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依頼内容はPS5/Win/Switch版の判定の付与です。


英雄伝説 黎の軌跡

【えいゆうでんせつ くろのきせき】

ジャンル ストーリーRPG
対応機種 プレイステーション4
発売・開発元 日本ファルコム
発売日 【PS4】2021年9月30日
定価 通常版: 6,090円
ダウンロード版: 5,040円
レーティング CERO:C(15才以上対象)
判定(PS4Ver.1.10前) なし
判定(PS4Ver.1.10後) 良作
改善
ポイント 軌跡シリーズ後半戦の幕開け
大人の魅力あふれる主人公とややダークなシナリオ
グラフィック・モーションも順当に進化
アップデートによって遊びやすくなった
ドラゴンスレイヤー&英雄伝説シリーズ



「悪夢を纏う?纏わない?」



概要

日本ファルコムの二枚看板の一つ・『英雄伝説・軌跡シリーズ』の第4シリーズ前編「黎の軌跡」の序章にあたる作品。初代作『英雄伝説 空の軌跡』から名前が登場していた大国の一つ「カルバード共和国」を舞台に、新たな物語が展開される。


ストーリー(公式サイトより抜粋)

『裏解決屋(スプリガン)』――
カルバード共和国という多様性の坩堝から生まれた、ある種の“裏稼業”。
ある時は 探偵として、ある時は交渉人として、またある時は賞金稼ぎ、彼らはどんな、そして誰からの依頼でも受ける。
警察では扱い切れない依頼の下請け、市民からの“表沙汰にできない”相談事、さらには犯罪者やアンダーグラウンド勢力の“真っ当な”依頼も。
それが、『裏解決屋』と呼ばれる彼らの流儀であった。

時に、七耀暦1208年――
共和国首都・旧市街にある古ぼけた雑居ビルを名門校の制服に身を包んだ、いかにも育ちの良さそうなひとりの女生徒が訪れていた。
『アークライド解決事務所』
素っ気ない文字で書かれたそのプレートを、凛とした眼差しで見つめる少女。
コクンと喉を鳴らし、意を決してノックを3回。

…………
『~ふわああっ、昼前に珍しいな……』
だらしないようで落ち着いた、大人びているようで意外と若い男の声が響き、ドアノブがゆっくりと回り出す。
――ここから、新たな 軌跡(ものがたり) が始まる。


