不思議の国のラビリンス
【ふしぎのくにのらびりんす】
ジャンル
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ダンジョンRPG
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対応機種
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ニンテンドー3DS (ニンテンドー3DSダウンロードソフト)
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メディア
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ダウンロード専売ソフト
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発売・開発元
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ライドオンジャパン
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発売日
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2016年2月10日
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定価
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648 円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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良作
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ポイント
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冒険酒場の続編でそれらしさも有り やさしめな難易度 微妙にトルネコっぽい所も
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不思議の国シリーズ 不思議の国の冒険酒場 / 不思議の国のラビリンス
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概要
『不思議の国の冒険酒場』の番外作品としてリリースされた、ダンジョンRPG。
ストーリーは『冒険酒場』の続き物で、前作の仲間の一人であったリーディアが「ラビリンス」と呼ばれる不思議のダンジョンに挑戦していくという内容。
トルネコシリーズと似た部分が多く、それを意識した要素が多い。
システム
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基本的にダンジョンRPGと同じものとなっている。
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不思議のダンジョンに該当する「ラビリンス」を突破するのが目的となる。アイテムは自由に持ち込みが可能。
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戦闘時に戦闘アニメが挿入するのが特徴。設定で高速にしたり、なしにすることもできる。
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モンスターの巣に入ったり、満腹度が一定値以下になるとキャラ絵が表示され、セリフで知らせてくれる。
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冒険酒場と同じく「料理」のコンセプトも健在。
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ダンジョン内に落ちている材料を組み合わせて料理を作ることで料理を持ち込める。いずれも「満腹度回復+特殊効果」を持っている。
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料理は冒険酒場のヒントレシピと同様に、穴あきになったレシピを頼りに対応する食材を埋めていく形になっている。
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効果はどれもそのフロア限定ではあるが、材料と容量がある限り何個も持っていける。
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前作にあった料理効果そのものであり、シレンで言うところの「特製おにぎり」の効果が選べるバージョン、といえばわかりやすいだろう。
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一度「ラビリンス」を突破すると、もっと不思議に該当する「アビス」が出現する。薬・書物が未識別状態になり、マイナス効果を持つアイテムが出現するのも同じ。
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また、一度でも「アビス」に入ると、魔法を使えるアルフィネ、必殺技が使えるカメリナが使用可能になる。性能が違うため、リーディアとは違った攻略法が必要となる。
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アルフィネは剣・盾・矢が使えない代わりに、満腹度を消費して魔法を使うことができる。魔法はレベルアップしたり本を読むことで覚えられる。
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カメリナは指輪・杖・本が使えない代わりに、HPを消費して必殺技を使うことができる。特定の条件を満たすと一定確率で覚えられる。本が使えないのでダンジョンから脱出するには「大脱走」を取得する必要がある。
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いずれも、魔法・必殺技はその冒険限りで、ダンジョンから出ると忘れてしまう。トルネコ2にあった、魔法使い・戦士と似たようなキャラクター性能となっている。
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この二人の専用ダンジョンも存在し、さらにこれを突破すると…。
評価点
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ダンジョンRPGの基礎としては十分できている。
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アイテムやモンスター、罠もダンジョンRPGとしては基本的なものが揃っている。
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武器・防具・指輪の合成システムも健在。強化値が増えるのも同様で、特殊効果は3つまでなら自由に付け替えができる。
