ラグランジュポイント
【らぐらんじゅぽいんと】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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4MbitROMカートリッジ
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発売・開発元
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コナミ
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発売日
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1991年4月26日
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定価
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8,500円
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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2個(バッテリーバックアップ)
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判定
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なし
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ポイント
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グラフィック、BGMは神 ファミコン雑誌とコラボ トラウマイベント
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概要
日本初のファミコン専門攻略誌「ファミリーコンピュータMagazine(ファミマガ)」の通算100号を記念して、ファミマガ編集部とコナミが共同でゲームを制作するという企画、通称「芸夢工房」が発足した。
この企画で作られるゲームには読者の意見やアイデアが積極的に取り入れられ、実際に敵キャラのデザインや名前、音楽数曲、住人のメッセージなどが採用された。ゲームのタイトル名とタイトルロゴも公募の最優秀作が選ばれた。
さらに外部からも豪華スタッフが参加。ゲームデザインには後に『ゼロヨンチャンプシリーズ』『クロス探偵物語』で知られるようになる神長豊、シナリオに高橋源一郎、シナリオコンセプトで榎雄一郎が参加した。メインビジュアルとキャラデザイン担当は『Gu-Guガンモ』等を連載した漫画家の細野不二彦。音楽は自社作曲スタッフ「コナミ矩形波倶楽部(その中には、当時新人であった畑亜貴の名も)」のほかに、当時人気だったグループ「レベッカ」から高橋教之、土橋安騎夫の2名が参加した。
こうした多くの人の力が集まって、この『ラグランジュポイント』は生まれた。
冒頭までのストーリー
22世紀。人類は宇宙に進出し、ラグランジュポイントにスペースコロニー群を築いた。
3つのスペースコロニーと資源採掘用小惑星「ヴェスタ」からなるこのコロニー群は「イシス星団」と名付けられ、急速に発展していった。
しかしイシス暦24年、コロニーの一つ「ランド2」にてバイオハザードが発生。動植物がミュータント化して人々を襲い始めるようになるなどランド2の環境は激変、多数の尊い人命が失われた大惨事となった。
さらに突如現れた「バイオカイザー」なる存在と、イシス星団の指導者「プレジデント・ファイブ」のうちオレギ、レデスマ、ウェーバーの3人が地球に対して造反。イシス星団は内戦状態に突入する。
この事態を重く見た地球圏は、鎮圧のため軍隊や調査隊を何度か派遣するも、いずれも連絡途絶に。
そして最後の調査隊・・・三回目に派遣された調査隊の中には、主人公(つまりプレイヤーの分身である)ジンの姿もあった…。
評価点
音楽
本作最大の特徴。ROMカセット内に自社特製の専用音源チップ「VRC VII」を導入してファミコンソフトでありながらFM音源を実装、実に15種類の音色を記録させることができた。もはやファミコンのスペックを超えていると言っても過言ではない。
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前述の通り、作曲にはコナミ矩形波倶楽部のみならず外部の作曲家も多数参加しており、名曲が揃っている。中でもランド1BGM「プロミストランドを探して」や、中ボス戦BGM「悲しみの戦士達」は非常に印象に残る良曲として今なお評価が高い。その証左に、発売されたサントラは現在プレミアがついている。
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特殊チップはコスト面の問題やSFCの登場の影響等があったのだろう。結局このチップが生かされた作品は本作が唯一無二の存在となってしまった。
ストーリー
当時としては数少ないスペースファンタジーを題材としている。昔ながらのコロニー、サテライトベースといった言葉が並ぶ正統派で、重厚なSF世界観をウリとしている。
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SFというと難解な言葉が次々出てくるイメージがあるが、都市の名前は「ポテトタウン」「オレンジキャンプ」「コーンベース」、HP回復アイテムは「カロリー〇〇」、ステータス異常回復アイテムが「マヒナイン」「はっきりシー」、というように重要な部分は覚えやすいように工夫されている。
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グラフィックこそポップな感じだが、裏切りや死亡描写といったいわゆる「重い」話が多く、序盤からハードでシリアスな展開が続く。これらはこのゲームにおける戦闘の悲惨さを語る重要な存在であり、決して無理矢理涙を誘うような臭い演出ではない。そういう意味では既存のRPGとは少し違った魅力を持っている、とも言える。
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ただし暗い部分ばかりではなく、主人公にいきなり蹴りをくらわせて決め技を伝授する通称「きめわざかんごふ」や、仲間の一人であるクリスのあだ名が「ランバダのクリス」だったりといった笑いどころも存在する。
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フィールドもコロニーが舞台という事もあり巨大な筒の中という構造。上下にはループして左右ではちゃんと行き止まりという仕様になっている。
グラフィック
FC末期の作品ということもあり、グラフィックは素晴らしい。中ボスは戦闘中にわさわさと動き、更にはアニメーションが要所で見られるなど、その演出力は下手なSFCのゲームを超えている。
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例えばコロニー間の移動時には宇宙船が入港するシーンが挿入される(カット可能なので待ち時間が苦痛にはならない)。また、宇宙空間を移動する際には酸素ボンベを装備して宇宙服に着替え、移動もステップするような動きに変わり、慣性が再現されているなど、スタッフの細かいこだわりが随所に垣間見られる。
