レイマン

【れいまん】

ジャンル アクション

対応機種 プレイステーション
セガサターン
発売元 ユービーアイソフト
開発元 ユービーアイソフト モンペリエ
発売日 【PS】1995年9月22日
【SS】1995年11月17日
定価 5,800円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング 【PS】CERO:A(全年齢対象)*1
【SS】セガ審査:全年齢推奨
配信 ゲームアーカイブス
2012年4月11日/628円(税10%)
備考 マイナーチェンジを施したWin版が同年発売
判定 良作
ポイント 次世代ハード初期に投入された渾身の一作
完成度の高い横スクロールアクション
手足の離れたヘンテコな奴が主人公
時代背景を考慮してもかなりの高難度
主人公はUBIのマスコットへと躍進
レイマンシリーズ


概要

カートゥーン調の世界を旅するアクションゲーム。
発売元は、後に『ASSASSIN'S CREED』『Watch Dogs』等のステルスアクション&オープンワールドで名を馳せることになるUBIsoft。
メイン開発は後にWii U専用のサバイバルホラー作品である『ZombiU』や第1次世界大戦が舞台のアクションパズルADV『Valiant Hearts: The Great War』などを手掛けたUbisoft Montpellier。

本作は海外で大ヒットし、数年おきにシリーズ作品が発売されるようになった。
以後、主人公のレイマンはユービーアイソフトのマスコットとして親しまれている。

本項目ではPS版を元に解説する。
一部の日本語訳はスマートフォン移植作品『レイマン クラシック』と異なるので注意。
パッケージには「レイマンよ!エレクトゥーンを救え!」という副題が書いてあるが、本記事名は正式タイトルに準じる。


あらすじ

レイマンの住む世界は平和で、とても豊かな自然に恵まれたすばらしいところです。この世界のバランスは、ビッグ・プロトゥーン*2とそれを中心とする何千ものエレクトゥーンでつくられた巨大な原子によって保たれていました。

ところがある日、世界の破滅をもくろむミスター・ダークによって、たいせつなビッグ・プロトゥーンが奪われてしまったのです。中心を失ったエレクトゥーンはいたるところに飛び散って、世界のバランスがくずれ始めました。

ミスター・ダークによってつくりだされた邪悪で奇妙な生き物たちが、つぎつぎにあらわれ、飛び散ったエレクトゥーンを見つけると、すぐさま檻の中に閉じこめていきます。人々はみんな恐ろしがって、姿を隠してしまいました。だれも恐ろしい生き物たちを倒すことができないのです。みんなが待っていました。勇敢に立ち向かうヒーローを……。

さあレイマン!すべてのエレクトゥーンを解放しなくては。そして最大の敵ミスター・ダークを倒して、ビッグ・プロトゥーンを取り戻せ!

(取扱説明書より引用)


