蒼き革命のヴァルキュリア
【あおきかくめいのう"ぁるきゅりあ】
ジャンル
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死に抗うRPG
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対応機種
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プレイステーション4 プレイステーション・ヴィータ
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発売元
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セガゲームス
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開発元
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セガゲームス メディア・ビジョン
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発売日
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2017年1月19日
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定価
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【PS4】7,990円 【PSV】6,990円(各税別)
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判定
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なし
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ポイント
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『戦ヴァル』らしさは少なめ 考える間・戦術≠テンポが悪い ザコ・ボスの難易度など不均等な調整 BGM・ストーリーは傑作
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戦場のヴァルキュリアシリーズ
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概要
『戦場のヴァルキュリア』の流れを汲む「ヴァルキュリア プロジェクト」の作品。通称『蒼ヴァル』。
システム・世界観などは全く異なるものにされており、そういう点を強調した宣伝をされていた。
産業革命期の近代を意識した架空のヨーロッパが舞台で、現代風のRPGが多く出ている現在でも珍しいもの。
『戦場のヴァルキュリア3』などと同じく、開発元はメディア・ビジョン(+セガCS3研)。
『戦場のヴァルキュリア リマスター』の初回購入特典でプレイできた体験版のアンケートを反映して制作するという珍しい制作体制が採られた。
ストーリー
「蒼き鉱石」がもたらす「咒術」
謎多き蒼き鉱石「ラグナイト」を源とした
魔法的な力は「咒術」と呼ばれ、
人々に様々な恩恵をもたらしていた。
その一部の才能あるものが行使していた「咒術」を、
「咒工業」として工業化し、
誰にでも扱えるものとする産業革命“蒼き革命”が起こる。
「蒼き革命」により、世界は一変した。
「咒工業」の導入による産業と社会構造の変革は、
人類の歴史をも、その資源たる「ラグナイト」をめぐる、
“戦いの歴史”へと変えさせた。
「帝国主義」時代の幕開けである。
その戦いは「解放」か、「復讐」か。
「蒼き革命」からおよそ一世紀後の聖暦1853年、
ヨーロッパの南に位置する小国「ユトランド」が、
列強に数えられる北方の大国「ルーシ帝国」の基地を強襲した。
ルーシ帝国主導による列強の経済封鎖により
困窮したユトランドは、「列強の植民地支配からの独立・解放」を掲げ、
「ルーシ帝国」へと宣戦布告し、
「ヴァルキュリア」を擁する帝国との戦争へと突入していく。
後に「奇跡の解放戦争」と称されるこの戦いを主導した若者たちは、
歴史上「大罪人」と断じられた。
「解放」を謳う戦いの裏には「復讐」という私怨があった──。
それは、侵さなければ果たせない物語。
(公式サイトより引用)
システム
戦闘システム「LeGION」
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戦闘は戦場すべてで行える。シームレスとなっており、敵を見つけたらすぐに攻撃を開始できるようになっている。
最大4人のパーティで行動する。プレイヤーの操作するキャラクター1人と、AIの3人でステージを攻略していく。
時には、ボタンひとつでキャラクター操作を入れ替えながら進んでいく。
攻撃は近接攻撃とバトルパレットの2種類の攻撃方法がある。
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初期の体験版はアクション性が強めだったが、アンケートにより「リアルタイム制の戦場を意識しつつ、コマンドバトルの要素を取り入れ、よく考えて行動する」といった感じで、もはや別ゲームと言ってもいいレベルで変更が成された。
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バトルパレットはサイドアームや咒術をする際に用いるメニュー画面。
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サイドアームは銃やライフル、グレネードなどを使った攻撃。サイドアームはRP(一般的なRPGでいうMPに相当する)を消費しないが、弾数を消費する。
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咒術は範囲攻撃と属性攻撃を得意とする。咒術の場合はRPを消費して様々な形の攻撃を敵に与えることができる。また、氷や炎といった属性の攻撃も可能としている。
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バトルパレットは他にも、仲間に指示を出したい時、HPやRPを回復したいときにも使える。
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行動ゲージ
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すべての行動には行動ゲージが必要になる。一度攻撃をすると消費され、一定時間(1秒~2秒程度)経つと回復するゲージ。
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このゲージが溜まっていると、画面にReadyという言葉が表示され、近接攻撃やバトルパレットを使用することができるようになる。
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戦況ゲージが低い時は貯まりにくく、高い時に貯まりやすくなる。
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ステップ回避と、ガード行動は行動ゲージを使用せず行える。
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戦況ゲージ
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画面上に表示されている青と赤のゲージのこと。青側が自軍、赤側が敵軍。青いゲージが増加してくると戦況が良くなり、劣勢時はその逆。
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遮蔽物
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ステージ内にある土嚢や隠れられる壁といった遮蔽物には隠れることが可能。隠れることにより、体力が自然と回復していく。
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感情変化
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咒術やサイドアーム攻撃を使用することで敵に感情の変化を与えることができる場合がある。
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マイナス効果のある驚き・焦りと、プラス効果のある怒り・決意の4種類。
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キャラロスト