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ショップなど様々な施設では一枚絵が用意、しかも口パクなどのアニメーションを実装している。
システム
SF性を重視した独特なシステムが多い。
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武器合成システム
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武器にランクが存在し購入可能な武器は6段階中下から3番目まで(ポテトタウンで買えるスパークサーベル、コーンベースで買えるオキシドライフル)。それ以上の強さの武器は合成しないと作り出せない。
もちろんランクの高い武器ほど製作は大変になるが、最高ランクの武器はエフェクトが派手で威力もすさまじく、作った達成感もひとしお。
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ただし、バランス調整の一環として「ステータスによる装備制限」があり、レベルを上げないと強力な武器は装備できない。また、武器には属性が存在し、各キャラに設定された得意な属性の武器を装備すると特典が得られる。
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ステータスによる装備制限は『冒険時代活劇ゴエモン』でも実装されている。
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合成費用がけっこう高いため、全員の武器を揃えるには稼ぎが必要になる。新しいマップへ行ける→敵が強い→強い武器と装備するためのレベルが欲しい→探索しつつ稼ぎ…と、ストーリー攻略に合わせて育つようになっている。
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BP(バッテリーポイント)制
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このゲームでは攻撃やキット(スキルのようなもの)を使用するのに「BP」を消費する。いわゆる「MP」のようなもの、と思えばよい。強力な技ほど多くのBPを消費するのはMP制と同じ。
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MP制との差異は「通常攻撃でもBPを消費し、BPが切れると威力がほぼ無くなる」「最大BPはレベルアップで最大値が増えず、店売りの「BPタンク」をより容量の大きいモノと交換する必要がある」という点。BPは回復アイテムが用意されているが、上手くやりくりしないとまともに攻撃すら出来なくなるため、ダンジョンでの引き際を見極める際には重要となる。
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キットは加入した仲間から預かったりコンテナ(宝箱)から入手したりする。それぞれのキットを扱える仲間は決まっている。
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キャラクター関連
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主人公のジンを含めて総勢10人。固定で外せないジンを含めた4人パーティーを組んで探索する。序盤は展開の都合上半固定に近いが、中盤以降は自由に入れ替えが可能。
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各キャラごとに明確な個性が打ち出されており、キャラ性能の長所と短所がハッキリ分かれている。
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種族は、HPを大量に消費するが、代わりに強力な効果をもたらす「決め技」が使える人間、ステータスが高めのサイボーグ、ほぼすべてのステータス異常にかからず、安価に装備を整えられるメカの3種。
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なお、パーティーではメンバー内からリーダーを一人選出する。ジン以外の者をリーダーにすることも可能で、リーダーにした人物に応じて街の住人の反応やオート戦闘時のAIが変化するようになる。
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「感情の起伏」の要素があり、戦闘中にも随時変化する。これによって能力値に補正がかかったりする。
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他にも、やや非王道的なシステムとして…。
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本作の通貨は「コロン」。これは『MOTHER』シリーズのように敵を倒してもその場で金銭を得られない。倒した敵のお金は町の施設「ターミナル(宿泊とセーブを行える施設)」で報酬金として受け取る仕組みになっている
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ただし全滅した場合はそれまでに貯まっていた報酬金が0になってしまうため、ダンジョンからの離脱が面倒だからといって死に戻りする手段は考え物。それを長いダンジョンでやるほど多くのコロンを棒に振る計算なのでそのあたりはジレンマと言える。
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現在HP以上のダメージを受けると、「きぜつ」として一旦HP1で踏み止まる。この状態は戦闘不能に似ているが、HPを回復すれば即座に復帰できる。「きぜつ」の状態からさらにダメージを受けると「ひんし」となり、これが本作での戦闘不能。こうなると宿泊施設で治療を受けないと復帰できない。
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なお、『桃太郎伝説』シリーズ同様に、ジンが倒されると他の仲間が残っていても全滅扱いとなり、町に戻されてしまう。
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本作に即死攻撃や一撃必殺技は無いので、理不尽な全滅を強いられる事は少ない。
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戦闘不能になる前に瀕死で耐えるのは珍しく、『ライブ・ア・ライブ』くらいであろう。
賛否両論点
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主人公に名前を付ける事が出来るが付けられるのは名字のみである上にデフォルトネームは無い。考えるのが面倒ととるか自由度が高いととるかはプレーヤー次第。説明書にはジンはあなたの子孫かも知れませんと記述されている。
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ちなみにこの名前だが、作中では決め技使用時に適用されるのみ。もっとも他キャラは姓が設定されているにもかかわらず、決め技使用時には技名のみの表記。
この差異を嫌って、名前入力を空欄にしてしまうプレイヤーも多かったのでは?
