プレイグ テイル -イノセンス-
【ぷれいぐ ている いのせんす】
ジャンル
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アクションアドベンチャーゲーム
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対応機種
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Windows Xbox One プレイステーション4 Xbox Series X/S プレイステーション5
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開発元
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ASOBO Studio
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販売元
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【Win/One/XSX】Focus Interactive Entertainment 【PS4/PS5】オーイズミ・アミュージオ
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発売日
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【Win(Steam/EGS/GOG)/One】2019年5月15日 【PS4】2019年11月28日 【Win(MS Store)】2020年1月23日 【PS5/XSX】2021年7月6日
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定価
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【Win(EGS)】4880円(税込) 【PS4/PS5】4899円(税込) 【Win(MS Store)】4900円(税別) 【One/XSX】5200円(税別) 【Win(Steam)】6480円(税込) 【Win(GOG)】$39.99
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レーティング
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CERO:Z(18才以上のみ対象)
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判定
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良作
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ポイント
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中世暗黒時代を強く生きる姉弟愛
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プレイグテイルシリーズ プレイグ テイル -イノセンス- / プレイグ テイル -レクイエム-
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概要
本作は全16チャプターからなるステルスアクションゲーム。
姉弟で協力して敵や驚異から脱出し、ステージクリアすることが目的。
フランスを舞台に、疫病の蔓延、村社会からの排外主義、盲信する宗教などヨーロッパの中世暗黒時代が表現されている。
「2人での逃避行」「三つ巴になる戦闘」など『The Last of Us』に似ていると評価される。
開発は『Kinect Rush:Disney-Pixar Adventure』(360)、『Disneyland Adventures』(360)やオフロードレースゲームの『Fuel』(PS3/360/Win)、ディズニー/ピクサーのCG映画のゲーム化である『WALL・E』『Toy Story 3』の一部プラットフォーム版などを手掛け、後に『Microsoft Flight Simulator(2020)』を手掛けた、フランスのボルドーに拠点を構えるASOBO Studiosが担当。
本作はOne/Win版もダウンロード配信でのみリリースされており、字幕/UIは日本語対応。
なお、こちらは全世界配信のため原版のパブリッシャーであるFocus Interactive Entertainmentが販売元になっている。
ストーリー
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舞台は1349年、英仏百年戦争の時代。「黒死病」が猛威を奮っていたフランス王国。
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高名な騎士であり侯爵の地位を持つ領主でもある父ロベール・デ・ルーンと、錬金術を修めた母ベアトリスのもとで、平和に暮らしていた田舎貴族の子息である姉「アミシア」と弟「ユーゴ」の物語。
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ユーゴは謎の病のため家族から隔離された生活を送ってきた。ある日、ユーゴを狙ってやって来た異端審問官の衛兵たちに、館を襲われ父親は殺されてしまう。
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そして、その混乱から脱出する最中、錬金術師でもある医師ローレンシウスのもとへ行くように、母親から言い渡される。
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時を同じくして、この地域では人を食い殺すネズミの大群が大発生していた。
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異端審問官とネズミという2つの驚異に狙われながらも幼い姉弟2人の過酷な旅が始まる。
ゲームシステム
迫り来るネズミの大群
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本作では、中世のヨーロッパで実際に起こった黒死病や死の恐怖を「ネズミの大群」という形で描いている。
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本作のネズミは伝染病の媒介生物であるだけでなく、人間を食い殺すという狂暴なクリーチャーとして描かれている。その凶暴性は鎧を着た兵士ですらも一瞬で食い殺す威力がある。
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ネズミの弱点は火と光である。光がなくなれば食い殺されてしまうため、燃える松明を使って追い払ったり、遠くの灯を消してその暗がりへ向かわせたりするといったネズミの脅威を躱すことが求められる。
ステルスとスリングショット
