PIRATES 7
【ぱいれーつ せぶん】
ジャンル
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SRPG
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対応機種
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Nintendo Switch
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発売元
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メディアエスケープ
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開発元
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773
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発売日
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2019年7月25日
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定価
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1,500円(税込)
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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簡素なSRPG 悪くはないが一工夫足りない
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概要
同人ゲームのCS機向け移植の支援・サポートを行っているPlay,Doujin!プロジェクトの一環として移植されたSRPG。
本wikiの規則上当記事においてはNintendo Switch版に準拠した内容を記載する。
ストーリー
かつての厄災により大地が海に没したその世界では、
海に浮かぶ遺跡で財宝を探すトレジャーハンター
「海賊」たちが闊歩していた―――
覇権を狙う騎士国ログレス、無法諸島の海賊たち、
そして閉ざされた島ウルルの秘宝とは?
いま、多島海に戦いの嵐が巻き起こる!
(公式サイトより)
特徴
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基本的には『ファイアーエムブレムシリーズ』作をよりシンプルにしたゲームと言える。
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概ね近年の作品よりもFC及びSFCで発売された初期作品群に近いつくりとなっているが、クラスチェンジや武器の耐久値、三すくみ要素に疲労と体格と言ったそれらの作品の時点で搭載されていた要素も搭載されていないのが本作の特徴。
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一方UIなどは『覚醒』以降の近年の作品を意識していると思しき部分があるため、そこまで不便ではない。
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また(シナリオ上問題になるためか)キャラロストもない。
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さらにSRPGとして珍しい点としては「同ターン内で攻撃された側の反撃」がないことが挙げられる。
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つまり単騎特攻させてのカウンター戦法が取れないが、強力な敵ボスであっても反撃を食らわないのであまり鍛えていないユニットでも積極的に戦闘に参加させやすくなっている。
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その他消費アイテムやマップ兵器に該当するような広範囲への一斉攻撃なども存在しない。
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メインシナリオステージは全20面となっているが、それとは別に何度も挑めて経験値が稼げるフリーマップも用意されている。
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敵を倒すと通貨であるGを入手できるほか、ステージごとに一定のタスクが存在し、達成するとボーナスAPが貰える。
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G(お金)は各キャラの武器強化に使う。キャラごとに武器は固定となっており、お金を払えば単純に威力が上がるという強化要素になっている。
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メニュー画面からAPを消費することで仲間会話が行える。
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仲間会話は概ねFEの「支援会話」に近いシステムだが、各キャラ4段階用意されており、レベルが一定まで上がるごとに各段階が解禁される。
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仲間会話を行うと各キャラが新たなスキルを入手したり、習得済みの能力が強化される。
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ストーリー自体はPC(同人)版とSwitch移植版で変更点はないが、CS版は追加仲間キャラと難易度選択機能が存在し、一部の敵の能力が再調整されている。
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難易度は3段階用意されており、ある程度ゲームを進めたのちに決定する。高難易度モードでないと解禁されない要素はない。
評価点
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シンプルな設計。
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上記の通りSRPGとして必要最小限の要素のみでまとまっており、この手のジャンルの経験がない人でも手に取りやすく、ルールが極めて分かりやすい。
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もちろんSRPGに慣れたユーザーにとっても運要素が排されているゲームデザインも相まってプレーヤーの戦略通りの流れに進みやすく、理不尽なランダム要素のせいで戦列が乱れてイライラするようなことがなく進めることができる。
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SRPGの基礎は押さえている。
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物理防御力の高いいわゆるアーマー系の敵や防御力が低い代わりに遠距離攻撃が強いユニット、魔法攻撃や補助系の能力持ちの敵…と言った具合に簡素ながらも複数種の敵が存在し、シンプルだが単に同じ敵を倒し続ける単調なゲームにならないよう調整されている。
