OMORI
【おもり】
ジャンル
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RPG
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Switch版
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対応機種
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Windows(Steam/Microsoft Store) Mac OS(Steam) Nintendo Switch Xbox One Xbox Series X/S プレイステーション4(海外のみ)
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発売元
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OMOCAT 【Switch PKG】Fangamer LLC
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開発元
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OMOCAT
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発売日
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【Steam】2020年12月25日 【Switch DL/MS Store】2022年6月17日 【Switch PKG】2022年11月24日
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定価
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【Steam】1,980円(税込) 【Switch DL/MS Store】2,980円(税込) 【Switch PKG】4,400円(税込)
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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6個
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レーティング
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【Switch】CERO:C(15才以上対象) 【MS Store】IARC:18+
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備考
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Steam版は2021年12月16日、 MS Store版は2022年7月25日に日本語化 現在MS Store版は配信停止
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判定
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良作
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ポイント
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『MOTHER』&『ゆめにっき』ライクなRPG システム面は少々前時代的 ストーリーに鬱・ホラー要素がある点に注意
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ホワイトスペースへようこそ。
WELCOME TO WHITE SPACE.
概要
インディーデベロッパーOMOCATが『RPGツクールMV』で開発したRPG。
2014年にトレーラーが公開されると、その『ゆめにっき』や『MOTHER』を思わせる独特な雰囲気から、事前の期待度は非常に高かった。
そして、トレーラー初公開から実に6年が経過した2020年にSteam版が正式リリース。
当初Win(Steam)/Mac版は日本語未対応だったが、発売から1年経った2021年12月16日に日本語に公式対応した。
2022年6月17日にはSwitch/One/XSX/Win(MS Store)版もダウンロード専用で発売。
当初One/XSX/Win(MS Store)版は日本語未対応だったが、発売から約1ヶ月後に日本語対応した。
PS4版も海外では発売されているが、日本では未発売となっている。
2022年11月24日にはFangamerからSwitchのパッケージ版も発売された。
なお、
本作はストーリーに関するネタバレが特に注意されるゲーム
であるが、
考察や二次創作などが国内外問わず非常に盛んであり、動画サイト・ファンアート・百科事典サイトなど各所で重大なネタバレが記載されている為ネット検索する際は要注意。
基本的にゲーム中のストーリーを良く読んでおけば詰むようなポイントはないため未プレイ・未クリアのユーザーは
「鬱・ホラー描写がある」と言うことだけを念頭に置き、ゲームクリアするまで本作にまつわることを一切調べずにプレイする
ことをおすすめする。
特徴
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バトルシステム
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『ドラクエ』や『メガテン』のような昔ながらのよくあるコマンド選択式のバトルが行われるRPG。エンカウントはシンボルエンカウント式。
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他のRPGで言うHPは「ハート」、MPは「ジュース」となっている。
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画面下部には「やる気ゲージ」が表示されている。「やる気」は味方がダメージを受けると溜まっていく。「やる気」は味方全員で共有。
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操作キャラの通常攻撃時に方向キーを入力することで、やる気を消費して「畳み掛け」という特殊な連携技を使用可能。
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ゲームを進めるとスキルで溜めることが出来るようになる。
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感情
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バトル中に特定の技を使用したり食らうと、敵や味方は特定の感情になることがある。
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感情には主に「にこにこ」「いらいら」「しょんぼり」の3種類がある。
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「にこにこ」は運と速さが向上し、クリティカルヒットが出やすくなる一方で、命中率が下がる。
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「いらいら」は攻撃力が上がるが、防御力が下がる。
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「しょんぼり」はダメージの一部をジュースが肩代わりするようになり防御力が上がるが、速さが下がる。
