ツクールシリーズ アルティエクエスト
【つくーるしりーず あるてぃえくえすと】
ジャンル
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声ありRTA実況付きRPG
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対応機種
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Nintendo Switch Windows(Steam)
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メディア
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ダウンロード専売
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発売元
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Gotcha Gotcha Games
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開発元
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RETSUZAN
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発売日
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2025年2月20日
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定価
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1,500円(税込)
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レーティング
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IARC:12+
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プレイ人数
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1人
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判定
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バカゲー
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ポイント
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RTAタイマー&実況機能搭載のレトロ風RPG 大いに人を選ぶネタがてんこもり リスペクト元の再現度は非常に高い
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角川ツクール公式関連作品
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概要
ゲーム開発サークルRETSUZANが開発した『アクションゲームツクールMV』製のRPG。
ツクールの公式が販売しているツクールシリーズの一つとなる。
特徴
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FC風の昔ながらのロールプレイングゲーム。
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雰囲気としては『ドラゴンクエスト』や『貝獣物語』などに近く、ランダムエンカウントで、コマンドを選んで戦うオーソドックスなRPGとなっている。
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セーブはメニューからいつでも行える任意セーブとなっている。
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ダンジョンでもセーブができる一方、オートセーブはないため、ゲームオーバーになった際などは最終セーブ地点からやり直しとなってしまう。小まめなセーブを忘れないように注意すること。
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なお、ZLボタン(Switch版)を1秒ほど押すと、タイトル画面に移行しリセットされる。当然最後にセーブした以降のデータは消えるが、これを利用した裏技やテクニックも存在する。
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勇者「ランディー」の出征式典を見に来た「アルティエ」「エル」「ピノ」の3人の少女が主人公。
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アルティエは移動系や全体回復系の魔法が使えるバランスタイプ。
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エルは攻撃力・防御力こそ他2人に劣るが、攻撃系・妨害系の魔法を多数使える魔法使いタイプ。
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ピノは攻撃力が高いアタッカーである一方、回復系・補助系の魔法も使用できるヒーラー・サポーターとしての一面もある。
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ストーリーとしては、世界を救うために旅立った勇者ランディーを手助けするために、アルティエ・エル・ピノの3人の少女が、ランディーの後を追いかける、というのが大まかな内容。
バカゲー要素
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ゆっくり実況による解説がついている
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本作最大の特徴にして、最大のバカゲーポイント。本作にはゲーム側が自動的に実況してくれるシステムが搭載されているのである。
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とりわけ、ゆっくり実況の中でもニコニコ動画において、biim氏(以下、ファンからの尊称であるbiim兄貴と呼称)が投稿したRTA動画で用いられているフォーマットを再現した、いわゆるbiimシステムを採用しているのが大きな特徴となっている。
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単にフォーマットが一緒なだけではなく、biim兄貴特有の言い回しや使用している音声・効果音ネタなどをしっかりと模倣しており、再現度はかなり高い。タイトル画面で「In respect for biim aniki.」とクレジットされているだけのことはある。
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解説ではゲーム内容のこと以外にも、「技術不足でオートターゲットが作れなかった」「3ヵ月の予定が開発に1年かかった」など、制作の裏話をちょくちょく聞けるのも笑いどころ。
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RTA動画らしく、ゲーム内タイマーも搭載されている。事前準備が無くとも早解きプレイをしやすくなっている。
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ちなみにこの実況・解説はオプションからオフにすることもできる。
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その他のbiim兄貴リスペクト要素
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ゲーム中盤で覚える呪文「バイソック」は、なんとゲームスピードがそのまま2倍速になるという効果。
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これはbiim兄貴のRTA動画で倍速編集を行っていたことに由来する。
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ある場面では、開発チームが過去に制作した自主制作アニメがそのまんま流れる。