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システム面が設定準拠になりすぎているきらいがあり、一部の仕様が不便だったりする。「バランスが破綻している」とまではいかなかったが、FCのメインターゲット層であるライトユーザーにとってはあまり評判がよろしくない要素も。特に「BP制」については大きく賛否が分かれている。
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特に困惑するのが、「3つのコロニー」という設定。中盤以降の拠点であるサテライトベースはともかく、主な冒険の場であるランド1・ランド2はシャトルでしか行き来できない。このためルーラ的な移動アイテム「ハイドロウイング」を入手しても、各地へのアクセスには常に不便が付き纏う。
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雑魚敵のデザインはファンシーなデザイン、名前のものが多い。公募による都合もあるが「死者が大勢出ているハードな物語の雰囲気と合っていない」という声もある。
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バグ関連
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「大量の経験値と資金を得られる」、「リストにない品物を破格の安値で買える」といったゲームバランスを崩壊させるバグが存在する。
ただし、バグの総数はそう多くはないし、前述のバグも含めて大半のものは意図的に行わない限りは発生しない。フリーズやセーブデータ破損などの致命的な不具合もない。
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その一方で、世にも珍しい「一定回数逃走するたびにステータス微上昇」という隠し仕様もある。
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空飛ぶ乗り物
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ホバー系統の乗り物は登場するがエンカウントも起こり、亀裂や高い崖は越せない。
(というか乗り物は全て非武装のため、搭乗中にエンカウントしても全て生身で行う事に)
また、ランド2の一部地域は既に敵地となっているため崩壊・システムダウンしており、乗り物はなく徒歩で行くしかない。
終盤限定でも良いから、FFシリーズのように広大なフィールドを颯爽と駆け抜ける乗り物に乗りたかった、と思うプレイヤーも多かったのでは。
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中ボスの一人「オレギ」が異常にキャラ立ちしており、他の敵を完全に食っている。ラスボスさえも。
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序盤で戦う中ボスのため相対的な強さは他の二将軍と比べると弱いのだが、味方が育っていない段階で戦うことになるので撃破に最も苦労する。しかも対峙するのは中ボスでは最多の3回(レデスマは2回、ウェーバーは1回のみ)。
ここを突破するとサテライトベースでメンバーチェンジ&武器製造できるようになるため戦闘面ではぐっと楽になり、以降はラスボスも含めて壁となるボスが特に存在しないのも「本作=オレギ」の印象を強める一因となっている。
また、いかにも物理特化の外見(巨大な狼に熊の上半身が乗っかっている)に反して、戦闘時はこちら全体への火炎放射攻撃しかしないのもある意味印象的。
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更に…
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ストーリー序盤において、タムという幼児が非戦闘員の同行者として加わるのだが、オレギはダンジョン内で出会ったタムを容赦なく殺害する。
(怪物や殺人ロボがウヨウヨしている危険なダンジョン内で、幼児とはいえ迂闊な行動するほうが悪いのだが…)
しかも、このシーンが特殊ム-ビーである凝りっぷりであったり、後にタムの祖父トムトム博士に話しかけると、「タムをしらんかのう タムをしらんかのう」と問いかけられる(そしてこちら側からは何も返すことができない)。…ここまで来ると絶句するしかない。
(ちなみに終盤になるとタムの死を乗り越えてタムの思考を移植されたガイドロボ「ピコ」を作る。)
ファンの間には「このシーンがVC化などの妨げになっているのでは?」という疑念すらあるほど。
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タムの死亡シーンは吐血まで描かれており、普通にダンジョン攻略を楽しんでいたプレイヤーの気分を一気にどん底まで沈める。
(肉体損傷が少なすぎるので、オレギの強さから考えるとデコピン以下の行動だったのかもしれないが) タムの死亡シーンが明けると文句を言う間も無く問答無用で戦闘になる点や その戦闘ではオレギは撤退するために、結果タムの仇は後に残すことになる点も相まって おそらく誰もが最も印象に残ったシーンとしてあげるであろう。 オレギとの再戦は近いうちに起こるのだが、終盤に持ってきた方が良かったという意見はある 他のボスについては、各地で犠牲者が出ている事を考えるとプレーヤーには見えないところで牙を剥いているという見方はある。