新システム

  • フィールドバトル
    • 本作では、空の軌跡から実装されている「ATバトル」のほかに、那由多の軌跡に近いアクション要素を含有した「フィールドバトル」が搭載されている。この二つはワンボタンで切り替えることが可能で、フィールドバトルで敵をスタンさせてからすぐにATバトルに切り替えるなど、以前とは異なる新たな戦略を見出せる。
      • 例外として、ボスなどのイベントバトルでは強制的にATバトルとなる。
  • 新型オーブメント「Xipha」
    • 今までのシリーズでは、「エニグマ」や「ARCUS」など、第五世代の戦術オーブメントが用いられてきたが、本作では第六世代となる「Xipha」が新たに採用された。これに伴い、装備可能クオーツが従来の7から16と大きく増加している。
      • 従来通りにクオーツをセット*1して装備したキャラクターの能力を上げたり、オーバルアーツと呼ばれる特殊攻撃を行えるほか、霊子装片《シャード》と呼ばれるエーテルの欠片を使用者の周囲に展開し、それを制御することで、前述のフィールドバトルとATバトルの切り替えや、シャードスキルと呼ばれる特殊効果、さらに、シャードブーストと呼ばれる自己強化機能など、さまざまな機能を発動させることができる。
        『閃の軌跡』シリーズ及び『創の軌跡』で使用したARCUSでは、マスタークオーツ、およびクオーツによって使用できるアーツが変化していたが、今回は「アーツドライバ」とその付属品である「アーツプラグイン」によって判定される。
        『碧の軌跡』まで採用されていた「属性値」も復活。これを高めることで強力なシャードスキルを新たに使えるようになる。
  • LGCアラインメント
    • メインクエスト、あるいはサブクエストを進めることで、主人公であるヴァンのスタンスと言えるアラインメントが増加することがある。アラインメントは、穏便な行動をとることで上昇するLAW、やや後ろめたいものの、筋が通った行動をとることで上昇するGRAY、目的のためにあえて強硬な手段を取ることで上昇するCHAOSの三種類に分けられる。なお、一度上昇したポイントが下降することはない。
      • このポイントは、ヴァン自身の心構えのほか、彼が所長を務めている「アークライド解決事務所」の行動方針、および、他組織からの印象にも関わっており、終盤で行われる大きなイベントで、協力を結ぶ組織にも影響を及ぼす。LAWのポイントが高ければ、正義の味方と知られている「遊撃士協会」と組むことができるが、逆にCHAOSが高い場合、前作まで一貫して敵対していた結社「身喰らう蛇」との共闘も可能となる。
      • このほか、ヴァン専用のホロウコアである「メア」の性能強化や、最終章でのイベントの変化、隠しボスの出現条件など、さまざまな要素に影響を及ぼす。
  • コネクトイベント
    • 前作までの「絆イベント」に相当するイベント。首都で行動している時に、「コネクトポイント」を消費することで、ヴァンと仲間の交流を楽しむことができる。その結果、能力値を上昇させたり、性能の高いアイテムを入手できるなど、さまざまなメリットがある。
      • 絆イベントとの相違点は、レンやフィーといった前作のプレイアブルキャラとも交流が可能なところにある*2。前作までの彼女たちを知るユーザーにとっては嬉しい要素と言える。
      • ちなみに現時点では、恋愛要素にはあまり影響を及ぼしていない。もっとも、零や閃も本格的に恋愛に発展するのは二作目以降なので、これは大きな違いとは言えないが。
  • グルメランク
    • 店で売っている食品アイテムを食べたとき、初回に限りグルメポイントなるものを取得し、蓄積するとグルメランクが上がっていく。このランクに応じて、パーティメンバの能力が向上していく。恩恵が大きいのでできるだけ利用したいことに加え、その土地に応じた食文化を楽しめる。
  • グレンデル
    • ヴァンが、専用のホロウコア「メア」と、アニエスが所有している特殊戦術オーブメント「ゲネシス」の共鳴によって変身できる、超強力な戦闘形態。変身ヒーローを思わせるフォルムと、荒々しい戦闘スタイルが特徴。
      • 前作までの主人公が使用していた「バーニングハート」や「神気合一」などに近いが、HPやEPが約二倍になる、連続して攻撃を畳みかけられるなど、強化の度合いはそれらをはるかに上回り、『創の軌跡』のマクバーンによる「火焔魔人」にすら匹敵する。その分、CPを200消費する、特定の戦闘でしか使用できない、後述のグレンデル戦以外では数ターンで効果が切れるなど、使用条件は非常に厳しい。また、アーツも使用不可だが、EPを消費して発動させられるクラフトを持つ。
    • 各シナリオのクライマックスシーンでは、「大君」や「雷獣王ウルスラグナ」といった強敵を相手に、グレンデルの力を発動して戦う「グレンデル戦」が発生。この時は例外として、最初から最後までグレンデルの姿で戦闘を行える。さらに、ヴァンの仲間たちとの共鳴によってさまざまなスキルを修得し、「グレンデル・アルター」、「グレンデル・シン」と強化されていく。

