くなり、崩れる床や攻撃などのギミックが熾烈になっていく。攻撃や障害物に当たった場合はリングを少量失うだけで済むが、落とし穴に落ちた場合は一発アウトなのも厳しい。
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またソニックの操作性もジャンプの飛距離が必要以上に長く、急着地もできないため慣れるまでは制御が難しい。
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最終盤ではこのミニゲームを3連続で攻略しなければならない場面もあり、アクションに不慣れなプレイヤーにはハードルが高い。
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また、このパートは尋問中こまめに挟まり、スキップできないのもストーリーを読み進めたい場合には邪魔になってくる。
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しかしながらストーリーを純粋に楽しみたいプレイヤーへの配慮として、オプションにアシスト設定が用意されており、落とし穴やダメージを無効にしたりゲームスピードや必要リング数を緩和できたりとゲームバランスを自分の好みに調整することができる。
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ミニゲームの難易度調整自体も絶妙であり、何回も練習すれば上達は見えてくるバランスとなっている。決して理不尽なわけではない。
問題点
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推理ゲームとして成り立たせる都合上、「動揺していたから」といった理由で、普段ならテイルスたちに隠し事はしないようなキャラクターでも取り繕ったり、隠し事をしたりする場面がある。
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冒頭のエミーが顕著だが、本作全体のチュートリアルも兼ねてるため、仕方ない面もある。また、謎が解けた後は隠し事をしたことに対して必ず謝罪が入る。
総評
エイプリルフール企画として配信された無料ゲームとは思えないほど本格的に作り込まれた、ソニックシリーズ初のADV。
3時間ほどでクリアできる掌編ながら、シリーズお馴染みの個性的なキャラクターの魅力が引き立つ、完成度の高いミステリーとなっている。
シリーズ未経験の方でも、シリーズの大ファンでもこのスリリングな列車の旅を味わってみてはいかがだろうか。
余談
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ゲーム自体の問題点ではないが、これだけ気合の入った作りなのに、日本語に公式に対応していない。Steamストアの説明文やタイトル自体は日本語表記が用意されているのにもかかわらず、である。
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ボイスは入っていないため、英語を読むことさえできれば日本人でもプレイ可能だが、ハードルが高いのは変わらない。
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非公式ながら日本のファンコミュニティでは当初より機械翻訳modを入れて日本語でプレイする方法が模索されていた。
そして、翌2024年には有志による非公式日本語化modが公開されている(Steamガイド)。導入は自己責任で。
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本作の完成度の高さは英語圏で話題を呼び、普段ソニックシリーズをやらないゲーマーにまで波及する結果となり、リリース後5日間で100万ダウンロードを突破している。
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また、Steamストアでの評価も「圧倒的に好評」となっており、Steamで61番目に評価の高いゲームとなった。
最終更新:2024年12月31日 18:42