【くーろんずげーと くーろんふうすいでん】
ガイドブックに載せられない香港が、ある。
今は無き香港の九龍城砦をモチーフとした探索型のアドベンチャーゲーム。
プレイステーション初期タイトルとしてPS本体発売以前からプロモーションムービー等が公開されていたものの、延期に次ぐ延期によって発売までに実に4年以上の月日を費やした、と言う経緯を持つ。
延期によって多くの人からは忘れ去られ、手に取った人々も大半がその「ゲームとしての」不出来さに難色を示したが、この作品の強烈な魅力に取り憑かれた人々も決して少なくはなかった。
いわゆるカルト的な人気を博したといえるゲームである。
企画・監督・脚本は『キリーク・ザ・ブラッド』を手掛け、後に『真・女神転生III NOCTURNE』にも携わる木村央志。音楽は『世にも奇妙な物語』などで知られる蓜島邦明を起用している。
1997年、中国返還前の香港に、取り壊されたはずの九龍城が突如として出現した。否、陰界の九龍城がこの陽界に現れたのだ。
陽界と陰界は本来互いに交わることのあってはならない存在。このまま陰と陽が交わり続ければ世界は意味を失い破滅することとなる。
二つの世界の風水を監視していた香港最高風水会議は、陰界にて風水の源となる四神獣の見立てが行われていない事にその原因があると断定、一人の若き超級風水師を召還し見立ての任にあたらせる。プレイヤーであるこの風水師は世界の均衡を保つ為、単身、陰界の九龍城に潜入する。
この作品は様々な専門用語が存在する。ここを読むにあたり必要と思われる最低限の用語を本項で解説したい。
本作は終始主人公の視点で描かれる一人称視点形式の探索アドベンチャーである。
陰界より現れた巨大スラム街「九龍城」を舞台に、「四神獣の見立てによる風水を起こす」という目的を果たすべく奔走する。
主人公の「超級風水師」はプレイヤーの分身的存在であり、作中で言葉を発したり姿が画面に映ることも無く、設定画も存在しない。三人称視点のムービーでも主人公の姿は決して描写されない。
素性も説明されず、「若く優秀な風水師の男性」ということが辛うじて分かる程度。外見や人物像については各プレイヤーのイメージに委ねられる。
人を選ぶ世界観
+ | 例。ネタバレ注意 |
人を選ぶ演出
+ | 例。ネタバレ注意 |
ゲームとしていろいろと不完全
+ | 以下ネタバレ注意 |
シナリオ面の問題点
+ | 以下ネタバレ注意 |
+ | ネタバレ |
+ | 以下ネタバレ注意 |
ただでさえ独特で万人が受け入れられるとは言いがたい内容に加えて、プレイヤーに苦行を強いるような不完全なゲームシステムのせいで、「人を選ぶ」という言葉すら生ぬるい怪作になってしまった。
その一方で、映像や世界観の評価は高く、唯一無二の世界の虜…宛ら『クーロンズゲート』というゲームの妄人となる者も確かに存在する。
このような陰陽魚太極図の如き強烈な二面性を持っている本作はある意味賛否両論ゲーの極致といえる存在である。
YouTube等で動画もアップロードされているので、興味のある人はまず視聴をお勧めする。映像作品として見る分には価値のある作品であることは確かだ。見る分には。
その上で、世界観に魅力を感じた人は、ある程度の覚悟をして本作をプレイしてみるといいかもしれない。 ただ一つ忠告させてもらうならば、本作はクリアをしようと思ってプレイしない方がいい。
そのような考えでは長続きしない可能性が高い。いろんな所をまわり、いろんな人と触れ合って、何処までもこの世界にはまり込んでいく。それが我ら陽界の人間の、陰界の九龍城との付き合い方というものなのだろう。
*1 実際にあった「光明街」は本作には登場しないが、次回作では「光明路」の名で舞台となる事が発表されている。
*2 雑魚は基本1属性、中ボスは複数属性を持っている事が多い。