評価点

  • シビアかつ大人向けのシナリオ
    • 英雄伝説シリーズの魅力の大本と言えるシナリオは、今回も非常に優れている。舞台となるカルバード共和国は、未曽有の好景気によってリベール王国、クロスベル自治州、エレボニア帝国を凌駕する国力や技術を得るに至るが、その内部には大小さまざまな問題が内包されており、最大級の勢力と危険性を誇るマフィア「アルマータ」の暗躍によって、それらの歪みが一気に顕在化していく。
      • 主人公であるヴァンは、アニエスから依頼されたゲネシスの奪還をきっかけに本格的に動き出し、裏解決屋として「4SPG」と呼ばれる依頼を果たし、その中でアルマータなどの敵対組織の凶行を目の当たりにしては、その対処に当たっていく。その結果、目立ちすぎることを好まないヴァンにとっては不本意ながら、助手として様々な人員が加入していき、遊撃士協会や黒月、高位猟兵団や星杯教会、身喰らう蛇など、さまざまな勢力に目をつけられていく。
    • 本作では初期から、マフィアによる残虐な行動が多く見られ、その中では戦闘能力を持たないキャラを含めた登場人物が実際に殺害され、その死体が晒されたり、ある力で屍鬼*3にされることもある。また、逆に、やむを得ない状況に追いつめられた主人公が敵対する人間を殺害する選択も可能。*4
      + ネタバレ注意
    • 極めつきとなるのは、終盤で発生する、一つの村が壊滅し、住民ほぼ全員が死亡するというもの*5
      • 以前も、「ハーメルの悲劇」や、「ケルディック焼き討ち」のように、過去に語られていたり、ある程度の被害が発生した事件はあるが、前者はゲーム中で発生した出来事ではなく、後者は一人の犠牲者でとどまっていた。本作で壊滅する「クレイユ村」は、実際に訪れて交流することも可能だっただけに、この展開には驚かされるプレイヤーが続出した。
  • ヴァンを始め、仲間たちがショッキングな事件に巻き込まれた結果心が折れかけるなど、過去作以上に悲痛な展開も目立つが、それを乗り越えるために必死にあがき、やがて結果を勝ち取る過程はまさに素晴らしいの一言。また、世界情勢の変化も従来以上に描かれており、物語を進める意欲を刺激してくれる。
  • 魅力的なキャラクターたち
    • 軌跡シリーズでは、毎回個性あふれるプレイアブルキャラが存在し、物語の進行に大きく貢献してきた。本作も同様で、それぞれが大きな魅力を持っている。
+ 主な登場人物。ネタバレ注意
ヴァン・アークライド
  • 裏解決屋「アークライド解決事務所」を営む青年。年齢は24歳と高めで、性格もエステルやロイド、リィンのような「正義の味方」というよりケビンやルーファスに近い「清濁併せ呑む傑物」といった印象が強い。また、非常に頭脳明晰で、口も達者であることから他者を納得させたり言いくるめたりする術にも長けている。戦闘能力も高く、「スタンキャリバー」と呼ばれる剣を模した制圧用鈍器と、東方三大拳法の一つである「崑崙流」を巧みに使いこなす。
  • その他、無類のスイーツ好きで、サウナにも足繁く通うという個性も際立っている。この個性を活かしたのが前述のグルメランクであり、システムとキャラを反映しているところも好感が持てる。
    • 諦めることを嫌う素振りを見せ、心が折れかけた仲間や依頼人に必死に呼びかけてはそれを救うことで、本人も知らないうちに多大な信頼を勝ち得ている。その反面「裏解決屋」というグレーな稼業を嫌う人も多く、やっかみを受けることも少なくない。
      • 一方で、過去の主人公にもいくらか見られた、自己犠牲をいとわない姿勢を見せることもある。また、カルバード共和国に潜む闇にも精通しており、仲間たちにはできる限りそれを見せたくないと考えているなど、優しさ故のエゴを通そうとする場面もある。もっともこれは序盤の話であり、持ち前の強かさが仲間に伝染していくことで、中盤以降はやり込められることも増えていく。
アニエス・クローデル
