ゆらぎ荘の幽奈さん 湯けむり迷宮
【ゆらぎそうのゆうなさん ゆけむりだんじょん】
ゆらぎ荘の幽奈さん 湯けむり迷宮 極み
【ゆらぎそうのゆうなさん ゆけむりだんじょん きわみ】
ジャンル
|
マジでギリギリを攻めるローグライクRPG
|

|
対応機種
|
【無印】 プレイステーション4 【極み】 プレイステーション5 Nintendo Switch Windows(Steam) iOS Android
|
開発元
|
マトリックス
|
販売元
|
フリュー
|
発売日
|
【無印】2018年11月15日 【極み】2024年1月18日
|
定価
|
【無印】 通常版: 8,778円(税込) 初回生産限定盤: 12,078円(税込) ダウンロード版: 3,520円(税込) 【極み】 PS5/Switch/Win: 3,520円(税込) iOS/Android: 3,500円(税込)
|
プレイ人数
|
1人
|
レーティング
|
CERO:C(15才以上対象)
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
キャラものローグライクとして無難な出来 識別周りの仕様がやや不便 お色気要素も物足りない
|
少年ジャンプシリーズ
|
概要
『週刊少年ジャンプ』で2016年から2020年まで連載されていたお色気ラブコメディ作品『ゆらぎ荘の幽奈さん』を原作にしたローグライクダンジョンRPG。キャラクターボイスは2018年に放送されたアニメ版に準拠している。
原作はパンチラや入浴・ラッキースケベといったサービスシーンが豊富ないわゆるお色気作品であり、本作もそうした要素がウリの一つとなっている。
開発は『トルネコの大冒険2』および『3』や『オメガラビリンス』シリーズなどローグライク作品を多く手掛けているマトリックス。
『極み』は、無印版にDLC要素を収録した完全版(ダウンロード専売)。
ストーリー
霊に取り憑かれやすい体質の男子高校生・冬空コガラシは、地縛霊の湯ノ花幽奈を初めとした面妖なヒロインたちが棲む温泉下宿・ゆらぎ荘で生活を送っている。
ある日、ゆらぎ荘の蔵にあった奇妙なつづらの中に、人形の姿にされて吸い込まれてしまったコガラシ。幽奈たちはコガラシを助け出すために、つづらの中にある「迷宮」に挑む。
システム
-
基本は『トルネコの大冒険』『風来のシレン』シリーズと同様、入るたびに形が異なるいわゆる「不思議のダンジョン」を攻略する、オーソドックスなローグライクダンジョンRPG。
-
ダンジョンに挑むたびにレベルが1に戻る、やられると持っているアイテムを(基本的に)全て失うなど、ローグライクのお約束システムも踏襲している。
-
用語は作品の世界観に合わせて適当なものに置き換えられている(食料は「温泉まんじゅう」や「牛乳」、「壺」は「湯かご」など)。
-
メインストーリーのダンジョンはいずれもアイテム持ち込み可だが、持ち込み不可ダンジョンも存在するので、この手のジャンルのご多分に漏れずやりこみ派のプレイヤーにも対応している。
-
キャラクター
-
メインストーリーのダンジョンは、基本的にプレイヤーキャラ&パートナーキャラの2人で挑むことになる。序盤にプレイアブルキャラを一通り解放した後は、どのキャラを使うかは完全に自由。
-
パートナーなしの1人で挑むことも可能。またパートナー禁止のダンジョンもある。
-
パートナーキャラは自動で行動する。大まかな作戦は指示できるが、自分で操作したりプレイヤーキャラを切り替えたりはできない。
-
ダンジョン内でパートナーキャラがやられても、次の階層に進むと復活する。
-
他のローグライク作品では、味方がやられるとそのダンジョンでは復活しなかったり、即ゲームオーバーになるものも少なくないため、かなりやさしい仕様。
+
|
プレイアブルキャラクター
|
-
湯ノ花 幽奈(ゆのはな ゆうな)
-
ゆらぎ荘の204号室に取り憑いている地縛霊。明るく朗らかな性格だが、恥ずかしいシチュエーションになるとポルターガイストを起こしてしまうクセがある。
-
必殺技はいずれも部屋内の敵すべてに影響する効果で、大勢の敵に囲まれた際の緊急回避に長けている。
-
雨野 狭霧(あめの さぎり)
-
妖怪を退治する霊能集団「誅魔忍」に所属する忍。生真面目な性格で、特に男子と自然に接するのが苦手。
-
