Hexen: Beyond Heretic
【へくせん びよんど へれてぃっく】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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MS-DOS Windows Mac OS Playstation Sega Saturn Amiga
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発売元
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id Software GT Interactive(CS機移植版)
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開発元
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Raven Software
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発売日
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【DOS/Win】1995年10月30日 【Mac OS】1996年 【PS】1997年6月30日 【SS】1997年4月30日 【N64】1997年5月31日
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定価
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498円(Steam)
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配信
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Steamにてオンライン販売中
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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『Heretic』の正当進化 擬似的なオープンワールドへ 凶悪すぎる入り組んだレベルデザイン
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Hereticシリーズ Heretic / Hexen / Hexen II / Heretic II
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概要
1994年にRaven Softwareが開発し、好評を得たFPS『Heretic』の続編として、翌1995年に登場したダークファンタジー的な作風を特徴とするFPS。
前作同様にジョン・ロメロがプロデューサーとなり、『DOOM』に使用された「DOOMエンジン(id Tech 1)」を引き続き採用している。しかし純FPS的な内容であった前作と異なり、メインとなるハブレベルからポータルで相互に繋がった各エリアへと移動する擬似的なオープンワールド仕様を採用しており、後のソウルライクジャンルに近い構成へと変化している。
N64などの複数のコンシューマー機にも移植されており、これらはサブタイトルなしの『Hexen』表記となっている。
ストーリー
3人のサーペントライダーが神を偽って7大国を牛耳り、国を守護するエルフ族を異端者として弾圧していた、パルソリスと呼ばれる世界。
エルフ族は長老を失い離散していたが、ただ一人のエルフ族の男Corvusにサーペントライダー三兄弟の一人D'Sparilが敗北し、僅かながらもエルフ族に希望が芽生えていた。
人間の住む7大国のひとつ、クロノス。この国ではサーペントライダーの一人Koraxとその配下である軍の元帥ゼデク、教会の大総主教トラダクトゥス、アルカナムの大魔導師メネルキルの三人によって厳格に統治され、武力・信仰・魔術の名の下に個人の考えと行動を抑制するディストピアが形成されていた。
元軍団の戦士バラタス、元教会所属のクレリックのパリアス、元アルカナムの魔導師テドロンの三人は、辛うじてその洗脳から逃れたごく少数の生き残りだった。3人はそれぞれの所属組織から離脱して異形の者たちの集うクロノスを探索し、Koraxの打倒を目指す。
ゲームシステム
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プレイヤーは最初に異なる能力を持つ3人の中からプレイキャラを選択する。キャラクターにはそれぞれ「speed(移動速度)」「armor(防御力)」「magic(遠距離攻撃力)」「strength(近接攻撃力)」の4つのパラメータによって差別化されている。
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Fighter(バラタス)
近接攻撃主体のクラス。所持可能武器は「スパイクガントレット」「ティモンの斧」「報復のハンマー」「クワイエトゥス」の4つ。物理攻撃主体でありハンマーを入手するまでは遠距離攻撃を行うことができない。攻撃力・防御力・移動スピード共に高くゲーム前半から高い攻撃力で進めるが、後半は敵配置が調整されやや難易度が上昇する。
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Cleric(パリアス)
ファイターとメイジの中間に位置するクラス。どの能力も平均しており、アーマーのみ高い。所持可能武器は「悔恨のメイス」「サーペントスタッフ」「ファイアストーム」「レイスヴァージ」の4つ。悔恨のメイス以外は遠距離武器。
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Mage(テドロン)
機動力・防御力・近接攻撃力に欠けるが遠距離攻撃力が最強のクラス。所持可能武器は「サファイアウォンド」「フロストシャード」「アークオブデス」「ブラッドスカージ」の4つ。最大の特徴は初期装備であるサファイアウォンドが無限に遠距離攻撃が可能なことであり、地道に攻撃を当て続け進んでいくのが基本スタイルとなる。実質的にアークオブデスを入手するまでは最弱のクラスだが、入手以降は非常に強力。
