アクションゲームツクールMV

【あくしょんげーむつくーる えむぶい】

ジャンル ゲーム作成ツール
対応機種 Windows 8/8.1/10(Steam)
発売元 【Steam】PLAYISM
【パッケージ版】KADOKAWA
開発元 Gotcha Gotcha Games
KADOKAWA
発売日 【Steam】2019年9月19日
【パッケージ版】2019年10月3日
定価 10,780円
判定 スルメゲー
ポイント 制作の自由度が大幅上昇
2Dゲームツクールとも言える
RPGツクールよりも上級者向け
公式のマニュアルが不十分
ツクールシリーズリンク


概要

タイトル通りアクションゲームを作ることに特化したツクール。
同じコンセプトのツールとして10年ほど前に『アクションゲームツクール』が発売されていたが、作成の自由度の低さや雑なアフターサポートにより、評判はよろしくなかった。
前作の反省から、当初は早期アクセスソフトとして販売が始まり、ユーザーの意見やバグ報告を取り入れながら開発されていった。


特徴

ツール

  • シーン
    • タイトル画面やメニュー画面、プレイ画面などを作るのがここ。
    • タイルを敷き詰めてマップを作り、プレイヤーの初期位置を設定したり敵や仕掛けを配置する形で作成できる。RPGツクール同様にレイヤー分けも可能で、多重スクロールやカメラ移動などの設定も可能。
    • メニューは専用の「メニューシーン」として作成するようになっており、レイヤーごとに別々のメニューを作成可能。各シーンの設定で使用したいメニューレイヤーを選択することで常に一番上に表示されるレイヤーとして呼び出される。ライフやスコア表示などにも使用する。
  • タイル
    • RPGツクール同様に、マップに敷き詰めるタイルの情報を設定する場合はここを使う。
    • 地面や壁といった接触判定の他、タイルにキャラクターが乗った時に発生するイベントなども設定可能。
  • アニメーション
    • キャラクターやオブジェクトの動きやエフェクトなど、様々なアニメーションの設定ができる。
    • 基本的にはRPGツクールのエフェクトエディタ同様にフレーム単位で編集可能。また、当たり判定や攻撃判定の有無、大きさ、位置などもここで設定する。
    • 今作ではパーティクルを使ったエフェクトも作成可能。
  • オブジェクト
    • 主人公や敵キャラ、アイテムなどを作成・管理するツール。
    • フローチャート形式で行動ルーチンを設定していく。四角と矢印で構成され、四角にアニメーションで作成したモーションや動作指定を、矢印でモーションへの遷移条件を設定する。
  • 素材
    • 画像や音声を管理できるツール。変数やスイッチもここで一括管理できる。
    • なお、画像素材は基本的にサイズフリー。取り込んだ時や使用する際に分割設定を決められるので、異なる大きさの画像を一枚の画像データに詰め込むことも可能になっている。
  • 遷移
    • ツール「シーン」で作成したシーンをつなぎ合わせる場合はここを使う。
  • プラグイン
    • RPGツクール同様、プラグインを読み込むことで独自のシステムを組み込むことが可能。対応言語はJavaScript。

評価点

  • 作成の自由度が大幅に上昇した
    • 大まかにジャンプアクション、アクションRPG、シューティングしか作れなかった前作と比べて、作成の自由度が大幅に向上した。
    • サンプルが充実していることからもわかるように、その気になれば様々な2Dゲームを作ることが可能となっている。
    • 物理演算にも対応している。
  • サンプルがそれなりに充実している
    • サンプルには横スクロールアクションやトップビューアクションの他にもベルトスクロール、『ツムツム』のようなパズルゲーム、ピンボールまで用意されており、ゲーム作成の参考になる。
    • 収録サンプルの中には『ケロブラスター』などの商業作品を本作で再現した体験版やアニメ「オーバーロードII」とのコラボゲームの体験版なども収録。特にドットゾーゲームズ氏制作の『魔女と66のキノコ』体験版は、基本的な作り方の解説が記載されているため非常にためになるものとなっている。

