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MELTY BLOOD Act Cadenza - (2018/03/29 (木) 21:21:21) の編集履歴(バックアップ)


注意:本稿では、オリジナルのAC版『MELTY BLOOD Act Cadenza』と、同PS2・Windows移植版について記します。判定はAC版とWin版が「良作」、PS2版が「判定なし」です。



MELTY BLOOD Act Cadenza

【めるてぃぶらっど あくとかでんつぁ】

ジャンル 2D格闘ゲーム
対応機種 アーケード(NAOMI)
発売・開発元 エコールソフトウェア
TYPE-MOON
フランスパン
稼働開始日 2005年03月01日
Ver.A:2005年08月05日
Ver.B:2006年12月01日
Ver.B2:2007年03月01日
判定 良作
ポイント 自由度の高い攻撃システム
初心者にやさしいコンボ難易度
空中戦を主体とした立ち回り
アーケードでは異色作ながらヒット作に

概要

同人ゲーム『月姫』のスピンオフである同人格闘ゲーム『MELTY BLOOD』のアーケード移植作。TYPE-MOONとフランスパンの共同開発。略称は「メルブラ*1」。
同人発のゲームが商業作として展開されることは現在でこそ珍しくないが当時はあまり前例がなく、特にそれがアーケードで稼働するともなれば前代未聞であったことから注目を集めた。
またアーケード移植をあの『デスクリムゾン』を開発したエコールソフトウェアが担当したことも別の意味で話題を呼んだ。
本記事では最終バージョン「Ver.B2」における仕様について記述する。