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「にこにこ」は「いらいら」に強く、「いらいら」は「しょんぼり」に強く、「しょんぼり」は「にこにこ」に強い。強い方の感情が弱い感情の方に攻撃すると「惚れ惚れする攻撃」となり、大ダメージを与えることが出来る。その反対では逆にダメージが減る。三すくみとなっている。
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なおこの感情はキャラクターによっては2段階ないし3段階までかけられる。
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特定の状況下では「びくびく」「わなわな」になることがある。被ダメージが上がる事に加え、上記の畳み掛けや多くのスキルが使えなくなる為早急に回復させる必要がある。
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主要人物の簡易紹介
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オモリ
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本作における主人公。他RPGの主人公同様、無口・無表情なタイプだが、前述した感情システムがあるため、無感情なわけではない。特に「にこにこ」系統の表情はプレイヤーの間で話題になっている。
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ステータスは攻撃力がやや高めのバランスタイプ。武器にピカピカのナイフを装備しており、スキルも「刺す」「切り刻む」など、ナイフを使ったものが多い。
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オモリのハートが0になってしまうと、他のメンバーが生存していてもゲームオーバーとなる。
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ただし、戦闘中ハートを超えるダメージを受けても、必ず一度だけ「オモリは屈しなかった」と表示され、ハートが1の状態で耐えることができる。
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マップ上においてはナイフを使って障害物を除去することが可能。また、ストーリー進行に必要なアイテム「ブラックキー」は彼を先頭にしないと集められない。
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オーブリー
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パーティーメンバーの1人目。ケルとはしょっちゅう喧嘩をする。
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パーティーメンバーの中では唯一の女性キャラだが、体力・攻撃力に秀でるゴリゴリのアタッカータイプ。ただしジュースは少なめ。
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マップ上ではバットで大きめの障害物を破壊することが可能。
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ケル
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パーティーメンバーの2人目。ヒロの弟。
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戦闘では素早さが高い反面体力と防御力が低い典型的なスピードタイプ。武器はボール。
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マップ上ではボールを投げて、スイッチなどを押すことができる。
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ヒロ
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パーティーメンバーの3人目。主要人物の中ではマリに並んで年長。
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いわゆるヒーラー(回復役)であり、料理やおやつを作るスキルが使用可能。一部のスキルは戦闘外でも使用可能で、回復アイテムの節約も出来る。
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攻撃力と素早さが低い反面体力と防御力が優れており、自らを囮にするスキルと合わせてメンバーの盾としても活躍できる。
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蜘蛛が大の苦手という設定を持っており、蜘蛛型の敵とエンカウントすると上記した「びくびく」状態となる。
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マップ上ではカリスマの高さを活かして、特定の人物を説得したり、ショップの購入金額を下げたりすることが出来る。
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マリ
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オモリの姉であり、いつもピクニックをしている。
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彼女のバスケットが本作におけるセーブポイントとなっており、回復ポイントとしてお菓子や料理も一緒に置いてあることも多い。お菓子を食べたりピクニックをしたりするとパーティーメンバー全員のハートとジュースが全回復する。
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セーブ・回復ポイントを兼ねている性質上、どこのどんな場所であろうがオモリたちよりも先回りしてピクニックシートを広げて待機しているため、人によっては若干シュールに感じるかも……?
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彼女に話しかけるとサブクエストのクリア状況の確認をすることが出来る。
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バジル
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お花を育てるのと、写真を撮るのが好きな男の子。
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物語序盤に彼が失踪してしまい、彼を探すためにオモリたちの冒険が始まることになる。
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なおSwitch/One/XSX/Win(MS Store)/PS4版はSteam版より以下要素が追加されている。
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コンソール版の追加要素。少しネタバレ注意
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16:9の画面比率に対応させるために画面の左右に枠が追加。
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シーンによって自動的に切り替わる「デフォルト」の他にオモリや彼の友達をモチーフにした枠にも切り替えられる。ただし一部のステージでは強制的に専用の枠に切り変わる。
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ボス戦が2つ追加