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パーティメンバーのHPが0になると"瀕死"状態となりカウントダウンが開始される。
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カウントが0になる前に他キャラで救助することで復活できるが、カウントが0になってしまうと、そのキャラは死亡してしまう。
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以降のイベントでそのキャラクターが登場する箇所は黒くボヤけて表示され、音声にノイズがかかるのとそのキャラが関わるコミュニティイベントが発生しなくなる。基本的にマイナスな点しかない。
その他
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マニフェスト
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操作していないキャラクターがどう動くかを戦闘行動を細かく指定する事が出来、指示する。
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コミュニティ
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街で行われる仲間達の会話イベント。これを見ることにより、マニフェストが手に入る。
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メニュー画面の「コミュニティ」から発生状況を確認することができる。
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咒構武器強化
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本作の成長システム。ラグナイトを使用することで、キャラの咒構武器を改造することができる。
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多方向に広がるスキルツリー形式が採用されている。
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それぞれの能力を取得するには手に入れたラグナイト(咒術)を消費してEXPに変換する必要がある。一定値に達するとその能力が手に入る。
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ステータスを上げるものや、上限アップなど様々な効果がある。
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フリーミッション
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ストーリーとは別に、「殲滅」「撃破」「偵察」「工作」の4種類があり、このどれかのミッションを任意で行える。
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これとは別に、同じマップで何度かフリーミッションが発生すると、その場所の領地をかけた「タクティカルミッション」が発生する。勝利すれば防衛できる。放置していると、マップを奪われてしまう。
評価点
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ストーリー
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「植民地支配からの解放」を掲げ戦争する裏で、主人公アムレートらは帝国軍への復讐を果たす物語。「復讐」や「死」がテーマになるため全編を通して重くシリアスな物語が展開される。ゲームが進むたびに、重厚感が増していく。
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矛盾や説明不足はあまりない他、心理描写にも優れているので、かなりのクオリティを持っている。
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ユトランドという小国が強大な国々とどう立ち向かうか、シナリオ上での戦略的な駆け引きが丹念に描かれている。
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キャラは多めだが、一人一人の個性が丁寧よく描けており、罪の意識も描かれている。
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戦場での活動だけでなく、謀略や工作活動、扇動や諜報といった、戦争の影の側面にもスポットを当てているのもポイント。
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題材的に主人公達が絶対的正義とは言い難い物語である。敵側の主要キャラクターにもそれぞれ信念を持って戦う描写がしっかりと描かれている。
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「アニメ2クール分ぐらいの物語をゲームに落とし込んでいる」という発言があり、アニメ脚本家の冨岡淳広氏が関わっている。
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やや青臭さは否めないものの、シナリオ面でプレイヤーが不快になるだけのような展開は少なく、十分楽しめる内容になっている。
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音楽
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本作の音楽は『クロノ・トリガー』『新・光神話 パルテナの鏡』などの光田康典氏。崎元氏に負けず劣らず、かなり完成度が高い。
「戦場」という雰囲気と見事に表現した曲の数々はいずれもマッチしており、プレイヤーの心情を盛り上げてくれる。
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戦闘システムは下記の件で評価は低めだが、評価できる点もある。
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敵をまとめて技や爆発物で倒したときの爽快感はSEも相まって中々のものである。ザコ敵を蹴散らしている時に限り、ここだけはRPGらしい遊び方ができる。
賛否両論点
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『戦ヴァル』らしさの欠如
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今作最大の賛否を招いている点だとも言える。『ヴァルキュリア』シリーズの新章を開拓出来たという点では評価できるものの、時代設定はともかく、『戦ヴァル』から一新されたデザインは、良く言えば馴染みのある、悪く言えばありがちなものになり独自性が失われたため従来のファンやゲーマーに酷く批判された。
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戦ヴァルにもファンタジー要素はなくはなかったが、本作ではミリタリー要素が弱まりファンタジー要素が強くなっている。
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今作には戦車が登場せず、近接戦闘がメインで銃がおまけに追いやられている。一応『戦ヴァル2』にも剣は出てきたが…。
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特にヒロインのオフィーリアがドレス姿で戦場に赴く姿に違和感を抱く人は多く、初期からよく槍玉に挙げられる存在であった。国産ゲームでよくある光景、と言ってしまえばそれまでだが…。
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咒構武器や咒機のデザインはラインが光っているというファンタジーと言うよりSF寄りのものに見られるデザインになっている。
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スタッフは「ヴァルキュリアらしさ」ついては「ラグナイト」「ヴァルキュリア」としている。また、ブリュンヒルデのデザインも、『戦ヴァル』のセルベリアの影響が色濃いものとなっている。
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だが、ユーザーの間では「1930年代を意識した世界観及びデザイン」「様々な制限の中での戦略性」と捉える人も少なくない。