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オレギ3戦目にクリスが同行していた場合、攻撃時にちょっとしたセリフが挿入される。
よほどの偏屈プレイでもない限りクリスは同行している事もあり、他の戦闘では見られない特殊な演出のため、よりオレギを印象付けさせるようになっている。
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因みにラスボスは一般的なRPGらしい戦闘前の前口上が殆どないうえに、倒した後は死に際のセリフすらなくエンディングに突入する。
(崩壊する敵本拠地を脱出中に、予期せず遭遇してラストバトルになるため尚更)
幹部達が事の真相や言い分についてほとんどしゃべってしまったため、話すことが何も無くなってしまったのだろうか?これもラスボスの印象が薄い一因となっている。
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また、完全に好みの問題と思われるが、ラスボスの第2形態以降のデザインがなんともいえない姿のため、「ダサイ」「ラスボスっぽく見えない」と不評の声が多い。
難点
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あまりRPGのノウハウが無いコナミ発ということもあり、ゲームバランスはお世辞にも良いとは言えない。
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グループ攻撃可能な武器は威力が低くて役に立たない(ランク5、6の武器は除く)、正常に機能しないキットがある、苦しいのはオレギ戦まででそれ以降はバトルが一気に楽になるなど、戦闘バランスの調整が甘い。
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後述の特殊攻撃の脅威もあり、弱いグループ武器で削るより、全員に強力な単体武器を持たせ1体ずつ倒していかないと辛い(敵は最大でも6体までしか一度に出現しないので尚更)。
また、武器には6つの属性(電気/熱/波動/冷気/腐食/特殊)があるものの、本作に属性相性などは設定されていない。武器はたくさんあるのに選択肢が少ない。ついでに、敵の種類(生物系のミュータント、機械系のクリーチャー)にも大きな差異が無いので、余計に戦闘が単調に感じられやすい。
なおマスクデータとして各武器ごとに攻撃回数が設定されており、これのせいで表示上の数値がほぼ同値でも、単体用・全体用を比較すると実際のダメージは大きく異なるようになっている。
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最強のランク6武器は逆に超強力な全体攻撃武器であり、ラスダン以外のザコは1発で倒せてしまう。おまけにランク5全体武器よりも低燃費で、とってもリーズナブルな仕様。
このため人間キャラが使える決め技の存在価値も薄くなってくる。
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現在HPやBPを半減させる特殊攻撃が存在し、ボスはおろか通常の雑魚敵も頻繁に仕掛けてくるうえ必中。
これのせいでキャラのレベルを上げる、容量の大きいBPタンクに持ち替える…等の強化を行っても長期戦では苦戦を強いられてしまう。特にBP切れは通常攻撃もキットも使用できなくなるためかなりいやらしい。
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ただし、回復アイテムは店で容易に買えるため、あらかじめ買い込んでおけば言うほど苦になるものではないし、敵との相対レベルが一定以上であれば雑魚からは最悪逃げられる。
また、仲間キャラの中にはBPを回復させる能力を持つ者もいる。
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上位武器での攻撃時の長い演出。
FCソフトとは思えないほどに良く出来たアニメーションだが、全体武器使用時でも敵1体ずつに処理されることもあり、最強武器の「ぜったい0どほう」や「メカフリーズ」のやたら長い演出は冗長で邪魔に感じられやすい。
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人間系やサイボーグ系なら、威力は若干劣るが演出が非常に短い「コロナほう」を用いればいいのだが、ロボ系は単体用の「ロボフリーズ」or全体用の「メカフリーズ」しか最終的には選択肢が無いので「プレイヤーが割り切ったうえで起用するorそもそも起用しない」しかない。
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主人公が戦闘不能になる以外にも、全員が自然回復しない行動不能(瀕死・気絶・麻痺・混乱)になると全滅なのだが、一部ザコが「全員に麻痺ガス」「全員に混乱ガス」攻撃を仕掛けてくる。
確率こそ低いものの運が悪いと一発で全滅である。意地が悪いことにストーリー中必ず攻略しなければならない中盤マップで頻繁に出現する。
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一応耐性装備もあるのだがマスクデータであり、おまけに終盤でないと入手できない。
基本的には「やられる前に殺れ」である。
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同系統の「のうりょく」の場合、上位のキットを入手すると下位の「のうりょく」は上書きされ以後使えなくなる。
(例:ジンの「HPかいふく1→HPかいふく2」、アストロの「しっかり1→しっかり2」など)