特徴

  • オーソドックスな面クリアアクション
    • 世界中に飛び散った精霊・エレクトゥーン*3を救うべく、主人公のレイマンを動かしてファンタジーな世界を冒険する。
  • 構成
    • 冒険の舞台は6つのワールド。最終ワールド以外は3~4のステージを含み*4、各ステージは2~6のマップで構成されている。ステージ数は総計18。
      • ステージにはエレクトゥーンが閉じ込められたが6つ配置されており、これらをパンチで攻撃するとエレクトゥーンが解放される。
      • 最終ワールドを遊ぶには、102箇所にいるエレクトゥーンを全て救出しなければならない。全ての檻を見つけるのがこのゲームで最大の目的となる。
    • 1つのステージをクリアすると、次のステージが解禁される。基本的には一度に1ステージしか解禁されないが、例外的に2つのステージが解禁される分岐点も。
      • この仕様により、ワールド1・2は全部のステージをクリアしなくても次のワールドに進める。
    • ステージは途中で脱出できない。このため、道中の檻を破壊した後は必ずゴールまでたどり着く必要がある。
      • 例外的に、各ステージのスタート地点に戻れば脱出可能。救出したエレクトゥーンの情報は記録されるが、道中で稼いだ水玉(後述)と残り人数はリセットされる。
    • 最初のステージ「PINK PLANT WOODS」をクリアすれば、マップ画面からいつでもセーブできる。当時のアクションゲームで定番だった「特定のステージをクリアしないとセーブできない」といった制限は無く、UI面は快適。
      + ワールド紹介 ボスキャラやワールドの日本語訳はPS版説明書に準拠する。
      • 1.THE DREAM FOREST(空想の森)
        • 緑と泉に囲まれたワールド。最初だけあって難易度は低め。
        • ゲーム開始時、レイマンはパンチ攻撃すらできない。妖精ベティーラ*5の力を借りて、基本的なアクションを身に付けていく。
        • 最初の2ステージはそれほど難しくないが、後半は歯ごたえある難易度でプレイヤーを苦しめる。
        • ボスは蚊の怪物・モスキート。パターンさえ覚えれば手ごわい敵ではない。
      • 2.BAND LAND(バンド・ランド)
        • 音楽をモチーフとした、楽器だらけのワールド。マラカスの上を歩いたり、トランペットに吹き飛ばされたりしながら大冒険を繰り広げる。
        • きれいなBGMと裏腹に、このワールドから一気に難易度が上がる。
        • ギミックの一つ・滑るパイプはレイマンの動きを加速させ、『ソニックシリーズ』さながらのハイスピードアクションが繰り広げられる。時には、小さくて滑る足場を乗り継いでいかなければならない。
        • 突然出てくる、妙なアニメーションで動くマラカスなど、子供が見たら泣きそうな配置物も印象的。
        • ボスは音符を撒き散らして攻撃する楽器、ミスター・サックス。
      • 3.BLUE MOUNTAIN(ブルーマウンテン)
        • 険しい岩山を乗り越えて行く。
        • 複雑な動きで飛びかかる雑魚敵、砕けると四散してダメージを与える岩石など、このワールドからトリッキーな仕掛けが増えてくる。
        • 攻略を進めるにはモスキートを倒し、「ぶらさがり」アクションを習得しなければならない。シビアな空中アクションが求められる。
        • ボスは石の怪物、ミスター・ストーン。道中ではのっしのっしとレイマンを追跡してきて、中々に怖い。レイマンのパンチは全く効かないが、ボス戦ではギミックを活用して一矢報いる。
      • 4.PICTURE CITY(ピクチャーシティ)
        • 絵画モチーフのワールド。巨大な鉛筆や画鋲が並び、インクの海が広がっている。
        • プレイヤーはここまで覚えてきたテクニックを活用し、絶妙な死線を越えなければならない。素朴な雰囲気からは想像できない殺意が待ち受けている。
        • ボタン一つのタイミングが生死を分ける。何度も死んで、攻略パターンを覚えるしかない。
        • ボスは、麺棒片手に舞台女優を気取るステージ・ママ*6。2度目の戦いは本作最大の難所であり、激しい弾幕・異常な体力・終盤に集中する初見殺しと、何重にも渡る隙の無さでプレイヤーを苦しめる。道中も作中屈指の難しさなので、気を引き締めてかかるべし。
      • 5.THE CAVE OF SKOPS(スコップの洞窟)
        • 事実上の最終ワールド。雰囲気はワールド3に近い。
        • ここまでくればゴールも間近。ステージ・ママを倒した実力があるならば、同じペースで進むだけ。
        • ボスは恐怖の怪物、ミスターサソリ。巨大なパンチを活かした攻撃が得意。直接対決よりも、地形を生かした前哨戦の方が強い。
      • 6.CANDY CHATEAU(キャンディー城)
        • ラスボスが待ち受ける拠点。
        • ミスター・ダークは道中でさまざまな魔術を唱えてくる。即死トラップの召喚、操作反転、移動操作強制など、どれをとっても嫌らしい。
        • レイマンはエレクトゥーンの援護を経て最終決戦に臨む。対するミスター・ダークは奇抜な化け物に変身して迎え撃つ。
  • レイマンには、腕や脚の関節が存在しない。手足と胴体が離れた不思議なデザインをしている。実装的にはジョイメカファイトに近い。
    • その身体的特徴から、アニメ枚数を増やさずに生き生きとした動きが表現されている。
    • 敵の攻撃には3回まで耐えられる(パワーアップアイテム取得後は5回)。
+ レイマンのアクション

