ソニック ワールドアドベンチャー

【そにっく わーるどあどべんちゃー】

ジャンル アクション

対応機種 プレイステーション3
Xbox 360
発売・開発元 セガ
発売日 2009年2月19日
定価 7,140円
備考 ゲームオンデマンド: 2000マイクロソフトポイント
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 なし
ポイント 3Dソニック1つの到達点「ソニックブースト」初実装
昼は圧倒的スピード感・夜は骨太なアスレチック
美麗なムービーとゲーム映像も後の基礎に
キャラの大幅削減もあって良好だが簡素なシナリオ
ソニックシリーズ

概要

HDソニックシリーズの2作目。英題『Sonic Unleashed』で、ソニックアドベンチャーシリーズの正式な3作目に位置づけられている。
頻発する長いロード等多くの問題を抱えていた前作『ソニック・ザ・ヘッジホッグ(通称:新ソニ)』から大幅に遊びやすく、爽快感をアップさせた作品である。
今作では昼と夜の2つのパートを切り替えながらゲームを進めることになり、その中の昼パートは後の3Dソニックシリーズの新たな礎を築いた。


ストーリー

毎度のごとく悪事を働こうとしていたエッグマン。
そこに現れたソニックはカオスエメラルドの力を駆使してエッグマンのメカを破壊するが、隙を突かれて捕まってしまった。
エッグマンが機械を操作すると、カオスエメラルドから色が失われると同時にソニックの姿も変貌を遂げてしまう。

そのカオスエメラルドの力を使ったエッグマンの攻撃によって、なんと地球が7つに割れてしまった!
ソニックは地上で出会った記憶喪失の妖精少年チップと共に、地球を元に戻すため世界中を冒険する。


2つのパート

昼パート

  • いつも通りのステージを猛スピードで駆け抜けるパート。
    • 基本的に奥へ向かって進む3Dアクションだが、今回からは途中で横スクロール2.5Dにシームレスで切り替わる場面もある。特定の場面ではこれまで同様、カメラワークを使った演出も入る。
  • 今作では新たに「ソニックブースト」というアクションが追加された。
    • リングを回収したり加速パネルに乗るとブーストゲージが溜まり、このゲージを消費することで超高速で敵をぶっ飛ばし、すれ違ったリングを吸引しながら走ることができる。
    • ソニックの能力は敵を倒して得た経験値ゲージで強化することが出来、昼パートではブーストゲージやスピードが伸びていく。
  • これまでのシリーズで培われたアクションも一部分引き継がれている他、レースゲームのようなドリフトも使えるようになった。
    • ストンピングやエアブーストなどは特定のステージで習得することになる。
  • ステージは基本的に一本道だが、その中でも分岐ルートがいくつかある。どのルートを通るかはプレイヤー次第。
    • ルートによって長さが違ったり収集アイテムが合ったりするのはもちろん、走破難易度も出せるスピードも違ったりする。

夜パート

  • 本作では夜になるとソニックが「ウェアホッグ」に変身する。
    • 昼パートほどのスピードが出なくなるが、伸びる腕を使った攻撃アクションが可能となる。
    • 昼パート以上にステータスが多く、成長させるごとに使える技やコンボが増えていく。
  • こちらではステージ中のスイッチを探したり、敵を全滅させながら進む謎解きバトルアクションとなる。
    • 昼パートがタイミングが重要なのに対して、夜パートは慎重さと正確さが求められる。
  • なお、昼と夜の切り替えはある箇所まで進行すると、ワールドマップ上で任意に行うことが可能。また、ステージを選択するエントランスでも昼夜逆転のオブジェクトで切り替えることが出来る。
  • ちなみに、「ウェアホッグ」の語源は「Werewolf (読: ウェアウルフ)」(狼男)。
    「Werewolf」の「Wer」は古語英語で男を意味し「Wolf」が狼を意味するので、「ウェアホッグ」は「ハリネズミ男」になるわけである。「オオカミネズミ」ではない。