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モンスターハウスに該当する「モンスターの巣」も健在。遭遇時にはキャラのセリフ付き。
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整備というシステムが登場しており、同じ杖の使用回数をまとめて1つの杖にできる。武器・防具も同種の物ならまとめることができる。
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優しい調節が多いバランス
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装備品以外は呪われて出現することもなく、そのアイテムが呪われることがない。
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罠は一度でも発見済みになれば、自分から「足元」から選んで踏むまで効果は発生せず、罠は一回起動すると壊れる。再度、同じ罠にかかるという状況は起きにくい。
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また、一部の罠は周囲一マスにいたモンスターにも被害が及ぶ。睡眠ガスを踏んだら隣にいたモンスターに一方的に攻撃された、なんて機会はあまり起きない。
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全てのアイテムを持って脱出できる「生還の書」の入手機会が多いため、危ない時にも帰れる可能性が高い。さらには「ラビリンス」11階では確定で落ちている。
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特に行商人は5の倍数のフロアで必ず出現するので、アイテムの売買が容易に行える。拠点の街でも武器・盾が強化できるアイテムを売っている。
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「ラビリンス」は持ち込みが自由なので強力な装備を整えることで、初心者でも難なく突破できる。
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長い間階段を下りずに同じフロアにいるとモンスターの沸きで停止し、さらに経過すると強制的に次のフロアに行ってしまうだけで、冒険失敗にはならない。
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手持ちアイテムを失うことがほとんどない。
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シレンでいう「にぎり変化」や「ケンゴウ」にあたる、アイテムを破壊・変質させる敵が存在しない。
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食料に「腐る」「焼ける」などの概念がなく、もちろんそういった罠も無い。よほど運が悪くない限り、食料に困ることはないはず。
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料理システム
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前作プレイ済みのプレイヤーにはちょっと嬉しい機能であり、前作をプレイ済みだと少し有利になる。
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それなりの満腹度回復量を持つものが多く、経験値アップや各種状態異常無効と言った効果が多い。
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その他細かい評価点
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隠し要素があり一定回数以上、街で合成するとコスチュームが解放される。リーディアの外見を変更できる。
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冒険酒場では特定の装備品をそろえることで変化するというものだったがそんなことはなく、いつでも自由に変更できる。
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冒険酒場にもあった、パロディやネタが満載の各種説明文は今作でも健在。
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前作に登場した仲間キャラは全員登場する。
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特に前作の時点で、異様な印象を与えたカメリナがプレイヤーキャラに昇格したのは高評価。
問題点
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不親切なインターフェイス
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スライドパッド使用不可、「名付ける」でタッチでの文字入力ができない、状態異常になっている間はダッシュ不可、足元に階段があるときにBボタンを押すとアイテム表示より階段の動作が優先される、といった不便なところが多い。
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特にスライドパッドは前作で普通に使えた上に、ダンジョンRPGということもあり斜めに操作する動作が多く、十字キーだけだと満足な操作ができない。
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通常攻撃はAボタンに割り当てられているが、隣接した敵の居る方向への十字キー入力でも行うことが出来る。
この機能自体は便利と言えるが、オフに出来ないので、ピンチの時に焦って通常攻撃が暴発して冒険終了・・・という危険も有る。
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持ち物が24個までしか持てない
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それに加え、壺に該当するアイテムが登場しない。本作では有効なアイテムが多く、近年のダンジョンRPGでは上限の増加傾向が多いため、24個までという持ち物制限は少しきつい。整備も同種の杖・武器・盾しか行えない。
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特に本が読めない、カメリナが問題。有用なアイテムである「合成の書」や「復旧の書」が使えないため、使うにはダンジョンを脱出するまで持ち歩かなければいけない。