必殺技は敵を攻撃しつつ妨害するものが多く、攻撃と逃げのバランスが良い。
-
荒覇吐 呑子(あらはばき のんこ)
-
いつも薄着でセクシーなお姉さんだが、その正体はお酒を飲めば飲むほど強くなる鬼「酒呑童子」の末裔。少女漫画家として連載も持っている。
-
必殺技で自分のステータスを強化することができ、戦闘の爆発力は随一。
-
伏黒 夜々(ふしぐろ やや)
-
「猫神」に憑依されており、ネコ耳と尻尾が生えている少女。無口でマイペースな性格。
-
必殺技でHPとおなか(満腹度)を回復できるため、探索に向いたキャラクター。
-
神刀 朧(しんとう おぼろ)
-
黒龍神から生まれた「神刀」の化身。一見クールだが、コガラシには隙あらば大胆なスキンシップを図ろうとしている。
-
必殺技は使いやすい攻撃系のものが揃っており、シンプルに戦闘能力が高い。
-
宮崎 千紗希(みやざき ちさき)
-
コガラシのクラスメイト。本作のヒロインの中では唯一の一般人。無印版では有料DLCによる追加キャラ(「極み」では序盤から使用可能)。
-
必殺技はランダム要素が強いものが多い。またステータスも、攻撃力が非常に高い反面、HPと防御力は低く、DLCキャラらしい一癖ある性能になっている。
-
匣屋 マチ(はこや まち)
-
本作オリジナルキャラクター。コガラシをつづらの中に引き込み、人形の姿にした張本人。千紗希と同じく、無印判では有料DLCによる追加キャラ。
-
基礎ステータスが他のキャラより一回り高めであり、必殺技も高性能。ただし衣装を装備できないというデメリットがある。
|
-
必殺技
-
任意のタイミングで使える強力なスキル。キャラごとに固有の性能で、後述の感応温泉でキャラのレベルを上げるとアンロックされていく。1回の冒険につき使用可能な回数は限られている。
-
衣装
-
装備すると防御力が上がるアイテム。一般的なローグライクにおける「盾」だが、本作では「制服」「体操着」「チャイナドレス」などのコスプレ的な衣装になっており、ステータスだけでなくグラフィックも変化するお着替え要素になっている。
-
破封忍具(ハプニング)
-
装備アイテム。装備して行動するとゲージが溜まっていき、一定まで溜まると様々な効果を発揮する。ゲージが貯まると自動で発動するタイプと、コマンドから自発的に発動させるタイプの二種類が存在する。
-
効果を発揮すると、代償(ご褒美?)としてキャラクターの着ている服が破れる。
-
見た目が変わるだけでなく、ステータスにも変化が生じる。変化は衣装ごとに異なり、能力が上がることもあれば下がることもある。
-
合成
-
ローグライクおなじみの武器・防具を強化するシステム。
-
本作では、ダンジョン内ではいつでもメニュー画面から自由に合成が可能。ただし合成の際には霊石(ゲーム内通貨)が必要。
-
残留思念
-
ダンジョンでやられた際、次の挑戦で同じダンジョンの同じ階層まで行くと「残留思念」が残っており、触れると失ったアイテムをすべて取り戻すことができる。『DARK SOULS』を彷彿とさせるようなシステム。
-
残留思念を取り戻せるチャンスは、次の挑戦の1回のみ。回収に失敗したり、他のダンジョンに挑んでしまうと残留思念は消えてしまう。
-
霊印
-
霊石を支払うことで装備品に付与できる効果で、これが付いているアイテムはダンジョンでやられてもショップに戻ってきて買い戻すことができる。
-
霊印付与は1つにつき100霊石とかなり安価。とりあえずダンジョンに持って行く装備には片っ端から付けておいても問題ないバランスになっている。
-
感応温泉
-
拠点であるゆらぎ荘から行えるミニゲーム。温泉でくつろぐヒロインのイラストをバックに、集まってくる妖怪を撃退する見下ろし型のアクションゲームで、プレイの際には霊力せっけんというダンジョン内で拾えるアイテムを消費する。
-
クリアするとスコアに応じて経験値を得られ、キャラごとに前述の必殺技やパッシブスキルを習得できる。さらに合成素材として使える「残り湯」も入手できる。
-
サイドストーリー
-
条件を満たすと見ることができるミニエピソード。解放条件はあらかじめ確認することができる。
評価点
-
キャラものローグライクとして及第点の出来
-
ローグライクRPGとして大きな破綻はなく無難に遊べる出来になっている。
-