特徴・システム

  • 月姫および同人版メルブラ*2の後日談としてのストーリーが展開される格闘ゲーム。操作キャラクターは23名*3
    • 本作では他の多くのアーケード格闘ゲーム同様、ストーリー要素は戦闘前後の掛け合いやオープニング・幕間・エンディング程度の最小限に抑えられている。
  • 弱攻撃、中攻撃、強攻撃、シールド、クイックアクションの5ボタン制。クイックアクションは同時押しを簡単に行うためのボタンであり、4ボタンだけでもすべての操作をすることが可能。
    • 基本的なシステムは一般的な2D格闘ゲームを踏襲している。以下、本作での特徴的なシステムについて解説する。
  • ビートエッジ
    • コンボゲームでよく見られる「チェーンコンボ」にあたるが、本作でのそれは「一度連携が切れるまで同じ技は基本的に一度しか使えない*4が、通常技のキャンセルルートにほぼ制限がない」というシステムになっている。
      • そのため非常に自由度の高いコンボや固め連携を行うことが可能で、特に大きく前進する通常技を持っているキャラには恩恵が大きい*5
    • ただし「強→弱」のように逆方向へのキャンセルをかけると攻撃がヒットするしないに関わらず一定時間「リバースビート」補正がかかり、攻撃のダメージが減少する。
      • このリバースビート補正は重複することから考えなしにキャンセルし続けてしまうとコンボダメージが僅かなものになってしまうので、これを念頭に攻めていく必要がある。
  • レデュースダメージ
    • ストリートファイターZERO3』でも存在したシステム。相手の攻撃を受ける直前にボタンを押すことでダメージを減少させる。
    • 成否でのダメージ幅がそれなりに大きく、いわゆる「コンボゲー」の本作ではヒット数も多いのでかなりの影響がある。
  • マジックサーキット
    • EX必殺技を出すときに消費する、一般的な「パワーゲージ」にあたるシステム(以下「ゲージ」)。
    • 最高300%まで溜まるが、本作ではゲージが最大の状態になると強制的に「MAX」状態へと移行する。
      • MAX状態の制限時間中は一定時間EX技を使用してもMAX状態が終了しない(制限時間の減少は早まる)状態になり、EX必殺技のローリスクな連発が可能になる。制限時間が終了すると、その間にEX必殺技を使用したかしないかに関わらず再び200%の状態に戻る。
    • この刻々と変化するゲージ状況を管理するのが本作の醍醐味のひとつ。
  • 強制解放
    • ゲージが100%以上のときに使用可能で、「HEAT」状態へと移行する。
    • HEAT移行直後まで完全無敵のうえガード不能の吹き飛ばし攻撃(相手にダメージはない)も発生するため、切り返しとして有用。またHEAT状態では攻撃を受けていない間ヴァイタルソース*6が回復するため強力。
      • ただし強制解放はキャラクターごとに差はあるが基本的に硬直が長く、相手に読まれてしまうと体力を回復するどころか手痛いコンボを喰らうことになる。この読み合いで試合の流れが決まることも多く、本作では非常に重要なシステムである。
    • またMAX状態で強制解放を行うとさらに恩恵がある「BLOOD HEAT」状態になる。HEAT・BLOOD HEAT中どちらもMAX状態と同様にEX技の使用が可能。制限時間が終了するとゲージは0%になる。
  • アークドライブ
    • MAX状態、もしくはHEAT状態でのみ使用可能な特別な必殺技。
    • 強力な技が多いが限られた状態でしか出せないため、おもむろに出そうものなら相手にも読まれてしまいやすい。
      • またEX必殺技と異なりこれを一度使用するとMAX・HEAT状態は終了するため、コンボに組み込む場合も適切な判断が必要となる。
    • BLOOD HEAT状態中はさらに強力な「アナザーアークドライブ」へと変化する。
  • シールド
    • 相手の攻撃を受け止めるシールドを構える。上段・下段・空中の三種類が存在し、それぞれ受け止められる技が異なる。
      • ゲージを消費して張りっぱなしにすることができる。シールドに成功すると相手側に長い硬直が発生し、その間に必殺技で反撃することが可能。
    • またシールドを張った直後にシールドを成功させると「EXシールド」に変化し、こちらは必殺技に加えて通常技と投げで反撃することができるようになる。
      • そのため基本的にはEXシールドを狙い、通常技から反撃のコンボを入れるのが基本。ただし各種シールドから始動したコンボには重いダメージ減算補正がかかる。
    • 失敗した場合は隙ができるためリスクが高いが、攻めが強力な本作では強制解放と並んで貴重な対抗手段となる。
  • シールドバンカー
    • シールドの派生システム。シールド*7→攻撃がワンセットになっている。
    • ヒットさせても追撃が不可能なので通常版はあまり使われないが、ゲージを50%消費することでガード中でも使用できる「ガードキャンセルシールドバンカー」が有用。
      • ただしガードキャンセル版はタイミングがシビアで、タイミングをしっかり合わせないといけない。
  • ラストアーク
    • BLOOD HEAT中に地上・空中のいずれか(キャラクターによって異なる)でEXシールドを成功させると自動的に発動する最終奥義。
    • キャラクターによって性能差が大きく、体力を半分近く奪うものもあれば空振ってしまうことが多いものもある。
    • またBLOOD HEAT中という限られた状況で相手依存のEXシールドを成功させるという条件は実戦ではかなり厳しく、魅せ技としての側面が強い。