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合成も一度に同じ部位のもの2つまでしかできない。各装備に目標の特殊効果や強化値をつけたい場合、合成に必要な「モフチケット」「合成の書」を何個も用意する必要がある。
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ちなみに、倉庫に預けられる数は140個で、拡張などはない。合成用の装備品を集めたり、料理を作ったりしてるとあっという間に埋まる。
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ダンジョンに関する問題点
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「ラビリンス」の序盤は通路が多く、無駄に満腹度を消費してしまうことも多い。
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突入時に既に持っていた杖は識別済みと判別され、未識別の状態で落ちていることがない。一部ダンジョンの中間地点では、全てのアイテムが識別される。
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また行商人から買えるアイテムは、すべて識別された状態で売られている。
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落とし穴の罠を踏むと突然画面切り替わって次のフロアに行くので、何が起こったのかわかりづらい。
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序盤から倍速で移動する敵が登場する。この敵はラビンリス・アビスの両方とも出現し、アビスに至っては強化版が序盤から少し進んだ後にも登場する。
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初期の不思議のダンジョンシリーズにあった、通路の出入り口に罠がある仕様もある。こちらでは発見済みにすれば罠にかかることはないため、その分マシにはなっている。
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バリエーションの少ない敵モンスター
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本作には様々なモンスターがいる……ように見えて、実はバリエーションが非常に少なく、ほぼ全てのモンスターが「隣接していると不利な効果を与えてくる」「少し離れた直線上からダメージ攻撃をしてくる」「特殊能力が無いがステータスが高い」のいずれかに分類される。
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よって、モンスターに対する対策がパターン化しがち。一部上記に当てはまらないモンスターもいるが、容易に倒せるか、他のモンスターの対策ついででなんとかなる。
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序盤の、対策アイテムが揃っていない段階では苦戦する事もあるが、ある程度道具が揃ってくると、非常に簡単。不思議のダンジョンシリーズにある「専用の対策が必要な敵」や「緊張感を保つ超強敵」と言うものは存在しない。その割にラビリンスやアビスは100Fもあるため、後半は大きく緊張感が薄れ、作業となってしまう。
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基本的には、面倒な罠である「サビ」と「ちから低下」、唯一遠距離から状態異常を発生させる「混乱」、使用する敵が倍速である「窃盗」の4つが重要な対策とされている。この4つを揃えてしまえば、あとは惜しまずアイテムを使って敵を近づけずに勝つだけである。また、この4つが無くても容易にリカバリーが効く。
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料理について
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料理効果の中には「鑑定眼」「回復薬効果2倍」といった、効果が強すぎる料理も存在もする。強力な効果ほど、貴重な素材を使うのでバランスはとれている。
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「回復薬効果2倍」に関しては、本当に回復薬のみしか効果がなく、体力の薬などには適用されない。
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同じような料理効果を持つ料理が多く、水増し感が多い。単に、満腹度の回復量が上がっているだけのも多い。
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材料の入手もランダム要素が多く、なかなか手に入りにくい物やモンスターからドロップしないと手に入らないものもある。
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そもそもローグライクというジャンルと、RPGである前作から引き継いだ料理システムが致命的に噛み合っていない。
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アイテム持ち込み不可のダンジョンには当然料理を持っていくことはできない。
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持ち込み可能なダンジョンでも、序盤では意味が薄く、終盤に使おうとするならば数少ないアイテム欄を圧迫し続けることになる。
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ダンジョン内で得た食材をその場で調理できるのなら、活用しがいもあったのだが…。
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料理を使用するイベントや隠し要素等は一切ない。実用性が薄いのもあって、完全な空気システム。
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高めの難易度の専用ダンジョン
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カメリナ専用の「剣王の訓練所」というダンジョンは、訓練所という名前に反して高い難易度である。
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アイテムの持ち込みも不可能であり、序盤のアイテム運や経験値稼ぎが必須となっている。「大脱走」や、稼ぎに重要な「福引拳」「高楊枝」「ご招待」などを覚えられるかによって、安定率が差が出る。
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ラビリンスと異なり、レベルを下げてくる敵が出現するため、速攻で倒さないと不利になってしまう。幸い、その敵を一撃で倒せる必殺技は覚えられるので、覚えれば対策は容易。