*3 相手を打ち滅ぼす陰の関係の事。大雑把に説明すると火は金属を溶かし、金属は木を切り倒す。 木は土の養分を吸い上げ、土は水を濁し堰き止める。そして水は火を鎮める、といった循環の中で強弱関係が成り立っている。
*4 撃ってもターンを無駄にするだけ。
*5 特に終盤は「九龍城に妄想が溢れる」「妄想の島というそのものズバリな名前の場所を探索する」などと言った展開になり、他人の妄想を一方的にまくしたてられるようなイベントが多い。
*6 九龍では一般人を「路人」と呼ぶ。
*7 具体的には亀と文鳥。これらが好きな人は特に注意。
*8 所持している属性が多いほど気力の減りが激しい。4つも所持していると移動による自動回復も追いつかなくなってしまうので、相殺で精一杯。
*9 無限湧き以外は全て出現する鬼律の種類・属性は固定なのだが、この状態になると属性もランダムになってしまう。
*10 戦闘中に答えを教えてくれる事もあるが、本当に一部の戦闘だけである。
*11 4枚組ソフトならSSの『AZEL パンツァードラグーンRPG』などのような前例もある。SS版『ファンタズム』に至ってはなんと8枚も使っている。
*12 もっとも、内容の色んな意味での濃さやプレイ時間の長さから忘れがちだが、本作は(時間遡行もしているが)たった一晩での出来事である。
*13 日本の雅楽の舞楽から生まれた概念で、現代では主に文章や脚本などにおける三段構成を指す。
*14 作中の九龍城は水銀屋、ねじ屋、さんご屋など、一軒一軒が商売として成り立つのか怪しいほどの細かい分業社会となっているが、これも現地を参考にしつつ、極端な例を取り込んだものである。
*15 『ドラゴンボール』シリーズで氏が演じたピラフとラディッツの声がごちゃ混ぜになっていると言えば分かる人は分かるだろうか。
*16 やはり反響が大きかったのか、『VR』でも台詞を一新してしっかり登場している。
*17 水銀は古代においては不死の薬として珍重されていた節があり(作中でもその事が触れられる)、彼の行動は全くの狂気の沙汰と言うわけではない。ただその考えも中世には廃れており、時代錯誤であることは変わらないのだが…。
*18 これがどういう物か、は後々知ることになる。名前からして基礎化粧品の様な物を想像してしまいがちだが実は…。
*19 続編制作のクラウドファンディングのリターンの一つがこの「ガタリ」からのメルマガというのもまた『クーロン』らしくぶっ飛んでいる。
*20 ただ、妄人化状態が初対面且つ、名前がある人物は元の名前のままの場合もある。
*21 本作ほど有名ではないが、こちらも本作の作風を色濃く受け継いだ怪作である。
*22 木村氏は2010年にアンバイ株式会社を設立している。
*23 輪廻転生をテーマとしたアドベンチャー。怪しくアジアンテイストの世界観、サイケデリックで難解なゲーム内容により一部で根強い人気がある。
*24 井上氏曰く、「それほどリアルじゃない」とのこと。
*25 前者はパッケージとタイトル、後者はゲーム画面までのそのまま。
*26 今の技術のリアルタイムレンダリングで当時と同じノリが出来るかどうか、という意味で。
*27 しかも蓜島氏書き下ろしのイメージBGM収録のCDが付属。
*28 「リゾーム」とは比喩的用語、哲学用語としても用いられる地下茎の一種。本作にもグループチャットの名前として登場しており、今度はこのリゾームがストーリー上で大きな役割を果たす。サブタイトルも本作をプレイした人ならすぐにピンと来るだろう。
*29 それによりモブはリアル調、メインはアニメ調と、意図的にバラバラな絵柄にされている。
*30 しかも、Steam版の早期アクセス版の話である。
*31 かのGame*Spark編集部にも発売を伝えるプレスリリースは一切来なかったらしい。
*32 行先選択画面では隠しイベントが存在するのだが、画面上は隠されたイベント数が表示されるだけで、実際にマウスを操作してポインタが変わる場所を手探りで探さなければならない。判定も結構小さいので容易には見つからない。