ボタン配置はキーコンフィグにより変更可能("はいつくばり"操作を除く)。
それぞれのアクションは、ゲームの進行に伴って開放されていく。

  • はいつくばり
    • L1やR1を押すと、地面を這って移動。
    • 狭い穴や、天井に棘がある通路を通る時に使われる。
    • 頭の位置が下がるため、緊急回避としても有効である。
  • パンチ
    • レイマンの基本攻撃。攻撃ボタンを押すことで、拳を正面に飛ばす。
    • ボタンを押し続けるとパワーをチャージする。長く押した分だけ威力が上がり、拳が遠くに飛ぶ。
      • 溜めうちしないと一発で倒せない敵もいる。
      • 溜めている間は歩けないので、むやみに使えるわけではない。
    • 拳は少しだけ宙に浮いており、地面を這う敵には当たらない。段差を登っている時など、タイミングを考える必要がある。
      • しゃがんでいる間はパンチできない。
    • 飛ばした拳はブーメランのように戻ってくる。これを活かし、正面をガードしている敵を背後から攻撃するテクニックがある。
      • 撃った後にしゃがめば、足元の敵にも攻撃が当てられる。
  • しがみつき
    • 3Dアクションゲームのような崖つかまりが可能。
      • アクション習得後は、ギリギリで届かなかった足場にも飛び移れるようになる。
    • これを駆使し、崖上の敵をやり過ごす場面も多い。
    • 狭くて滑る足場を渡って行く際、崖から崖へと飛び移って行くのもテクニックの一つ。うっかり上に乗らないよう注意が必要。
    • 崖つかまり判定はシビアで、油断すると落ちてしまう。
  • ぶらさがり
    • 道中にはたまに「リング」が浮いている。ベティーラから力を授かると、パンチを飛ばしてリングを掴み、ブランコのように移動できる。
    • 本作には慣性の概念が存在し、掴み方を工夫すると高速移動して遠くに飛べる。
      • ゲーム終盤では、このテクニックに気付かないと破壊できない檻も。
    • このリングに次から次へと飛び移る難所もあり、パンチのタイミングが少しでもズレたら一巻の終わり。
      • 掴むとゆっくり落下するリングも存在する。一度掴まったら、急いで別の場所に飛び移らなければならない。
  • ヘリコプター
    • 空中でジャンプボタンを押すことで、短時間だけ浮遊が可能。習得後は、以前届かなかった足場にも届くようになる。
    • 浮遊時間が微妙に長く、狭い足場に乗るのは難しい。
    • 一部ステージでは、無限に浮遊できるようになるアイテムが存在する。取得後は、空中浮遊しながら狭い通路を進んでいく。
  • ダッシュ
    • アクションボタンを押しながら歩くとダッシュする。使えるようになるのはゲーム後半。
    • ジャンプの飛距離が伸びるが、ブレーキ時に滑ってしまう。
    • 初速時のみボタンを押していれば、押しっぱなしにしなくても良い。ボタン配置的に結構ありがたい。
  • 格ゲーのような挑発アクションも搭載されている。
    • 動く足場の移動時など、暇つぶしに使える。ただしダッシュ習得後はボタンの兼ね合いで使えなくなる。
  • 道中のアイテム・お助けキャラ
    • スーパーマリオブラザーズ』のコインに相当するアイテムとして、水玉(Ting)*7が登場する。100個集めると1UPし、次のステージに持ち越せるが、ミスすると全て失われる
      • 80個くらい集まっている時に穴に落ちてしまうのは、プレイヤーなら誰しも体験する悲劇。
    • パンチの飛距離や威力を強化させるアイテム、最大HPを引き上げてくれるアイテムが偶に落ちている。1UPアイテムも存在し、これにもHP全回復効果がついている。
    • 中間ポイントとして、道中にはカメラマンがいる。観光地によくあるイラスト付きの穴あき板を用意していて、ちょっとシュール。
      • レイマンが顔をはめると写真を撮影し、死亡後の再開ポイントとして扱われる。
    • マップの僻地には魔術師がいる。水玉を10個渡すと、ボーナスステージに案内してもらえる。
      • ステージに散らばった水玉を制限時間内に全て集めると、初回クリア時のみ1UPする。
      • 2度目以降はクリア時間が表示されるため、タイムアタックに挑むのも楽しみの一つ。
      • 水玉さえあれば、ボーナスステージは何度も再挑戦できる。ステージ内で集めた水玉も持ち帰れるため、それを支払いに充てることもできる。
    • 「特定のオブジェクトがスポーンする判定」が至るところに存在する。
      • レイマンが通過すると独特なSEが聞こえ、決められた場所に何らかのオブジェクトが出現する。
      • 出現する物は様々。ゲームクリアに必須な檻や足場もあれば、敵キャラや障害物の場合もある。後述するように、この仕様をうまく使ってステージが調整されており、遊びに幅をもたらしている。
  • PS版とSS版の違い
    • いずれもシステムやステージ構成は変わらず、ほぼ同じ感触でプレイ可能とされている。
    • 水玉取得時の効果音など、音響面に違いがある。
    • 半透明処理の都合上、霧の表現が見られるのはPS版ならではの特徴である。
    • SS版は一部エフェクトが異なり、ラスボス戦は他機種版にできなかった演出が追加されている。

評価点

本作には、アクションゲームとして強烈な個性があるわけではない。当時のレビューでも、真新しい要素が無い点を指摘されていたという。
それでいて海外で好セールスを記録し、高い評価を受けたのは完成度の高さにある。
他のゲームでもおなじみの手法が至る所に見られ、「アクションゲームのお手本」と言って差し支えない出来栄えである。