評価点

  • シンプルながらも質の高いシナリオとチップのキャラクター性
    • シナリオは従来作よりもシンプルにまとまっているが、その分、ソニックとチップの関係性に力が入っている。*1
    • 本作のオリジナルキャラクターであるチップは出自もあって無知、それでいて少々食いしん坊な性格ではあるが、ちゃんとソニックや周りの人達に対して思いやりがあり、非常に好感が持てやすいキャラクター性になっている。
      + ここから先は、ストーリーの根本的なネタバレを含みます!
    • 実は 彼の正体は"ライトガイア"そのもの で、ラスボス(ダークガイア)の暴走を止めるために生み出された存在だった。
      終盤のラストスパートでダークガイアを倒すために、 ソニックと協闘するという熱い展開 が繰り広げられる。
      エンディングでは、力尽きてしまったソニックを救うために ソニックを逃しつつ自らは再び地球の核に封印される という悲壮感と健気さを感じさせる末路が、王道ながら多くのプレイヤー達を感動させた。
  • ソニックブーストはまさにとんでもない速度が出し続けられるため、これまでのシリーズを超えるスピード・爽快感を味わえる。
    • ただし、そのスピードを活かすためにはステージを覚えて適切なタイミングでアクションを繰り出す必要がある。敵からのダメージによるリスクは軽減されたが落下ミスの危険性は相変わらず高いため、相応に難易度はアップしている。
    • ただブーストすればいいというものではなく、急カーブではあえてブーストを切って(スピードを緩めて)ドリフトしたりと、操作のメリハリもついた。
    • しかし慣れれば最初から最後までブーストした状態で駆け抜けられるステージや、空中ブースト次第で思いもよらないルートを開拓できるステージもあり、使いこなせるほどに一気に爽快感が増す。このあたりはかなりレースアクションに近い*2
  • 前作のようなステージの途中でロードが入るような事は無くなり、シームレスに2.5Dステージとなるためストレスも無い。またこのようなステージ構成のため、程よい塩梅となっている。
    • この3D+2.5Dステージを練り上げたのが次作『カラーズ』となる。
  • 世界中のショップで販売されている食べ物やおみやげ、ステージのどこかにあるコレクションアイテム集め…と、やりこみ要素も豊富。
    • 本作ではリングを取るとブーストが少しずつ溜まり、さらにゴール時のリングをそのままショップ用の通貨として持ち帰れる。
      それを見越してか、本作の昼ステージはリングがかなり大量に配置されているうえにブーストで吸引できる他、ダメージを受けても大量のリングが一発で0にはならなくなっている。これによってリング100枚ごとの残機エクステンドが頻繁に起こるため、リトライ自体は比較的しやすくなっている。
      夜ステージではリングは体力回復アイテムとなるため配置数は減るものの、ミスしない限りリングは手放さない。
  • ステージRTAやSランク取得の他に、各地のホットドッグ屋で受けられるホットドッグミッションが用意されている。
    • 他にも街の人々の悩みを解決するサブイベントも豊富。中には通常より条件の厳しくなったステージを攻略する必要もありやりごたえがある。
  • 本作のためにグラフィックエンジン『 ヘッジホッグエンジン 』を制作。このエンジンによってグラフィックがかなり美麗に。
    • 当時の家庭用ゲームとしては珍しかった「グローバルイルミネーション処理(GI処理)」が使われている。
      • 簡単に言えば光源から壁などのオブジェクトに当たって照り返された光を描く処理のこと。ピクサー映画などに用いられており、いわゆる「CG映画」によく使われている表現である。
      • 過去の2004年の『Half-Life 2』などでは既にベイクされたライティングであったため、リアルタイムでのプレーヤーなど動くオブジェクトの変化を苦手としていたが、本作は「半球ライティング」のテクニックを活かし簡易的ではあるがリアルタイムでのイルミネーションを実現した。
      • 今でこそミドルウェアも充実し多数のゲームタイトルがリアルタイムレンダリングに採用している表現だが、本作の開発当時は1回のGI処理に専用の高性能マシン6台と余ったパソコンを総動員させて半日がかりとかなりの手間がかかっていたとのこと。また、エンジンの開発スタートは2005年からであり、かなりの年月をかけている。
      • 他のグラフィックのテクニックに関してはGamewatchで解説されているので興味のある方はいかがだろうか。
    • ちなみに今までのGI処理としては、本作を含めコンピュータの処理の大きさゆえ映画と比べるとかなりの機能の削減が行われてきた。
      • 現代ではRTX 20シリーズGPUの発売を機に、レイトレーシングなどの機能が発達してゆき、技術デモとしては2019年に『Quake 2 RTX』が、製品としては2021年に『Metro Exodus: Enhanced Edition』が完全な(レイトレースグローバルイルミネーション)RTGI処理を実現するに至った。
  • 今作のムービーは「セガVE研究開発部(のちのマーザ・アニメーションプラネット)」製。ムービー内でもGI処理が施され、一つの映像作品としても違和感無いクオリティーになっている。
  • 各ステージも個性的な特色があり、タイトル通り世界中を回っている雰囲気をうまく演出している。
    • 特に大時計台が特徴の爽やかな町並みを走破する「オレンジルーフス(act1)」は非常に高い人気を得ている。後に『ジェネレーションズ』で選抜されたことがその証左だろう。
  • カメラワークもこれまでの反省からか、大幅な改善が行われている。
    • ただし、まだ丁度良い塩梅を模索していた段階だったのか3D区間では必要以上にソニックに寄っている場面が多く、ステージの前方が見通しづらいシーンが多い。
      コレもやはり次作でさらなる改善を見る。
  • BGMもかなり好評。主題歌の「Endless Possibility」も人気が高い。

