戦場のフーガ2
【せんじょうのふーがつー】
ジャンル
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シミュレーションRPG
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高解像度で見る
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対応機種
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Nintendo Switch Xbox Series X/S Xbox One Windows 7~10(Steam / Epic Games Store / Microsoft Store) プレイステーション5 プレイステーション4
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メディア
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ダウンロード専売
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発売・開発元
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サイバーコネクトツー
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発売日
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【Switch/XSX/One/Win/PS5/PS4】2023年5月11日
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定価(税抜)
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通常版: 4,180円 デラックスエディション アップグレードパック: 2,200円 デラックスエディション: 6,380円 アルティメットエディション :7200円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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IARC:12+
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判定
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賛否両論
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ポイント
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初のナンバリング 前作をベースに大幅に改善 ストーリーはさらにシリアス化 分作展開により続編ありきの終わり方
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リトルテイルブロンクスシリーズ テイルコンチェルト / Solatorobo / リトルテイルストーリー
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戦場のフーガシリーズ 1 / 2
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あらすじ
あの絶望は通過点に過ぎなかった
かつて巨大戦車タラニスと供に世界を救った子どもたちは
平和な日常を取り戻していた
しかし、子どもたちの半数を乗せたタラニスが突如、
謎の暴走を起こし再び戦火へと巻き込まれていく
タラニスに取りこまれた仲間を救うため、
新たな仲間「バニラ」とともにかつての宿敵タラスクスに乗り、後を追う子どもたち
その先に待ち受ける悲劇が、少年を復讐者に変える
(公式サイトより引用)
概要
『戦場のフーガシリーズ』2作目であり、『リトルテイルブロンクスシリーズ』全体を見れば通算4作目。
前作のトゥルーエンドから1年後を描いた物語であり、ストーリーを引き継いだナンバリングは本作が初である。
ゲームシステムの特徴
新要素
新キャラクター「バニラ・マスカット」
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本作から新登場したガスコ大統領の娘であり、前作でも登場したマスカット中尉(カネル・マスカット)の妹でもある11歳のネコヒトの少女。母性溢れるハンナとは対照的な明るく活発なネコヒトのお嬢様であり、前作におけるブリッツと同様、本作の鍵を握るキーキャラクターでもある。
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物語の最序盤、父であるシェイン大統領がタラニスの暴走に巻き込まれ命を落としてしまい、復讐のためマルト達の乗るタラスクスに同乗する事になる。とはいえ復讐心を剥き出しにするといったおぞましい態度をする事は無く、御令嬢育ちという自身の境遇を気にしつつ他の子供と不器用ながらも対話しようとする真面目さが微笑ましいキャラクターである。
+
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ゲーム終盤のネタバレ
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中盤から、元復讐者だったジンの合流や死んだと思われていたハンナを救出しようと奮起する他の子供達といった状況を前にバニラは復讐に対する考え方を改めるようになるが、終盤の分岐イベントで黒幕の策略に嵌り命を落としてしまう。
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しかしプレイヤーの努力次第では前作のブリッツと同様、この後の彼女の運命を変える事も可能。条件を満たせば、
死自体が無かった
と、とある人物が歴史改変し、他の子供達と共に無事に復帰。ラスボス戦で黒幕の復讐劇を終わらせるべく奮戦する事になる。
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進撃パートの新規マス「飛行船サービス」
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前作と大きく異なり、戦争が一時停戦となった恩恵でガスコに飛行船の技術が発達した。そのため、前作で廃止された『Solatorobo』以来の資金の概念が復活。特定のマスを通過すると資金を消費して様々なサービスを受けられる様になった。
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サービスは様々な素材やアイテムを購入出来る「
ショップ
」の他にも自機を指定マスに移動させる「
運搬
」、指定した空白マスを回復マスに変化させる「
補給
」、資金を消費して敵のマスを爆撃(排除)する「
空襲
」があり、戦略性が向上した。特に運搬は侵攻ルートが一方通行なシリーズにおいて貴重な経験値稼ぎとなる。
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様々な獣人達との交流が楽しめる「ジャッジメントチャンス」
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主人公が子供達の中でも年長格であるマルトに固定された影響で、マルトを軸にした様々な獣人達の交流を楽しめる様になった。
