獣神ROGUS
【じゅうしん ろーがす】
ジャンル
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ACT+SLG+RPG
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対応機種
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PC-9801VM/UV以降
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発売元
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ランダムハウス SOFBOX版:双葉社
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開発元
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アーテック
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発売日
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1987年7月 SOFBOX版:
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定価
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7,800円 SOFBOX版:2,800円
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判定
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良作
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概要
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ACTとSLG、さらにRPG要素までも組み込んだ意欲的なロボットゲーム。
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なお、パッケージのジャンル表記は「T・R・A・G」(タクティカル・リアル・アクション・ゲーム)。
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プレイヤーは新型機動兵器RHザガードを操り、部隊を率いて、惑星サゴスを占拠したガイゼル提督率いる反乱軍を殲滅することが目的。
ストーリー
ネビュラ恒星系の第五惑星にザゴスという星がある。これと言った原生生物のいない荒涼とした土地には多くの資源が眠っており、惑星連合の植民星となっていた。その星に資源探査の一団が降りる。ガイゼル教授に率いられた彼らは、やがて驚くべき報告をする。先住生物の遺跡らしきものを発見したと言うのだ。そのニュースは大きく話題となるが、その後の誤りとの報告が出る。それをきっかけに騒ぎはすっかり沈静化してしまった。だが一方で、その報告の後、ガイゼル教授一行は消息不明となる。
それからしばらくして、ガイゼル教授が再び姿を現した。いや、その時には教授ではなく、ガイゼル総督と名乗って。そして彼に率いられた反乱軍は突如、惑星の独立を宣言。その言葉を一笑に付した惑星連合は、さっそく攻略軍を派遣する。しかし、攻略軍に襲い掛かったのは見たこともない兎のように飛び跳ねる高度な無人機動兵器群であった。攻略軍はあっけなく壊滅した。その後も連合は軍を差し向けるが、敗北に次ぐ敗北。その中で、かろうじて倒した敵残骸を回収、分析した。それから得られたものは、敵兵器は連合とは異なる技術で作られていた事だった。つまり、ガイゼルは異文明との接触を果たしていたらしいとの結論が出る。そして敵兵器の分析からそれに対抗できる機動兵器RHザガードが開発された。やがて次の攻略部隊にRHザガードが配備される。その現場指揮官に任命されたのはJ.P.マクガドル少佐だった。彼の任務は二つ。ガイゼル率いる反乱軍を制圧する事。そしてもう一つ、彼が接触した思われる異文明の遺跡を発見する事だった。
特徴とシステム
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ATC、SLG、RPGと三つの要素で構成されており(アクションRPGとSLGとも言える)、ゲームとしてはATCパートとSLGパートに分かれている。
ACTパート
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ACTパートは戦闘時のパート。戦闘は、侵攻戦と防衛戦、補給妨害戦で発生する。本作はいくつもの要素が組み合わさってるが、やはりメインの部分はこれである。
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サイドビューの横スクロールアクション。地形の高低差はそれほどないが、起伏に富んでいて弾を防ぐには十分。むしろそのための位置取りが結構重要。また戦力を生産する施設があちこちにある。この施設、占領後に使用するのだが自軍では修理不可能なので、侵攻戦や防衛戦時にあまりに破壊されると後々に問題が出てくる。戦闘では経験値を得られ、レベルが上がるとパワーアップしていく。
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新型の機動兵器RHザガードだが、最初の戦闘力は非常に貧弱。武装はバルカンのみで、機動力もせいぜい歩行とちょっとしたジャンプが出来る程度。しかし戦闘経験を積みレベルが上がると、やがて盾が追加され、一回り大きく強化され、ついには自由に飛び回ることができるようになり、武装も7種類まで増加していくのだ。
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7種類の武装は、弾数や使用回数の上限があり、作戦中は回復しない。ただし、バルカンだけは例外。弾数がわずかづつ回復していく。このため一番攻撃力の低い武器だが、重要度は高い。