評価点

  • 簡単かつ爽快なコンボ
    • 本作は従来のコンボゲーと比較してコンボパーツが分かりやすく、かつ出しやすくなっていることから基本的なコンボレシピの構築難易度が低い。
      • 攻撃をヒットさせているときのエフェクトや効果音も良好で、爽快感を重視したゲーム性になっている。
    • あまりに簡単に空中コンボまで移行できることに難色を示す意見もあったが、プレイヤー層で多かった他の格闘ゲームをやったことがない初心者にやさしかったのは大きい。
      • またこの点で「底が浅いゲーム」と誤解されることも多かったが、このゲームの真の面白さはコンボをできるようになった後に存在する。
    • もちろん上級者向けのキャラクターがいないわけではなく、特にアルクェイドの最大ダメージコンボを安定して完走できるプレイヤーは限られていた。
  • ビートエッジを使った奥深い攻撃システム
    • ビートエッジは非常に自由度が高く上級者に好評だったのに加え、初心者でも自分がやりやすい独自のコンボをすぐに組み立てられるなど、幅広いユーザーに向けたものになっている。
    • またこのシステムの真骨頂はガード時の攻防にある。キャンセル猶予が長く、攻める側はどのように技を組み立てるか、守る側はどこで割り込むかという読み合いが幾度もハイスピードに繰り広げられる。
      • 本作ではいわゆる「セットプレイ」と呼ばれるパターン化した攻めはそれほど多くなく、ワンパターンな攻撃はシールドの的であることからプレイヤーの工夫が現れやすい。
    • 高い自由度の代償として設定されているリバースビート補正も程よく機能しており、状況を重視するかあるいはダメージを重視するか、という状況判断を迫られる。このシステムのおかげで本作は独自のゲーム性を確立した。
  • 軽快なキャラクターの動作
    • 全キャラクターに二段ジャンプと空中ダッシュが搭載されており、二段ジャンプの後でも空中ダッシュや空中ガードを問題なく行えるなど制約がほぼない。
    • 動作も一部のキャラクターを除いて機敏で、キャラクターを動かす際のストレスがほとんどなく楽しめる。
      • ただし軽快すぎる動作については弊害も多く、賛否両論点も生んだ。
  • バージョンアップで調整された対戦バランス
    • 現在のバージョンに至るまでは強弱の差が大きすぎるキャラクター、ダウン追い討ちでの永久コンボ、ガード不能バグ、超高性能のスーパーアーマーなど難点が多く、特に最初期バージョンはバランスなど消し飛んでいた。
      しかしこれらはバージョンアップと共に改善されていき、Ver.B2では十分に対戦ツールとして通用するレベルに至っている。
    • 最強キャラと最弱キャラ*8の差ははっきりとしてしまっているものの、格闘ゲームとしては許容できる範囲。
      • ちなみにVer.B2稼働末期での最強キャラは、できることが多いうえにそのほとんどが強力で、システム的にも優遇されているレンとシエル。その次点としてシオン、遠野秋葉、暴走アルクェイド、有間都古が挙がり、この6名で「6強」を形成していた。
      • 逆に(ネコアルク2匹を除いた)最弱キャラは初見殺し性能こそ高いが一度ネタが割れてしまうと厳しく、立ち回りも火力*9も貧弱な白レンとされる。ただしその白レンも切り返し能力はトップクラスに高いなど、良い所がないわけではない。
  • 豊富なキャラカラー
    • キャラカラーは初期バージョンでは2色しかなかったが、家庭用での追加を経て、アーケード版Ver.B2では36色にまで増加。
    • 格闘ゲームにおけるキャラカラーは地味ながらプレイヤーの個性を表す重要な要素であり、大量に用意されたことは歓迎された。
  • 良質なBGM
    • 作曲家「来兎」が手がけた音楽は好評。月姫の世界観を尊重しつつ、格闘ゲームとしても対戦を盛り上がげてくれる。
    • 特に人気が高いのが暴走アルクェイドステージの「The end of 1000 years」。暴走アルクェイドはよく使用されたキャラクターであり、この曲を耳にする機会も多かった*10
  • 月姫のスピンオフとしての完成度
    • このゲームの開発には月姫を手がけたTYPE-MOONが全面的に参加しており、「月姫の格闘ゲーム」としての完成度が高い。
      • 細かい解説は割愛するが、原作のストーリーやキャラクター性を活かした作りになっている。小ネタも多く、月姫の内容を知っていれば更に深く味わえる。
    • 声優もアニメ『真月譚 月姫』とは配役が異なるが、いずれもはまり役と好評。後のTYPE-MOON作品で月姫のキャラクターが登場する場合、本作側のキャスティングが優先されている。
    • ただしキャラクターの人選については、原作での重要人物が幾名か登場していないことが問題視されることもあった。
      • 次回作「Actress Again」では待ち望まれていたキャラクターのうち、とある人物がついに参戦した。