賛否両論点

  • 昼パートの必須アクションである「ホーミングアタック」が前後作と違いブーストと同じボタンになっており、変更できない。
    • 過去作では2Dソニックはジャンプの1ボタン、3Dソニックではジャンプとアクションの2ボタンのみのシンプルな操作性にまとめる傾向が強かったが、本作ではフルにボタンを使用するようになった。
    • これにより、本作では横に移動するアクション・上に移動するアクション・下に移動するアクションをそれぞれ別のボタンに配置するようにした結果、「ホーミングアタック」のボタンが過去作から変わることとなった。
      しかしシリーズで長く続いたメインアクションの操作ボタンが変わるのに馴染めたユーザーは多くなく、結局次回作から「ホーミングアタック」の割当はジャンプボタンに戻された。
    • ホーミングアタックのボタンがブーストボタンと共通になっている事により、空中で敵のロックオンを外した際にブーストが暴発し勢いよく落下死するケースがある。
    • ちなみに他作品においてはロックオンを外した状態でホーミングアタックボタンを押すと「エアダッシュ」が発動するが、本作では「ゲージがあればブースト、なければエアダッシュが発動する」という分かりにくい仕様になっている。
    • 一方で並んだリングに沿って移動する「ライトダッシュ」ボタンが独立したため、過去作でありがちだった『ライトダッシュをしようとしたら別のアクションが起きて落下死した』という現象は改善された。
  • 夜パートはやや不評の意見が目立つ。
    • 昼パートの所要時間は2〜8分と、慣れないうちは長く感じるコースが多いが、夜パートに至っては初見だと15〜30分かかることがよくある。
    • 「初っ端から落ちたら即ミスになるようなアスレチック要素が昼パート以上に多い」「ステージの途中で湧いてくるナイトメア軍団やエッグファイターを全滅させたり、決められた場所に鍵を持っていかない限り先に進めない」等、全体的にストレスが溜まりやすいステージ構成なのが原因か。
    • さらに後半になると空中を浮遊する、仲間のナイトメアを援護したりソニックの行動を妨害したりする等厄介なタイプの敵が多数登場したり、ナイトメア達がこぞってガードを習得し、ウェアホッグの基本であるゴリ押しが効かなくなるのも理不尽な難しさに拍車をかけている。
      • 特に不評なのが細い橋を渡る場面。序盤は側面にしがみつきながら渡る事でやり過ごせるが、後半になると橋の左右にトゲが配置されたり上を歩くと崩れたりする橋もあるためごまかせなくなるうえ、渡るのを急かされバランスを崩したりちょっとズレただけでトゲに当たり落下ミスとなってしまう等、殊更に攻略に時間がかかる理不尽気味な難易度である。
    • 昼パートのカメラワークは改善された一方、こちらは練りこみ不足な部分が目立つ。
      • ウェアホッグの基本的なアクションを覚えるステージであるはずのアポトス夜のact1ですら、このカメラワークの悪さのせいで棒を掴み損ね何度も落下しミスする初心者プレイヤーが後を絶たなかった。
      • 空中から崖や敵に捕まって落下回避する際の掴みボタンは、長押しし続けることでロックオン範囲内に入れば確実に掴んでくれる。しかしゲーム内だとその説明が殆どなく*3ロックオンマーカーが現れた際にタイミングよく押そうとして結果失敗してしまうプレイヤーが多い。
      • また攻撃用の空中コンボ技や空中ダッシュ技が移動にも応用できることに気付くと楽ができる箇所が多い。
    • 夜パートで敵との戦闘が始まるとBGMが専用のものに切り替わるが、1種類しか用意されておらずどのステージでも戦闘中は同じBGMを聴くことになる。よって夜パートの各ステージBGMは基本途切れ途切れになり、じっくりと聴ける機会が少ない。
  • 昼パートについても圧倒的好評という訳ではなく「ブーストが速過ぎてステージ構成を覚えない内は落下死が多発する、所謂死に覚えゲーのバランスであり根気よく周回しないと爽快感を味わえない」という声もある。
    • 「ヒーローズ」以降の慣性が強く滑るような操作性が今作にも引き継がれており、そこにブーストの加速も相まって慣れない内は挙動が制御しづらい。

