寺尾のどすこい大相撲
【てらおのどすこいおおずもう】
ジャンル
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スポーツ
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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ジャレコ
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開発元
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トーセ
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発売日
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1989年11月24日
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プレイ人数
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1人~2人
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定価
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5,900円
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判定
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クソゲー
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ポイント
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虚無感しかない横綱と優勝 はたき込み無双 相撲のRPGは個性的
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概要
関脇ながらも当時の人気力士、寺尾関を主役にした相撲ゲーム。地味に実在力士の名を冠した初の相撲ゲームである。
ファミコン相撲ゲームとしてはテクモの『つっぱり大相撲』(1987年)以来。
システム
取組での操作性
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テクモの『つっぱり大相撲』に似た操作性になっており、Aボタンで「押し」や「寄り」、Bボタンは十字ボタンと合わせて投げや外掛け等の技。
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Bボタン技は取組で得た経験値で装備する(上下左右に対応するので4つまで。同じ技を複数装備させることも可能)。経験値というよりお金で買っているような感覚。
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技取得に必要な経験値は下記の通り(外すと、その分の経験値がそのまま戻ってくる)。
吊り 100P
上手投げ 200P
下手投げ 300P
掬投げ 50P
外掛け 400P
はたき込み 200P
うっちゃり 300P
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「投げ系」や「はたき込み」はその技が発動するだけで自分の体力が回復する。このあたりも『つっぱり大相撲』と共通する。
ゲームモード
・昇進編(一般的な1人プレイのモード)
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いわゆる『つっぱり大相撲』のようなスタンダードな相撲のモード。前頭13枚目からスタートし1場所15日の取組を繰り返し、横綱を目指す。取組前にBボタン技の変更も可能。
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1場所終了時に番付に応じて一定数勝ち越していると、番付が上がる。上位の番付ほど勝ち越しの条件が厳しくなり、例えば関脇に昇進したいなら小結在位で12勝以上、横綱昇進は大関在位13勝以上が条件。また必要条件以上に勝ち越していると番付が一気に上がる(最大3段階)。
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逆に負け越した場合に関しては一切番付が下がらない。これはつまり一度横綱になれば何場所続けて全敗しても永遠に横綱ということでもある。
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経験値は番付格上の相手に勝った場合のみ、その差分だけ得られる(例・自分が前頭13で相手が前頭10だったなら経験値は3)。逆にどんな相手に負けても減少はしない。
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優勝(エンディング)の条件は横綱になって、2場所連続で優勝(14勝以上)すること。
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最初にオリジナルキャラ(名前を決められる)でプレイするか、寺尾関でプレイするかを決める。
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オリジナルキャラだとBボタン技は「掬投げ」のみだが、寺尾関でプレイするとそれに加えて最初から「上手投げ」が付いてくるので圧倒的に有利。ただしそれは「上手投げ」そのものよりも…(後述)
・対戦編(VSモード)
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2P対戦のモードで、10の部屋から選択し4対4の勝ち抜き戦を行う。
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所属力士のステータスは大体バランスが取れている。ただし後述の技バランスについては例外。
・日本一周編(相撲RPGモード)
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目玉(?)とも言える相撲RPGモード。
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寺尾関が奪われた賜杯を取り戻すために日本全国をまわる。スタートは九州。
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「悪の土俵」は九州に1つ、本州に3つ(関西、中部、関東)、北海道に1つ。最後の土俵を陥落させると、ラスボスが現れ、それに勝つとエンディングになり、そのまま「昇進編」に移行する。
