リアルバウト餓狼伝説2 THE NEW COMERS
【りあるばうとがろうでんせつ つー ざ・にゅーかまーず】
ジャンル
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対戦型格闘ゲーム
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対応機種
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アーケード(MVS) ネオジオ ネオジオCD
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販売・開発元
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SNK
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稼働開始日
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1998年3月20日
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配信
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アケアカNEOGEO 【PS4/One】2018年3月8日/838円(PS4) 842円(One) 【Switch】2018年8月16日/838円 ※価格は税込
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判定
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なし
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備考
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後にPS2『餓狼伝説バトルアーカイブズ2』に収録 2012年6月19日にバーチャルコンソールでNG版配信(現在は終了)
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ポイント
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対戦ツールとしては至高 ストーリー性が皆無、演出類を省略しすぎ
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餓狼伝説シリーズ
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概要
2D格闘ゲーム『餓狼伝説』シリーズの、アーケードで出た作品では7作目にあたる作品。
『リアルバウト餓狼伝説』(以下RB)の続編らしきタイトルとなっているが、実際は本作内でのストーリーの展開はほとんどなく、『リアルバウト餓狼伝説スペシャル』(以下RBS)のマイナーチェンジ版という位置づけと言える。
特徴
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タイトルにあるように、李香緋(リー・シャンフェイ)とリック・ストラウドという二人の完全新キャラが新たに参戦。登場キャラは総勢22人(CPU専用の隠しキャラ1人を含むと23人)となった。
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また、今作ではキャラクターセレクトなどに使われるバストアップ絵がなぜか非常に濃い。
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攻めの「コンビネーションアーツ」・守りの「ライン(スウェー)」という『RB』からの二つの軸となるシステムは健在。以下に本作でのシステムの変更点などを書くが、これまでのシステムを知ってないと理解し辛い内容であることはご容赦願いたい。
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本作でのシステムの変更点など
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ラインシステム(スウェー)
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『3』『RB』と同じく「メインライン」と「スウェーライン」に分かれた形式に再び戻った。
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通常はメインラインで戦い、Dボタンでスウェーラインに逃げることができる。
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ただし、『3』『RB』と違いスウェーラインは奥側の1本だけ(手前ライン廃止)の2ライン制(実質1+1ライン制)となっている。
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『RB』ではスウェーラインにいると圧倒的に不利だったが、本作ではスウェーライン上でガードやクイックロール(無敵状態でメインラインに戻れる)ができるようになり、また対メインライン攻撃と対スウェーライン攻撃の間に相性が作られた(上段と下段の二種類があり、お互いが一致すればメインライン側が勝ち、一致しなければスウェーライン側が勝つ)など、スウェーラインを使った攻防に駆け引きが生まれている。
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『RBS』のようにメインライン2本でこそないものの、スウェーラインでの自由度が上昇している。
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ただし、スウェーラインに移動して逃げに使えなくはないが、スウェーライン→メインラインへの攻撃の威力は微弱で連続技も繋がらない一方、メインライン側の対スウェーライン攻撃は容易に超必を含む連続技に繋がる、もしくはダウンが奪えるようになっており、スウェーラインへ移動する事自体がハイリスクになっている。
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あまつさえごく一部のキャラが持つダウン属性を持つ攻撃以外は、ヒット&ガードに関わらず
メインライン側のコマンド投げが確定してしまう
。コマンド投げを持つキャラが相手の場合、スウェーラインに移動するのは自殺行為にも等しい。
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避け攻撃
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これまでのシリーズは「ガード中にレバーを前に入れてAボタン」で出せた「避け攻撃」だが、本作ではボタンをAB同時押しすることでいつでも出せるようになった。避け攻撃は上半身・膝上無敵であり、この性質を生かしてのカウンターに使える。ジョー東などこれが主力のキャラクターもいる。