賛否両論点

  • 凝ったゲームを作ろうとすると、相応のアルゴリズムの知識が必須
    • シンプルな2Dアクションゲームを作る分にはサンプルを改造するなどして、比較的簡単には作ることはできるのだが、それなりに凝ったものを作ろうとすると相応の技術力と知識が求められる。
    • 例えば横スクロールの2Dアクションを作るとしても、スーパーマリオのように踏みつけて敵を倒すタイプもあれば、ロックマンのように弾を撃って敵を倒すものなど、細かい仕様の違いを含めれば、途方もない種類が存在する。
      • 仮に「本作でスーパーマリオを再現しよう」と思ってみても「踏みつけて敵を倒すにはどうするか」などのアルゴリズムを理解していないと、まともなものが作れない。
    • 公式サイトなどではプログラミング不要とは謳っているのだが、その前段階であるアルゴリズムの知識が無いと、ごく普通のアクションゲームを作るのさえ一苦労する。
    • もっともこれらは作成の自由度が増したことによる弊害であり、作成の自由度が上がれば上がるほど、上級者向けになることは、過去のツクールでも証明されている。
  • ゲームの作り方に関する説明はない
    • 「ゲーム作成ツールとしての使い方」は(後述の通り不足しているものの)WEB上などに載っているのだが、「根本的なゲームの作り方」に関しては完全にユーザー任せとなっている。
      • 要するにゲームデザイン、ゲームバランスなどはユーザーのスキル次第であり、ここら辺のノウハウがないと、せっかくツールを使いこなせても、ゲームを完成させることができない、できたとしてもクソゲーができるということもありうる。
    • 近年のRPGツクールシリーズでは公式サイトなどで、「初心者講座」としてRPGの作り方に関する情報が載っていただけに、ゲーム作り初心者に対して冷たい部分と言える。
    • しかし、「アクションゲーム」というジャンルの括りが広い以上、詳細な作り方を紹介したところで、それがユーザーが求めるものかどうかは、また別の話なのでそこまで求めるのは酷とも言える。

問題点

  • チュートリアルの不足
    • 一応チュートリアル機能は備わっているのだが、横スクロールアクションとトップビューアクションの2つしかチュートリアルが用意されていない。
    • サンプルはそこそこ充実しているだけに、この点は残念。
    • また、チュートリアルは本当に基礎的なことしか教えられない点も不親切。「アイテムを取得する」「スコアを表示する」などのある意味ゲームには重要なことが教えられないのも、初心者を置いてけぼりにしている感がある。
      • パワーアップアイテムの作成方法など一部はPLAYISMからSteamのコミュニティに方法が書かれているが、これも十分なものとは言い難い。
  • マニュアルも不足している
    • WEB上にマニュアルも載っているのだが、簡易的なものであり、これを読んだところで仕様を完全に理解できるほど、詳細に書かれていない。
    • 特に物理演算などせっかく搭載された機能がろくに説明されていないのは不親切と言える。
  • 対応オーディオファイルの形式
    • RPGツクールMV』と同じ問題点。しかも今作では対応する形式がogg形式限定になってしまった。
    • 一応、ogg形式を活用してBGMの自然なループなどを実現できるなど悪い点ばかりではないが。
  • 書き出しファイルの種類が少ない
    • 『RPGツクールMV』では(ハードルは高いとはいえ)スマホやブラウザ形式の書き出しに対応していたのに対し、本作ではWindowsとSwitchにしか対応していない。
      • Switchに関してもパブリッシングは後述するGotcha Gotcha Gamesに任せる必要があるので、ハードルは高い。
    • 特にスマホやブラウザに関してはRPGと違い、比較的短く終わるアクションというジャンルと相性がよさそうなだけに、少し残念に感じるところ。

総評

制作の自由度の低さから散々非難された前作と比べれば、制作の自由度は大幅に向上しており、その気になればアクションだけでなく、様々な2Dゲームを作成できるようになり、ゲーム作成ツールとして一定の出来は保っている。
ゲームを簡単に作れることを売りにしているツクールシリーズの名を冠しているものの、公式からのマニュアルやチュートリアル不足が要因となって、ツクールとしては初心者向けとは言い難い内容となっており、総じて中級~上級者向けと言える。
本格的なものを作ろうとしている場合、Unityなどの無料でも使用できるゲームエンジンやHSPなどの簡単なプログラミング言語を使用した方が、参考書やネット上の情報が充実している分、思い通りのものが作れる可能性もあるため、購入を検討する際はその辺も視野に入れた方が良い。
とはいえ、シンプルな2Dアクションを作る分には、一からスクリプトを作成したり、プログラミングするよりは簡単に作れることは確かなので、本作を購入する価値は十分あるだろう。

結局のところ、出来の良いゲームを完成させられるかどうかはアイデア技術力、そして何よりも作者のやる気次第という点は、本作に限らずツクールシリーズ全般に言えることなので、その点は十分留意した方が良い。


余談

  • Steam以外でも全国の店頭などでパッケージ版が2019年10月3日から購入特典付きで発売されている。
    • 中身はSteamキーが記載された紙だけであり、購入特典のDLCコードも現在はSteamのDLCとして配信されているので、特にこだわりがないのであれば、Steamで購入した方が手っ取り早いだろう。
  • 本作の開発元として記述のある「Gotcha Gotcha Games」はツクール作品のパブリッシングを担当するために2020年9月に設立されたKADOKAWAの子会社。
    • 本作はNintendo Switchへの書き出しにも対応しており、「ツクールシリーズ」としてGotcha Gotcha Gamesから本作で作成されたゲーム(前述の『魔女と66のキノコ』など)がSteamやSwitchで販売されている。
  • 2024年7月12日に後継作となる「ACTION GAME MAKER」が発表された。機種はPC(Steam)で2025年に発売予定。(ストアページ
最終更新:2024年07月13日 12:05