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言うなれば前作のシミュレーションに『Solatorobo』以来のADVパートが追加されたと言えば分かりやすく、選択肢によってバトルが有利になる「リーダースキル」(新要素の欄で後述)が習得できる。
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困っている獣人達の後押しをする様な交流から、「肉が多くて困っているんだ」→「
肉を減らすのを手伝う
」等、コミカルな物まで様々。進撃パートでも特定のマスで交流イベントが発生する。
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戦況を大きく変化させる「リーダースキル」
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上述の「ジャッジメントチャンス」で回答した選択肢によってマルトの固有スキルを習得出来る新システム。選択肢は大きく分けて「共感」と「覚悟」の2つのカデゴリに分かれており、前者は支援系のスキル、後者は攻撃系のスキルを習得できる。習得したスキルは戦闘中にランダムで発動する。
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様々な新要素が追加された戦闘パート
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数ターン後に攻撃を仕掛ける新スキル「ボム」が追加された。
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前作で単体攻撃だった砲弾系アイテムは全体攻撃系に変更され、キャノンやグレネード担当の子供達でも装甲が削りやすくなった。
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数ターン後に同時に攻撃を仕掛ける敵機体の新技「ユニゾンアタック」や自機をスリップダメージ状態にする新たな状態異常「アシッド」が追加。敵機体の攻撃が猛威を振るう。
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ボス戦の戦況を揺るがす「ブレイクチャンス」
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ボス戦において一定数HPを削ると「ブレイクチャンス」が発生し、マルトとボスである搭乗者の対話が始まる。正しい選択肢を選ぶと搭乗者が動揺し、一時的に行動不能に出来る。
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「ジャッジメントチャンス」同様にコミカルな選択肢からシリアスな選択肢まで幅広く、間違った選択肢を選ぶと、行動不能に出来ずに戦闘が続行してしまうので、プレイヤーの判断力が問われる。
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タラスクスに搭載された新たな「ソウルキャノン」と新兵器「マーナガルム」
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前作のタラニスに搭載されたソウルキャノンとは大きく異なり、タラスクスに搭載されたソウルキャノンは「
ボス戦において機体のHPが半分(例外あり)を切ると、ランダムに乗組員の子供達がチャンバーに転送され、20ターン以内にボスを撃破しないと強制発射となる
」と言う高難易度仕様に変更された。
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前作において任意で使用しない限り、ゲームシステム上あまり意味をなさなかったソウルキャノンが今作では猛威を振るう事となったため、ボス戦での緊張感が増した。
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新兵器マーナガルムは、平たく言うと「犠牲を排除したソウルキャノン」であり、任意でチャンバーに転送する子供達を選択、敵兵器全体に強力な攻撃を放つが、転送した子供達は次のインターミッションまで戦闘不能になるというもの。
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通常のソウルキャノンよりも犠牲にならない分、扱いやすくなったと言えるが、戦闘不能になったキャラは戦闘後に経験値が入手できない等のペナルティがある。
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新たに追加された探索パートの新要素
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今作から弾丸の属性を追加する雷の結晶と火の結晶が配置された。弾丸の属性を使い分ける事で遺跡の仕掛けが解くパズル要素が追加され、遺跡で入手した素材を売却を出来る様になった恩恵で(前作において)淡泊だった探索が実用的なものとなった。
2周目以降に解禁される『禁断のルート』
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飛行船サービスの『運搬』コマンドから行ける1周目では通れない『禁断のルート』が追加された。言うなればやり込み用の隠しルートであり、難易度の高いバトルが展開されるが、撃破すればレア素材が入手出来るので、やり甲斐のあるものとなっている。
評価点
更に洗練されたゲームバランス
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前作においてハードルの高かったゲームシステムが新要素の導入により大幅に改善され、戦略の幅が広がった。
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それらの新要素は続編ゲームでありがちな「安易な改変の影響でバランスを崩壊させたり必要性のない蛇足感を生み出している」と言うものではなく、前作のシステムとガッチリ嚙み合っており、前作のシステムを引き継ぎつつ順当に発展させた続編として相応しいものに仕上がっている。
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大幅に改善するだけではなく、難易度も前作以上に歯応えのあるバランスに仕上がっており、敵機体の行動パターンが前作以上に複雑なものとなった。
正当続編と言うべき苛烈極まるストーリー展開
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それまでのシリーズ作はナンバリングが使われていないため、続編であっても「同一世界観の共有のみ」と言う軽い繋がりだけで直接的なストーリー上の繋がりは無かった(『テイルコンチェルト』と『Solatorobo』の関係等)。しかし本作はシリーズ初のナンバリングだけあって、前作の正統続編と言うべきものに仕上がっている。
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前作のエンディングで僅かに登場した謎の人物を軸に新たな戦いが始まり、
前作を凌駕する重く苦しいストーリーが全編に渡って展開される。
特に序盤で起きるとある人物の死は意表を突く衝撃展開であり、喪失感に陥ったプレイヤーも少なくはないはず。
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ただし、ストーリー展開自体は終始陰鬱なものに留まらないものとなっており、前作で欠如していたのコメディ色の強い獣人達との交流や激闘の末に芽生える強敵との友情など、プレイヤーの気持ちを胸熱にさせる展開も数多く用意されている。
一新された数々のBGM