問題点

  • 最終ステージとなるエッグマンランドの長さが尋常ではない。
    • 全体的に長めの構成である本作のステージだが、それでも大部分は長くても初見15~30分もあればクリア出来る。しかしこのエッグマンランドだけは、初見1時間をゆうに越えるとまで言われる長丁場になる。
    • 道中でソニックとウェアホッグを交互に途切れなくプレイして進むうえ、ラストステージらしく難易度が高いのも原因のひとつ。
      • 主な難所としては猛スピードで進み挙動をコントロールしづらいカート(昼パート)、溶岩の上を通るパイプの上を進むボイラー室(夜パート)など。
    • 何度もプレイすれば約30分まで短縮できるようになるが、それが至難の業。
  • エッグマンランド後のラスボス戦も長期戦。
    • 昼パートは大量のトラップが置かれたステージを制限時間内に走り抜けねばならず、繰り返しリトライする死に覚えゲーの調整が通常ステージ以上に色濃い。
    • 昼・夜パートに加えさらにもう一つのパートが登場するが、これがウェアホッグパート以上に鈍重で操作性も悪い。
    • 初めによるパートでのラスボスを撃破した時点でスコアの精算が行われるにもかかわらず、以降のパートでゲームオーバーになったり中断した際も夜パートからやり直しとなる。
    • 更に各パート間には度々長いロードが挟まり、テンポを削いでいる。
  • ゲームを進めるためには各ステージに隠されている「太陽のメダル」と「月のメダル」が指定された枚数必要になる。
    • 必然的に集めることになるが、何度も同じステージを探索してメダルを入手する流れとなってしまい、どうしても作業的になってしまう。
    • 特にゲーム終盤に要求される「太陽のメダル」の枚数ハードルが高め。このためにやや不評な夜パートを余計に隅々までじっくりやらされる羽目になる。昼と夜を交互に遊ばせるように、夜パートで太陽のメダル、昼パートで月のメダル……とイメージと逆のメダルが多く配置されている。
    • また夜パートのメダルは、脇道の奥の奥、隅にあるオブジェクトの裏、果てはカメラの死角、……と隅々まで探索する必要がある配置になっているため、余計に夜ステージが面倒に感じる。
    • 但しメダルは取った時点でデータがセーブされるため、入手後即座にステージを脱出しても問題ないようにはなっている(他作品の収集アイテムは入手後のチェックポイント通過やゴールが必須となっている事がほとんど)。
  • 両機種とも一部処理落ちするシーンがある。スピードが重要な作品なのでフレームは安定して欲しかったところ。
    また前作のようなステージ途中でのロードこそなくなったが、ステージ開始前のロード時間の長さは未だに問題視されている。
    • 主に一部の夜パートのステージとエントランスで目立つ。
    • 2021年にXbox Series X|Sの後方互換とFPSブースト機能の対応ソフトとなったことにより、これらの問題は発売から10年以上経って改善された。
      • 本作は他の多くのソニックシリーズと違って現行機やPCへの移植が一切存在しないため、Xboxを用意してこの機能を使用することが快適な環境でプレイする唯一の手段となっている。
  • 題名通り世界規模のストーリーなのにもかかわらず、レギュラーキャラの登場はソニック、テイルス、エミー、エッグマンの4人だけ。
    • 特にカオスエメラルドとその遺跡が物語に関わっているのに、それらと縁の深いナックルズが登場しない件については一部ファンから不満の声が挙がっている。
      • 次作『カラーズ』(Wii版)ではエミーも登場しなくなるため、今作はまだ登場キャラは多い方と言える。
    • この作品から「ソニックメインのゲーム性を重視する」という趣旨のインタビュー通り、ソニックだけに焦点をあてたゲームが主流となっていき、それ以外のキャラクターは長きにわたってスポットが当たらなくなっていった。