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アミシア、ユーゴの未熟な2人では正面から衛兵に立ち向かうことは不可能であり、「ステルス」と「陽動」がゲームプレイの肝となる。
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うまく物陰に隠れて敵の視線を掻い潜る、陽動で誘導して敵をその場から排除するなど、状況に応じて行動が必要。
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時には敵を避けられない場合もある。その時はやむなく「スリングショット(紐を用いた投石の一種)」を使い敵を排除する。だが、スリング中は敵に見つかりやすくなるので乱用は禁物。
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兵士たちの視界は遠くかつ広めに確保されていており、移動速度も速いため強引に抜けるのは難しい。
行く手を阻む仕掛け
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本作には多くの謎解き要素が含まれている。道中で知り合った仲間と協力したり、道具を使うなど様々な方法で道を進んでいく。
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謎解きはストーリーが、後半に行くにつれ複雑になり難易度が上がっていく。
クラフト要素
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フィールドにある素材を使用してスリングや後述する錬金術を強化することができる。
錬金術
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錬金術を用いて火を消したり火をつけたりすることが可能。錬金術は様々な物を覚えることが可能で、中には敵から簡単に逃れることが出来る道具もある。
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しかし、クラフトの素材は使い過ぎると不足することになるため、素材の使い方が重要となってくる。
収集品
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珍品や花など時折落ちているアイテム。中世ヨーロッパの風習を感じさせるものなどゲームの雰囲気を高めてくれる。
一種の収拾要素となっておりコレクションすることができる。
評価点
シナリオ
幼い姉弟に降りかかる脅威とそれにより育まれる家族愛
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本作のテーマは姉弟愛と家族愛。古今東西普遍的なテーマであるため登場人物に感情移入しやすい。
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ユーゴは、館に隔離されアミシアとは全く会ったことがなかった為、最初は互いにぎこちない距離感を持っている。
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しかし、そんな2人が困難に晒され、時には喧嘩をして言い争いも起こるような状況下で助け合い、交流しあうことでお互いの信頼関係を高めていく。そして、序々に普通の姉弟となっていく様が描かれている。
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過酷な状況の中で、自然にアミシアに甘えるユーゴ、ユーゴを慈しむアミシアという関係になり、2人の愛は、徐々に育まれていく。終盤で2人は過酷極まる運命に挑むが、それを乗り越えるほどに2人の愛は高まっており、困難を2人で乗り切っていく。
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エピローグでは、互いにふざけあい、罵り合うといったどこにでもいる姉と弟の姿が描かれ、プレイヤーは爽快感と程よい感動を得られる。
アミシアの成長譚
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フランスの田舎に住む貴族の娘アミシア。若干幼さの残る15歳の少女が、過酷で理不尽な時代の波に巻き込まれながらも、困難を乗り越えていく成長譚が本作の魅力。
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プレーヤーは、アミシアの視点を通じて彼女の成長とともに暗黒時代のフランスを追体験していく。アミシアは、幼いユーゴに嫉妬の感情を抱きながらも母の言いつけ通り、ユーゴを守り、頑張って良い姉であろうとする。しかし、ユーゴの幼さ特有の自由な行動や発言にイラついて心無い発言もしてしまう。
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彼女自身も思春期真っ盛りの揺れ動きやすい心であると考えると、彼女の行動は決しておかしくはなく、むしろ共感を得るものである。まして、命の危機に晒される極限状態であり、ついつい本音がでるのは至極当然である。そんな中でも、懸命に弟を守ろうとするアミシアの姿に、プレイヤーは心を動かされる。
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特に敵を殺してしまった時の反応が、序盤と終盤を比較すると全く別物である。
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初めて人を殺めてしまった時の後悔の表情から、敵への憎悪と嫌悪、そして生き残るために人を殺すことへの覚悟を見せていく。
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最後にはユーゴを守りながら進んで行く、頼もしい戦士へと成長していく。丁寧に描かれたこれらの描写は、本作の見どころの一つである。
2人に協力する子供達。
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ストーリーを進めていくと、2人に協力する仲間が現れる。それぞれ大人達に虐げられた青少年達であり、互いに冗談を言い合い、からかいあったりという、どこにでもいる普通のティーンエイジャーとして描かれている。
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そんな彼らが、結束して大人達に決戦を挑むという痛快な展開も用意されている。しかし、彼らには悲劇的な展開も用意されており、物語の悲劇さを感じさせる一助となっている。
中世ヨーロッパを感じさせる世界観。
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本作では、百年戦争やペスト、異端審問やそれに戸惑う民衆など時代考証と背景の描写がしっかりと描かれている。
概ね美形なモデリング
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キャラクターたちは総じて美形な顔立ちであり、洋ゲーにありがちな一般的な美意識から外れたモデリングではない。