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陥落した「悪の土俵」は「温泉」になる。また最初から「温泉」になっている個所もある。「温泉」では「巻物」で入ることができ、パスワードの発行や技の選択(下記の経験値が必要)ができる。
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アイテムは「切符」「巻物」「割符(3種類)」「わらじ」。初期状態ではこの6つを1つずつ持っている。
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「切符」港から船に乗るのに必要となる。上記の通り、九州スタートなので最低2枚は必要。
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「巻物」温泉に入るのに必要。
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「割符」海で海賊船と出くわした場合、持っている割符から1つを選ぶ。海賊の提示した割符と合った場合は事なきを得られ、合わなかった場合船を沈められる。
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「わらじ」山にいくとアイテム獲得の6択にチャレンジできる。
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6択で得られるアイテムは、「わらじ」自身を含めた上記6種類と「経験値(1)」と「爆弾」。
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RPGのエンカウント同様歩くと敵力士が現れ、勝負を挑んでくる。
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「戦う」か「逃げる」を選び戦う場合と逃げを選んだが「逃がしはしないぞ」と言われた場合、取組同様土俵での対戦となる。
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勝てば経験値1が得られ、上記6種類のアイテムか「経験値(1)」を落とすことがある。
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RPGの「死亡」のような扱いは「敵力士に負ける(エンカウント・悪土俵どちらでも)」「わらじの6択で爆弾に当たる」「海賊に船を沈められる」のいずれかにあたる。
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ただし、ゲームオーバーになるわけではなく、ただスタート地点の九州に戻されるだけとペナルテイとしてはかなりユルユル。
問題点
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格下には負けなければならないという成長システム。
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経験値取得のシステムが「格上の相手に勝つ」なので、番付が上がれば上がるほど経験値が入りにくくなり、当然格上がない横綱になると経験値が一切入らなくなる。
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そのため、勝ってばかりいると番付がガンガン上がって簡単に頭打ちになる。つまり横綱になっても技が乏しい弱そうな横綱になってしまう。
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また対戦できる相手の最上位が今の自分の番付+8なので、1つの取り組みで得られる経験値もそれが最大となる。よって100貯めることすらかなり時間が掛かる。
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つまりある程度経験値を稼ぐまでは、できるだけ下位番付にとどまる必要があり、そのために自分より同格以下の相手(経験値にならない)にわざと負けることを強いられる。
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「昇進編」での昇進は「大関から横綱への昇進」だろうが「前頭13から前頭12への昇進」だろうが単に使いまわしの一枚絵だけ。
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これでは上位番付に昇進しても、いまいち達成感がない。
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「優勝」の意味があいまい。
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本作では、その場所で優勝(14勝だろうが全勝だろうが)しても、それ自体にはイベントがない。
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実際の相撲での「優勝」とは「その場所毎」のものである。本作のエンディングにあたる優勝はいわゆる「横綱優勝」である。なのでそこはちゃんと「横綱優勝」と表記すべきだったのかもしれない。また、上記の通り優勝を2度しなければならないので「その場所の優勝」というイベントがないのでは文句なしに優勝である全勝しても「あれ?優勝したのになんもないの?」と思われても不思議ではない。
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また、現実では横綱になれる条件は「大関に在位して2場所連続優勝(またはそれに準ずる成績)」というものなので実際の相撲に即していないし、何より「場所毎の優勝」というイベントがないというのはやはりゲームとしてわかりにくい。
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エンディング画面も、昇進の一枚絵に毛が生えた程度(ハートが点いたり消えたりするのと、時折発生するフラッシュのみ)。3.4年前ならこれで良かったのかもしれないがこの時代でこれは虚しすぎる。
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「はたき込み」が一強すぎてバランスもクソもない。
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必要経験値が400と一番多い「外掛け」が強そうに見えるが、実際には「はたき込み」を繰り返している(「はたき込み」を装備している方向を押しながらBボタンを連打)だけで九分九厘とまではいかないが九分通り勝ててしまう。
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「掬投げ」等他の技はすべて仕掛けて不発に終わると体力を消耗するが「はたき込み」はそれがないので、成功したら体力が増え、決まりやすい上に仕掛けられなくても体力が減らないといういいことずくめ。
