Heretic
【へれてぃっく】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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MS-DOS
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発売元
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id Software GT interactive(SoSRパッケージ版)
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開発元
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Raven Software
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発売日
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1994年12月23日 1996年3月31日(SoSR) 2007年8月3日(Steam)
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定価
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498円(Steam)
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配信
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Steamにてオンライン販売中(SoSR版)
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判定
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なし
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ポイント
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ダークファンタジー版『DOOM』 遠距離魔法が主体 ステージクリア式でありRPGではない
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Hereticシリーズ Heretic / Hexen / Hexen II / Heretic II
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概要
1993年に発売された一人称視点ファンタジーRPG『ShadowCaster』の雰囲気を受け継ぎ、同作を手掛けたRaven Softwareによって発売された、ダークファンタジー的な作風を特徴とするFPS。
絶大的な人気を博したFPSである『DOOM』に使用された「DOOMエンジン(id Tech 1)」を公式に提供されたことでよりステージクリア式のスポーツFPS的な傾向が強くなり、前作に見られたような探索要素はやや鳴りを潜めるようになった。
後に新規エピソード「The Ossuary」「The Stagnant Demesne」2つを追加した完全版が『Heretic:Shadow of the Serpent Riders』としてリリースされ、GT Interactiveがリテールパッケージ版を販売し、同時に完全版へのアップデートパッチも配信された。
2007年8月3日には前述の完全版がSteamで配信開始、より手軽に購入しプレイすることが可能となった。
ストーリー
パルソリスと呼ばれる、とある世界。
人々は7つの大国に分かれ、「力の書(Tomes of Power)」と聖なるロウソクに灯された永遠に燃える炎、そしてそれを維持する妖精シディーエルフと共存、彼らの加護によって平和に暮らしていた。
しかし平和は長くは続かず、エルフ族の予言していた災厄が訪れる。
東から来た異形の者達「サーペントライダー」の三兄弟D'Sparil、Korax、そしてEidolonは、7つの大国の王全員を強大な魔法で掌握、大量の軍隊を含む強大な権力を手に入れ、自らを神と偽って実質的にパルソリス全体を掌握してしまう。
国を掌握したサーペントライダーたちが次に目をつけたのは、エルフ族たちの守護する力の書と永遠の炎だった。
パルソリスの平和を維持していたエルフ族を、サーペントライダーを神と崇める7大国は異端審問によって「異端者(Heretic)」に認定。神に仇為す忌むべき存在として、徹底的な弾圧、殲滅が行われてしまう。
必死の抵抗にもかかわらず長老が殺害され、パルソリスのあちこちに離散するエルフ族。しかしただ一人のエルフ族の男Corvusだけはサーペントライダーたちへの復讐を誓い、魔物に蹂躙された故郷へと足を踏み入れる。
目的は神を騙るサーペントライダーの抹殺、そして故郷パルソリスの奪回。異端者であるエルフ族の男の、壮絶な冒険が始まる。
ゲームシステム
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基本的なゲームシステムは元となった『DOOM』と同様。
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1エピソードにつき全8ステージ+隠しステージ1つの合計27ステージ構成(SoSR版では2エピソード増えて45ステージ+デスマッチステージ3つ)。DOOM1をベースとしており、2のようにエピソードごとに武器を引き継ぐことはできない。
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難易度は全6種類。超簡単モードから開幕10秒もせずに死ぬ極悪難易度まで幅は広い。
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武器類は素手と同じ性質を持つ「棒」、ピストルと同じ性質を持つ「エルフの杖」、チェーンソーと同じ性質を持つ「ネクロマンサーガントレット」、ショットガンと同じ性質を持つ「エーテルクロスボウ」、チェーンガンと同じ性質を持つ「ドラゴンクロー」、パルスライフルと同じ性質を持つ「ヘルスタッフ」、ロケットランチャーと同じ性質を持つ「フェニックスロッド」、鉄球を連続してばら撒く「ファイアメイス」の8つ。ファイアメイス以外はほぼ『DOOM』の武器バランスをそのまま流用している。
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黒い本の形をした専用アイテム『Tomes of The Power』を使用することで、一定時間武器が強化される。後の『QUAKE』などにも実装された要素だが、単純に威力のみ強化されるあちらのクアッドダメージと異なりHereticでは武器のモーション自体も変化する。