  • アラミス高等学校に通っている女子生徒。年齢は16歳で、シリーズのレギュラーキャラである天才美少女レンの後輩にあたる。学校のカリキュラムとして導力杖による護身術を学び、新型のXiphaを所有しているものの、荒事に関しては素人で実戦経験もなかった。しかし、明らかに危険があるとわかっていてもそこから目を背けようとしなかったり、筋の通らないことには毅然として立ち向かおうとするなど、人一倍の度胸を誇る。
    • 曾祖父であるエプスタイン博士が残したゲネシスの行方を探しており、レンの紹介によってアークライド解決事務所に依頼し、自身とヴァンの活躍でゲネシスの一つを無事に回収する。それからは、残るゲネシスを回収するため引き続き依頼を継続すると共に、彼に対する恩返しとして、アークライド解決事務所の押しかけバイトとなる。
      • シリーズのヒロインの中でもメンタルの強さは屈指で、年上のキャラクターたちもその意志に感服するほど。また、ヴァンやレンとは違う意味で頭もよく、柔軟性にも富むことから、裏解決屋としての流儀を自分なりに飲み込んでいく。ストーリー中盤以降は、多くの人を救うためにその知性と精神力を存分に発揮していき、最終的には窮地に陥ったヴァンを救い出す決定的なきっかけを生み出す。
フェリーダ・アルファイド(フェリ)
  • 高位猟兵団「クルガ戦士団」の副団長「ハサン・アルファイド」の娘。年の離れた兄と、弟、妹が一人ずついる。姉貴分として慕っていた、「西風の旅団」の元副団長であるアイーダの所属していた部隊が突然行方不明になり、アークライド解決事務所にその捜索を依頼したことでヴァンやアニエスと知り合う。しかし、捜索を進めていくうちにアルマータの残虐極まる行為を目の当たりにし、その結果、アイーダを目の前で失ってしまう。この経験によって、猟兵としても人間としても大きく成長し、父から勘当と言う名目で学ぶ機会を与えられ、半ば強引にアークライド解決事務所に押しかける。
    • 13歳という若さながらクルガ戦士団の一員として活躍しており、アイーダから「いずれ自分に並ぶ逸材となる」と言われたり、アイーダの元同僚であったフィーから「突破力なら私より上」と評されるなど、猟兵として並外れた資質を持つ。戦場で育ってきたことから世俗に疎いが、年相応の天真爛漫な性格で、他者から好かれやすい。
アーロン・ウェイ
  • 煌都ラングポート出身の青年。登場時の年齢は19歳だが、仲間になってからほどなくして20歳になる。東方三大拳法のひとつ「月華流」を修めており、剣術、拳法共に優れた腕前を発揮する。破天荒でやや生意気な性格ながら、他者を思いやる気持ちは強く、周りをひきつけてやまない魅力の持ち主。
    • アルマータの息がかかった半グレに仲間を奪われたことで激昂し、復讐を決意。事件の中で出会ったヴァンたちと協力し、元凶を追い詰める。これをきっかけに首都イーディスに引っ越し、フェリと同様に強引にアークライド解決事務所の一員となる。
リゼット・トワイニング
  • オレド自治州に本拠を構える民間軍事会社「マルドゥック総合警備保障」のサービスコンシェルジュを務める女性。一見するとクールに見えがちだが、実際は人当たりがよく、茶目っ気も持ち合わせている。仕事ぶりは極めて優秀で、戦闘能力も上位の猟兵以上と言われているほどだが、その身体にはある秘密が隠されている。
  • ヴァンには社外テスターとして専用武器や《Xiphaザイファ》の専用アプリを無償提供しており、定期的に使用状況の査定を行うなど、互いに顔を合わせたこともないビジネスライクな関係だった。しかし、ある事件をきっかけに顔を合わせてメアやグレンデルのことを知ると、ヴァンの安全確保とメアのさらなる解析のため、上司である「ギリアム・ソーンダイク」の指示で長期出向という形を取り、アークライド解決事務所の協力者となる。
カトル・サリシオン
  • バーゼル理科大学の学生で、技術者としても活躍している15歳の少年。導力革命の立役者である三高弟の一人「ラトーヤ・ハミルトン」*6の弟子で、彼女を実の祖母のように慕っている。
    • ゼムリア大陸東方の調査に赴いたきり、ずっと戻ってこないハミルトンの留守を守っており、その最中にアークライド解決事務所の面々と知り合う。その矢先に大きな事件に巻き込まれ、技術者としての矜持を試されることになる。
ジュディス・ランスター