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魔法と必殺技の調整が今一つでバランスブレイカー級の技が多い
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アルフィネは先述した通りに満腹度を消費して魔法を唱える事が可能だが、この中に「ベーカリー」と言う魔法がある。この魔法は「満腹度25を消費して、アイテム1つをパン(満腹度50回復)に変化させる」と言うもの。つまり、この魔法さえ覚えてしまえばアイテム1つ=満腹度25回復となるので、魔法が使い放題になる。
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一応、アイテムが無くなるとパンが作れなくなるが、そこまで足りなくなる事はほぼない。ベーカリーと、最低限の戦闘用魔法さえ習得すれば、その時点で難易度は大幅に減少する。敵の気配を察知するウォッチャーによって通路での鉢合わせを回避出来るようになれば、その時点でほぼクリア確定と言っても過言ではない。救済措置と考えてもあまりにバランスブレイカー過ぎる。
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ベーカリーの習得には、「それほど珍しくはないが、毎回出るほどではない」と言うレベルのアイテム「食料の書」を必要とする。つまり、食料の書を拾えるかどうかで難易度が雲泥の差。
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レベル50で習得する「ジオファンタジア」と言う魔法は敵1体をロップと言う味方モンスター(こちらを攻撃せず回復してくれる)に変化させる物であり、あらゆるモンスターに通じる事実上の即死魔法。その上、倒すと必ずパンを落とすため満腹度が絶対尽きなくなり、もはや「途中で力尽きる方が難しい」と言う域に突入する。レベル50は、専用ダンジョン「賢王の訓練所」(全28F)でこそ間に合わないが、ラビリンス深層やアビス(全100F)なら半ばで達成出来てしまい、残り半分は完全な作業プレイと化す。
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カメリナはHPを消費して必殺技を繰り出すことができるが、その中に「高楊枝」という技がある。これは「そのフロアでの満腹度が一切減らなくなる」というもの。
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強力な効果ではあるものの多くのHPを消費することもありこれ自体は壊れではない……が「ダンジョンでターンが経過すると強制的に次のフロアに行く」という仕様があることがまずかった。つまり満腹度を消費することなく足踏みをしているだけでそのフロアをパスできてしまうのである。
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自然発生する敵も、敵を麻痺させる技「影踏み」で部屋の入り口を封鎖してしまえば近寄ってこれない。条件さえ揃えてしまえば、「影踏みで入り口を封鎖→高楊枝を使う→ひたすら足踏みする」でどんなフロアもクリアできてしまう。
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もっともカメリナは敵が強くなってくる後半のフロアでの立ち回りが非常に苦しくなるため、このテクニックを使わないと厳しいという側面はある。クリア後ダンジョンでは使わざるを得ない場面も結構多い。
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クリア後イベントの欠如
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クリア後のダンジョンの殆どは、クリアしてもイベントが発生しない。あったとしても極僅かであり、クリアの証といったものも存在しないため、やりがいが薄い。
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特にEXダンジョンは最深部の50Fまで潜ってもイベントは特に発生しない。50Fまで潜っても、あるのは脱出用のワープゾーンのみ。
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また、前作にも登場したエーリアスが他のキャラと比べて登場回数が少ない。あるイベントでしか登場せず、その後は一切登場しなくなってしまう。
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出番が少ないキャラはミリヤも同様だが、こちらはEXダンジョン登場時に初登場し、その後はEXダンジョンの中間地点に存在し会話することもできる。
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それでも登場まで時間がかかることや、前作では使えるまでも期間がかなり後で微妙な存在だったため、救済が欲しかったと思う人もいる。
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難易度がかなり低くバランスブレイカーも多いため、ローグライク経験者には簡単すぎて飽きてしまいやすい。破壊的素潜りは結構難しいのでこれに挑戦してみるのも一興だろう。
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キャラクターやモンスターなど、殆どの素材は前作から流用している。
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BGMの一部も前作と同じものが使われているものがあるが、拠点の「首都マンスハイム」以外はイベントで1回くらいしか聞けないBGMが大半が占めるため、使われ方は悪くない。
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EXダンジョンでは前作のダンジョン物が流用されているが「そのBGMが使われたダンジョンがラビリンスになった」という理由がある。
総評
低価格ながらダンジョンRPGの基礎をおさえ、冒険酒場を意識した「料理」システムを導入しつつ、どこか懐かしさを感じさせる作品。
難易度が非常に低いため、不思議のダンジョン経験者にとってはかなり物足りないが、入門編としてならおすすめのソフトである。体験版があるので、そちらから試してみるのもいいだろう。
余談
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原作である『不思議の国の冒険酒場』は後にSwitch/PS4でも配信されたが、こちらの配信についての表明などは現在時点では存在しない。
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現在は3DSのニンテンドーeショップのサービスが終了し、現行機種でもプレイ可能な『冒険酒場』とは違いプレイが困難になっているため、こちらの配信も望む声もある。
最終更新:2024年05月06日 16:29