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敵には様々な種類があり、ターン経過による戦力増加に合わせるようにだんだんと強力な敵が配置されていく。序盤こそ機動力も武装も貧弱な地上兵器だったのが、やがて航空戦力や高火力の敵など次々と新型兵器が投入されてくるのだ。
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強い兵器は1機当たりの戦力評価が高くなるため、一回の作戦で現れる数は増えすぎないようになっている。
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序盤の敵はストーリーに描かれている通り、ジャンプしながら進んで来る機体が登場する。
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瀕死になった敵機は撤退する。見逃しても勝利できるが、経験値獲得や敵戦力削減のためにはきっちり倒す必要がある。
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レベルが20を超えると、僚機が一機配備される。機体は同じくRHザガード。ダメージがかさむと撤退要請してくるので許可コマンドを押せば逃げていく。撃破されるとレベルが上がるまで、次の僚機は配備されない。
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ダメージが上限を超えると、RHザガードは撃破されゲームオーバーとなる。
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ゲームオーバー時、ロード以外にリトライも選択可能。
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基地の範囲よりも後方に移動すれば撤退可能で、ゲームは継続される。
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残りタイム(設定上は自機のエネルギー)があり、エネルギー切れになると1秒毎にダメージが発生するので、大軍が居る敵拠点でジワジワと敵数を削る長期戦は途中で切り上げて退却しなければいけない仕様。最初は少ないがレベルアップしていくと自機グラフィックが変わって秒数も増える。
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戦闘の形態は三種類。
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侵攻戦は、僚機を連れて敵拠点に攻め込む。敵を全滅させると制圧となる。
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防衛戦は、敵部隊からの拠点防衛。自軍の戦力が配備されてる場合は、防衛隊と共に戦う事になる。この防衛隊はRHザガードとは別の機種。攻撃力はそこそこあるが、鈍重で耐久力も低い。ないよりマシ程度。
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補給妨害戦は文字通り敵の増援の妨害。空を飛べるようになると出来、航空戦力に護衛された敵補給機を撃破する。いくら撃破しても敵戦力が減少する訳ではないが、配備される敵の機体のランクが落ちる。同じ戦力でも攻略が楽になる。
SLGパート
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SLGパートでは、全体マップでの自軍の移動や、侵攻目標などを決める。
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敵拠点は隣接するもののみ表示され、その背後の敵の配置や動向は分からない。
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SLGとしてはやる事は少ない。自軍の各拠点への戦力配置と、自機の攻撃目標や移動先を決める程度。ただ戦力は中盤当たりまでやや不足気味なため、うまく配置しないとあっさり拠点を破られる。このため侵攻の仕方も一工夫必要。戦力自体は各拠点の生産施設で生み出される。これが前述のACTパートで生産施設の破壊が、後で戦力補充に響いてくる。
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なお、破壊された生産施設の回復は基地が敵の支配下にある場合のみ行われる。
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敵の侵攻に対しては、自機も応戦できる。ただし駐留してる拠点と隣接する拠点の場合のみ。その他の拠点は各駐留軍が対応する事となる。勝敗は単純で戦力の多い方が大抵勝利する。
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このため、プレイヤーが迎撃できる範囲、および防衛戦力を集中させた拠点の二面作戦が基本戦略となる。
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複数の敵拠点と隣接している場所にはその全てから敵戦力が派遣されてくるため、侵攻してくる敵戦力が2倍3倍に跳ね上がることも。
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戦闘で消耗した弾薬の補給ができる。ただし補給物資は施設で徐々に生産される。調子にのって使いすぎると、十分補填できなかったという事になる。
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ダメージの回復ができる。ただし一定数値であり、ダメージ量があまりに多いと一回では完全に回復できない。
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レベルアップ時にパワーアップをする。武装が増えたり、既存の武装を1つ選んで強化したりできる。
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戦力や自機の移動、補給やダメージ回復をすると、時間が経過する。それにより生産施設からの戦力の補填や、補給物資の増加、敵戦力の増強が起こる。