  • カルバード共和国で流行している「導力映画」のトップスターとして知られている22歳の女性。その美貌と演技力、そして妥協を許さない信念などからファンも非常に多く、後輩である「ニナ・フェンリィ」からも慕われている。一方で、思わぬところでスキを見せやすく、迂闊な面も目立ついわゆる「残念な美人」。
    • カルバード共和国を股にかける義賊「怪盗グリムキャッツ」としての裏の顔を持つ。しかし、そのポンコツぶりから、ヴァンからはすぐに悟られてしまう。
ベルガルド・ゼーマン
  • 東方三大拳法の一つ「崑崙流」を修める68歳の男性で、ヴァンにとっては武術の師匠にあたる。隻眼でありながら逞しい体つきで、その(設定上の)実力はメイン8人の中でもトップとされている。また、多くの人物から人望を集めており、その人脈は軌跡シリーズ屈指と言われるトヴァルすら上回るほど。
    • 過去に発生したある事件で致命傷を負ったと言われており、ヴァンからもすでに亡くなっている思われていたが、突如として彼やアークライド解決事務所のメンバーの前に姿を現す。
  • これらのほかにも、ヴァンの幼馴染である「エレイン・オークレール」や「ルネ・キンケイド」、シリーズでも最強クラスの実力を誇る剣士である「シズナ・レム・ミスルギ」などが、準主要人物として活躍。それ以外にも過去作のレギュラーキャラで、本作でも重要な役割を果たすジンやレン、「銀」にフィーなどが登場し、今までに見られなかった一面を見せてくれることもある。
    • また、敵陣営も、ワイスマンやマリアベル、セドリック、ルーファスなど以上に非道かつインパクトの強い悪役であるジェラール・ダンテスやメルキオルが登場。プレイヤーからの敵対心を煽ると同時に、物語の緊迫感を生むことに一役買っている。
  • 戦略性、爽快感の増した戦闘
    • 前述したフィールドバトル、新型オーブメント「Xipha」の採用により、快適、かつ奥深い戦闘が楽しめるようになっている。フィールドバトルでの攻撃パターンは少なく、前述した那由多の軌跡のほか、イースシリーズ東亰ザナドゥなどには及ぶべくもないが、非常に強力なチャージアタックを使えるフィー、キンケイド、シズナなど、キャラクターによってはATバトルよりフィールドバトルが得意、ということもある。ATバトルも以前よりスピーディーになっており、かつシャードスキルの影響で戦略性も増している。
      • さらに、「ATバトルは手ごたえが欲しいが、アクションが苦手」などといったプレイヤーのために、ATバトルの難易度とフィールドバトルの難易度を個別に設定可能。
  • 良質なBGM
    • BGMといえば、ストーリーとならんで軌跡シリーズ、ひいてはファルコム作品において重要な役割を果たしている要素であるが、本作もその例に漏れることはない。
      • 主題歌である「名もなき悪夢の果て」は、前作に続いて佐坂めぐみ氏が熱唱。本作のテーマの一つである「悪夢」と、それに立ち向かうヴァンたちを象徴するような勇壮な名曲に仕上がっている。
      • エンディングテーマである「Kuro -Beyond the Dawn-」も、歌曲ではないものの、本作の結末を彩るに相応しい、明るい曲調となっている。このほか、終盤ダンジョン用BGM「死と戯れの領域」や、グレンデル戦の「Rise of the Grendel」、あるボスとの戦いで流れる「Unmitigated Evil」など、良曲は数多い。
  • 一つの物語としてキリよく完結している
    • 詳細はネタバレになるために省くが、本作は続編前提になっているものの、『空の軌跡FC』や『閃の軌跡』、『閃の軌跡III』のように、途中で終了するような形ではなく、『零の軌跡』のように、きちんと一つの物語として終わりを迎えられている。
      • 実際にプレイしたユーザーからは、最後の最後で衝撃的な展開が発生したことから、「今回もまた悲劇的な結末なのか?」と恐れられたが、その後のどんでん返しによって見事にハッピーエンドに落ち着いた。この展開や、それを実現したあるキャラクターの活躍は、プレイヤーから高く評価されている。