  • 自然と入り込めるゲーム設計
    • 操作性は良好。
      • レスポンスの悪さを感じさせず、好きな方向に程よい速さで動く。
      • 意図的なギミックや一部アクションを除き、操作の難しさで理不尽に難易度を上げてはいない。
    • 当時としてはかなり行き届いたチュートリアル。
      • 各アクションはゲームの進行に合わせて解禁されるので、一つ一つの操作をスムーズに覚えられる。
      • 最初のマップには敵キャラが登場せず、死亡ポイントがほとんど存在しない。移動やジャンプといった基本操作を安全に学ぶ事ができる。また、このマップには分岐が用意されており、ビデオゲームを遊び慣れたプレイヤーにとって最低限の自由度が盛り込まれている。
      • 2つ目のマップでは敵が出現するが、レイマンは一切の攻撃ができない。その代わり、プレイヤーは敵を避けることに重点を置いて操作を学べる。
      • 攻撃アクションを覚えた後は、初めて敵を倒せるようになる。だからと言って闇雲にパンチすれば良いわけではない。攻略を有利にするには、プレイヤーが考えて動く必要がある(後述)。
      • こうした配慮は、『スーパーマリオブラザーズ』や『星のカービィ』といったヒット作品でも見られる作りである。
  • 面白さの基本・リスクとリターン

今作の細部に注目すると、至る所に「リスクとリターン」の工夫が込められているのが解る。

  • 無策に攻撃しても、雑魚敵のほとんどは倒せない。敢えてリスクを狙いにいくことで攻略しやすくなっている。
    • ある雑魚敵は、攻撃を受けるとパワーアップしてしまう。パンチを溜めたり頭を狙ったりして、一撃で倒さなければならない。
    • 別の敵は特定のタイミングでしか攻撃が通らず、落ち着いて隙を見抜く必要がある。とある敵はパンチの弾道の下を潜られてしまうので、しゃがみアクションや段差を駆使して拳をぶつける必要がある。このような調整は、かの『ロックマンシリーズ』でも行われている。
  • ギミックの細部にも、プレイヤーを挑戦させる仕組みが仕込まれている。
    • たとえばゲーム序盤には「プラム」と呼ばれる球体が登場する。これは常にバウンドし続ける木の実で、高いところに登るための踏み台として使える。しかし、レイマンが上に乗っている間は跳ねる高さが縮んでしまい、ジャンプ台には使えない。高く跳ね始める瞬間を見切ってプラムに飛び乗り、すかさず高台へとジャンプする必要がある。
    • ワールド3で転がってくる岩は、パンチで壊すとレイマン目掛けて破片が飛び散る。飛んでくるのをそのまま避けるか、リスクを背負って敢えて壊すか、状況に応じて2択の駆け引きを求められる。
  • こうした駆け引きの工夫はプレイヤーが遊びながら意識するわけではない。プレイヤーをさりげなく引き込む"隠し味"として、裏方のような役割に徹しているのがミソ。
  • 各地の地形やギミック配置は、プレイヤーの思考を先回りしたような計算が盛り込まれている。
    • プレイヤーが飛び移りそうな場所に敵を配置したり、隠し要素への誘導が仕込まれていたりと、スタッフの入念な作りこみが垣間見える。
      • たとえば一部のマップでは、壁の向こうの重要アイテムが視界のギリギリに入るよう配置されている。こうした誘導は、初期の『ドラゴンクエストシリーズ』などで見られる定番の手法である。
  • 単調さを感じさせないゲーム性
    • ギミックの種類がとにかく多い。ステージに応じて、様々なアクションが要求される。
      • 移動速度が激しく上昇する床、特徴でも紹介したぶらさがり用リング等、遊びをバリエーション豊かにするアイデアは豊富。
      • ほとんどのマップに明確なテーマが打ち出されており、1本のソフトで多様な遊びが提供されている。
      • 一度きりしか登場しないギミックも存在する。
    • 特徴欄で触れたスポーン機能は、遊びの幅を広げるのに一役買っている。
      • 目には見えない隠し要素が盛り込まれ、探索の余地が生まれている。怪しそうな場所に足を運び、オブジェクト出現時のSEが鳴れば儲けもの。『スーパーマリオブラザーズシリーズ』で手当たり次第アイテム入りブロックや隠しブロックを探す感覚に近い。
      • この機能はトラップとしても活用されている。レイマンが特定の場所を通ると、突然目の前に敵や障害物が出現し、瞬時に反応しなければならない(なお、このトラップもゲーム序盤に登場し、チュートリアルに組み込まれている)。時にはスポーン位置を避けて移動し、余計なダメージを避けるテクニックも求められる。
  • 新世代ハード黎明期でありながら、グラフィックは高品質。
    • 色鮮やかなレイマンの世界観は、指折りの評価を受けている。背景は丁寧に描き込まれており、本作の評価点として真っ先に挙げるユーザーも多い。
    • 各モーションは本業のアニメーターから監修を受けており、皆生き生きと動いてくれる。
      • 巨大ボスは重々しく動き、迫力も満点。
  • BGMも高評価。
    • ファンタジーな世界観に合っていて、「バンド・ランド」「スコップの洞窟」の音楽は幻想的。これも本作で評価される点の一つである。