賛否両論点

  • ラッシュが強いシステム
    • 本作は起き攻めで見えないセットプレイがループすることはあまりなく*11、ガード崩しは打撃や投げといった単純択が中心であり、この手のゲームにありがちな「起き攻めゲー」ではない。
    • しかしビートエッジや高速な地上・空中ダッシュを用いた固め連携から脱出するのは容易ではなく、特に画面端で触られてしまうと厳しい戦いになる。
      ビートエッジを使った連携を組み立てるのは本作の醍醐味ともいえるものだが、これとキャラの機敏すぎる動作が噛み合ったためにラッシュが苛烈なゲーム性になった。
    • また低空ダッシュから空中技をガードさせるだけで昇り中段や多段中段*12といった二択に移行できるキャラもおり、そういった面で恵まれたキャラが特に強かった。
      • 昇り中段は最初からあえてしゃがみ喰らいすることで昇り部分をスカす、多段中段は遅めに立つことで回避するなどの対抗策もあったが、リスクリターンの差やゲームスピードの面から現実的には限界があった。
    • 本作のバージョンアップ前(Ver.Aまで)には「ガード優先」という、固め連携に反撃する側に有利な仕様*13が存在したのだが後に削除された経緯がある。
      ガード優先はかなりの問題を抱えたシステムであったことから削除自体は大変歓迎されたのだが、これを前提に調整されたであろう他のシステムが据え置きであったためこのような結果になった。
    • 稼働末期には固めや崩しの連携が極まっていったため、ビートエッジでの読み合いを早々に放棄してシールドや無敵技で無理やり切り返す戦法で対抗されることが増えていった。
  • 猛烈なバッタゲー
    • このゲームは空中技が軒並み強力であることに加えて対空技が弱く、空中でのキャラクターの動作も軽快であるため、バッタ*14が強力……というよりバッタを前提としたゲーム性になっている。
      • バッタが強いゲームとしては『THE KING OF FIGHTERSシリーズ』が有名であるが本作のバッタゲーとしての度合いはそれの比ではなく、立ち回りでは地上より空中にいる時間のほうが長いほど。
    • 格闘ゲームは地上戦に主観を置いたデザインが多い中、空中戦を重視した本作のゲーム性は大いに賛否が分かれた。
      • 空中での位置取りや技の振り方には独特の読み合いと魅力があり、当初は困惑したものの実際にやってみたら面白いと肯定するプレイヤーも多かった。
  • 荒削りなグラフィック
    • キャラクターは全員純粋なドット絵で作られているのだが一枚一枚の出来が微妙で、一見した印象はお世辞にも良くなかった。同時期に稼働していた人気ゲーム『GUILTY GEAR XX』と比べると雲泥の差。
    • しかしこのドット絵は単体の見栄えよりもキャラクターの「動き」を重視して打たれたものであり、それぞれのモーションは高評価だった。格闘ゲームとしてこのアプローチは間違っていないだろう。
      • これは後にフランスパンが開発し、動きよりも一枚の見栄えを重視した「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」と真逆のコンセプトである。
    • また背景はただの一枚絵に多少のエフェクトがかかった程度で、商業作としては明らかに低品質だった。
  • ガードキャンセルシールドバンカーキャンセル(通称「バカキャン」)
    • 何が何だかよく分からない名前だが、要は「ガードキャンセルシールドバンカー」を発生前に更にキャンセルすることができるというテクニック。
    • その自由度は多岐にわたり、各種必殺技や地上ダッシュ、ハイジャンプなどでガードキャンセルができるようになる。この恩恵は計り知れない。
    • しかしタイミングがシビアなガーキャンバンカーをさらにキャンセルするのは入力の複雑さも相まってかなり難しく、プレイヤー間での賛否は大きかった。またこれがあっても固めがきついことに変わりはない。
      • 入力の性質上、いわゆる竜巻コマンドの必殺技を出すのに限ればかなり楽だった。しかしそのコマンドにたまたま割り当てられていた技の性能差でキャラクター間の格差が生まれる事に。
    • ちなみにこのテクニックは元々バグだったのだが、バージョンアップで多少挙動を変えつつあえて仕様として残されたというものである。次回作「Actress Again」では削除された。
  • ゲームのコンセプト
    • 「大元は18禁ゲームのキャラクターがアーケードの格ゲーに参戦する」というのは当時としては衝撃的な出来事であり、それに対する否定的な意見が本当に多かった。
      • また月姫は同人ゲームかつ入手性に難があるので存在を知らなかったゲーマーも多く、原作ファンとそうでない層の温度差は激しかった。
    • 結果的に本作が格ゲーとして受け入れられたことや、後に同じようなゲームも増えたために現在はそのような意見は沈静化している。