総評

新ソニでの失敗を活かし、システムを全面的に見なおして生まれ変わった、ソニックシリーズの新たなスタンダードの一つ。
昼パートにおけるソニックブーストなどの新アクションは、次作『ソニック カラーズ』や『ソニック ジェネレーションズ』『ソニックフォース』とこの世代後半の基礎をほぼ最後まで全うし、『ソニックフロンティア』に至るまで受け継がれた象徴となった
また、グラフィックエンジンである「ヘッジホッグエンジン」は今作以降も改良されながら使われており、高クオリティなCGでソニックシリーズを楽しめるようになっている。

しかし、本作のハイスピードアクションが極まるところまで行きすぎてしまった結果、 開発側に「ただのレースゲームになってしまう」という懸念を抱かせるキッカケを与えてしまった 。これが『ソニック ロストワールド』での迷走に繋がった。

ハイスピードアクションを強調した昼パートだけなら良作と言っても差し支えないほど評価された一方、夜パートで少なからず評判を落としてしまった不運の作品でもある。

良くも悪くもシリーズのターニングポイントとなったことは間違いなく、ソニックの歴史を大きく変えた優秀なゲームである。


ソニック ワールドアドベンチャー(Wii版)

【そにっく わーるどあどべんちゃー】

ジャンル アクション
対応機種 Wii
発売元 セガ
開発元 ディンプス
発売日 2008年12月18日
定価 6,090円
レーティング CERO:A(全年齢対象)
備考 海外ではPS2版あり
判定 なし
ポイント Wii版はSDハードとしては映像美が良好
システムは違うがソニックブーストも実装
ウェアホッグはこちらの方がストレスなし
ステージ削減でワールド感は薄め
HD版と双方揃えても損なしの内容

概要(Wii)

通称SD版。Wiiで(海外ではPS2も)リリースされたもの。
発売は日米ともにHD版より少し早いが、これは先のHD版の発売延期が影響している。
本来は全機種同時発売の予定で、ステージ・システムの簡略化や削減*4が行われたSDハード向けとしての位置づけだった。
グラフィックはPS3/360には劣るもののクオリティは高く*5、音楽はHD版と変わらない*6
評価サイトでは、夜ステージが適度に簡略化されたSD版の方が評価が高くなるという珍事が発生した。
同じタイトルを冠しているが中身は別物と言って良いレベルであり、ステージ構成はモチーフ以外全て異なっている。


HD版との相違点

  • 昼・夜を問わずステージがSD版用に用意されている。モチーフは同様。スタート前の演出も異なり、スタート前にステージ名と3カウントが挿入される。
  • ブーストがHD版のゲージ制ではなく、ストック制となっている。
    • 独自の要素としてスタートダッシュのシステムが用意されており、スタートの合図とともにタイミングよくブーストを押すとソニックがスピンダッシュしてボーナスのブーストストックが加算される。
      • 敵を倒す、ダッシュボードに乗るなどが続くとコンボが続いていき、それによってもブーストストックが補充される。リングで補充されるのは同様だがこちらは一定リングの取得が条件。
  • タウンパートが自由移動ではなくアドベンチャーパート化している。会話パートも人物の3Dイラストとメッセージが表示される形に。
  • エンパイアシティは実装されていない。マズーリはボスパートのみ。
  • 昼パートにはミッション用のステージが用意されている。
  • ウェアホッグパートは戦闘システムから格闘アクションというジャンルを除けばほぼ違うものへと変更されており、スキルが大幅削減されつつ独自の内容となっている。

評価点(Wii)