賛否両論点

  • 難易度がかなり高い。
    • 90年代のアーケードゲームと洋ゲーは高難易度に定評があり、本作もまた例外ではない*8。それどころか、当時としても飛び抜けた調整が施されている。
    • 本作を一言で説明するなら「死に覚えゲー」と言ったところ。狭い足場を乗り継いでいく局面が多く、悪意全開な初見殺しも容赦なく用意されている。
      • 例えば「ここを飛び降りてね!」と言わんばかりに縦に並んだアイテムを見かけ、いざ飛び降りてみた先には乗ると消える足場に着地してしまうので、すぐ飛び移らなければ即死となる。
      • あるマップでは、消える足場を乗り継いだ先に飛び道具持ちの敵が待っている。戻るわけにも行かず、瞬時に崖掴まりしないとそのまま真っ逆さまである。
      • 先述のスポーン機能は初見殺しのオンパレード。動く足場に乗っていると、巨大な鉄球が目の前に突然現れることも。
    • ただし、本作は必ずしも遊び辛いゲームではない。評価点にも挙げた通り、根底にあるゲームの作りはとても丁寧である。理不尽さを和らげる工夫が随所に盛り込まれており、ゲーマーで無くとものめり込めるよう考えられている。
      • 最初のステージは大して難しくない。難易度が上がるのは2つ目のワールド「バンド・ランド」以降なので、面白さを理解する前に挫折する事態は避けられている。
      • ゲーム序盤はマップが分岐し、複数の経路が用意される。同じステージに疲れた時は別のルートを遊ぶのも良い。
      • 評価点の通り操作性は良く、レスポンスの問題で死ぬ機会はほとんど無い*10
      • 上述の初見殺しも、慣れてくればパターンを読めるようになってくる。
    • 難易度の高さは、クリア時のカタルシスを大きくしてくれる。硬派なアクションゲームを望んでいるプレイヤーにとって、本作は抜群の中毒性を誇る
      • 死に覚えゲーなので、パターンさえわかってしまえば難関マップも容易くクリアできる。上達を実感しやすく、難しいステージを越えた先の爽快感はたまらない。
      • 初見のクリア時間は大作RPG並みだが、タイムアタックを極めれば2時間以内にエンディングを見られる。それだけ伸び代に溢れた、奥深いゲームとも言える。