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ヒロ社長
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オモリルートの「あと1日」の時にサイゴノ楽園の鮫羽田社長のオフィスに行くとサイゴノ楽園の社長の座を譲り受けたヒロが
敵側に寝返り
オモリ達に襲い掛かってくる。
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鮫羽田社長戦同様ワニエージェントが護衛となるが、鮫羽田社長と違いワニエージェントは倒すと復活せず(ただし非常にタフ)、ヒロ自身も大ダメージの攻撃を仕掛けてくる。また毎ターンハイリスクハイリターンな「取引」を仕掛けてくる。
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回復・メンバーの盾役になるヒロがパーティーから抜ける為、戦闘前にしっかりレベル上げと回復アイテムの準備をすることが望まれる。プレイヤーの腕にもよるが、最大レベルのLv.50でもかなり手強い相手である。
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バジルとのボスラッシュ
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オモリルートの「あと1日」の時にハンフリー体内でチャレンジできるボスラッシュをクリアするとオモリとバジルの2人でボスラッシュにチャレンジできる。
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本来非プレイヤーキャラであるバジルを操作できる貴重な機会である。
またボスラッシュの舞台に行く前にバジルとタッチした時の写真も見ることが出来る為是非とも確認しておこう。
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基本は通常のボスラッシュと同じだが通常のボスラッシュの最後のボスを倒した後に
上記のヒロ社長やPC版最強のボスをも越える戦闘力を誇る新ボス
と戦う事になる。そのボスが誰なのかは是非とも自分の目で確認しよう。
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なお新ボスとの戦いで負けた場合は最初からではなく、新ボス戦からのコンテニューが可能。
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通常のボスラッシュと違い1度きりのイベントでクリアするとそのセーブデータでは二度と挑戦できなくなる。後でまた確認したい場合はセーブデータを分けておこう。
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ヘッドスペースのバジルとブラックスペース2の写真がいくつか追加されている。
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評価点
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幻想的な世界観で繰り広げられる少年少女の冒険劇。
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本作の作風を一言で例えるなら『ゆめにっき』+『MOTHER』といった感じ。
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一見、全年齢向けのように見えて、時折ブラックなネタが挟み込まれる本作の作風は『MOTHER』を始めとした俗に言う「黒い任天堂」のような作品群を思い出させてくれる。
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特に終盤のとあるエリア「ブラックスペース」はまさに『ゆめにっき』そのものと言ってもいいほどの狂気と不可思議さが溢れる世界観となっている。
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オモリ以外のパーティーメンバーはハートを0にされるとパンのトーストとなってしまい、蘇生アイテムもヨミジャムというジャムを塗るものだったりと、所々にユーモアが垣間見えるのも魅力。
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いわゆる「小ネタ」や「寄り道要素」も非常に多い。調べられるオブジェクトやNPCが非常に多く、その説明文や会話も多種多様。
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エンカウントした敵は「大事なもの」の「エネミーのすべて!」に記されるがその内容もユーモアに富んでいて読み応えがある。
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後述するようにホラー要素もあるにはあるが、明るい雰囲気の場面の方が多く、全編にわたって鬱々としたゲームではない。
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鉛筆画風のイラストで描かれた温かみのあるグラフィック。
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カットシーンや戦闘時のグラフィックは鉛筆画のようなイラストで描かれており、前述した世界観の味付けに一役買っている。
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戦闘時のグラフィックは前述した感情システムのために、ほぼ全ての敵キャラに3種類の感情のグラフィックが用意されているなど、作り込みも半端ではない。
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演出面・BGMも高評価。
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ボス戦のBGMはアップテンポで気持ちを昂らせてくれるものが多く、評価が高い。
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中でも「World's End Valentine」「Underwater Prom Queens」「BREADY STEADY GO」などは良曲とのもっぱらの評判。
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グッドエンドで流れるBGM「DUET」も、それまでのストーリーと流れる場面での演出も相まって、高く評価されている。
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初公開時のトレーラーに使用されていたbo enの「My Time」もあることをすると聴くことが出来るが、かなり衝撃的な場面で流れるため、否応にも印象に残ること間違いなし。
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非常に丁寧な日本語訳。
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「OTHER WORLD」を「イセカイ」と訳したり、「Mr. JAWSUM」を「鮫羽田社長」と訳したりと、海外産作品であることをなるべく思わせないような日本語訳がされており、ゲームの雰囲気にすんなりと入り込める。
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他にも、原語では「THE DUNGEON(地下牢)」だったものを登場人物の名前に合わせて「スイートダンジョン」に名前を変更するなど、中々の手の凝りよう。
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フォントがゲーム全体の雰囲気に合わせたものになっており、違和感なくゲームを楽しめる。