問題点

  • 相殺していない相殺
    • 本作には格闘ゲームでよくある相殺システムが存在するのだが、本作のそれは「攻撃判定とは別に相殺判定が設定されている」という代物。
    • 相殺判定は基本的に攻撃判定の直前に設定されており、相手の攻撃だけを相殺で一方的に潰しつつこちらの攻撃を当てることができる。
      そして相殺判定はほとんどの場合何の変哲もない通常技に設定されており、狙っていなくても理不尽な相殺が起こってしまいがち。
      • 相殺判定がついている技はバージョンアップと共に減少していったが、Ver.B2でもかなりの数が残っている。
      • またキャラクターのシエルにはただの地上ダッシュに相殺判定がついているのだがこれが強力で、キャラによってはシエルにダッシュされるだけできついという対戦カードもある。
  • レデュースダメージ
    • 本作独自のシステムではないのだが、コンボゲームの本作で搭載されてしまったために指やボタンへの負担がかなり大きく、プレイヤーやオペレーターからの評判は良くなかった。
    • また明らかに受け身が取れない状況でもタイミングよくボタンを連打しなければならないというのはあまり格闘ゲームらしくなく、バッタが強いゲーム性も相まって「格ゲーではなくアクションゲーム」とよく例えられた。
  • 空中投げに失敗モーションがない
    • コマンドの都合上、空中投げに失敗した場合に出るのがシールド。空中投げに失敗したはずが相手の攻撃を偶然受け止めて有利になっていた、という状況が多発。
    • 対地シールドに空中投げを仕込むテクニックとしても使われたが、これがただでさえ強い飛び込みをさらに強くすることに。
  • 多すぎるコンパチキャラクター
    • 23名のキャラクターが操作できるのは当時の格闘ゲームとして標準的であるが、そのうち8名ものキャラが「暴走アルクェイド」や「吸血鬼シオン」のような使い回しのキャラクターである。
      • グラフィックの使い回し自体は格闘ゲームの常套手段とはいえ、数がかなり多く水増し感が拭えなかった。
    • ただし性能はほとんどが十分に差別化されており、見た目はとにかくゲームプレイの面ではあまり問題にはならなかった。
  • フルボイスではないこと
    • 勝利台詞、オープニング、幕間、エンディングに音声がなくテキストのみ。対戦要素に特化しているとはいえ、キャラゲーとしての側面もあるのでこの点は惜しまれる。
    • これらのボイスは家庭用で新たに収録されたのだが、その後に登場したアーケード版Ver.B2ではテキストのみのまま。

総評

同人ゲーム出身であることや原作の性質、当時低迷期にあったアーケード格闘ゲームへの参戦と、登場時の逆風が非常に強かった作品。
稼働当初は調整不足が目についたがその独特なゲーム性に取り憑かれたプレイヤーは多く、ヒット作といえる盛り上がりを見せた。
対戦ツールとしてもバージョンアップでの改善を経て十分な完成度に至っている。前代未聞の挑戦を成功させた意欲作といえるだろう。