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そのため、正当な続編を期待して買ったファンからは「これは戦ヴァルではない何か」「シャイニングヴァルキュリア」として見られることとなってしまった。
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『戦ヴァル』はセガのゲームの中でも濃いマニアが多いことに定評があるため、尚更だろう。いずれにせよ多くのユーザーに多大な影響を与えた。
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グラフィック
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最新グラフィックエンジン「GOUACHE」を売りにしている。2017年のPS4のゲームとしてみると十分な出来という意見や、「もう少し頑張れたのではないか」「CANVASほどの衝撃はない」という意見も。
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Vita版はPS4よりもグラフィックが劣るのは仕方ないが、それでも背景のクオリティはかなり落ちている。ミッション時はともかく、イベントシーンがわかりやすいだろう。
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これは急遽Vitaでの発売が決まったこと、PS4版で16.5GBも使用していることから来ていると思われる(Vita版は2.3GB)。プレイに支障はないが、気になる人は気になる。
問題点
戦闘面に関する問題
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「テンポ」に関わる問題。
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バトルパレットでいちいち戦闘止まる。テンポを削がれるとして嫌がるプレイヤーも少なくない。
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○ボタンの近接攻撃は1ボタンで複数のコンボをするので行動ゲージを出し切ってしまう。当たらなくても消費するのでテンポが悪くなる。
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このゲームのザコは弱めになっており、撃破したあとの攻撃行動が無駄になってしまいがち。難易度を下げると更に顕著。
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1ボタンで1回だけ攻撃と柔軟にできればよかったのだが、アンケートを反映したためこうなってしまった。
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これらは戦術性を上げるために加えたと解説されている。結果、テンポが悪いという意見が出るようになった。
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ギミックを生かし切れていないという意見も。
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基本的に、戦場を駆けているときは敵に見つかりやすいので、戦闘中に遮蔽物に隠れることの重要性が薄い。
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ゲームバランスも良くなく、ザコはかなり弱いが、ボスは体力だけがやたらと多いので冗長に感じる。
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純粋に体力を削るのが面倒なボスが多く、撃破するのに10分以上もかかることも少なくない。
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部位を攻撃して体制を崩してから本体を叩くことを求められたりすることもある。本体にダメージを与えても削るのが大変なので無駄に時間がかかってしまう。
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後半のボスは、当たれば即死という攻撃も出てくるようになり、常に即死の危険に晒されるため強いというよりしんどい。
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AIの頭が良くない。マニフェストと呼ばれる要素を駆使すれば問題ないように見えるが、それでも行動してくれないことが時折起きる。
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本作のボスは範囲攻撃を繰り出すものがあり、その予備動作の時はフィールド上に赤い範囲で見えるようになっている…のだが、肝心のAIは範囲の端にいたり、ギリギリで当たるエリアにいたりと、何とも微妙な位置にいることが多い。
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本作はキャラロストが存在するため、こういう問題は他のゲームより悪影響が大きい。
その他
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イベントシーンがほとんどムービー仕立てになっているのだが、このムービーが長い。ムービーの合間にゲームがあるとまで言われるほど。
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丹念な描写の反動か、全体的に台詞が饒舌になっており、多角的な視点を描写する都合もあるため、かなり冗長に感じやすい。
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近年のゲームにしては動きは少な目で、絵面的な見応えはあまり良くない。大半が会話シーンだが、キャラはほとんど棒立ち状態である。
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声優は非常に豪華で、演技の質も良好なのだが、余計に冗長さが増している感もある。
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結果、「セリフごとに細かくスキップしたい」という意見が噴出することに。
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「シナリオの題材は良いのに、こういう部分が…」と嘆くユーザーも少なくない。
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序盤の展開が遅め。
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2016年12月に配信された体験版の収録部分がよりによってここである。前述のザコ敵の弱さも相俟って、ここで購入を見送る人も多かった。
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街並みは綺麗なのだが、街の中では右スティックでカメラを回すことができない。
総評
ゲームとしてはそれなりに遊べる仕上がりにはなっており、シナリオやグラフィック、音楽も悪くはない。
割とまとまっており、"新シリーズの一作としては"それほど悪い出来ではない。
ただし本作は『3』から6年経っての発売である。長い年月の経過や開発スタッフの思想の変化により生じた全体的な作風の大きな変化が、
『戦ヴァル』のファンであったコアなユーザーの期待にそぐわないものとなってしまい、マイナス面として大きく響いてしまったことは否めない。
リアルタイム制の戦場の境地に挑んだ作品であることは間違いないのだが、ゲーム全体の冗長さや面倒臭さが足を引っ張る形となり、
プレイ意欲を削がないように工夫すれば、誰でも手に取りやすい良作になっていたかもしれない、惜しいゲームと言えよう。
余談
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ライバルキャラであるブリュンヒルデ・マクシム・クローディアスが『THE KING OF FIGHTERS』シリーズの「K’チーム」に似ているということで話題になった。
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具体的に言うとブリュンヒルデが青白い長髪で紫色の服がクーラ・ダイアモンドに、マクシムが銀髪で褐色肌の青年という点でK’に似ている、と言われている。
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この2名に対してクローディアスはそこまでマキシマに似ているというわけではない(大男であることや髪型が似ている程度)が、組み合わせが奇跡的過ぎたと言わざるを得ないだろう。
最終更新:2022年11月15日 16:10