ムーンボールマジック
【むーんぼーるまじっく】
ジャンル
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ピンボール
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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DOG
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開発元
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システムサコム
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書換開始日
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1988年7月12日(書換専用)
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定価
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500円
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プレイ人数
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1人
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判定
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なし
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ポイント
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これまでの常識を覆すステージクリア型アクションピンボール 高貴なクラシックスタイルを彷彿とさせるも軽快なBGM 純粋なスコアアタック向きではない盤面は地味臭いかも DOG最終作は書換専用
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DOGシリーズ
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概要
1988年7月にDOGから発売されたステージクリア式のピンボールゲーム。
大元はシステムサコムが1983年にPC-9800シリーズのソフトとして発売した『ムーンボール』の続編だが、こちらは普通に固定1画面の盤面でスコアのみを競うスタイルだったのでゲーム性は一新されている。
同時発売の『亜空戦記 ライジン』とともに書換え専用ソフトとして発売。
DOGとしては前年10月発売の『カリーンの剣』から9ヶ月ものブランクを経ての久しぶりの新作であり、結果的に最終作となった。
内容
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発売元自身も「アクション要素をたっぷり含んだニュータイプのピンボールゲーム」と説明書で自称しているように、敵キャラなどが配置されたアクション性の強いピンボール。
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フリッパーでボールを弾きバンパーなどに当てたりターゲットアイテムをボールで取ることで得点を稼ぐといった従来のピンボールが根幹ではあるが、ステージクリアに重きを置いたゲームシステムになっている。
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全11ステージをクリアーするとエンディング。
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Aボタンで右フリッパー、十字ボタンの左で左フリッパーを動かす点はオーソドックスだが、台を揺らす(十字ボタンの右、またはB)というアナログチックな操作が取り込まれている。
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フリッパーは同一画面内に複数あり、いずれも対になっており、左右それぞれ対応したものが同時に動く。
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盤面内の「ワープホール」と呼ばれる穴のうちの特定の穴にボールを入れることで次のステージに進むことができる。
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それを目指すのだが、ステージ3・4・5・7・8・9・10・11はキーアイテム「セフィラ」(ニケの像のようなもの)を取らないとワープホールに入っても次のステージには進めない。
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他に配置されたワープホールは盤面内でのワープとなる。
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敵キャラは大と小の2つに区分される。小は「動く壁」のような位置付けで何度ボールをぶつけても倒れず、大は図体がでかい分より邪魔だが何度もボールをぶつけるとやっつけられる(その場合1UPが得られる)。
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ゲームスタートが非常に特殊で、まずA面を入れてロードするとタイトル画面が出るのは普通だが、そのタイトル画面ではB面に裏返すよう促してくる。
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そしてロードが終わるといきなり何の脈絡もなくゲームがスタートする。
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実はこれは「オープニングステージ」(いわゆる「ステージ0」)というもので練習モード的なものを兼ねている。
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このステージでクリアとなるワープホールに入れると「MOON BALL MAGIC」と文字が象られた特殊な盤面を仲介してステージ1が始まる。
評価点
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「ニュータイプの」と発売元自身が公言しているように、これまでにないステージクリアに重きを置いた個性的なピンボール。
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一般的にピンボールゲームはスコアを稼ぎハイスコアのみを目指すゲームであるため、このようなステージクリアを目指したり、敵キャラを倒したりするゲーム性は過去に類を見ない斬新さがある。
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操作方法は揺らしを伴うピンボールゲームではなじみ深いものに変わりはないため基本操作は飲み込みやすい。
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盤面可動域は非常に広く、ボールアクションがダイナミック且つ軽やかで、ピンボールらしいスピード感は既存作を上回るほど。
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広い空間をダイナミックに飛び跳ねるボールの躍動感は他作品では見られない。しかもその広い盤面は恒例の画面切り替わりではなく、そのボールの動きに合わせてスクロールするため、その躍動感をより感じられる。