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ブレイクショット
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いわゆるガードキャンセル。過去作から存在するが、本作ではブレイクショットに対応した必殺技が大量に増加。これまで対空必殺技のみだったが、飛び道具や突進技などもガードキャンセルに使うことができる。
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ブレイクショットに無敵時間が付く技と付かない技があり、当然前者の方が使い勝手は良いと思いきや、無敵時間付与の技の出が遅いキャラもおり、そういうキャラは無敵時間のない出の早いブレイクショット対応技を使った方がいいケースもあり、技選択の奥の深さがある。
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ダウン回避
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ダウンする直前(吹っ飛び中)に上方向かそれ以外にレバーを入れながらDボタンを押すと、「グランドスウェー」「テクニカルライズ」という二種類のダウン回避ができる。
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「グランドスウェー」はダウンしてからスウェーラインに逃げることができ、起き攻め・追い討ちを回避してスウェーラインでの攻防に持ち込める。前作までの「ライン逃げ起き上がり」「ダウン回避」に相当。
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「テクニカルライズ」はダウンしてすぐに起き上がれるが、無敵時間が通常のダウンより短く、終わり際に隙があるため読まれると追撃を当てられる。
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フェイント
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レバーを入れながらAC同時押しかBC同時押しすると必殺技のフェイントが出せる。フェイントに釣られて動いた相手にカウンターを当てる用途のほか、本作では通常技にキャンセルをかけてフェイントが出せるようになり、動作時間の短いフェイントで隙を消してさらに打撃で固める、という攻めも可能となった。後の『餓狼MOW』にもこのフェイントが採用されている。
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評価点
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洗練された対戦バランス
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これに尽きる。全体的に豪快・大味めな調整だった前作『RBS』に比べて、完成度はこちらが格段に上。
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「ブレイクショット」や「避け攻撃」を使ってのカウンターを狙う戦法が強力だが、そうした守りの強さを中心に回るジリジリとした駆け引きはストリートファイターシリーズに似た面白さがあると言える。
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ラインシステムにおいても、実用レベルになった前作の仕様に加え、対ライン攻撃でのA攻撃が下段無敵の中段属性になったため、ライン間でも立ち・しゃがみの読み合いによる駆け引きが生まれた。
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『RBS』での裏ビリーや双角のような明らかな強キャラは存在せず、明確な強弱こそ見えるがどのキャラも強みと弱みがはっきりしている。
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ただしローレンスやマリー、崇秀は使ってみてハッキリ弱いと分かるほどの弱さ、とはいえ潜在能力は強いので一発でひっくり返すことも不可能ではない。このゲームの大会でマリーで優勝するほどの強者もいる。
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一方で強キャラとされているのは舞、タン、香緋。
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狙うコンビネーションが画一化されているという問題も解消されており、また全体的にルートも増加したことで立ち回りの幅が広がった。これにより、前作までよりさらに明確にキャラの個性が現れている。
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バランスが良いだけでなく、全体的に攻撃力が高めで潜在能力による一発逆転性もあるなど、手に汗握る対戦を楽しめる作りになっている。
問題点
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必要以上に簡素な演出。
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SNK格闘の格闘ゲームは演出面にも凝っていることで人気が高かったが、本作では演出を大幅に簡素化。
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ラウンド1開始前の掛け合いデモ、ラウンド勝利時の勝利ポーズ、ゲーム勝利時の勝利メッセージ、CPU戦での専用の演出などは完全にカット。さらにゲームに関係ない部分は次々スキップが利くようになっている。
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この変更により対戦ゲームとしてのテンポは非常に早くなったものの、一人用で遊ぶときに味気なくつまらないという評価が大半を占めていた。
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従来、餓狼シリーズは道中の演出はともかく、エンディングが素っ気無いことが多く、一度クリアしたら飽きてしまうという意見が多かった。今作のEDも似たようなものなので、その上道中の演出まで抑えられては、CPU戦に魅力を感じないと言われてもやむなしだろう。
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対戦は対戦で、稼動当初の対戦が盛んな時期等には、勝利後に本当に息つく暇もなく次の対戦が始まってしまうので、やってて疲れたプレイヤーも発生した。
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派手さに欠けたキャラクター性能。