このためコスパ最高の「HPかいふく1」をずっと使いたいなら、これが上限であるデニスを使い続けることになる。
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パーティ構成の最終メンバーは、強さのみを求めるなら決め技がある人間(それもデニス/アストロ/リタ)でほぼ固定されてしまう。
基本的に極め技が無いサイボーグは人間の下位互換でしかない。
ただし、他のメンバーもまったく使えないわけではなく、戦術・メンバー構成を突き詰めないと勝てない隠しボスも存在しないので、どのような構成でも十分攻略可能。
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リタに関しては、ラスボスが仕掛けてくる状態異常「骨抜き」を治療できる唯一の手段持ちなので、高HP/高スピードの能力値もあって非常に優遇されている。骨抜きは「与ダメージ半減+戦闘中は自然回復しない+対応する回復アイテムが存在しない」ので、彼女がいないとかなりキツい。
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エンカウント率がやたらと高い。フィールドではワープも含めた移動手段が充実しているためそれほど苦ではないが、そうではないダンジョンではかなり苦痛となる。
ちなみにダンジョンを一発で脱出する手段は存在せず、中にはデメリットを覚悟でデスルーラを使うプレイヤーもいた。
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特に中盤「ミューほんやくき」を求めて訪れることになるミュー研究所跡は「ポテトエリアの発着場→モービルで移動→バイオの砦→徒歩で移動→ミュー研究所跡」とかなりの長丁場で、入手後は来た道をまた引き返す事になるためデスルーラがむしろ推奨されるほど。
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また、終盤の「センターシティ→徒歩で移動→バイオの要塞(中ボス戦あり)→壁間大工場(中ボス戦あり)→徒歩で移動→バイオの宮殿」は、非常に長いくせに補給地点なし(セーブポイントはある)。
ラストダンジョンであるバイオの宮殿まで到達できれば、以後はハイドロウイングの移動先に自動登録されるものの、この期間はザコ敵がかなり強いことも相まって非常に疲れる…。
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エンカウントを発生させないようにするアイテムはあるが、入手は1度きりかつ使い捨て。
後半のランダムエンカウントが中ボスクラスの敵となるラストダンジョンの為にキープしておかないと、ちょっと後悔することになるかも(「あれば楽になる」程度の差ではある)。
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エンカウントが高い関連でこのゲームの特徴といえば、町等に向かう時にも容赦なく連戦する事が多い。ドラクエ等は、フィールドの地形によりエンカウント率を変えていたり等、町近辺では比較的低くなっているが、戦闘をこなしてヘロヘロになって町で回復しようとすると、他ソフトよりも戦闘シーンに入りやすい印象が強い。
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更に本作では、援軍を呼び連戦になる敵に、特定ダンジョンでは仲間とはぐれる状況なども複合してくる。
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中ボスは移動画面では表示されないため、何も無い通路を歩いていると突然台詞が出てボス戦となる。所謂「初見殺し」である。
酷い時には長いダンジョンをクリアして町に入った途端出てくる奴までいる。
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本作のお金は敵を倒した数に応じて振り込まれ、宿屋に相当する施設で振り込まれたお金を受け取る事ができる。「MOTHERシリーズ」を彷彿させるシステムだが、あちらとは異なり受け取る時は振り込み額を全額受け取らなければならず、全滅すると振り込み額の方が0になってしまう(治療費の名目で)。結果、ちょくちょく受け取らないと損をしやすい。
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しかも全滅の金銭ペナルティは強制敗北イベントにも適用されてしまう。
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主人公ジンの「きめわざ」。
他の人間キャラは初期状態から変更なしだが、ジンの場合は特定の戦闘やイベントを経ることで刷新される仕様(下位の技は使えなくなる)。
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これだけなら別に文句は出ないのだが、全8段階のうち全体攻撃は3・4・7・8段階目のみで、残る半数は単体攻撃(差はコストであるHP消費の割合が、単体版と全体版で異なるくらい)。いずれも固定ダメージ攻撃だが、その値はその時点での通常攻撃と大差無いのに、クリーチャー系にはダメージ半減、ボス系に至ってはダメージ激減のペナルティつき。
3段階目の「スマッシュ」は時期的にトランスペアラーを狩るのに重宝するが、他の技はコストに見合わない残念性能。
せめて単体攻撃版は【ランダム複数回攻撃】とか【状態異常も同時に付着】などの差異を持たせるべきだったのでは?