アップデートで改善された点

  • 以下はすべて、10月28日になされたバージョン1.10で改善されたものである。
  • ロード時間
    • 本作は、基本的に一つ一つのマップがシームレスとなっており、店と街が一体化している。そのため、当初はより多くのロード時間を強制されており、このことがプレイヤーから不満を集めていた。中でも終章はカクつきが酷かったが、アップデートにより、この問題が大きく改善された。
  • モーション、グラフィックなど
  • イースIX』から採用された新エンジンによって、戦闘モーションが大きく進化。これにより、『創』でも評価が高かった戦闘シーンがさらにブラッシュアップされ、より高い人気を得るに至った。また、以前までの茶化すようなお色気だけではなく、よりストレートに扇情的な物も見られるようになった。
    • 一方で、エレインとメルキオルの戦いなど一部のイベントシーンの演出がおかしいという批判が見られたが、こちらもアップデートにより改善されている。
  • キャラクターの性能や装備品など
    • ゲストキャラクターに顕著な問題点として、装備しているホロウコアがキャラクターの長所とかみ合っておらず(物理攻撃が得意なシズナが、アーツ攻撃を強化する「ロレイ」を装備してしまっている。など)、その実力を発揮しきれないという指摘があった。しかし、アップデートによってきちんとキャラクターに適したホロウコアが装備されるようになり、使いやすくなった。
    • 前述したグレンデルも、装備やホロウコアが反映されない、ヴァン専用のクラフトで、敵からのヘイト*7上昇ができないなどの欠点があり、変身しても大して強くないという指摘もあった。こちらも、アップデートによって改善され、その性能をいかんなく発揮できるようになった。
  • アーツ、クラフト関連
    • 発売直後は、Sクラフトや強力なアーツなど演出の長い技をスキップすることができず、批判の対象の一つとなっていた。こちらもアップデートで修正され、スキップが可能になった。
    • だが詰めが甘かったか、未だにスキップできない技も存在する。詳しくは後述。

賛否両論点

  • 声優関連
    • 主人公であるヴァン役の小野大輔氏やシズナ、アーロンをそれぞれ演じる内田真礼氏と内田雄馬氏の姉弟など、本作も豪華な声優陣が物語に花を添えている。敵サイドもジェラールを演じる関智一氏やメルキオル役の蒼井翔太氏らによる、登場人物のみならずプレイヤーからも敵対心を集めるような悪の美学にあふれた演技を楽しませてくれる。また、カエラの声優が変更されているが、こちらも特に問題視されることなく受け入れられている。
      • 一方でキリカの声が異様に低く、演技もどこかぎこちないという指摘がなされた。こちらもまた、空の軌跡3rdでは見事な演技をしていただけに、閃IVのクルトや創のユウナと同様に驚きの声をあげるプレイヤーがいた。*8声優に関しては以前よりあちらが立てばこちらが立たずという状態が続いているが、本作も例外とは言えない。
    • パートボイスである点は前作と同様だが、あまりにテキストが多いためこれに関しても従来同様致し方ないといえる。それでも主人公に限れば、以前よりはボイスの数が増えているのだが…。
  • キャラクターデザイン
    • 本作のキャラクターデザインは『零の軌跡』以来となる、エナミカツミ氏によるもの。氏の持ち味がふんだんに表れており、ヴァン、ベルガルド、ハーウッドといった大人の男性キャラは非常に好評。
      • 一方で、女性キャラは以前の方がよかったという声もあり、一長一短と言える。また、作中でも、エナミ氏のほか、「閃の軌跡」や「イースシリーズ」で活躍した絵師によるイラストも実際に使われており、統一して欲しかったという意見も聞かれた。
  • アーロンの呼称の変化について
    • アーロンは、過去作に登場したランディなどと同様に、仲間に対して名前ではなく独自の呼び名で呼ぶ癖があるが、話が進むにつれて戦闘中の掛け合いで名前呼びに変わるようになる。信頼度が増したという心情の変化が感じられるため、この点は好評。
      • ただし、シナリオ内では、あまり名前を呼ぶことがないままでいる。日常と戦闘では心構えが違うというのもあるが、この辺の変化をもう少しわかりやすくしてほしかったという意見もある。
  • 敵のデータ
    • 本作では、今までと異なり、一度戦闘に勝利すれば敵のデータを登録できるようになった。そのため、バトルスコープを使わなければならないといったわずらわしさが減少している。
      • 一方で、敵の状態異常耐性の表記が若干アバウトになったうえ、解説文がすべて削除されているなど、劣化した点も存在する。
  • 似たような言い回しが多用されている。
    • シリーズ恒例ではあるのだが、本作も「はは」「ふふ」「まあ」といった間投詞が非常に多く、同じような言い回しを繰り返している。
      • 本シリーズはほかのRPGに比べてテキスト量自体も非常に多いため、シナリオに集中できないというプレイヤーや、逆にシリーズの持ち味と肯定的に捕らえるプレイヤー、そもそも気にしないプレイヤーもいる。