余談

  • メルブラシリーズの主人公は月姫の主人公「遠野志貴」ではなく、メルブラからの新キャラクター「シオン・エルトナム・アトラシア」である。
    しかしストーリーでの立ち位置、際立って使いやすい志貴に比べてかなりクセが強い操作性、キャラクター選択画面では志貴が「主人公」と書かれている*15などの事情が重なり、プレイヤー間ではほとんど主人公として認識されていないことがネタにされた。
    • 彼女はこの後のTYPE-MOON作品で公式自らに「空気なキャラ」として弄られることになる。
  • エコールとフランスパンが2012年にリリースした格闘ゲーム『UNDER NIGHT IN-BIRTH』では、シオンと瓜二つの容姿と技を持つ「エルトナム」というキャラクターが登場している。
    • 実質的にはメルブラからのゲストキャラなのだが、(大人の事情により)同一人物と明言されておらず、性格も異なる。一体何者なんだ……。
  • 「七夜志貴*16」というキャラクターが発する台詞には妙な空耳に定評があり、こちらもプレイヤーで定番のネタになっていた。「弔毘八仙(ちょうびはっせん)、無情に服す」→「勝負はハッスル、無情にハッスル」、「蹴り穿つ」→「ヘリウムガス」など。
    • 声優の演技自体には全く問題がなく、独特の言い回しを用いるキャラクターそのものが原因。
    • 後述するPS2移植ではこれをネタにしたおまけボイスが収録された。
  • 本作のデバッグには複数のプレイヤーが参加していたのだが、なんとその一部メンバーが初期バージョンでの隠しキャラクターをコマンド公開前にゲーセンで堂々と使用してしまうという事態が起きた。
    • 元が同人ゲームゆえに管理が甘かったのだろうが、アーケード業界では到底考えられない出来事である。
  • 2008年9月19日に本作の続編である「MELTY BLOOD Actress Again」が稼動を開始した。

家庭用移植

対応機種 プレイステーション2
発売・開発元 エコールソフトウェア
TYPE-MOON
発売日 2006年08月10日
価格 5,800円
判定 なし

特徴(PS2)

  • 当時ゲームセンターで稼働していた「Ver.A」の移植。対戦に特化したシンプルな移植になっている。

追加要素・評価点(PS2)

  • 隠しキャラとしてネコアルク・カオスが追加。
  • ストーリーや勝利台詞やフルボイスになった。またラウンドコールの音声が変更されている。
  • アーケード版Ver.Aでは2色しかなかったキャラカラーが24色に増加した。
  • 本作独自のバランス調整として、「Ver.B」という名称の調整がVer.Aとは別に収録されている。後にアーケードで登場した「Ver.B」はこれを元に調整されている。
    • ただしアーケード版Ver.Bはここからさらに追加された変更点が多く、本作のVer.Bはそれとは全くの別物といってよい。
  • また家庭用特典としてネコアルクの声優が変更可能であるほか、各キャラクターのシステムボイスやおまけボイスが収録されている。
    • おまけボイスは『月姫』にあったシリアスな台詞から、キャラ崩壊としか言いようがないものまで多種多様。