  • SDハード用ゲームではあるが、グラフィックの良さはかなりのもの。
    • 縦マルチソフトながら『ソニックと暗黒の騎士』などといったWii専用ゲームよりもソニックのモデリングはかなり良い出来になっている。Wiiでの開発のノウハウは着実に活きている。
    • PS2版はWii版に比べモデリングがかなり簡略化されているが、ハード後期ということもあってかPS2ソフトの中ではハイレベルである。
    • ムービーは明度において大幅に後れを取っているものの、それでもなお綺麗に映るので見られないほどではない。
      • ただし彩度が低いせいで暗い場面では少々見づらくなる。
  • 上述のようにウェアホッグパート(夜パート)が非常に簡略化されていることも捨てがたい評価点である。
    • 経験値を溜めていくことでアクションが増えていくのは同じだが、こちらは階段式に習得していくため煩雑さはない。
    • 攻撃アクションの操作も簡略化していて、適当にコンボしていけば大体は倒せるという塩梅に。

問題点(Wii)

  • 先の通りHD版に比べてステージはなんと2つも削られている。
    • その一つのマズーリは一応存在こそするものの、ボス戦のみ。エンパイアシティは完全になし。
    • 昼パートのact1以外は簡潔なミッションステージとなっている。既存ステージの使い回しもあるが、ミッション専用ステージが少なくない。
    • それに対して夜パートはact3まであるため、いくら簡略化されたとはいえかなり億劫である。
  • ウェアホッグのアクション面ではHD版以上に難しくなっている。
    • ウェアホッグはスパイクを履いているのにもかかわらず、HD版よりもSD版のほうが滑りやすくなっており、細かい足場を乗り継いだり、スピードを出した後の停止がやや難しい。
  • HD版に比べて、一部のボスパートはヌルくなったり演出が微妙になっている。
    • 特にラストに戦うことになるエッグドラグーンはガトリングの出が悪く、ショボい。デザインに反してこれでは威厳がない。
    • ラスボスであるダークガイアとの戦闘も、HD版と比べれば面倒さは減っているが、演出面はかなり弱められているのが欠点。
  • HD版に比べてリトライ時のロードが長くなっている。

総評(Wii)

HD版と比べても優劣付けがたい作品になっており、「○○の方が良い」などと断言は出来ない。
昼ステージのルート構築は負けず劣らず豊富であり、ことタイムアタックに限ってはHD版と違った楽しみを見いだせる作品である。
一方で、ブーストアクションには若干の癖があるほか、ステージ数が削られたことなど、残念なところも目立つ。
せっかくのハイスピードアクションステージも、ACT1しか素直に楽しめないなど痒いところに手が届かない要素は多い。

ウェアホッグパートは簡略化されているとはいえ、やはり面倒なパートであり、HD版同様にこのパートの存在自体を評価する声は少ない。
しかし様々な面が簡略化されており、アクションゲームとしては出来ることが減った反面わかりやすい内容には落とし込まれている。


余談

  • 360版のみ、砂時計で変身した際のロード中に変身ムービーが流れるという演出があるが、なぜかPS3版やWii/PS2版には存在しない。
    • また、フレームレートは360版は固定30fps*7、PS3版が最大60fpsという違いがあり、処理落ちの発生する箇所など細かい部分にも違いがある。ゲーム部分には違いはないので、どちらのハードで購入するかは好みで決めよう。
  • 時計塔の文字盤のループが特徴的なスパゴニア・ルーフトップランの昼ステージだが、偶然の一致か第一作目『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のセルアニメCMでも時計塔の針の上でソニックが戦うシーンが登場する。
    • 動画は該当記事の余談を参照のこと。
  • HD版のCG技術によって作成されたCGアニメ「ソニック&チップ 恐怖の館」がかつては映画館やジョイポリス等で上映され、現在はYouTubeなどで配信されている。こちらもなかなか面白いので、ぜひ視聴していただきたい。
最終更新:2024年08月12日 21:21

*1 因みに本作のシナリオは「ソニックX」のシリーズ構成、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ (2006年)」では前川司郎と共同でシナリオ担当した吉村清子が手掛けている。

*2 実際本作のWii版や『ソニック ジェネレーションズ 白の時空』ではチェックポイントごとの最短タイムが記録されるようになっている。

*3 特定のサブイベントアイテムをNPCに渡した時に1度だけ話してくれる。読み飛ばした場合はもう読めない上に、この台詞が聞けるのはまさかのゲーム終盤である

*4 昼ステージのレベルアップがそのステージ限りなど。

*5 PS2版はWii版より数段落ちるがそれでも高いクオリティ。

*6 削減されたステージの曲は当然入っていない。

*7 XSXの「FPS BOOST」に対応され、60fpsでプレイできるようになった。