問題点

  • 収集要素をコンプリートしなければラスボスと戦えない。
    • 同じシステムのアクションゲームは数多く存在するが、本作の場合はあまりにも難易度が高く、エンディングを見るのもままならない。
      • 海外では、最後までクリアできないプレイヤーが続出したという。
  • シビアなコンティニュー制
    • 本作が難しいとされる原因の一つ。このゲームは最大5回までしかコンティニュー出来ず、回数を増やす手段は基本的に存在しない*11
      • 言い換えると、家庭用STGのようなクレジット制が導入されているのである。
    • このシステムは高難易度アクションゲームと相性が悪い。クリアに何日もかかるため、クレジットが切れたからといって最初からやり直すわけにも行かず、効率を考えるとコンティニューはできない。
      • コンティニューによる残機回復(いわゆる"デスベホマ")もおちおち出来ないため、残機0のままステージをクリアしたら悲惨の一言。
      • 残機を補給するには、ただでさえ難しいステージを通しでクリアし、水玉や1UPアイテムを集める必要がある。
        そのうち、一度手に入れた1UPアイテムはそのセーブデータで二度と出現しないので、どんどんジリ貧になっていく。
      • もしも逐一コンティニューしようものなら、1ステージで回数を使い切る。
    • これらは単なる不便な仕様にしかなっておらず、プレイヤーは苦戦を強いられる。
+ 攻略のコツ
  • 惜しみなくコンティニューしてステージを下見すると、少しだけ楽になる。
    • クリアしたらセーブせずにゲームを終え、もう一度挑めば問題ない。本作は死に覚えゲーなので、一度クリアするだけで感触が大きく変わる。
    • 終盤はこの技をもってしてもハードな世界が待っている。
  • 中盤の「TWILIGHT GULCH」ステージも重要。ここが残機稼ぎに向いていると気付けば、攻略がグッと楽になる。
    • 水玉が大量に手に入り、既にボスを撃破していれば1マップでクリア扱いになる。その上、死ぬ可能性がある場所は終盤の崖しか無い。ジリ貧になったら、このステージを"マラソン"して残機を稼ぐべし。
    • パンチ強化アイテムが一通り揃うのも魅力的。終盤には最強パンチでないと開放できない檻があるため、アイテム回収にもおすすめ。
    • このステージを開放するまでは、ゲームを始めて2番目のステージ「ANGUISH LAGOON」が代用に使える。
  • 救済策として、隠しコマンドを入力すると残機がカンストまで増える(ゲーム内では一切説明されない裏技)。
    • 2020年時点では日本のサイトでSS版のコマンドしか確認できなかったが、実はPS版もきちんとコマンドが存在する*12
    • それでも十分な難しさを誇るゲームなので、アクションに自信がなければ妥協するのも手。
    • 事実、後年の『レイマン クラシック』には残機を撤廃したモードが用意されている。
  • ゲームオーバー時のテンポが悪い
    • 本作のゲームオーバー画面では、○を押すことでコンティニューできる。しない場合、10秒近く放置しないといけない。
    • その後はファイル選択画面まで戻される。何度もゲームオーバーにされるのに、ゲーム再開まで何十秒もかかってしまう。
    • 再開すると、ミスター・ダークがレイマンを監視するムービーがいちいち入るので、テンポの悪さに拍車をかけている。
  • ラスボス戦の演出が紛らわしく、拍子抜けしやすい
    • ここではミスター・ダークが様々な姿に変身して襲いかかってくるのだが、その設定は作中で一切説明されず、部下か何かに見えてしまう。変身形態を倒すとすぐにエンディングが始まるため、本人を倒していないのに事件が解決したかのような誤解を招いてしまう。
      • ラスボスが変身している事は、遊ぶ前に知っておいた方が良い。
  • ラスボス撃破後、何の確認もなくオートセーブされてしまう
    • コンティニュー機能をフル活用して挑むと、回数が減った状態でセーブされてしまう。
    • クリア特典は特に無いが、やりこみ要素を極めたいプレイヤーにとっては初見殺しのような仕様。
      • 例えば「取りこぼした1UPアイテムをコンプリートする」「ミニゲームのタイムアタックに挑戦する」など、エンドコンテンツは十分にある。
      • ストイックなプレイヤーで無くても、コンティニューした事実が記録されてしまうのは複雑な気分である。
    • 特典が無いのを逆手に取り、クリア前にメモリーカードを抜いておくのも手。
  • BGMの再生方法
    • 本作のBGMはCD音源で収録されている。遊んでいる最中にトラックが一周すると、BGMが途切れてしまう。
      • 一部マップでは、異なるBGMに対して同じイントロを流用している。イントロとメインBGMが別のトラックで収録されていて、途中でいちいち曲が中断する。
    • CD音源でもループが途切れないゲームは多いが、本作は1ループしか曲が用意されていない。
      • 1枚のディスクに40トラック以上も収録されており、十分な長さを収録する容量が無かったと見られる。
    • BGMの質は高いだけに、この点は悔やまれるところ。CD音源になったのはマルチ展開の都合だろうか。
  • ローカライズが中途半端
    • ゲーム本編はオープニングムービーとエンディングムービーしか日本語訳されていない。新アクションの操作説明やエラーメッセージなどは全て英語で表示される。
      • 英語が苦手なプレイヤーでも問題無く遊べるが、所々不親切。
      • 特徴欄の注釈にも書かれているように、ムービーの訳文も説明書と異なっている。
    • メモリーカードの空き容量が足りないと、起動時に毎回メッセージが英語で表示される。
    • 一部マップでは特別なアクションを使用するのだが、操作説明が英語で、表示されてもすぐ消えてしまう。
      • 幸い、説明書に操作方法は記載されている。読まなかったとしても、複雑なボタン操作は要求されないのが救いである。
    • この他にも、ストーリーを説明する文章が時々英語で入る。
    • なお各ムービーのナレーションは、原語版と同じ人物が担当していると思われる*13。後述するPC版の翻訳内容や、クレジットにローカライズ関連の役職が見当たらないところを察するに、日本のスタッフを用意できなかった可能性が高い。

総評

2Dアクションのノウハウが蓄積された今日では、自然なチュートリアルやプレイヤーの心理を読み取った巧妙なトラップなど、巧みな技法が『スーパーマリオメーカー』で確認できる。
『レイマン』の凄さは、同様のノウハウがいち早く実現されていた点にあり、その作りこみを知るにはこの記事の文章を読むよりも実際に遊んでみるのが一番である。
日本に馴染みのないデザインは敬遠されがちだが、アクションゲームの面白さに国境は無い。横スクロールACTが好きな人ならば、きっと面白さに気付いてもらえるだろう。

最大のネックは難易度の高さ。プレイヤーによってはクリア前に投げ出しかねないのが難点である。
その代わりクリアした時の嬉しさは何ものにも代え難い。もし興味を持ったなら、レイマンと強敵に立ち向かい、勝利のカタルシスを味わおう。


反響

日本では知名度を得られないまま埋もれていったが、海外では大ヒット。
特にイギリスでは、PS用ソフトとしてダントツ一位の売り上げを記録している。(参考)