Ver.A(PS2移植)時点での問題点

  • アーケード版の賛否両論点で触れた「ガード優先」がこのバージョンには残っている。
    • 固めへの有力な対抗手段ではあるものの、ガードしながらひたすら小攻撃を連打するのが面白いかと言われたら否だろう。
  • 相殺判定がついている技がとにかく多い。相殺が偶発しやすいのはもちろん、相殺に期待して対応技をひたすら振りまくる戦法をとるプレイヤーも。
    • 特に、最強の判定を持つ暴走アルクェイドのジャンプB(中攻撃)が攻撃発生4F*17かつ2F目から相殺付きというトンデモ性能であったことから「神のJB」と恐れられた。
  • 全体的にダメージ補正がおかしい。キャラごとの火力差がやたら大きかったり、無敵技の初段だけヒットして追撃したら体力が4割消し飛んだりする。
  • 永久コンボが存在する。全国大会「闘劇」でも披露されたシオンの有名な永久や、キャラ限ながらダウン追い討ちでひたすら小攻撃を当て続けるという永久も。
  • 喰らい判定の設定が雑。技が不自然にスカったり、逆にどこに当たっているのか分からない技が当たったりする。ダウン追い討ち永久もこれが原因。
    • 身長が最も高いネロ・カオスには当たらないにも関わらず一部のキャラには当たる昇り中段が複数ある。それがアホ毛に当たっているような挙動だったため「アホ毛中段」と呼ばれることに。
  • 特定状況*18で起き上がった直後に立ちガードできないバグが一部のキャラに存在する。該当キャラへのガー不起き攻めは地獄。
  • なお、Ver.Aで最強キャラの暴走アルクェイド、強キャラの遠野志貴と七夜志貴がガー不とアホ毛の該当キャラだった*19ので、これらが抑止力として働いている一面も(一応)あった。
    • しかし暴走アルクェイドと並ぶ最強キャラの紅赤朱秋葉には影響がなく、その一方で弱キャラの翡翠はガー不やアホ毛を喰らってしまう。完全に涙目である。

総評(PS2)

  • 移植度自体は良好だが、アーケード版よりロードが長く、全体的に音がこもってしまっている。まだ発展途上だったバージョンの移植であったこともあり、格闘ゲームとしての難点も多い。
  • 家庭用移植がアーケード版の稼働からおよそ一年半後(「Ver.A」稼働から数えても一年後)と遅く、その4ヶ月後にはアーケード版「Ver.B」が稼働したため、アーケードの練習用ソフトとしては短命な作品に終わってしまった。

MELTY BLOOD Act Cadenza Ver.B

【めるてぃぶらっど あくとかでんつぁ ばーじょんびー】

ジャンル 2D格闘ゲーム
対応機種 Windows 2000以降
メディア DVD-ROM
発売・開発元 エコールソフトウェア
TYPE-MOON
発売日 2007年07月27日
価格 初回限定版:7,800円
通常版:5,800円
判定 良作

特徴(Win)

  • ゲーム名は「Ver.B」だが、内容は最終バージョン「Ver.B2」の移植。PS2版の反省を受けてかアーケードからそれほど間を置かずに発売された。
    • 初回限定盤には2枚組のオリジナルサウンドトラックが付属した。
    • アーケード版を完璧に移植し、音質やロード時間などの問題もない。音声もフルボイス。PS2版にあった要素は一部削除されたが、今から「Act Cadenza」を遊ぶならこちら一択。
  • 追加要素
    • ネコアルク・カオスの新シナリオが追加。ここでしか登場しない敵が用意されるなど、妙に気合いの入った作りになっている。
    • おまけモードとして「4人対戦」「タッグバトル」が追加された。なおこのモードではもともと二人一組の「翡翠&琥珀」を使用することはできない*20
      • 4人対戦モードは本当にただ「4人で同時対戦できるだけ」という代物でキャラクターの調整などはなく、タッグバトルモードも永久コンボが存在するなど対戦ゲームとしての出来はお察し。とはいえ完全なおまけと割り切ればこれはこれで面白い。
      • 「地上ダッシュができないはずなのに味方の元に猛スピードで駆けつけるネロ・カオス」などのシュールな図は笑いを誘った。
      • このモードでは誰と誰がタッグを組んだかによってチーム名が決まるのだが、これが同キャラタッグを含めた253通り全てで設定されている。なかなかに凝っており、ファンに喜ばれた。