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そのためキャラクターの造形だけでプレイを辞めたくなるということは少ない。キャラゲーといえる所もあるためそれなりに重要な要素である。
高レベルなグラフィック表現
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ハイクオリティーなグラフィックにより、リアルな空気感をともなって描かれる中世フランスの光景は圧巻。蠢くネズミの大群や人間の非道な行いなどショッキングなシーンもリアルに描かれる。
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特に建築物や調度品、設えられた小物に至るまでが極めてリアル。祭壇の場面など一瞬しか通らないような場所まで徹底して作り込まれている。
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スタッフによると、フェルメールやブリューゲルといった絵画を、モチーフにしつつ、ゲームに落とし込むことによって当時の美しくも陰鬱な雰囲気を表現しているとのこと。
逃亡と防戦を軸としたコンセプト
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操作キャラクターであるアミシアは、決して強くはないが、さらに弱い存在であるユーゴを守りながら進んでいく旅路は、プレイヤーの使命感を引き立て、ゲーム進行への意欲を沸かせる。
パズル要素の強いゲームデザイン
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仲間やユーゴを使って機械を動かしたり、火をつけたり消したりしてネズミを移動させたりと、パズル的な要素が多いゲームデザインとなっている。
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戦闘やステルス部分でもどの道具を使うかというパズル的な部分もあり、分かった時は爽快感がある。
収集品
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隠しアイテムには当時のフランスをイメージできるようなフレーバーテキストが記載されており、その時代の風習を知ることで物語の没入感を高めてくれる。
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また、ユーゴが花を見つけるとアミシアにプレゼントしたり、アミシアがおもちゃを見つけると、ユーゴにプレゼントしようとするなど、厳しい本編の最中でほっこりする姉弟愛が描かれることもある。
賛否両論点
ネズミが気持ち悪い
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スタッフ曰く「一画面につき5000匹が表示できる」というネズミの群集表現は、身の毛もよだつようなものになっており、ハイクオリティーのグラフィックも相まって、群衆恐怖症の人は不快感を催しかねない。
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ちなみにタイトル画面の時点で「僅かな光が差す暗い室内でネズミの大群がうごめいている」という代物なのでプレイ前には注意されたし。
残虐表現
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CERO:Z(18歳以上のみ対象)のレーティングが示すように、序盤のシーンで魔女狩りによって火炙りにされた後の焼死体がアップで出てきたりなど要所要所でむごたらしいものが登場するのでそれなりの心構えは必要。
チェックポイント
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死亡しても細かく設定されたチェックポイントからのリスタートになるので、死亡してもストレスに感じにくい。
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一方でアイテムや素材を入手した後のチェックポイントは少なく、その途中で死ぬと何度も素材を取るハメになりストレスを感じる。
問題点
ボリュームが少ない
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平均プレイ時間が10~20時間と短め。もっと2人の話を見たかったという感想やクリア後のやり込み要素が欲しかったという声が多い。
日本語字幕の改行が変
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日本語字幕の改行がかなり変な部分でされている。
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例えば1「そこにあっ」2「たわ。」のように何故か一文字だけ次行、次ページに行くパターンがしばしば有り、ストーリーが少々混乱する。
自由度は薄い
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場面ごとの攻略法は大体一本道。戦闘でも「逃げる」か「戦う」かのどちからであり、攻略の自由度は少ない。
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道具も決められた物しか使えず、パズル要素も一本道。
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中盤にクラフトした錬金術が終盤では使うこともない死にスキルになってしまうことも。
インターフェイスデザインが分かりにくい
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イベントリなどのデザインが光ったり、白くなるだけであり非常に分かりにくい。
総評
中世ヨーロッパを舞台にしたステルスアクションゲーム。
幼い二人の姉弟が、巻き込まれる美しくも残酷な世界に引き込まれることは間違い無い。
家族愛、姉弟愛という王道的なテーマも丁寧に描写されており、ゲームデザインとシナリオが上手く融合している。
ボリュームの薄さという難点はあるものの総じてクオリティの高い良作と言えるだろう。
余談
その後の展開
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2021年のE3にて続編となる『A Plague Tale:Requiem』が正式にアナウンスされ、2022年10月18日に発売された。プラットフォームはWin/XSX/Switch。
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また、マイクロソフトのサブスクリプションサービスである「Xbox Game Pass」と「PC Game Pass」でもDay1タイトルとして発売初日から配信された。
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さらに、2023年6月28日にPS5版が発売された。
最終更新:2024年01月21日 17:39