他機種版・移植・リメイク

様々な機種で同時展開され、後年には複数の移植版が作られている。
海外では移植の機会に恵まれているが、日本で遊ぶ手段はごく一部に限られる。
なお各バージョンの発売日は、複数のサイトで異なる情報が錯綜している。調べる際は要注意。

  • Atari Jaguar版
    • 最も早く発売されたバージョンの一つ。ゲーム史に残る失敗ハードにおいて、貴重な良ゲーの一つとして知られている。
    • 性能の限界もあり、他バージョンとの違いがかなり多い。音質の劣化*14やレスポンスの悪化は特に問題。
      • さまざまなギミックが実現できず、他機種とは別物のようになっている。多くのプレイヤーを苦しめた"滑る床"は実装されず、最終ステージに至っては全く異なるマップが用意された。
    • このバージョンには隠しミニゲームが存在する。後のPC版・アプリ版にも収録された。
  • PC版
    • コンシューマ版から少し遅れ、MS-DOS向けに発売された。
    • 檻や1UPアイテムの位置が調整された他、一部キャラクターにボイスが追加されている。
    • 後に拡張ソフトが発売され、ステージエディット機能が追加された。
      • ユーザー製作のステージを収録した第2期拡張ソフトも発売された。
    • 日本語版は出荷本数が極めて少なく、ネットにもほとんど情報がない。
      • パッケージや説明書では、描き下ろしのアートワークが見られる。
      • このバージョンのみゲーム内の英語も和訳されており、フォントも原作の雰囲気に忠実である。残念ながら翻訳は雑だが……。*15
      • 特典として、ダイジェスト映像を記録したVHSが付属していた。
  • GBA版
    • 『Rayman Advance』のタイトルでリメイク。2001年6月発売(日本未発売)。このバージョンのみDigital Eclipseが開発を手掛けている。
    • 檻の配置はPC準拠。デフォルトの残り人数や体力が増え、各オブジェクトの配置も変更されたため、難易度は更に緩和されている。
    • ROMカセットの為かロード時間がかなり短縮されている。このロードの短縮はPSクラシックを除きGBA版以降に引き継がれるようになる。
    • GBA移植ソフトの例に漏れず、音質は劣化している。
    • 北米のみVC配信あり。
  • Pocket PC*16
    • 『Rayman Ultimate』のタイトルで2003年に登場。日本でも発売されている。
    • 体力と残り人数が更に引き上げられた。
      • 体力に至っては原作の4倍。これは全バージョンでの最高値である。
  • DSiウェア版
    • GBA版準拠の移植で、2009年に配信された。体力増加に加え、1UPがしやすいように調整されている。
    • 下画面にはマップが表示される。
  • アプリ版
    • iOS/Android対応。『レイマン クラシック』として2016年に配信された。
    • PC版の内容をベースに、称号システムなどが追加された。
    • 日本でも遊べる数少ないバージョンであったが、2018年夏に配信終了となった(理由は明かされていない)。
  • この他、海外版の「プレイステーション クラシック」にはPS版レイマンが収録された。
  • 日本向けPS版は、海外版との相違が多い。
    • 特にSEが大きく異なる。クリア時のファンファーレは後発のSS版同様に強化されている。
      • 日本向けSS版は海外と同じSEに変更された。
    • 一部の隠しコマンドも変更されている。
  • 日本で遊ぶ場合、PSハードのゲームアーカイブスを購入するのが推奨される。PS実機かSS実機を持っているなら、それぞれの中古ソフトを手に入れるのもアリ。
    • 実機版はプレミアこそ付いていないが、値崩れも起きていない程度にお金がかかる。出荷本数も多くなかったのか、手軽に入手できるとは言い難い。
    • 入力遅延等を気にしないのであれば、海外版「プレイステーション クラシック」を購入するのも手である。