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悠長に進めると敵拠点に絶望的な戦力が蓄えられたりする。徐々に削っていくこともできるが、しばらくは修理と同時に敵侵攻発生というのが続くことに。
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要塞という特殊な敵拠点があり、一度占領すれば敵に攻め込まれることはない。
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これを確保すれば防衛戦力が必要な拠点の数を一気に減らせるため、ストーリーがゲーム途中に一切ない本作の中盤の山場的なイベントとも言える。
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最後にある4つの要塞のみ、ボスが存在する。
評価点
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戦術性とアクション性がかみ合ったロボットゲーム。
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地形が起伏に富み、各種敵も特徴がハッキリしている。さらに生産拠点被害減少や防衛戦での味方の配置も考えないといけない。これら様々な要素が組み合わさるため、位置取りや武器の選択など、戦術的な面が非常に重要。これらはどことなくリアルロボット的な雰囲気が強く、ロボットでの戦闘にまさに浸れるものだ。これも上手いバランス加減の結果でもある。実は敵の種類も、自機のレベルに合わせたようになっているのだ(自機が飛べるようになる頃に、航空戦力が出てくるなど)。
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戦略性も見過ごせない。
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ただ力押しで拠点を攻略していくだけでは勝利は望めず、敵拠点の防衛力によっては侵攻を何度かに分けて戦力をそぎ落としたり、敵の補給線を絶ったりと、複合的な侵攻計画が必要となる局面がある。また自機だけでは前線をカバーしきれないため、自軍の戦力配分も考えなければならない。この戦略性の高さは侮れない。
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実感できるパワーアップ。
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RHザガードはレベルが上がるとだんだんと強化されていく。その上昇していく強さは、実感として分かるものだ。最初は攻撃力の低いバルカンと歩行くらいしかできなかったものが、攻撃力が上り、装備が増加され、やがて空をも飛ぶようになる。そして最後はまさに必殺技に相応しい装備を手に入れる事となる。また各種武装もそれぞれ特徴があり、死に武装と言えるものがない。これら多彩な武器を使い分けるのも、本作の面白さ。
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ゲーム終盤にもパワーアップしてきた自機を再認識できる仕掛けがなされている。
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滑るようなスムーズな動き。
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当時の多くのPCはコンシューマー機に搭載されているスプライト機能を持たず、ACTではどうしてもカクカク感が拭えなかった。しかし、本作はそれをプログラム技術で解決。擬似スプライトを可能にし、コンシューマーのような滑らかな動きを実現した。
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高品質のBGM
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BGMの完成度もゲームの雰囲気にマッチした良曲揃い。特に戦闘時のBGMはどれも評価が高い。
問題点
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地味。とにかく地味。
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荒涼とした惑星という設定のため、見える地形は茶褐色の大地と、金属色の生産施設だけ。地形は多少変わるものの、この見た目だけはどこに行っても変わらない。地形もほとんどは段差のある岩地と砂丘がある砂漠。静止画面だけ見てると、いかにもショボそうなゲームに見える。
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もっとも背景が地味なおかげで、敵や敵の弾がよく見えるようになってるのだが。
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役に立たない僚機。
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レベルが上がると僚機がつくのだが、あまり賢くない。本作は結構位置取りが重要なのだが、僚機はそんな事考えないので敵の真っ只中に飛び込んだりしてしまう。また敵をおびき寄せようと後方に下がっても、一人残っておびき寄せ戦術を台無しにも。その上、勝手に撃破される事も多い。しかも攻撃もやけくそ気味なので、戦力としても期待できない。使えるのはせいぜい補給妨害時の囮くらい。
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開発者も、「悲しいかな、当時まともな思考ルーチンを書く力が無く、「僚機」はヘッポコだったが…」と、個人サイトでこの問題点を述懐している。
総評
複数の要素をもちながら、それが見事にかみ合った傑作ロボットゲーム。特にメインのアクション部分は見事。地形を考えた位置取りや、多彩な武装の使い道など、ロボットアクションとして様々な要素が楽しめる。そして戦闘結果が戦略面にも直結している点が、さらにアクション部分を盛り上げる。RPG要素であるパワーアップによる各種武装強化はロボットものらしい高揚感がある。