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文字フォントだけではなく、一枚絵が表示される場面で書かれている文字なども日本語に訳しており、非常に丁寧。
賛否両論点
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鬱・ホラー描写について。
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ゲーム起動時に「うつ病・不安神経症・自殺の描写が含まれる」との注意文が表示され、発売前のトレーラーやPVでもそれらを仄めかす描写はあったため、強く批判する人はいないだろうが、ホラー演出がいくつか存在するため、苦手な方は注意。
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更に、本作にはホラー演出とは別に精神的に抉ってくるような台詞や演出もあるため、いわゆる「鬱ゲー」としての側面も持ち合わせている点にも留意。
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鬱要素の具体例(少しだけネタバレ注意)
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評価点でも挙げた「ブラックスペース」だが、『ゆめにっき』のような意味不明さに加えて、直接的な猟奇表現や特定のキャラに対するいじめ・虐待描写などが含まれるため、人によっては悪趣味に感じる可能性もある。
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エンディングもマルチエンディングとなっているのだが、グッドエンドでもスッキリ終われるような内容ではなく、それ以外のエンディングも後味の悪いものとなっている。
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他にも現実世界におけるオーブリーの境遇やラスボス戦におけるラスボスの台詞など、細かい鬱描写が散りばめられている。
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ただし、誤解のないように重ねて強調しておきたいのが、本作は決して鬱展開やホラー演出だらけの鬱々とした暗くておぞましい作品ではないことである。
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あくまでも「"部分的に"鬱展開・ホラー演出が含まれる」というだけであり、物語の大筋は前述したような『MOTHER』ライクな、少年少女たちによる青春モノであることだけは理解してもらいたい。
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本作全体を通して見た場合、ホラー・鬱描写は全体の2~3割程度。これを「多すぎる」と取るか「丁度良い塩梅」と受け取るかはプレイヤー次第。
問題点
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システム周りがやや前時代的。
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RPGツクールで開発したせいなのか、もしくは発表から発売まで時間が掛かったせいなのか、全体的なシステムが2020年発売のゲームとして見ると少々古臭い。
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本作のセーブは特定の場所に配置されたバスケットを調べることで行うことができる。
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逆に任意の場所でのセーブはできず、オートセーブも搭載されていない。何かしらのトラブルでゲームが強制終了した場合などは大幅な巻き戻しを食らう可能性もあるため、こまめなセーブが求められる。
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マップの広さの割にセーブポイントへのアクセスが悪いこともあり、中々ゲームを中断できないということもある。
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バトルも演出面に力を入れている分、若干テンポが悪く、レベリングをする際などに少々煩わしさを感じることもある。
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マルチエンディング式であり、ルート分岐が存在することの説明がない。
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マルチエンディングとルート分岐が存在することはストアページなどでは明示されておらず、初見プレイではセーブデータを一つのファイルに上書きしてしまう可能性もある。
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しかも、本作のセーブファイルは数が多いとは言えず、ルート分岐が存在すると事前に知っていても、どこで分岐するのかわからない初見ではセーブファイルを圧迫しやすい。
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本作のゲームクリアまでの初見での想定クリア時間は15~20時間程度。ルート分岐のために最初からやり直そうとすると、骨が折れる。
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「強くてニューゲーム」のようなものもなければ、バトルの高速化やメッセージ・イベントスキップのような周回プレイ用の便利な機能なども非搭載。
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視認性の問題点。
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メッセージウィンドウが小さい上に、文字のデフォルトサイズも小さめなため、画面に近づかないと文字が読みづらいことがしばしばある。
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文字フォントも作風には合っているのだが、全体的に小さく丸っこいものであるため、やや読みづらい。
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とある場面では画面全体が暗くなり、文字はおろかマップ上のキャラクターやオブジェクトすら見えづらくなることも。
総評
『MOTHER』や『ゆめにっき』を思わせる独特な雰囲気とストーリーが売りのRPG。
温かみのあるグラフィックや幻想的な世界観、少年少女たちによる冒険劇など、全体を通して一つのRPGとしての出来は上々と言えよう。
ただし、2020年発売のRPGとしては前時代的な部分が多く、現在の観点では不便に感じる点が多少あるのはマイナスポイントか。
また、日本でのレーティングが
CERO:C(15歳以上対象)
となっているように、それ相応の鬱展開やホラー演出も含まれる点も留意しておく必要がある。
コアなファンを多く抱えていることからも分かるように決して出来の悪い作品ではないため、前述したホラー演出と前時代的なシステムの2点に抵抗感がない、もしくは作風として受け止められる方であれば、是非とも『OMORI』の世界を堪能してもらいたい。
余談
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2023年11月23日、本作が「月刊アフタヌーン」でコミカライズされることが発表された。
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2024年6月25日に連載開始。作画は此糸 縫氏が担当している。
最終更新:2024年08月09日 19:31