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前作『RBS』からキャラクター性能にも調整が入っており、新しい必殺技の追加削除が行われたキャラクターも多い。中でも超必殺技の上位版である潜在能力は、多くのキャラクターが全く新しいものに変化している。
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が、『RBS』で派手だったコンビネーションや必殺技が地味めな演出に変えられたり削除されたり、また『RB2』で追加された必殺技も地味な見た目なものが多いなど、全体的な傾向として地味。性能自体も全体的に抑え目に調整されている。
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一方、ギースの「レイジングストーム」やダックの「ブレイクスパイラル」といった、その独特なコマンドも技の魅力となっていた一部の超必殺技コマンドが比較的簡単なものに変更されているが、昔からの餓狼ファンの中には、それだけで拒絶反応を起こしてしまう人もいた。
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ギースは空中から放つ飛び道具「疾風拳」や、突進技「邪影拳」が無くなり、待ち&投げキャラに変貌。こうした突然の変化も往年のプレイヤー達を戸惑わせた。
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攻める爽快感を削いだ調整。
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元々このシリーズは「コンビネーションアーツ」というボタンを連続押しすることで簡単に連続技が出せるシステムを売りにしており、これを使った攻めが特徴となっていたが、本作では「ブレイクショット」の存在により距離を置いての牽制が重視されている。
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『RBS』からの仕様で、攻撃を当てたときだけでなく攻撃をガードしてもパワーゲージが溜まっていき、ゲージが半分溜まった時点でブレイクショットが使えるため、安易にコンビネーションアーツで固めようとすると簡単に切り返されてしまう。キャラクター差はあるがブレイクショットは基本的に無敵時間が付与された出の早い技が飛んでくるため、それを読んで潰す、またはガードするということは非常に難しい。ガードクラッシュなどもなく、一部を除いて崩しは弱めで、さらにシリーズの特徴として必殺技のケズリダメージが極端に少ないため、ガードを固めるのがかなり強力。
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またジャンプの着地に明確な硬直が設定されているため迂闊にジャンプ出来ず、さらに膝上まで無敵になれる「避け攻撃」がABボタン同時押しで簡単に出せる上に対空として優秀なキャラクターが多いため、崩しの選択肢が狭くなった事も一因。「避け攻撃」を潰せる下方向に強いジャンプ攻撃を持たないキャラクターは、相手にガン待ちされるとほぼ地上戦しかできなくなる…という状況も多い。
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ゲームスピードも遅くなっており相手の行動に対応しやすいため、基本的に待ち気味に戦うほうが強いゲームへと変わっている。
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このような調整が見た目の地味さを引き起こし、またわかりやすい爽快感を損ねている感は否めない。
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目新しさに欠けた内容。
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本作からの新要素らしい新要素は二人の新キャラクターの登場ぐらい。キャラクターのグラフィックやBGMは大半を前作から流用しており、新システムなども搭載されていない。『リアルバウト餓狼伝説』も3作目であり、多くのプレイヤーが飽きを感じていたことも大きい。
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タイトルに『2』とあるのにほぼストーリーが無いという事も惜しい。
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エンディングも台詞は一切無しで絵のみで展開される上、キャラクターによっては崩壊気味なギャグ調のものになっている。
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それまで餓狼伝説シリーズでは『餓狼伝説スペシャル』『リアルバウト餓狼伝説スペシャル』と、ストーリーのないお祭り作品は「スペシャル」と名付けるのが通例になっていた。慣例に従うなら『RB餓狼SP2』(RBS2)とでもすべき物だったのでは?
一方で本作の数ヶ月後にプレイステーション(PS)で発売されたオリジナル作品である、『リアルバウト餓狼伝説スペシャル ドミネイテッドマインド』(以下、RBDM)の方は外伝とはいえ前々作『リアルバウト餓狼伝説』の直後を描くストーリーが存在しており、時系列にもしっかりと含まれているため、慣例に当てはめるならむしろこちらの方がナンバリング作に相応しいと言える。
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前作『RBS』に続いて、二作品連続でストーリーが無いのは異例。同じくストーリーの無い『餓狼伝説SP』や、同様の立場であるKOFシリーズの『KOF'98』『KOF2002』『KOFXII』では、その次の作品でストーリー展開の続きが描かれていた。
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物語の中核を担っていたギースが『RB』で死亡しており、その後の物語を描くのは難しかったのだろうが、だからこそギース亡き後サウスタウンがどうなっていくのか期待していたファンは肩透かしを二連発で食らう事になった。
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今作の新キャラクター二名は、主人公として扱われているものの、何が目的で戦っているのかはっきりしていない。
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キャラクター選択画面では最上段の目立つ位置に居るのだが、デフォルトカーソルは従来通りテリーとアンディであり、ストーリーも皆無のため新キャラクターが主人公と認識している人はほとんど居なかった。
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リックに至っては、キャラクター性もバックボーンも何もわからずフェードアウトしたも同然の扱いになっている。一応、当時のゲーム雑誌等にはリックと香緋の参戦理由を明かすミニストーリーが掲載されたが、リックのエンディングに登場する女性の正体等はそちらでも一切謎のまま。