あえて惜しい所を上げるとするなら友軍だろう。特に僚機のAIの悪さは、雰囲気を醸し出す程度の存在価値しかない。
余談
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別ゲームだが『タクティカル グラディエーター ヴェイグス』も、本作と同じコンセプトを持って開発されていた。しかし本作の発売が先だったため、『ヴェイグス』はただのACTに路線変更された。もしあまり発売が遅いと、本作の評価はそのまま向こうに持っていかれたかもしれない。
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タイトルである獣神ローガス。しかし獣神ローガスという存在は作中には全く出てこない。元々は「ミネルバトンサーガシリーズ」に連なる世界観のRPGとして企画された名残。
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『ミネルバトンサーガ ラゴンの復活』『シルヴァサーガ』『シルヴァサーガ2』に登場する暗黒神が生み出した3体の魔王、邪神ラゴンと破壊神ゾルデ。実はゲームに未登場の残る1体が獣神ローガスである。『シルヴァサーガ2』の主人公パルスの娘が主人公である月刊ログアウトで連載されていた漫画にこの獣神ローガスが登場している。
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この漫画は「シルヴァサーガ エピソード5」というサブタイトルが付いている。ラゴンの復活がエピソード1、シルヴァサーガ1がエピソード2、シルヴァサーガ2がエピソード3、そして没になったRPG企画時の『獣神ローガス』の話がエピソード4にあたる。
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最後の武装は「エネルギーバースト」というものなのだが、これは蒼いバリアーに包まれ体当たりするというもの。まるでと言うよりほとんど、ロボットアニメSPTレ○ズナーのV-M○X。そもそもRHザガードのデザイン自体がどことなく似ている。
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本作にはサウンドテスト用のコマンドが存在しているが、隠しデータとしてアニメのサウンドデータも存在しており、その中にはまんまV-○AXのサウンドデータも入っていたりする。
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ちなみにその隠しサウンドデータを用いて本作をプレイすることも可能。
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後に本作のサウンドスタッフである大山曜が立ち上げたバンド「ASTURIAS」が出した音楽CDアルバム『Brilliant Streams』『Marching Grass on the Hill』、そして2019年発売の『TRINITY』にて本作の侵攻戦BGMのアレンジバージョンが収録された。これにより氏の展開する多重録音、アコースティック、ロック全てのバンドでリリースされた事となった。
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とにかく開発が二転三転し、さらに発売が延期に継ぐ延期。パソコン雑誌に情報が出るたび中身が変わっていたゲームである。使われていたサンプル写真も、まるで違うものが載っていたのだ。
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パッケージ表側にはコードがつながれたサイボーグ的な人物、裏側は地味なRPG部分の写真しか載っていない。世界観もゲーム内容も地味と受け取れてしまう。
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対応機種も当初はPC98以外にも発表されていたものの、これも企画の変更によりPC98のみとなってしまった。
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当時30万円近くもするPC98をゲーム目的で購入する人は少なく、PC98初期ソフトである本作を購入した人も非常に少なかったと思われる。
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RPGの企画だった頃にストーリーを書く予定だったのは開発元の代表でもあった羅門祐人。
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結局、絵以外はほぼプログラマーが1人で作ることになった。制作したのは「VZ Editor」の作者として知られるc.mos氏。
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音楽もゲームスタート&ゲームオーバーBGMと侵攻戦BGMの2曲以外はすべて担当している。
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ランダムハウス設立者である森田和郎氏も著名なプログラマーだが、氏は当時コンシューマ機で『森田将棋』を開発しており、本作にはほぼ関わっていないと思われる。
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2010年12月28日よりレトロゲーム販売サイト「プロジェクトEGG」でWindows用エミュレータ版が配信中。
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23年も前のゲームだったが、そのクオリティは色あせておらず評判は上々。遅すぎる再評価を受けた。
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双葉社の「SOFBOX」(書籍扱いでPCソフトを書店で売る形式) の「パソコンゲーム名作選 SUPER GAME SERIES」で復刻販売された。
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SOFBOX版は「PC-9800 SUPER GAME SERIES」の第二弾にあたる。
最終更新:2023年06月21日 15:03