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難易度は前作から1つ減って5段階。選んだ難易度によって敵の出現量が増減し、選んだクラスによって敵の出現バリエーションが変化する。職業によってプレイ感覚は異なり、リプレイ性を意識した調整となっている。
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プレイヤーは最初にエントランスレベルと呼ばれるエリアに降り立ち、そこから「ハブレベル」と呼ばれるエリアへと向かう。その後はハブレベルの各所にあるポータルから「サブレベル」と呼ばれるさまざまなレベルへと交互に移動し、武器。アイテム収集や最強武器のパーツ収集、鍵の取得、スイッチの起動といった手段を通じてキャラクターを強化し、探索範囲を広げていく。
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1つのハブレベルからアクセス可能な全てのサブレベルを制覇すると、次のハブレベルへのルートが解放される。次のハブレベルへと向かうと、再びサブレベルを行き来しての探索が再開される。
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ハブレベルは「エントランスレベル」→ハブ1「7つのポータル」→ハブ2「闇の森」
→ハブ3「ヘレシアーチの神学校」→ハブ4「悲しみの城」→ハブ5「ネクロポリス」の全5段階。ハブレベルごとに複数のサブレベルが接続されている。
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各所の支配者を倒し、最終的にKaraxを倒すことでゲームクリアとなる。
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各所にあるパーツを3つ収集することで、各キャラクターに個別の最強武器が完成する。ファイターは魔法弾で敵を薙ぎ倒す剣「クワイエトゥス」、クレリックは高い攻撃力を持つ幽霊を召喚する十字架「レイスヴァージ」、メイジは貫通力の高い弾を発射する「ブラッドスカージ」となっている。入手するのは終盤だが、その時期に違わぬ非常に高い火力を誇る。
評価点
任意探索型RPGへの変化
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ただのステージクリア型FPSでしかなかった前作と比較すると、ハブレベルと各サブレベルを行き来するレベルデザインは前作からより自由度の高いものとして機能している。サブレベルごとに湿地や雪山、城などファンタジー世界にありがちな世界を一通り揃えており、任意移動で旅をする感覚は非常に楽しい。
元のタイトルからの幾つかの調整
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インベントリなどの基本的な追加要素は前作『Heretic』をベースとしている。しかし一部は更なる独自調整が加わっており、それによってゲームプレイの幅を広げている。
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「プレイヤー選択システム」「ジャンプ必須のアスレチックステージ登場」「最強武器実装」「仲間としてのモーロタウルス召還」「敵をブタに変える」「敵の攻撃をひきつけるディスク」といった目に見える新要素のほか、ステンドグラスや氷の飛散や壷などの破壊可能オブジェクトの登場、ドアなどの地形オブジェクトの軸回転、盾による防御などの敵の行動パターン強化といった細かな部分も表現力が微妙に向上している。
良質なBGM
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前作同様のやや不気味な感じの曲調。太鼓を多用した独特な曲調は本編の雰囲気とマッチしており悪くない。
雰囲気のあるグラフィック
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前作から更にグラフィックは向上し、ステンドグラス、たいまつ、霧、舞い散る枯葉、鍾乳石、小物オブジェクトといった細かい要素によって雰囲気を向上させている。これにより教会や湿地帯、城といったロケーションの表現は向上した。
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敵のグラフィックもしっかりと書き込まれている。一部キャラクターは前作から進化しており、攻撃を盾で弾いたり、繭から生まれたりと書き込みもしっかりとしており出来が良い。
剣と魔法の戦略的な組み込み
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近接攻撃がショボい杖しかなくほぼ魔法のみだった前作から進化し、「高い威力を発揮するが交戦距離の近い近接武器」「威力は上下差がありMPを消費するが、遠距離攻撃が可能な魔法攻撃」と明確に利点と弱点の存在する武器として定義された。これにより各武器、各クラスの利点と弱点がはっきりと差別化され、ゲームプレイにも深みが増すように。
問題点
諸要素の説明不足
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前作から武器・アイテム・マップ構造・敵とあらゆる要素が追加されたものの、それらの説明をゲーム内で一切放棄しているため単純にゲームのみをプレイすると何が何を表しているのか混乱することになる。
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アイテムはアイコンのみで表示され、効果は一度使ってみるまで分からない。簡単な説明テキストすらも表示されずかなり不親切。
過度に入り組んだ複雑すぎるマップ構成