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前作からBGMが新曲へと差し替えられ、曲数は前作の約50曲を上回る約80曲分を収録。曲の流用は12章のみとなった。新曲自体も前作とは毛色の異なり、死線を乗り越えた子供達の逞しさが伝わる名曲揃いである。
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特にエンディング曲である「
涙のチカラ
」は主人公のマルトがとある人物に対して心情を綴った穏やかな曲であり、文字通りトゥルーエンドを迎えたプレイヤ―の涙腺を崩壊させる。
3Dモデルの改良
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インターミッション中の3Dモデルは前作から改良され個性が増した部分がある。以下はその一部例。
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走りモーションの追加
:前作での走りモーションは歩きモーションを加速させただけであったため、ダバダバ走りが基本だった。今作では走った時用のモーションが追加されており、キャラクター毎に走り方の違いがあるなど、よりキャラクターの個性やかわいらしさが増した。
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おまけコスチューム
:前作のセーブデータがあれば『
思い出の服
』をオプションから選択する事が可能であり、前作の服装に戻す事が出来る(キャラ自体のモデリングは変化無し)。前作プレイ済のファンにとってささやかではあるが嬉しいファンサービスである。
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マルトの目
:ある事情から序盤~中盤にかけて立ち絵やカットインのハイライトが消えるマルトだが、3Dモデルにもそれがしっかり反映されている。
各種イベント演出の強化
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本作では前作から演出面が強化された部分がいくつもあり、アップデートによりライブラリに追加された項目「イベントリスト」で後からでも視聴ができるようになった。加えて、未解禁のイベントについても解放条件が記載されているため達成しやすくなっている。以下はその一部例。
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ソウルキャノン演出の強化
:前作ではソウルキャノン発射時に汎用のデモ演出が流れるのみだったが、今作ではキャラクターごとに専用の演出が追加。発射直前に最期の独白が挿入される上、ステージクリア後に今回の死亡者・累計死亡人数・生存者に応じたデブリーフィングが流れる(第10章~第12章は除く)などソウルキャノンによる犠牲の凄惨さがより強調されるようになった。姉弟・親友の片割れのどちらが先に亡くなったかでも差分があるが、デブリーフィングが流れるのは第4章~第9章までの最大6回であり、さらにそこにランダム要素が加わるため、子供達にとって酷な話ではあるがライブラリコンプのためには周回が必須になる。
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各章間の会話イベント
:前作ではステージクリア後に村に立ち寄った際、物々交換などを淡々とするだけだったが、今作では港への到着時に生存者に応じた簡単な会話シーンが追加。出航前にはヌーヴェルン卿とマルトのやり取りが毎回行われるなど、戦闘以外での会話シーンについても力が入れられている。
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全滅エンドの強化
:前作の全滅エンドは通常エンドからガスコ軍の会話内容が変わる程度だったが、本作では専用のエンドデモが用意されている。エンディングリストにもしっかり登録される他、ここでしか見られない一枚絵もあるため、ライブラリコンプを目指すのであれば全滅エンドの挑戦は必須となる。
子供以外の同行者の追加
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前作は子供達が主役という事もあり、タラニスに搭乗するのは子供達のみに留め、大人は1人も乗せないという措置が取られていたが、本作では子供達以外の同行者も追加され、戦車内部の賑やかさが増した。
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本作ではラジオの女やジャンヌに代わり、なんと前作でラスボスを務めたハクスがタラスクスの情報知性体 (AI)として再登場。前作の戦いで肉体を失いながらもヴァナルガンドのコアに遺された情報を基に記憶と知識を引き継いだAIとして誕生したという流れであり、ハクス本人ではなく加えて声(と顔アイコン)だけの出演になったとはいえ、
フルボイス化
した上でレギュラーキャラへの昇格を果たした。
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その他の同行者
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なんと前作の第3章で退場したきり音沙汰が無くなっていたベルマン帝国の老将、バウムとシュトーレンが第2章からタラスクスに同行(というよりは拘束された)。シリアスムードな本作における貴重なコメディリリーフを担当する。また、3Dモデルは作られていないものの、「
倉庫からチュートリアルの役割を兼ねた3択クイズを出題する(正解すると経験値習得)
」と言う妙な役回りも担当している。
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子供達のストーリーには深く関わってこないものの、老いてもさすがは将校。物語の裏で戦車をなんとか本国に持ち帰ろうと企てるなど抜け目のない部分も見せる。
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ただし、前作同様の狡猾さを見せるのは序盤のみ。子供達との衝突を経て次第に改心していくのも本作の魅力であり、最終盤の総力戦では大型飛行船に搭乗して参戦すると言う熱い展開を迎える事となり、扱いが悪かった帝国側のキャラにしては見せ場が多い。
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同行者以外にも道中に設置されたイベントマスやマスカット中尉との通信など、敵以外で外部の大人とやり取りをする場面が増えた。
賛否両論点
トゥルーエンドを催促される
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本作では新キャラクター、バニラを仲間にした時点でトゥルーエンド達成のヒントとして子供達との親愛度を上げるよう催促するアナウンスが流れるため、自然とトゥルーエンドを達成しやすくなっている。そのため、アナウンスに従い、わざとらしい選択肢を選択しなければ簡単にトゥルーエンドを達成できてしまう(ソウルキャノンは別として)。
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難しければ良いと言う訳でもない(実際、前作はそれはそれで批判があった)が、本作は逆にあまりに簡単過ぎて達成感がない。
戦略性が増した反面、軽快さは減少したボス戦
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前作のボス戦は戦力が発展途上の1周目だと苦戦を強いられる事が多いが、周回を重ね強化をしていく事で軽々と倒せるようになっている。必殺技ゲージを3分の1上昇させるチットチャットといったスキルもあり、極めれば初手必殺技連発でラスボスを10ターン以内に撃破する事も可能だった。