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これもbiim兄貴のRTA動画で、レベル上げなどの見どころが無い場面で、上映会をしていたことに由来している。
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なお、このアニメの上映中にもタイマーは動いていく。キャンセルボタンでスキップ可能なので、タイムアタックをするならスキップ一択である。
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そもそもアクションゲームツクールでRPGを開発している点も、ツッコミどころである。
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素直にRPGツクールではダメだったのだろうか…と言いたくなるところだが、前述したbiimシステムを搭載するために、より開発自由度の高いツールを使用したものと思われる。
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その他、小ネタ・パロディなど
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レベルアップ時の「LEVEL UP」が「クソデカレベルアップくん」を模倣したものとなっている。
元ネタほどクソデカではないが。
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ドラクエでいうところのステータスを上昇させる種系アイテムとして、攻撃力か素早さが上がる「バキバキのみ」、HPかMPが上がる「タフタフのみ」というアイテムがあるが、使用した際にバキバキのみなら『グラップラー刃牙』関連の台詞、タフタフのみなら『高校鉄拳伝タフ』関連の台詞をゆっくりが言うときがある。
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いずれもいわゆる「語録」が現在はネットミームとして定着している。ただし後者は口調が攻撃的なものが多く人を選びやすい。
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「ギガトンコイン」という所持していると特定の橋で落っこちてしまう換金アイテムや、「ガチャのたま」という使用するとランダムで別の消費アイテムに変化するアイテムがある。これらは『じゅうべえくえすと』に出てきたアイテムのパロディである。
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この他にも、『じゅうべえくえすと』関連のパロディネタは多く、タイトル画面のロゴ・BGMが『じゅうべえくえすと』のものと類似しているなど、細かい小ネタが多い。
評価点
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biimシステムがかなり親切
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一見単なるバカゲー要素に見えるbiimシステムであるが、モンスターのステータスや次に向かうべき行先や目的などを解説してくれるため、昔のRPGにありがちな、説明不足な点を補ってくれている。
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本作は昨今のゲーム同様説明書が付属していないが、ゲーム自体はレトロRPGよろしく最低限の説明しかない。それをbiimシステムの解説で補足してくれるのはかなりありがたい。
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ネット上の攻略サイトが発展した昨今ではあまりないかもしれないが、公式攻略本を見ながらゲームを攻略しているような感覚を味わうことができる。
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モンスターの特徴や攻略方法を解説してくれる時もあり、初見のモンスターに対しても対応しやすくなっている。
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どこでも任意セーブ・ワンボタンでリセット可能という仕様
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本作にはエンカウント以外にも、ステータスが上がるアイテム、レベルアップ時の上昇ステータス、ガチャのたま、カジノ施設など、ランダムで決まる要素がかなりあり、任意セーブとリセットを悪用することで有利に働かせることができる。
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普通のRPGにおいては、バランスブレイカーとして問題点になりかねないが、本作ではタイマーを搭載して早解きプレイができる特性上、早くクリアするために、任意セーブをどのように活用して攻略するか楽しめるようになっている。
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また、タイムアタックをしない場合でも、ステータス上昇の厳選や金策などにも使える。これらは一人用のRPGだからこそできる楽しみ方と言えよう。
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ワンボタンでリセットができる点も地味に評価点だろう。小まめにセーブをしておけば、例えば毒消しを持ってない状況で毒の状態異常を受けた時に、リセットしてなかったことにするということも可能。
賛否両論点
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biim兄貴(及びリスペクト)動画特有のノリが色濃く反映されている点
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元よりbiim兄貴のRTA動画及びbiim兄貴リスペクト系動画では所謂「例のアレ」と呼ばれる、ニコニコ動画でカルト的な人気を誇る「真夏の夜の淫夢」等を由来とするネタやスラングが多用される傾向があり、本作でもそのノリが引き継がれている。
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元の動画からして「そういうネタを多用するもの」という風潮があるため、ある意味必然ではあるのだが、なにぶん使用しているネタがネタ故に万人受けするとは言い難い。
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ネタその物の好き嫌いを抜きにしてもニコニコ動画でしか通じないネタを多用している点は賛否が分かれる。所謂biimシステム(というよりbiim兄貴のRTA動画)を見たことが無い人には何が面白いのかは全く分からないだろう。
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厳密には淫夢由来ではない「またピネだ」「イクゾー(デッデッデデデデ)」なども使用されている。これらもニコ動を中心に流行ったネットミームであり、biim兄貴が使用していたネタでもある。
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また、実況や解説以外に、ゲーム内に出てくるモンスターや数字、台詞などにも同様のネタが多用されている。
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例として、ゲーム開始直後に勇者ランディーがもらえる軍資金が114514Gだったり、「ぼっちもぐら」という経験値もゴールドも0のモンスターがいたりするなど。
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このため、本作をプレイするにはそれらのネタは避けて通れない。「biim兄貴を知らないが『RTA要素のあるゲーム』故に本作が気になったので購入したは良いものの実際に蓋を開けてみたらよくわからない、気に入らないネタまみれだった」という人に対する配慮が欠けていると言わざるを得ないだろう。
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この点に関しては、「解説や実況にそのネタを使用するのはともかく、ゲーム内の台詞やモンスターにまでそのネタを仕込むのは違うのでは?」と、上記と比べてより否定的に捉える人もおり、より賛否が分かれやすい要素となっている。