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香緋はKOFに参戦したりとまだ恵まれた方であるが、方やリックは2024年現在、他作品へのプレイアブルでの参戦もない。
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また、間の悪いことに同時期には『KOF'98』が登場。
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『KOF'98』の方も同じくストーリーは無いお祭りタイトルだったが、それまでのKOFシリーズの集大成でゲームバランスが洗練されており、注目度も断然あちらのほうが高く、本家餓狼シリーズである筈の本作はその陰に隠れてしまった。
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最終ボスはギースかクラウザーのどちらか片方がランダムで登場。もう片方とは戦えないため、達成感が半減。
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また彼らはキャラクター性能の強さはともかく、過去に撃退された事がある従来ボスであり、新たな脅威としての存在感に欠ける。
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前作のギースは死んだ設定を反映して「ナイトメア(悪夢)」として足元にオーラが漂い、性能も非常に強く威厳漂う物となっていたのだが、今作ではギースが通常キャラクターになったためこの演出もなく、「幻」という設定ながら見た目は普通に生前のギースにしか見えない姿で再登場している。
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条件を満たすと隠しボスとして「アルフレッド」が登場するのだが、発売を控えたPS版『RBDM』からの顔見せ先行出演のようなものであるため、家庭用を買わないと全く背景が分からない。ゲーム中でも何の説明もなくいきなり乱入してきての戦いになるため、「こいつ誰? 何者なの?」と思った人も多いだろう。
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当時はCPU専用、かつPS版『RBDM』はラインシステムが廃止されているためか本人の登場ステージも1ライン限定。その後、PS2『餓狼伝説バトルアーカイブズ2』では隠しキャラクターとして使用可能になったものの、プレイヤー化してもライン関連のシステムが最低限のライン移動しか行えないため、本人のキャラクター性能自体は強めなのに相手が別ラインに逃げるだけでどうしようもなくなるという極端な性能である。
総評
格闘ゲームとしては地味に過ぎ、「餓狼伝説」としては違和感が残る作品ではあったが、対戦ツールとしての出来やバランスは格闘ゲームの中でもかなり高い水準に入る。
ただし、その地味さと早すぎるゲームテンポから最初はゆっくりと始めたい初心者には向かず、またシリーズ経験者からもそっぽを向かれてしまう事が多く、早い内にゲームセンターから撤去されてしまう事もあった。
移植
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当初は家庭用ネオジオ2機種(ROM/CD)以外に移植がなく、「総評」で記したように稼働当時は人気が得られなかったこともあって総じてプレイ環境に恵まれていないレアゲー状態が長らく続いたが、稼働開始から約9年後の2007年2月22日、PS2で発売されたアーケードのリアルバウト3部作を集めたコンピレーションソフト『餓狼伝説バトルアーカイブズ2』にて収録された。ネオジオ以外への移植はこれが初。
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移植度は『RBS』と同様に完璧である上に、NCD版のアレンジ音源も収録(オプションで切替可能)。さらに本作の特典としてCPU専用隠しボスであったアルフレッドが解説書記載の隠しコマンド入力で使用可能になっている。ただし「問題点」で記したように、元々プレイアブル化を想定していなかったせいか、ライン関連のシステムが移動以外殆ど未実装であるせいで、対戦での使用に耐え得る性能とは言い難い。あくまでオマケとして考えるべきだろう。加えてCPU戦におけるエンディングも存在しない。
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NEOGEOオンラインコレクションシリーズの一つでもあり、かつてはオンライン対戦も可能であった(2010年9月をもって終了)。
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その後2012年6月19日にWii(WiiU)のバーチャルコンソールでもネオジオ版が配信されたが、2019年1月をもって配信終了。
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2018年からはPS4/Switch/Xbox One向けにアケアカNEOGEOの一作としてMVS版が配信中。
余談
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問題点でも記したように前後作と比べてイマイチ人気が伸び悩んだ本作だが、キャラ数の多さと対戦バランスの完成度は確かなもので、それに惹かれてか、発売当時から根強いファンが存在しており、発売から20年以上経過した2020年代においても中野TRFやゲーセンミカドなどで対戦が盛り上がりを見せ、そのゲームバランスの高さ等が改めて評価されるきっかけにもなった。
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MVS/ネオジオの起動画面が「GIGA POWER」の表記に変わったのは本作からである。ちなみにROMの容量も539メガビットと非常に大きくなっている。
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1999年5月27日にネオジオポケットで本作をベースにしたアレンジ移植『餓狼伝説 FIRST CONTACT』が発売されている。
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モノクロ本体でも遊べるが、ネオジオポケットカラーのカラー表示にも対応している。
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ライン制が廃止され、技コマンドも斜め入力やタメを必要としないものに簡略化されている。
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隠しボスのアルフレッドが使用可能になり、さらに本作限定で対戦専用隠しキャラとして原作ではサブキャラだった「ラオ」が使用可能。登場キャラは彼らを含む13人。
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2020年12月24日にニンテンドースイッチで『NEOGEO POCKET COLOR SELECTION』の1作として移植された。
最終更新:2024年06月21日 11:46