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今作のボス戦の場合、部位破壊を行うと一定時間、ボス本体が攻撃可能になるといったものが多いため、どの攻撃特性を持つ部位から破壊し、どのスキル・必殺技をいつ使用するかといった戦略的な立ち回りを展開していく事になる。
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逆に言えば前作のように初手から必殺技を連発するゴリ押し戦法が出来なくなってしまっている。加えてスキルからチットチャットが撤廃されたのも大きく響いている。周回プレイの時には少々面倒臭さを感じさせられる事になるだろう。
飛行船サービスの1つ『空襲』が便利すぎる
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本作から追加された飛行船サービスの1つ『空襲』は特定の料金を払って指定のエンカウントマスを排除すると言う仕様になっているが、逆に言えば
料金さえ払えば指定したマスを全て排除出来る
と言う事である。これにより大幅に強制エンカウントの煩わしさが改善されテンポが良くなったものの、デメリットとして料金自体は高額である事と協力ゲージが溜まらない等が挙げられる。
ソウルキャノンに対する救済措置の多さ
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起動してから20ターン後に強制発射されるようになったソウルキャノンだが、カウントが行われるのは味方ターンのみのため、ボス戦序盤に起動さえしなければかなりの猶予がある事になる。また、救済措置としてマーナガルム以外にもAPと引き換えにチャンバーに祈るコマンド(最大3回)がインターミッションに実装されており、これをする事でソウルキャノン起動の判定となる残りHP値が減少する。このように救済措置が多く存在するため、ソウルキャノンに対する緊張感が薄らいでしまう。
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前作では「ソウルキャノンのデメリットが重すぎて、誰も使わない」という問題点があったため、「軽いデメリットでソウルキャノンより使いやすいシステム」を用意したものと思われる。が、そもそもの「ソウルキャノンを使わない」と言う問題点が解決していない。
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一方のマーナガルムについて
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生命力を使用して発射するという設定から「使用したらキャラクターの寿命が縮まってトゥルーエンドに影響するのでは?」と深読みするプレイヤーも少なくはないが、実際には発射数とエンディング条件に一切の関係は無い。実に拍子抜けである。なお今作の設定を見るに前作のタラスクスにも発射エネルギー要員が搭乗していたはずであるが、それについて触れられる事は無い。
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一部の不自然な描写
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本作の冒頭は『子供達がガスコ軍の招集を受けてタラニスの調査に参加する』⇒『調査のために乗り込んだ半数の子供達がタラニスに監禁される』⇒『残った子供達はガスコ軍が秘密裏に格納していたタラスクスに乗り込んで追跡する』と言う流れだが、前作の戦争で多大な被害を受けた子供達がタラニス調査のために再び招集されるのは展開的にやや不自然であり、子供達の親族でさえ誰も咎めないのは保護責任能力の欠如だと感じなくもない。また、ガスコ軍が何のためにタラニスの調査を行っているのかも全く説明がなく、子供達の半数がタラニスに入った時に残りの子供達が外でマスカット中尉の質問を受けていたのも謎。前作の時点でタラニスのテクノロジーを全く把握していない子供達に質問攻めで問い詰めるのも無理な話であろう。
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危険な兵器を丁重に保管しているガスコ軍の行動自体も前作の失態をあまり反省していない感が強く、ベルマン帝国の兵器タラスクスを秘密裏に保管している事に関しては全く説明がない。停戦協定を結んだと言えども、他国の兵器を勝手に回収して軍法会議で訴えられたりしないのかとツッコミ所を感じなくもないが……。
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ちなみに、漫画版での該当シーンではバニラがタラニスを追いかけたいのかを子供達に聞くが、マルトは『
え?ああ、もちろん、だけど足がー
』と返答している。発言的に『徒歩じゃ無理だから何か移動手段が欲しい』意味合いだと取れるが、絶望的な状況下での発言にしては些かシュールに感じる。
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本作の敵機体「
ベルマンガイスト
」は前作で大破したベルマン帝国の機体がベレノスの再生能力によって復活したと言う衝撃設定で再登場する。
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AIハクス曰く「ベルマン帝国の汎用戦車を模しているが、生体反応が無い無人機」との事。ストーリーの中盤で内臓のような肉塊と融合したグロテスクな強化版や新機体が出現するが、ライブラリで語られているベレノスの能力からして生命の無いゾンビのような存在と思われる。ただ、何故中盤以降からそのような無人機が出現したのかはゲーム中では全く説明されない。
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商業船が提供する様々な有料サービスの内、空襲については
敵部隊を一瞬で壊滅させる空襲を行う
という軍隊並みの戦闘力を発揮する。
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敵はガスコ軍が苦戦する程の相手なのだが、その強大な敵部隊を武装付きの商業船が一瞬で壊滅させるのは矛盾があると感じなくもない。
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商業船の主は2章の序盤で子供達が助けたイヌヒトの男性だが、この商業船の主である男性、ベレノスの侵攻が激化した10章の後半から全く姿を見せなくなる。撃墜されたのか、商売が出来なくなって早々と避難したのかは分からないが、やや投げっぱなし感が強い。
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当のガスコ軍については上層部がタラスクスとタラニスの追跡に躍起になっているものの、概ね動向を見守るのみで補給や援軍、運搬といった直接の支援や援助は第12章になるまでしてこない。マルト達が支援を待たずに追跡を続けている事に加え、軍が街の復旧やベルマンガイストへの対応で手一杯なのかもしれないが、前作に引き続き相変わらずの影の薄さである。
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章の合間に立ち寄るカフェが
どう見ても酒場にしか見えない
。流れから察するに13歳のマルト1人が立ち寄っていると思われるが、飲酒規制のためのせいか無理にカフェに名称変更した感が強い。
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10章終盤〜11章序盤の展開
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通常のルートでは黒幕の洗脳に掛かったバニラが爆弾の箱を開けてエキゾ・タラニスの動力部分ごと自爆する展開を迎え、直後に黒幕が搭乗するベレノスの攻撃で一瞬にして子供達が命を落とすという何とも救われない結末を迎えてしまう。