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戦闘の見返り。
経験値入手・預金残高の増加の他に、稀にドロップ品ゲットもあるのだが、これが「微妙に低ランクなHP回復アイテム」ばかりでちっとも美味しくない。
BP制の都合上「こまめに拠点へ帰還するべし」という事なのだろうが、アイテム所持数の制限があるのだからいっそオミットしても良かったように思えてしまう。
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世界観的にも「クリーチャー系はBP回復アイテムor適性ランクの武器をドロップ」などの気配りが欲しかったところ。
総評
ストーリーも当時のRPGとしては珍しい本格SFを扱い、BGMとグラフィックもFC後期に発売されただけあり確かに高水準である。
しかし、特殊な製作環境であったため開発が難航し、発売されたのは既にSFCの時代に突入していた時期だった。そのため技術的にかなり高度なことを取り入れたつもりでも所詮FCレベル、ハードなSF設定もFCの対象年齢はずっと低かったので受け入れにくかった、と特徴がことごとく裏目に出てしまった。
結果売上は思ったほど振るわず、コナミの中では「失敗作」という評価が下されることとなった。
だが、「世界観がよく練られているSF」「FCソフトの域を越えた演出力、BGM」など良点も多々あり、「FCでも頑張ればここまでできる」ことを見事証明してみせている。そのため、20年以上経過した現在でもFC後期の隠れた良作として記憶に残っている人も多く、移植・リメイクを希望されている作品である。
移植・リメイクについて
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前述の通り、移植、リメイクを希望するファンは多い。しかし、現実にはリメイクはおろかVC化すらされていない。その理由は元開発スタッフによる言動も合わせ、下記の事情によるものと思われている。
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当時の制作スタッフはすでにKDE-J(コナミデジタルエンタテインメント)を退職してしまった者も多く、残っている者でもごく一部を除いて今は制作現場とは異なる部署に異動になっていること。
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「ランダムファイル(開発資料のコナミ内での呼称)」の所在が不明。仮にあったとしても当時と今とでは開発環境があまりに違い過ぎて、出力、再生するにも一苦労であること。
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そして何よりも「売り上げ面での期待に応えられなかった」ため、コナミの中ではあまり評価されていないこと。
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上記の通り本作は公募された要素がそれこそタイトルを含めあまりに多種多様に上るため、版権の扱いが難しくなっているのではと推察されること。
余談
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特殊チップを内蔵しているため、基本的に互換機でプレイできない。起動できても拡張音源が鳴らず、音がおかしくなる。
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裏技でサウンドテストできるようになっているが、この仕様のため純正ハードが無いとなんとも残念な事に。
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「ファミマガ」の通算100号企画としては、本作と並行して「ファミマガディスク大賞」も開催されており、それに合わせて発売されたのがファミマガディスクシリーズである。
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ファミマガ誌上にキャラデザ担当本人による漫画(全4話)が掲載されたが、単行本化されていない。前半は徳間書店の攻略本に掲載されたが、後半二話はファンすらもなかなかお目にかかれないレアなものになっている。ただし、4話という話数の関係上展開がかなり急で、ネタバレを避けるため終盤の展開が変わっている…など出来の方は微妙という有り様。
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キャラデザの細野氏は当時小学館の児童誌『月刊コロコロコミック』で連載を持っていたが、同じく連載を持っていた「おちよしひこ」氏がキャラデザを務めた『時空戦記ムー』と並んで「コロコロの漫画家が関わったゲーム」と紹介されており、メーカーが異なるにもかかわらず同じページで広告が掲載されていた。
最終更新:2021年11月21日 08:03