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フリッパーが小さいことや意外とアウトゾーンが大きいことで、見た目にはちょっとしたことで落ちてしまいそうと思われるかもしれないが、これをボールアクションの大きさがカバーしており、そう簡単には落ちないバランスになっている。
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フリッパー自身も多数配置されており、このような点も他のピンボールゲームでは見られない雄大さを誇る盤面構成。
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BGMはクラシックのような格調高い雰囲気と、速いボールのアクションの軽快なイメージを両立しており、聴いているだけでもプレイを気分良くさせてくれる。
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タイトルやステージ0こそ無音であるものの、スタートホールに入るとあとはゆっくりと降りてくるボールに合わせて高貴な雰囲気を漂わせるオープニングからスタートし、本格的にスタートすると前述の通り軽快さ溢れる曲調でボールの躍動するアクションとも見事にシンクロしている。
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前述のダイナミックなアクションでボールが落ちにくいバランスも手伝って、そんなBGMを長く聴いていられるのもプレイの心地よさを持続させてくれやすい。
賛否両論点
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オープニングステージの存在。
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説明書に記載があるとはいえ、一種のサプライズ的なスタートということで何の脈絡もなくゲームスタートするので少々戸惑いやすく、無音であるため雰囲気は寂しい。
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しかし簡単な練習になるし、このステージでも一見アウトに落ちやすそうに見えて、ボールアクションで意外とフォローされている特徴を先んじて知ることができる。
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また、ここでミスしても本ステージ開始時のボール所持数に影響はなく、ここで稼いだスコアは持ち越される。
問題点
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難易度はかなり高い。
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「特定のホールに入れればクリア」とはいえ、それ自体が入り組んだ場所にあったり、他のホールとの区別もつかない。
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ピンボールにありながら11ステージクリアというのはやりがいもあるのだが、元々ピンボールとはお手軽なスコアアタックゲームであるため、そのような既存の王道ニーズには合わない。
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敵キャラ以外の特殊なギミックは少なめ。
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実際盤面の中身は敵キャラを除けばレーンとバンパーぐらいしかない。
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普通のスコアアタックのピンボールを期待する者からすれば、地味さや物足りなさを感じやすい。
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他にピンボールゲームでは恒例のサイドレーンガードやアップポストのような救済ギミックもない。一応前述の通り簡単にポロポロとアウトに落ちてばかりの悪辣なバランスでもないが。
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敵キャラの配置は倒せない小キャラの方が多く、倒せる大キャラは1体しか出ない。
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そこまで致命的ではないが、せっかく特定のポイントを目指したり敵を倒していくアクション性を重視したピンボールなので、倒せる敵キャラが多い方がその爽快感が増したものと思われる。
総評
見た目はピンボールのゲームながら同ゲームの王道スタイル「スコアアタック」からはかけ離れた特殊なもので、それまでの常識では考えられず、難しめな難易度もあり、さすがに万人向けではない。
とはいえ根本は難しいながらも盤面のバランスはとことんまで練り込まれたものであり、このようなゲームの醍醐味の1つであるダイナミックなボールアクションを生み出せるものばかり。
加えてそれをプレイヤーの感覚にフィットさせるBGMはもはや芸術的なレベルでプレイへのモチベーションを高めてくれるためトータルでの完成度は充分ハイレベルなもの。
奇抜な異端児的作品として受け入れられる者と、あくまでピンボールとしての王道なゲーム性を欲する者で評価が大きく分かれやすい。
それだけに書換専用500円という気軽に手を出しやすい安価をたっぷりアピールしたような販売方法は好判断だろう。
余談
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同日に書換え専用として発売した本作と『亜空戦記 ライジン』を最後にDOGがゲームソフトを出すことはなかった。
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これに関しては「この2作品を完結作とした」という意図ではなく「出す理由がなくなって自然消滅」という形だったことが後年語られている。
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実際1988年は5月で『ディスクファクスイベント』が終了し、翌1989年には新規タイトルの発売本数が激減するなど目に見えて衰退が進んでいく。
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ただ本作の説明書を見ると最初に「おまたせとどめのムーンボールマジックだよ。」という記述がある。「とどめ」の理由が何であるかは不明だが、そのような言い回しとして「本作がDOGとしての最終作」という含みな意図を感じなくもない(『ライジン』の方にそのような記述はない)。
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またはDOG参入企業のうち、本作と上記作の開発元であるシステムサコムとマイクロキャビンはここまで1本も出していなかったので、これをもって「DOGブランドが公約を果たした」という意味と取れなくもない。
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本作と上記作品は同時発売ということもあってか2本一緒に販促展開がされた。
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書換専用のためパッケージは無いが、当時スクウェアが店頭で配布していたチラシ広告の裏面に、通常パッケージと同様のデザインにできるラベルが付属していた。これも2本分が一緒だった。
最終更新:2025年08月11日 14:27