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その後、マルトが目が覚めると、そこはマエストロのいる深層域であり、
マエストロはタイムリープにより10章終盤で起きた事を全て帳消しにする+若干の歴史改変をする
という力技を見せ、ベレノスは突如崩れた天井に埋もれたタラニスを見逃してその場を離脱。バニラ生存ルートでは爆弾の惨事も無かった事になる。
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この展開自体はバットエンドを回避するために努力して来たプレイヤー(とマルト)が報われる救いのある展開であるが、何故天井が崩れたのかは不明で、これまでのタイムリープであれば記憶が巻き戻されているはずの子供達も記憶が曖昧で良く覚えていないと若干不自然な素振りを見せる。加えてバニラ生存ルートでは肝心の爆弾の箱がどうなったのかは全く説明が無い。
げる展開である事は確かである。
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マルトの復讐について
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作中第3章でとある人物の死により
目のハイライトが消える
ほどの復讐鬼と化すマルトだが、6章でジンと再会した時に「
死んだ( )の思いを忘れたら本当に( )が生きた証まで死んじまうぞ
」と諭される。復讐モノでよくある所謂「死んだアイツが喜ぶのか」的なベタな説得だが、マルトはこれであっさり改心。
彼の復讐は唐突に終わってしまう
。
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マルトとジンのキャラクター性を深く掘り下げる印象的なイベントであり、その後は宿敵であるジルとの和解に向けて走り出す主人公へと成長していくのだが、復讐三部作を謳っているシリーズにおいて主人公がたった3章で復讐を放棄するのはいささか早すぎると言える。
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ただ、復讐要素についてはバニラが引き続き担当するため、復讐モノとしての路線から脱線していないのは事実である。
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一部のキャラの扱いについて(ネタバレ注意)
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本作の黒幕であるカイエンは前作7章で行われたネコヒトの実験で妻と娘を殺害されたと言う経緯で復讐者に闇落ちした事がドキュメントで明かされている。序盤から中盤までは存在を示唆するのみで全く姿を現さなかったが、終盤で唐突に登場し、
1年前に大統領一家の乗る車を呪術で爆破して死んだシェインと替え玉で入れ替わった
と言う衝撃の事実を明かす。大統領に扮した彼は真の黒幕の指示で復讐のためにベレノスのシステムを掌握する事になるが、終盤で唐突に現れて事件の真相をペラペラ喋りだすのは些か詰め込み過ぎな感が強い。
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中盤で写真が登場する事で初めてその容姿が明らかになるのだが、終盤に敵対した際の立ち絵が流用されているため、その悪役顔からあからさまに黒幕だと察する事ができる。第11章のエンドカードではかつての優しい恩師だった頃の姿が描かれているので、もう少し考慮する事はできなかったのだろうか。
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復讐のためなら手段を選ばない狡猾さを持つ強烈なキャラである故に終盤で急に目立つ様になり、洗脳したバニラを死に追いやるなど悪役としての存在感を放つようになるが、プレイヤーからすれば終盤で唐突に登場したポッと出の悪役キャラである事には変わりなく、感情移入しにくいであろう。
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更に補足すると、彼の存在は真の黒幕の唆しで復讐に走った噛ませ犬にしか過ぎず、悪役としては尊大であるものの、どうにも小物感が強い。
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前作のヒロイン扱いだったハンナは暴走したタラニスに仲間達と共に監禁された挙句、第3章で命を落とす衝撃的展開になる。しかも魂はAIハクスの様に敵兵器であるベレノスにAIとして同化してしまい、
万が一ベレノスが破壊されてしまうと魂ごと消滅してしまう
という絶望的な状況に立たされてしまう。
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しかし、
ハンナが復活するのは全てが終わったトゥルーエンドのみ
。新キャラクターであるバニラは実質的なハンナの代替えであり、本作ではプレイアブルから降格されてしまった。その弊害で子供達の中で唯一新規の3Dモデルが実装されていない。
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クリアしても残る多くの謎
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漫画版「鋼鉄のメロディ」で先行登場した謎の人物マエストロと似た容姿のヌーヴェルン卿など数名はゲームをクリアしても謎が多く残る人物である。多くの伏線を回収しないまま今作は一旦締め括られるため、プレイヤーは大いに焦らされる事になるが、その分、彼らが今後の展開を盛り上げてくれる事には間違いないはずである。
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マエストロとヌーヴェルン卿
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マエストロは本作でも「深層域」と呼ばれる未知の空間にマルトを呼び出し意味深な助言を与える謎多き人物。容姿は赤い燕尾服にシルクハットを被り、顔はペストマスクで隠しているが、彼のストーリーの上の役割は「
子供達が死に瀕した時にタイムリープを起こして悲劇を回避する
」と言うもので、本作のシステムと直結しているキャラクターとも言える。
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人を喰った様な飄々とした性格を持ち主であり、漫画版においても何度もループを起こして楽しんでるかのような態度を見せる。終盤でもバニラの死を回避するために「
時空に干渉させて貰った
」と謎の手腕を見せるが、一方でカイエンにベレノスを掌握させて復讐を決起させる様に唆したのもマエストロ本人の仕業らしき事がドキュメントで明かされている。立場上、敵か味方かは本作の時点では判明しないが、謎のままである。
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ヌーヴェルン卿は人気マンガ「シューカの冒険」を子供達に無償で配布している人物であり、自身も作品内で登場するヌーヴェルン卿のコスプレをしてマンガ新聞を配っている。マエストロ同様にスーツを身に着け仮面を付けた謎の男であるが、飄々としたマエストロとは対照的に紳士的で落ち着いている性格であるため、共通点があっても同一人物かどうかは本作の時点では判明していない。
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しかし、
物語の中盤から「シューカの冒険」の作品内の展開が子供達の冒険と被ってくるようになり、マルトに展開を注視するよう薦めるという不可解な行動を見せる