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ついでに、その「はたき込み」で得られた体力が役立つ「吊り」も装備出来ればさらに盤石になる。
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寺尾関でプレイしている場合は「上手投げ」を外すだけで最初から「はたき込み」が装備できる。こうなると最初からヌルヌルゲーになる。経験値はロクに入らなくても全勝を繰り返し横綱になり、更に優勝(横綱優勝のエンディング)もたやすいがただの作業感しかない。
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『つっぱり大相撲』と違って体力がなくなったからといって、土俵のド真中から突き出しで土俵の外まで吹っ飛ばされることはない。土俵際で突かない限り突き出されることはない。
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わかりやすいといえばわかりやすいが、実際には昭和59年9月場所で小錦関が千代の富士関を一突きで土俵の外まで突き出したような例もあるので、このようなケースが全くないというのもかえって不自然。
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相撲RPG「日本一周編」は独創性こそあるものの、あっさりしすぎている。またクリアしてもそれほど特典がない。
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最短ルートは「①九州南端の山で「わらじ」を使って「切符」を得る」→「②九州の悪土俵を潰す」→「③その跡地の温泉で巻物を使って入り「はたき込み」を装備」→「④切符を使って九州北端→本州西端」→「⑤本州の悪土俵3つを潰す」→「⑥切符を使って本州北端→北海道南端」→「⑦北海道の悪土俵を潰す」→「⑧ラスボスを倒してクリア」(④以降全ての取り組みは「はたき込み」で圧勝)これだけ。これではものの10分もかからずクリアできてしまう。
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四国もあるが、わざわざ行く必要がなく切符の無駄遣いになるだけ。存在価値が皆無で何のためにあるのかわからない。
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一応、クリアすればこのモードで得た経験値を持ち越して「昇進編」に移行するので、それが特典と言えば特典だが、このRPGで稼げる経験値自体が雀の涙程度でしかない。
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拠点の土俵だろうが、エンカウントだろうが勝っても経験値は1しか入らない(ドロップアイテムを取っても2)。これでは50貯める(「掬投げ」を外して「吊り」を装備、「上手投げ」「掬投げ」を外して「下手投げ」又は「うっちゃり」を装備)ことすら結構気長な作業になる。
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海賊船はスピードが同じで簡単に振り切れるので「割符」もあまり意味がない。そもそも普通にプレイしていれば「九州の北端」→「本州西端」、「本州の北端」→「北海道の南端」と至近距離でしか海路を使わないので海賊に捕まることすらない。
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体力がなくなるとほぼ詰み。
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これも『つっぱり大相撲』との対比になるが、『つっぱり大相撲』は体力がなくなっても、うまく土俵の中心付近に持ち込んで投げられれば空中で方向を操作して相手の上に落ちる「浴びせ倒し」という逆転技があったが、それすらない。
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一応投げられ方によっては、足から着地して事なきを得られる場合もあるが、それだけ。結局、その取組は捨てるしかない。
評価点
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ファミコンながら音声で「はっけよーい のこった」「のこったのこった!」が出る。
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相撲のRPGというのは非常に珍しく、一応独創性がある。
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これでもっと長く楽しめたり、やりごたえのあるものだったなら評価も違ったのだろうが…
総評
相撲でRPGという独創的な一面も感じられるが、いかんせん短すぎてゲーム性が練り込まれているとはお世辞にも思えない。「はたき込み」で無双できてしまう点に関しても同じことが言える。
「昇進編」は特にひどくエンディング以外の優勝自体にはイベントがなく、昇進は使い回しの一枚絵だけ。大きなサイズのカセットなのに中身に関しては小さいと言わざるを得ない。
これがファミコン初期のものだったり初の相撲ゲームだというならまだしも、1989年にもなってこれではとても褒められたものではなく、名前を冠した寺尾関に申し訳ないゲームになってしまった。
余談
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日本一周編のプロローグ「優勝賜杯が盗まれた」のように何かが盗まれたという始まり方は同じ年に発売された某超人気アイドルグループのクソゲーと共通している。
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そのため「それを頼むなら一力士の寺尾関ではなくて警察じゃないの?」とツッコミたくなる点も共通する。まして本作では黒幕の居場所もハッキリしているので尚更。
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また、それを取り返してあげたのに前頭13という最下位番付はあんまりではなかろうか?同時に「警察じゃなく力士に頼むにしても何故横綱や大関に頼まない?」という別のツッコミどころも…
もちろんゲームとしてはのっけから上位番付で始まる方が都合悪いので、それはそれで迷惑だが結局はたき込みさえあれば楽勝なのでどっちでもいい。
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寺尾関(引退後は錣山親方)は長く現役を勤め「鉄人」と称されていたが、2023年12月17日に60歳の若さで死去した。
最終更新:2025年01月11日 10:16