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マップデザインも鬼畜。そもそも作品中でハブレベルとサブレベルの説明は一切行われず、攻略を終えたサブレベルであっても普通に進入可能かつ、後のアイテムでしか開かない扉が最初のハブレベルから頻繁に存在する。ただでさえ複雑な上に「あるサブレベルで入手した鍵を一旦帰ってハブレベルからすでにクリアした別のサブレベルに移動し、その奥地で初期探索時に開けられなかったドアを開錠」といった手間のかかる内容も登場するなどとにかく探索難易度が高い。
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スイッチを押してもそのスイッチが何を動かしたのかすらも分からずに混乱する、入手した鍵が使えるサブレベルを探してまったく異なるエリアをさまようなどは日常茶飯事。なんらかのチュートリアル要素の仕込まれた『メトロイド』や、1ダンジョン内で探索要素が完結する『ゼルダの伝説』といった有名な探索ゲームのようなプレイヤーへの親切さは欠片もない。
所持可能武器が少ない
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クラス別に武器は分かれているものの、所持可能武器数は通常武器3つに最強武器1つの、計4つのみ。バリエーションに乏しく、プレイヤーが火力向上を実感できるタイミングも実質3回のみと探索型RPGにしてはやや少なすぎると言わざるを得ない。
総評
ファンタジー版『DOOM』でしかなかった前作と比較すると明らかに戦略性に幅のあるRPGとして強化されており、正当進化と言える作品。
ハブレベルを拠点とし各エリアを探索する方式は単なるステージクリア型FPSにはない独特な内容となっており、発想自体は悪くない。また各キャラクター選択によるプレイスタイルの差別化もきちんと行われており、作りこみは前作以上を誇っている。
しかしそのハブレベルとサブレベルが不必要に相互作用し続ける複雑なゲームプレイはいささか不親切に過ぎ、またプレイヤーや敵に複雑な作用を及ぼす武器やアイテムなどのRPG要素を追加しながらもその作用のテキスト解説を省いた結果総当りで効果を覚えるしかなくなっているなど、RPG要素を増やしたことによる「RPG型FPSとしての中途半端さ」も前作よりも多く見受けられるようになってしまった。
2DFPSとしての作りこみは悪くなく、おどろおどろしいグラフィックやダークな雰囲気からファンも多い。しかしあまりにも凶悪すぎる探索面の難易度は万人に勧められるものとは言いがたく、コアなファン以外に手が出せる代物ではない。
続編
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1996年にはPCでのみ、拡張パック『Hexen:Deathkings of the Dark Citadel』が発売された。こちらは追加要素はなくハブ数も減少したものの、複雑すぎるハブ構造とひたすら無限湧きする硬い敵という2重要素で『Hexen』より更に難易度バランスが崩壊している。
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1997年には3作目の『Hexen II』が発売され、同作を含めた3作は「サーペントライダー三兄弟」が登場する作品ということで、後に「Serpent Riders Trilogy(サーペントライダー三部作)」としても扱われている。ゲームエンジンはQUAKEエンジンの改造版が使われている
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シリーズ4作目である『Heretic II』(1998年)は、『Hexen』とは異なる「『Heretic』のもう1つの続編」という内容で、サーペントライダー三兄弟の1人であるD'Sparilに呪いを掛けられたコルヴスが主人公のTPSとなっている。
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Hexen IIとHeretic IIの経緯について
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元々はサーペントライダー3部作の最終作である『Hecatomb』として開発が進められたが、プロデューサーのジョン・ロメロが本作のDOS/Win版発売の翌年にid Softwareを退職したことで開発が頓挫。その後、当初のパブリッシャーだったアクティビジョンの圧力により、『Hexen II』と『Heretic II』に分割された形で開発が再開されることとなった。アクティビジョンの見解では「HereticとHexenはそれぞれ内容が異なるものであり、3部作を完成させるための作品ではなく、それぞれが別のゲームとして扱われるべきものである」と述べている。そのため、『Heretic II』が『Hexen』の続編ではなく、「『Heretic』の異なる続編」となったのはこういった経緯からである。
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余談
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現在では本編・拡張パック共にSteamで500円ほどで販売されており、また無料のid Tech 1改良エンジンであるgzdoomとの互換性もあるため1995年製ながら高画質で楽しむことが可能。プレイの敷居自体は低い。
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上述の拡張パックはPWAD形式であり、Steamで購入した場合内部ファイルにHEXEN本編のデータも同封されている。
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前作に存在したようなDOOMのチートコマンドによる即死ジョークは本作には仕込まれていないが、コマンド内容自体は前作から変更されている。
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ハブレベルを拠点とし、何らかの移動手段を用いて独立した各エリアへと赴く擬似オープンワールド的なシステムは後の『FARCRY 2』や『Wolfenstein』などにも受け継がれている。
最終更新:2022年01月23日 21:39