。子供達の冒険を全く知るはずもない彼が何故知っているかは謎であり、前作において遠くから子供達を見守る存在だったマンガ新聞の関係者が一転して子供達の行動を監視している様なマンガを勧めてくるのは非常にホラーである。
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2周目を達成した後に解禁されるドキュメント「ある男の静かなつぶやき」では、旧人類消滅から逃げ延びた謎の男が音も無く絶対零度の闇の大地から目覚め、何かしらの計画を企てるという衝撃展開が判明する。男の飄々とした口調からすると恐らくマエストロだと思われるが、漫画の登場人物としてのヌーヴェルン卿や「シューカの冒険」の作者であるルネに「月にこだわる」という共通点がある以上、上記3名のキャラクターは同一人物説が濃厚になってくる。
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前作に登場したベルマン帝国の軍人
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ベルマン帝国の女軍人、フラム・キッシュと思わしき女性が6章とトゥルーエンドで登場しており、大火傷を患いながらも生き残り、ジンに看病されていた事が示唆されている。車輌の出火からどうやって生還したのかは現段階では判明しない。
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2024年7月4日に発売した本作の完全設定資料集には開発初期のイメージボードが掲載されており、そこでは彼女がフラムであるとハッキリと記されている。大火傷を負った後にシェットランドの教会のシスターに保護され、ジンの看病を受ける姿が描かれているが、『
ベルマン帝国の軍属だった時の記憶が失われている
』という扱いになっている。何故記憶喪失を患ったのかは明かされていないが、続編にこの設定が反映されるかは現段階では不明である。
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とあるイヌヒト
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とあるイヌヒトについては「鋼鉄のメロディ」に先行登場した人物であり、赤いコートと帽子で身を包み、足に鎖を付けているなど『Solatorobo』や関連作品に登場したカーマインやクイニィを髣髴とさせる容姿をしている。
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本作で彼が登場するのはトゥルーエンド後の1シーンのみであり、雲海へ投棄したはずのタラニスと共に現れただけでなく
マルトの兄
であるという衝撃的事実が発覚する。
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漫画では何らかの目的のために暗躍するという立場になっているが、この通りゲームで明かされるのは「マルトの兄」という事のみであり、現段階ではマエストロ達以上に素性が分からないキャラクターとなっている。
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一見、無関係そうなボロンについても、絆イベントでマルトの家族の話になると途端に話を濁すという意味深な行動を取っている。
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そして、2023年9月3日開催の『コミティア145』内で販売されたアンソロジー集『リベンジャーズ』で松山洋自ら執筆した『戦場のフーガ外伝 灰色の記憶』で遂に素性が明かになるが……。
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物語の核心を突く衝撃の内容であるため、閲覧注意
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参照画像
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物語はメイが生まれた直後の5年前まで遡り、マルトの兄と呼ばれるイヌヒトの男が家を炎上させ両親を殺害する衝撃展開から始まる。男はマルトの兄と言う身分を捨てて忽然と失踪するが、時は流れて数年後に男は『
アッシュ
』と言う名前で同志と共に巨大兵器に搭乗してマルトが搭乗するタラニスと対峙する事となる。
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この漫画で判明した事実はマルトの兄と呼ばれる男『アッシュ』は何らかの目的で両親を殺害し、後にマルトと敵対すると言う事である。
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本作では明かされなかった彼の内面についても描かれ、『
お前の昨晩こぼしたミルクはもう飲めないよな?それでも地べたを這うようにミルクを啜るか?
』両親を殺害した事を比喩的に例え、恐怖に怯えるマルトを精神的に煽るなど、弟や妹とは対照的に非常に残忍な性格である事が明かされている。また、両親を殺害した事に関しても全て意図的に行ったと言う事を明かし、『
これは決まっていた事なんだよ、随分前からな
』とマルトの出自を知るかの様な節を見せ、何かしらの物語の真相を把握している事がうかがえる。
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マルトの正体について
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マルトは依然として謎が多く、「死に戻り」の際に常人には踏み込めない「深層域」に踏み込み、タイムリープの能力を持つマエストロと対話出来る事は勿論の事、エキゾ・タラニスを生み出す時に発した謎のオーラや漫画版「鋼鉄のメロディ」の第1部終盤で原作ゲームには無かった猛獣の様な姿に変貌したりするなど、他の子供達とは異なる存在であることは明確である。ただし、これらの謎掛けに対するヒントは既に過去2作に散りばめられており、勘の良いシリーズの経験者ならニヤリとする謎掛けである。
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今一つ明かされないタイムリープの謎
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前作ではタラニスのAIであるジャンヌがタイムリープの能力を有していると言う設定だったが、本作では退場したジャンヌに代わり初登場となるマエストロが同じ能力を行使する説明の無い展開となっている。その影響でタラニスに搭乗する子供達は作中でも複数回死亡し、その度に深層域に辿り着いたマルトが『
諦めたくない
』と言う一心だけでマエストロに懇願して死を改変してもらう展開が複数回挿入される。
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タイムリープの詳しい仕組みについてや、黒幕の疑惑が浮上している筈のマエストロが何の目的で子供達の手助けを行うかの様にタイムリープを起こすのかは謎であり、前作と本作の時点でもタイムリープは『便利なお助け能力』程度の都合の良い能力としか扱われず、デメリットについては一切明かされていない。一応、本作のシークレット動画ではマエストロが『もう一度だ!』『やりなおしだ!』と叫んでる事から何らかの陰謀があってループを起こしている事が描かれており、一見子供達にとって有効な復活の手段に見えてもマエストロが仕組んだ悪循環でしかないことが示唆されている。
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問題点
長いチュートリアル