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簡易的なインベントリシステムが導入されており、@キーと[キーで選択しEnterキーでアイテムを使用する。体力回復や攻撃力強化、透明化、たいまつといったお決まりの要素から、敵をニワトリに変えるアイテムや羽を使い浮遊できるアイテムといった特殊なものも存在する。
評価点
元のタイトルからの幾つかの調整
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『DOOM』に利用されたDOOMエンジンをベースとしており、プレイ感覚やおおまかなシステムといった部分はほぼ共通している。しかし一部は独自調整が加わっており、それによってゲームプレイの幅を広げている。
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「上下視点の実装」「フライト(空中浮遊)機能」「インベントリ実装」といった目に見える新要素のほか、血液の飛散や水しぶきの表現、プレイヤー死亡パターンの強化といった細かな部分も表現力が微妙に向上している。
良いBGM
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ノリの良いメタル調だったDOOMと比較するとやや不気味な感じの曲となっている。太鼓を多用した独特な曲調は本編の雰囲気とマッチしており悪くない。
雰囲気のあるグラフィック
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漆喰や木材、鉄板、石などで形成されたファンタジーらしいマップとなっており、それぞれのテクスチャの質感は良質。マップ構造はやや非現実的ながら、ファンタジーっぽさはそれなりに再現できている。
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敵のグラフィックもしっかりと書き込まれている。造形や個性の差別化も悪くなく、死亡時に肉片が飛び散ったり、魂が抜けていったりと書き込みもしっかりとしており出来が良い。
問題点
遠距離武器縛り
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ピストルやチェーンガン、ロケットランチャーといった銃器ばかり使用していたDOOMをベースにガワだけファンタジーっぽくしており、結果として剣や斧といったファンタジーアクションものでは定番の近接武器が登場しない。
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近接武器はDOOMの素手を置き換えた「棒」と、DOOMのチェンソーを置き換えた「両手から電撃を放つガントレット」のみ。ファンタジーという設定にもかかわらず、弾薬が尽きればDOOM同様に一気に不利になってしまう。
DOOMエンジンの限界
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上下を向くことは出来るようになったものの、エンジンの処理自体は2Dであるため上下に視点をずらせばずらすほど画面のパースが歪んでいく。現在のマウスによるフリーエイムのような使い勝手とはいかず、いまいち不便さが目立つ。
RPG『風』
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探索要素の濃い続編の『Hexen』とは異なり、Hereticはまだ単純なファンタジーアクションFPSにRPG要素を少し実装したのみに留まっている。よく言えば『DOOM』と同じ堅実な内容なのだが、銃撃戦のように小口径の魔法弾を撃ちまくるゲームプレイは見かけで判断するような深みのある内容ではない。
総評
良く言えば堅実、悪く言えば独自性の足りない「ガワをダークファンタジーに差し替えた『DOOM』」という扱いの多い作品。BGMやグラフィックの出来、ゲームバランスなどは悪くなく、ダークファンタジーを意識した独特な雰囲気は高い評価を受け商業的には成功、その後シリーズ化した。
現在ではSteamで約500円とお求めやすい価格で販売されており、またGZDOOMを初めとした複数のファンメイドDOOMエンジンとの互換性もある。プレイ感覚は『DOOM』と同じため、DOOM本編を気に入ったプレイヤーであれば一風変わった雰囲気の本作に手を出すのも悪くはないだろう。
余談
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続編として1995年に『Hexen』が発売された。こちらは探索を重視したハブ構造や更に強化されたグラフィック、選べるプレイヤータイプなど全体的によりRPG的な仕様に路線変更しており、N64などにも移植された。
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1997年には3作目の『Hexen II』が発売され、同作を含めた3作は「サーペントライダー三兄弟」が登場する作品ということで、後に「Serpent Riders Trilogy」としても扱われている。
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シリーズ4作目である『Heretic II』(1998年)は、『Hexen』とは異なる「『Heretic』のもう1つの続編」という内容で、サーペントライダー三兄弟の1人であるD'Sparilに呪いを掛けられたコルヴスが主人公のTPSとなっている。
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本作のチートコマンドはDOOMのようなパスワード風ではなく明確な文字列に変更されている。全武器所持コマンドは某有名娯楽アクション映画の主人公の名前。
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逆に間違ってDOOMのチートコマンドを入力するとわざと弱体化するように調整されており、全武器入手コマンド「IDKFA」を入力すると武器を没収され、無敵コマンド「IDDQD」を入力すると即座に死亡する。
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後に同Raven Softwareの関わった『Wolfenstein』では、本作でid SoftwareからDOOMエンジンの提供を受けた縁か、直接的な関係のないid Software作品ながら本作のアイテム『Tomes of power』がゲスト出演している。また、一定時間武器を強化するアイテムという概念はid Softwareの『QUAKE』にもクアッドダメージとして実装された。
最終更新:2022年08月02日 00:23