余談

  • 制作背景
    • Ubisoft Montpellierの設立者の1人でもあり、本作のリードデザイナーであるマイケル・アンセル氏は、10代の頃にレイマンのデザインを思い付いたという。ロシアや中国の民話、ケルト神話に影響を受けている。
    • 本作の企画は94年に開始した。次世代機のパイオニアを目指しただけあって、開発背景からは当時の市場事情が窺える。
      • 当初はCD-ROM版SNES*17で販売予定だった。しかしハードそのものが立ち消えとなった為、このバージョンはお蔵入りとなった。ちなみに2017年にはROMの情報がネットに流出している。
      • その後はATARI Jaguar向けに発売すると宣言された。しかし程なくして、当時の第5世代ハード全般で発売するよう軌道修正された。おそらくJaguarの性能があまりにも低すぎたのだろう…。
      • 当初は3DOやスーパー32Xにも出る予定だったが、実現には至らなかった。いずれも覇権を取れずに散っていったハードである。
  • 発売前は「レイマンの世界は"ケビン"という少年の夢の中にある」とされていた。
    • 日本で刷られたチラシにはこの設定が生きていたが、製品版には全く存在しない。
    • レイマン オリジン』以降のシリーズでは、「レイマンの世界はバブルドリーマーという創造主の夢が生み出した」とされている。もしかすると、この裏設定を発展させたのかもしれない。
  • 日本向けPS版パッケージは出来がよろしくない。
    • 別件に使ったイラストを拡大コピーしたらしく、ジャギーが思いっきり浮き出ている。実物を手に取ると、まるで海賊版パチモノソフトのような有様である。
    • 後発のSS版パッケージは、海外と同じイラストを採用している。
  • ワールド2のボスは倒さなくてもゲームクリアできてしまう。そのため、タイムアタックでは往々にしてスルーされる。
    • ボスが待ち受けるステージは、最初のマップに全ての檻が配置されている。また、ボスを倒さないと解禁されないアクションやステージは存在しない。全部の檻を壊して自滅し、スタート地点からステージ選択画面に戻れば、ゲームクリアに必要な用事は済んでしまう。
      • この裏技を使う場合は中間地点が利用できないため、それなりのプレイヤースキルが求められる。
    • PC版以降では、同じ方法でワールド5のボスもカットできてしまう。
      • それ以前のバージョンにはステージ脱出ポイントが配置されておらず、ステージを最後まで遊ぶ必要があった。
    • これらの仕様は以降のバージョンでも全く修正されていない。シビアなゲームなので、スタッフも敢えて黙認しているのかもしれない。
  • バラバラの体で多彩なアクションを表現する手法は、任天堂の『ジョイメカファイト』が先んじて実現している。
    • 遠距離にパンチを撃てるのも本作と同じ。
    • ちなみに『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』のスピリッツモードにレイマンが登場した際は、『ジョイメカファイト』の主人公・スカポンが代役を担当。意外な形で共演の運びとなった。
    • なお体をバラバラにせずとも、接合した状態で同じ表現をしているゲームは数多く存在する。同時期のゲームでも『ルドラの秘宝』などが存在した。
最終更新:2024年07月22日 19:13

*1 ゲームアーカイブスで付与されたレーティング。

*2 『レイマン クラシック』では「プルトゥーン」表記。なお、ゲーム中のオープニングムービーでも「プルトゥーン」と呼ばれている。

*3 レイマン自身もエレクトゥーンの集合体であり、ミスすると6つのエレクトゥーンとなってバラバラに四散してしまう。

*4 最終ワールドのみ1ステージで終了する。

*5 PS/SS版オープニングムービーでは「バチラ」と訳されていた。後年の各シリーズ作品に合わせ、本記事ではベティーラと記述する。

*6 原語版は"Space Mama"。誤訳の可能性がある。

*7 後の『レイマン ミスター・ダークの罠』では正体が妖精であると明かされ、日本語訳も原語版と同じ「ティング」に変更された。本記事では解説を分かりやすくするため、および単なるアイテムとして扱われていた背景を尊重するため((後述するように通貨として扱われているだけでなく、別の作品では「Babble」という名称になっていた。))、PS版に合わせて「水玉」表記で統一する。

*8 海外ではゲームレンタルの文化があり、その対策としてゲームが難しく作られる傾向にあった。

*9 2022年現在、これらのバージョンは日本でプレイ困難。

*10 例外的に、天井に頭をぶつけた直後はヘリコプター操作を受け付けてくれない。このせいで残機を溶かされるマップがある。

*11 ある隠しコマンドを入力すると回数が増える。ただし、ゲーム内では一切説明されない裏技の範疇である。

*12 ポーズ画面にて、L2,R1,L1,R2の順でボタンを押しっぱなしにし、L1,L2,R2,R1の順でボタンを離す(成功すると画面が明るいままになる)。続いて、×ボタンを押す(押しっぱなしにはしなくて良い)。その後、方向キー上,○,□,△の順でボタンを押しっぱなしにし、方向キー上,△,□の順でボタンを離す。ポーズ画面が解除されれば成功。

*13 声質やイントネーションが一致している他、英単語の発音にネイティブらしさが垣間見える。

*14 例えるなら、ファミコン以上メガドライブ未満といった感じ。

*15 人物のセリフが変な位置で区切ってあったり、Eraserが「けしごむ」と表記されていたり、店の名前である「Eat at Joe's」を「ジョーのところで食事をしてね」と直訳していたりする等。ちなみに"Eat at Joe's"の元ネタは、海外で良く使われる架空の宣伝文句らしい。

*16 かつて存在した、Windows CE/Windows Mobile搭載PDA・スマートフォン

*17 補足しておくと、「任天堂製プレイステーション」ではない。任天堂は、ソニーとの絶縁後もCD-ROM機の開発を続けていた。