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本作の序盤の目的は『タラニスに捕らわれた子供達を救出する』と言うものだが、1章~3章を費やして救出劇が描かれるので、実質的な物語の進行は4章以降となる。その弊害で3章までは自由度が無く、ボス戦ではタラニスがソウルキャノンを撃つまでに一定数のダメージを与えないといけないので、『
3章までは敵ソウルキャノンのチュートリアル
』であり、2周目以降もジャッジメントシステムを含めてスキップ出来ないため、非常にテンポを悪くしている。
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下記のコミカライズ版ではゲーム本編のように冗長に救出劇を展開する必要性が無いため、第2章の救出劇を第3章と統合するという措置が取られている。
作風の大幅な変化
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前作が重く陰鬱ながらも、過去作でも度々クローズアップされてきた『種族対立』が物語のテーゼとして遺憾無く組み込まれており、前作の敵対勢力だったベルマン帝国側の『浮島世界での差別によって生まれた憎悪』が物語の魅力として引き立てられていた。
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対する本作は最も問題視されていた『Solatorobo』の第2部を踏襲しているため、『獣人と旧世界の刺客である人造人間(疑似ハイブリッド)との戦争』が物語の主軸となっており、純粋な獣人達の物語に突如差し込まれた旧世界の人間達の存在によって世界観が崩壊するとも取れる展開になっている。
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つまり、
ファンから特に不評だった展開を何故か今更になって公式がもう一度焼き直す
と言う不可解な事態になっている。また、子供達と対峙する人造人間『ジル』が搭乗する巨大兵器「ベレノス」についても「兵器×昆虫」の様な外見であり、人間が開発した兵器にしては不自然な程グロテスクであると言える。
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その弊害で前作で印象的だった帝国側の人物は本作ではごく一部のシーンを除いて登場せず、帝国の情勢に関してもガスコのカフェの客から間接的に語られるのみ。新たな敵として登場するベルマンガイストも生体反応が存在しないグロテスクな無人機であるため、敵側の印象的なドラマ性が薄れてしまった。
ナンバリングによる弊害
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ナンバリングが付けられているが、過去にサイバーコネクトツが開発した「.hackシリーズ」と同様の分作形式での販売であるため、本作は3巻構成の内の中巻と言う位置づけである。
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前作では終始ベルマン帝国との戦争を手堅く描き、エンディングも後味の良い締め方をしていたが、本作から一気に世界観の規模が大きくなり過ぎた弊害で無理にストーリーを引き伸された感が強く、一部のキャラは出番があまり与えられずに完結作である『3』までお預けと言う中途半端な措置が取られている。
見方によっては前作で綺麗に終わっていた
と言う意見もあり、1作につき4,000円〜6,000円+DLC1500円を払う必要があるのはやはり割高感が強い。
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そのため、本作の新要素の多くは戦闘パートの改良であり、UIやグラフィック等の大半の素材は前作からの使い回しである。本作に登場する機体「タラスクス」と「エキゾ・タラニス」も前作の機体「タラニス」と内部はほぼ同一のものであるため、インターミッション内での新要素はこれと言って無く代り映えしない。
前作のあらすじが簡略すぎる
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タイトル画面に前作の流れをダイジェストで見る事ができる「これまでのあらすじ」という項目があるが、内容としては前作の挿絵を主題歌に合わせて淡々と流すというもの。紙芝居形式にするにしろ、せめてナレーションや字幕があれば親切であったはずである。
マルトの主人公化による弊害
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本作で主人公としての地位を確立したマルトだが、反面、子供達の中で主にストーリーの進行を担うのは主人公のマルト、ヒロインのバニラ、ハンナの3人のみであり、他の子供達はあまりストーリーに深くは関わらない。一応、絆イベントでは各々のバックボーンを掘り下げているが、前作で特定の主人公を設定しなかった公平さが本作では崩れてしまっている。
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マルト自身のキャラ描写も穏やかだった前作よりも人を選ぶものとなっており、チックのイタズラに対して活を入れる等、前作ではあまり見られなかった心情の変化が現れ、直情的な性格となっている。
作業感が強くなった探索パート
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本作から遺跡探索の新要素として弾の属性を変化させる結晶が追加されたが、弾の属性を入れ替えるために部屋を往復しなければならないので、非常にテンポが悪くなった。
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ツタの絡んだ壁には火炎弾と通常弾を必要とし、扉を開かせるスイッチの電源を入れるためには電気弾が必要とするが、問題なのは通路の構造が自動生成になったため、ワンパターン攻略が通用しにくくなった。
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回収した素材を売却すれば多額の資金になるが、インターミッションでのAPは前作と同様に5であるため、一回のインターミッション内で最大で4回行える。金策するためには上記の通り間違えずに攻略しないといけないため、やはり作業感が強い。
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ただ、前作と比べて破壊する壁の数が大幅に減少しているため、部屋ごとにどれだけ弾を温存する必要があるかを暗記する負担自体は減っている。
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弾の属性を変化させる以外の新要素は無く、子供達の性能差が存在しない事等の問題点もそのまま。
第12章のストーリー展開
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第12章は前作と同様にガスコの存亡を賭けた苛烈な戦いが繰り広げられるのだが、そのストーリー展開にはあまり良好とは言いがたい要素もある。
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以下ネタバレ
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問題なのは前作第12章の焼き増し感が拭えないという点である。というのもストーリーの流れが「黒幕がヴァナルガンドを復活させ融合する ⇒ (エキゾ・)タラニスが背中によじ登る ⇒ ラスボス戦直前で落下・着地 ⇒ ラスボス戦 ⇒ 犠牲無しor犠牲ありのソウルキャノンで黒幕に止めを刺す ⇒ トゥルーエンドで力を使い果たしたAIが消滅する」といった具合にほぼ一致している。前作と違ってヴァナルガンドとの直接対決に発展するとはいえ、もう少し新鮮味のある展開が欲しいところである。