問題点

  • 操作できないキャラクターが多い
    • LGCアライメントの恩恵もあり、パーティーに加入するゲストキャラクターは多いのだが、その半数はNPCで、プレイヤーが操作することはできない。その中には、かつてプレイアブルキャラクターとして使用可能だったジンや、ライバルキャラクターとして人気だったツァオ、ヴァルターも含まれる。*9
  • Sクラフト関連
    • 前作まで存在していた、Sクラフト使用時のカットインが、本作では実装されていない。
      • 社長インタビューによると、一言でまとめれば「ゲームテンポ」の問題の模様。カットインが表示される2~3秒程度はキャラの動きを止めておかなくてはいけないため、前シリーズよりもあらゆる部分のスピーディさが上がった本作では、それを挟む余裕のある部分がないということなのだろう。
      • また、改善された点として挙げられたSクラフトのスキップだが、敵キャラが使用する時は不可能。「パンデモニウム・ルーラー」など使用頻度の高い敵のSクラフトを何回も見る羽目になることから、この点は依然として問題視されている。
  • 目に悪いグラフィック
    • 人物や魔物は問題ないが、建物や景観などの描写はカメラが動くたびにジャギーが走り、目に悪い。

総評

前作までのゼムリア大陸西部から舞台を一新し、公式曰く「後半戦の開始」とうたわれた本作。
発売直後は、ロード時間をはじめ複数の問題が見受けられたが、10月28日になされたアップデートによって飛躍的にプレイアビリティが上昇し、過去作以上の没入感を得られるようになった。
従来と同様に、キャラクター、シナリオ、BGMなどのクオリティも非常に高く、まさに軌跡シリーズの面目躍如と言えるだろう。


余談

  • 2022年9月29日に、続編である『英雄伝説 黎の軌跡II -CRIMSON SiN-』が発売された。
  • PS5版の発売と同日に、Clouded Leopard EntertainmentからSteam版が配信されたものの。日本語はボイスのみの繁体字版・ハングル版*10の、所謂「おま言語」仕様だった為。完全日本語対応版は、翌年配信のNISAmerica版まで待たされる恰好となった。

最終更新:2025年03月26日 16:21

*1 前作まで採用されていた「マスタークオーツ」は「ホロウコア」と言う名前に変更されつつ、続投している。

*2 閃の軌跡IVでも、碧の軌跡のキャラであるデュバリィと交流はできたが、彼女は当初プレイアブルキャラではなかった。

*3 以前の作品に登場した「不死者」とは異なり、一部を除いて完全に意思を奪われ、思考すらできなくなった状態。

*4 過去作で主人公を務めた経験のあるケビンやルーファスも劇中で敵対者を殺害したことはあるが、主人公になる以前の話となる。

*5 何らかの目的で首都を訪れた村民のみが助かっている。

*6 残りの二人であるアルバート・ラッセル、ゲルハルト・シュミットは、それぞれ過去の作品に登場している。

*7 敵対心のこと。これが高いほど敵から狙われやすくなる。

*8 なお、米本氏の引退に伴い、黎II以降は道井悠氏が担当することが、同氏のTwitterから明かされた。

*9 一応ジンは、特定のイベントで操作が可能。

*10 日本語字幕化MODもあったが、不完全な出来だった