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尤も本作のキモと言える「biim兄貴動画へのリスペクト」という点で言えばこの方向性は正解であると言える。故に再現・リスペクトとしてはかなり良質なものであることには違いない。リスペクトと謳いつつ、「中途半端な再現や話題作りのためのいい加減な模倣」になっていないのは十分賞賛するに値するものである。
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また、商業化において流石にある程度の線引きはされており、節操なくネタが乱用されているわけでもない。
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動画の切り抜きである元の音声を流用することはせず、声優が元ネタを意識した演技をしたものが収録・使用されており、知っている人からは「結構似ている」と好評。
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その他、biim兄貴が使用していたネタや言い回しの中でも、明らかに倫理的にアウトなものまでは再現されていない。
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RPGとしては控えめなボリューム
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RPGとしてはボリュームはやや控えめであり、普通にプレイしても6~8時間程度、タイムアタックをするなら2時間前後でクリア可能となっている。
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ボリュームが物足りなく感じやすい一方で、ゲーム内でタイムアタック用のタイマーが搭載されている都合上、これくらいのボリュームの方が、タイムアタックをしやすい利点も存在する。
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クリア後に挑める隠しダンジョンでは戦う度に強くなる裏ボスに挑戦することができ、これを撃破する為にひたすらドーピングをするなど一応やり込み要素も用意されている。
問題点
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エンカウントに関する問題点
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エンカウントの仕様がランダムエンカウントとなっており、エンカウント率にバラツキがある。
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基本的にエンカウント率はかなり高く、ゆっくりの解説でもツッコまれている他、1歩エンカに対する反応も用意されている。
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ちなみにこのエンカウント率に関して言えば、biim兄貴が投稿した『じゅうべえくえすと』のRTAで使用された「じゅうべえウォーク」を再現するための狙った仕様である。タイトル画面で「意図的に作られたクソエンカシステム搭載」と実況されたり、わざわざリセット回数が記録されることからも明らか。
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その他細かい不満点・問題点・バグなど
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バカゲー要素の項でも少し触れたが、オートターゲットがない。『FF1』など昔のFC初期のRPGにもあったことではあるが、オートターゲットのあるRPGに慣れていると少々不便。
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武器・防具は買うことができても売ることができない。本作の装備品はかなり値段が高めに設定されているため、お古を売ることができないのは地味に痛い。
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武器・防具の数値がステータスに反映されなくなることがある。装備しなおすことで解消可能。
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一部の場所で、フィールドを歩いている際に表示される「この辺の敵」の情報と違うモンスターが出現するときがある。
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エンカウントで、ごくまれに0歩エンカが発生することがある。
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0歩エンカ自体はFC時代のRPGでもまれにあったことであるが、イベントマスを踏むタイミングでエンカウントが発生すると、画面が乱れてしまうバグが発生することがある。
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ZLのワンボタンでリセットができるのは便利ではあるのだが、その分誤爆による事故も発生しやすい。コントローラーを置いた瞬間などに不意に押してしまうことがあるので要注意。
総評
一見普通のレトロ風なRPGに、biim兄貴のRTA風実況・解説をゲーム内に搭載するという、中々奇抜な一作。
biimシステムをほぼ完璧に再現し、リスペクトしている点に関しては評価点でもある一方、人を選びやすいネットミームまで取り入れている点に関しては、商業作品としては相応しくない部分があるとも言える。
これらを「ネット上で話題のネタをしっかりと再現していて面白い」と肯定的に捉えるか、「人を選ぶネットミームを安易に節操なく持ち出してきて痛々しい」と否定的に感じるかは、人によって評価が分かれる点であろう。
ただ、一つのRPGとして見た場合は不便な点こそ多々あれど、致命的な破綻は存在しないため、前述したネタを抜きにすれば、それなりに楽しめるゲームである。
使用しているネタの是非はともかく、biimシステムの再現度は非常に高いため、「biimシステムの搭載」を本作の評価点として、真正面から受け入れられる人ならば、購入しても問題ないだろう。
余談
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実は、本作以前にもゲーム内にRTA要素やbiimシステムを搭載したゲームはいくつか存在する。
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だが、その多くが同人・フリーゲームとして公開されたものであり、商業ルートまでこぎ着けた作品は、(恐らく)『アルティエクエスト』が史上初と思われる。
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とりわけ、Nintendo Switchというゲーム機でリリースされたのは、一種の偉業とも言える一方で、人を選びやすいネットミームを多用した本作の販売を許可した任天堂に対して、困惑や疑問の声も上がっている。
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もう一つの販売先であるSteamでも、このようなネタが展開されるゲームは個人作品でもほとんど存在していない。
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中盤で流れる25分もある謎の自主制作アニメ「マジュウェル」は、同サークルが1999年に2D格闘ツクール95で制作した同名の格闘ゲームの宣伝アニメである。
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本作に登場するゆっくりのモデルも、その「マジュウェル」のヒロインが元になっている。
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シリーズ化され当時のフリーゲーム界隈ではそこそこ名の知られた存在であった。
アニメが評価されてたかは知らない
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今でこそbiimシステムと呼ばれているフォーマットだが、決してbiim兄貴が発案したものではなく、PC98やFCなどのレトロゲームではかねてから同様のフォーマットが使用されている。
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なおbiim兄貴本人はこのフォーマットについて、アダルトゲーム『狂った果実』のUIを参考にして作ったものと語っている。(参考リンク)
最終更新:2025年05月28日 00:34