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本作の黒幕も『他の黒幕による手引きでヴァナルガンド復活を目論み、掌握したヴァナルガンドで浮島世界の滅亡を企てる』という経緯自体は前作のハクスと全く同じであり、二番煎じ感が強い。
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総評
前作のゲームバランスの不安定さを改善し、更なる新要素を加えた戦場のフーガのナンバリングタイトル2作目。ゲーム性ではシリーズ最高傑作とも言っても過言では無い位の完成度であるが、その反面、前作にあった『粗はあるがシンプルで情に訴えてくるストーリー』が本作では『soratorobo』の再来とも取れる『トンデモ超能力の後付設定により蔑ろにされている』と言う見方もあり、前作から暈されていた物語の核心部分は本作でも明かされずに完結編である次作『3』に持ち越す等、若干の中弛みを感じなくもない。ただし、
前作同様にストーリー・世界観はオマケ
だと割り切れば十分な良作RPGに値する。
上記の事から本作の立ち位置は
ストーリーを追加した有料ダウンロードコンテンツ
に近く、賛否両論と言うべき評価が最も妥当である。
余談
開発関連
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ゲームデザイン兼ディレクターを務めたヨアン・ゲリト氏は本作のマスターアップを機にサイバーコネクトツーを退社。プラチナゲームズ福岡スタジオに移籍する事となる。
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前作に収録されていた本作のシークレット動画(開発初期段階のイメージボード)には「憤慨してマルトを平手打ちするカイル」や「銃を構えるブリッツ」等、シークレット動画の予告のみで製品版には採用されなかったシーンが多く存在する。また、開発当初は製品版とラスボスが異なっていた。参照動画29:40秒
その他・豆知識・小ネタなど
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本作で登場するAIハクスは「天元突破グレンラガン」に登場する悪役ロージェノムから着想を得ている事がインターミッション第31回内のコラムで明かされている。
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他にも前作のトゥルーエンドでハクスに止めを刺す際にタラニスや子供達が金色に輝いた事や本作での暴走したタラニスとタラスクスの対決シーンなどについては「勇者王ガオガイガー」シリーズから着想を得ている事がインターミッション第32回内のコラムで明かされている。
スピンオフ作品・コミカライズ版
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前作の映像作品『G線上のフーガ』に引き続き、本作においても『G線上のフーガ2』が配信されている。前作『G線上』は終始ギャグテイストが強い作風だったが、『G線上2』の場合、ゲーム本編が完全にシリアスムードに包まれているためか、全体的にギャグテイストが抑えめになっているのが特徴。日常風景を切り取った牧歌的な回が多い。
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第11回以降は本編で脇役且つフルボイスが実装されなかったバウムとシュトーレンの登場回も出るようになり、本編では描かれなかった彼らの意外な一面がうかがえる。
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一方のゲーム本編ではインターミッションでの会話や絆イベントなどに『G線上』ネタが盛り込まれている場面があり、マルトの悪夢ネタ、ジン愛用の工具ネタといったニヤッとする内容もチラホラ。
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コミカライズ版『鋼鉄のメロディ』は第29話から『戦場のフーガ2』パートである第2部に突入。引き続き漫画独自の描写や要素が盛り込まれており、第1部に先行登場したマエストロがようやく本編に絡んでくるようになる。
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ただ、第1部の時点で『戦場のフーガ2』以降の伏線がいくつか登場しており、問題点の項で上述したとおり、前作と本作をクリアしたとしても謎はいくつか残り続けるという仕組みになっている。
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漫画版の特色として、CEROを考慮する必要が無いためマルトが度々
殺す
発言をするなど復讐鬼としての描写により力が入っている事が挙げられる。ただ連呼する分、貯めるだけ貯めてから発言したゲームと比べて逆に言葉の重みが薄くなっているようにも見える。また、尺や演出の都合上で第4章~第10章の追跡パートがまるごと一纏めにされた結果、「マルトが復讐鬼に変貌 → マルトが改心 →
戦闘中、車外に出て宿敵ジルに対してかけっこを提案
」がたったの数話で展開されるためマルトがかなり情緒不安定に見えてしまう。
DLCについて
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2023年7月23日に有料DLC『テイルコンチェルト』、2023年9月21日に第2弾『スチームパンク』、2023年11月30日に第3弾『キグルミ』が配信された。どちらも各500円の他、DLCを全てを定額1500円で購入出来るシーズンパスも配信される。
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第1弾『テイルコンチェルト』は関わりが途絶えていた本家リトルテイルとの初のコラボであり、子供達がテイルコンチェルトのキャラクターに扮するのはある意味ファンが長年願ったリメイクを疑似に実現したとも言える。
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第2弾『スチームパンク』は子供達がその名の通りスチームパンク風の衣装を身に纏う。
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第3弾『キグルミ』は
動物疑人化である子供達が(擬人化されてない)動物のキグルミを被ると言う衝撃のDLCである。
動物が動物を被るってキティちゃんとチャーミーの再来とかツッコまない様に
設定資料集
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2024年7月4日には『戦場のフーガ2 完全設定資料集』が発売された。前作の設定資料集と同様、設定画やゲーム中のイラスト、開発初期のラフやイメージボードなどが掲載されている。ただ、全滅エンドの挿絵など掲載イラストに一部抜けがあるのも前作と同様になっている。
続編
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2023年8月22日にファミ通.comの「インターミッション」で配信された「【『戦場のフーガ』開発記録】『インターミッション』第32回」において松山氏が続編『戦場のフーガ3』の開発中である事を公表。同作のラフスケッチも一部公開された。
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2024年7月5日には7月11日開催の「Japan Expo Paris 2024」に先駆けて松山氏が自らのX (旧Twitter)アカウントで『3』の戦闘画面の画像をチラ見せしている。
最終更新:2025年01月29日 11:28