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主人公であるカリビアはレベルアップすると間接攻撃・二回行動・非物理攻撃と強力な能力を備えるためつい吶喊させたくなるのだが、カリビアがやられると即ゲームオーバーになるというデメリットも抱えているため爽快感とリスクのバランスがとれている。
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また、カリビアに入れ込みすぎて経験値を集中させすぎてしまうと「周りの兵士はへなちょこばかり」となるため自然と適宜他のキャラも使うようになる。
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各キャラも「仲間会話」のシステムがあるため単なるコマにならず一人ひとり愛着が湧くようになっている。
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また、仲間会話では本編に出てこない設定や背景説明もなされるので、ストーリーの補完としてうまく機能している。
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各マップも中には範囲攻撃を食らうマップや出撃枠が東西に大きく分断されて始まるマップ、一定ターン脱出しなければならないマップなども用意されており、単調にならないよう工夫をしている。
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ほどよい難易度。
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気を抜くと全滅しかねないが、ちゃんと敵を処理していけば無理なくクリアできる難易度にまとまっている。
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レベルデザインは大手メーカーでも苦戦しがちなので、小規模な開発チームでこうした良好なゲームバランスに調整できたのは評価に値する。
賛否両論点
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メリハリにやや欠けるストーリー
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基本的に「Aが起こったのでBに行かざるを得なくなる、Bに行ったら事件が起こったのでCに行かざるを得なくなる、Cでもまた事件が起きて…」と行き当たりばったりな話が続く。序盤からの丁寧な伏線や予想を大きく裏切る真実と言ったものが無い。
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後半にこの世の理を知る「海の魔女」が自軍に加わった後はほぼ彼女の言いなり通りに進む。
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確かに独自に行動してかえって状況を悪化させるよりは事情を知ってる者に従ってた方が妥当ではあるのだが、状況に流されている感もある。
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もっとも矛盾点や不快になるようなポイントもないので質が低いというわけでもない。
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目新しくない。
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インディーゲームにあちがちな「有名作の模倣ゲー」であり、この手のジャンルのプレイ経験がある人からすると、単に制限をかけただけでやれることが狭まっているだけと感じるかもしれない。
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逆にあまり複雑化しすぎているゲームや「キャラ萌え」にフォーカスを当てすぎているタイトルには手が伸びないという人にはちょうどよいかもしれない。
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上述の通り元が同人ゲームなので知ってれば開発規模的に厳しいのは理解できるが、こうした事情を知らないと聊かチープに感じられたり謎を残す箇所がある。
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戦闘アニメがない。このため戦闘時はちびキャラが相手にぶつかるという非常に質素な演出があるのみとなっている。
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あるキャラの背景設定はCS移植されていない過去の同サークル作品に由来されているため、本筋に絡むと思うと肩透かしを食らう。
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エンディングもスタッフ名一覧が一枚映っておしまいとかなり簡素。関わった人数が少ない以上長くもできないとは思われるが、もう少し余韻を感じさせる演出にはならなかったのだろうか。
問題点
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表情差分なし
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各キャラのグラフィックはたった一枚の立ち絵を最初から最後まで使いまわしている。
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このため敗走寸前だったり敵にさらわれるような深刻な場面でもニコニコしているキャラが多く、かなり違和感がある。
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ソフトリセットがない。
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SRPGにはつきもののソフトリセットが存在しない。このためちょっとやり直そうと思っただけでもSwitchのホーム画面に戻ってゲームそのものを終了させないといけない。
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ステージ開始時の会話がスキップできないので再挑戦する際の手間になる。
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上記のソフトリセットできない仕様と合わせて気軽にやり直しにくい。
総評
最低限の要素で作り上げたSRPGとしてはまとまっているものの、出自柄どうしても他の商業作品と比べてしまうと気になる部分はある。
一方でバランス調整は丁寧で極端なマイナス点となる部分は少なく、小粒な作品としては悪くない出来と言える。
ゲームはやりたいがあまりボリュームのありすぎるゲームや露骨で下品な性的描写のある作品は好みではないという人にはちょうどいいかもしれない。
余談
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Switch移植版の発売日だが、そのタイミングが話題となった。
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というのも、本作の翌日がよりにもよって『ファイアーエムブレム 風花雪月』の発売日であり、まさかの同ジャンルの最メジャータイトルとかち合うことになったのである。
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とはいえ「発売日が被った」ことがかえって本作について何も知らないユーザーから注目を浴びた部分もあったので、一概に悪かったかというとそうとも言い切れない部分はある。
最終更新:2023年10月09日 22:38