原作のファンアイテムとして見ても、かわいい衣装に身を包んだ個性的なヒロインたちを、自分で直接操作して活躍させられるのは嬉しいポイント。フルボイスでグラフィックの質も高い。
-
サイドストーリーでは、原作さながらのヒロイン同士のコミカルなやり取りを楽しめる。原作ではやり取りが少ないキャラ同士の会話が補完されていたり、一枚絵が用意されているエピソードも多く、ボリュームも十分。
賛否両論点
-
ゲームバランス
-
メインストーリーはアイテム持ち込み可だが、その分ある程度装備を強化したり、アイテムを用意している前提の難易度になっている。特に中盤以降のボスは無対策だとあっさりやられる。
-
前述の残留思念や霊印付与システムなど救済処置もいくつか用意されてはいるものの、基本はロスト時のリスクが大きいシビアなシステムであり、キャラ目当てで初めた初心者などは苦労するかもしれない。
-
DLCアイテムは高性能なものが多く、『極み』ではゲーム開始時点から全DLCアイテムが倉に用意されているため、これをフル活用すれば難易度は多少下がる。
-
未識別アイテムのソートの仕様
-
道具欄でアイテムを整理(自動ソート)すると、未識別のアイテムであっても自動で規定の並び順になる。これにより、アイテムの並び順を知っていればそれだけである程度正体にあたりをつけられる。
-
意図的な仕様かどうかは不明だが、プレイヤー側に有利な要素のため、識別テクニックの一つと捉えることもできる。
-
登場キャラクターが限られている
-
発売時点で原作でレギュラーキャラになっていた雨野雲雀や緋扇かるら等は未登場。
-
いずれもアニメ(テレビ放送版)に未登場でキャラクターボイス等が決定していなかったからだと思われる。
-
原作主人公のコガラシも、操作はできず出番も少ない。
-
もっともそのおかげで、ヒロインたちがゲーム上もシナリオ上も目立ちやすくなっている。またコガラシは非常に戦闘力が高いという設定のため、ゲームとの整合性を加味したとも捉えられる。
問題点
-
不便な識別システム
-
未識別のアイテムに自分で仮の名前を付けられない。このため、例えば霊符(他作品の杖に相当)を使用して効果を推定できたとしても、ゲーム内でメモする方法がない。道具の命名は初代『トルネコの大冒険』から存在する基本システムなだけに奇怪。
-
また識別済の同アイテムを持ち込んだとしても、自動で識別済にはならない。これもローグライク作品では珍しい仕様。
-
このため本作においてダンジョン内で未識別アイテムの名前を確定させる方法は、「識別の巻物」などの鑑定アイテムを使用するか、実際にアイテムを使用する(いわゆる「漢識別」)しかない。
-
同一アイテムの個数・使用回数が最大10
-
「吹き矢」などの飛び道具は10個までしかまとめて持てない(一般的なローグライクは99個までスタックできることが多い)。11個目以降は別のアイテム扱いとなるため、持ち物欄を圧迫しやすい。霊符の使用回数も同様。
-
自動で発動する破封忍具が使いづらい
-
ゲージが貯まると自動で発動してしまうため、意味がない・場合によっては逆効果になるタイミングで消費してしまうことも多い。
-
破封忍具を外すとゲージはリセットされるため、発動をキャンセルすることはできるが、細かいタイミングを調節するのは難しい。
-
物足りないお色気要素
-
破封忍具が発動すると衣装が破れていくが、破れるというよりも服のレイヤーが削れている(溶けている)という感じでやや不自然。
-
感応温泉も、湯気や光で胸元や肌がかなり隠されている。
-
湯気でうっすら体が隠れるのは温泉が舞台の作品ということもあり演出として悪くないのだが、不自然な光で塗りつぶされているのは違和感が強い。イラストによっては一枚絵の半分ほどが光で覆われてなにがなんだかわからなくなっているものも。
-
発売前に発表されていたスクリーンショットでは不自然な光はなかったため、おそらく規制を受けての修正だと思われる。
-
また『極み』のSwitch版のみ、なぜか感応温泉でのヒロインのセリフ・ボイスが削除されている。なお他のプラットフォームも含め、グラフィックの差異は無い。
-
他の作品(同開発元による『オメガラビリンス ライフ』など)ではPS版のみ性的表現の規制が強かったり、逆にSteam版のみ規制が緩い例は多いものの、Switch版のみ規制が強いパターンは珍しい。
総評
ローグライクRPGとしては、識別周りなどに不可解な仕様はあるが、大きな破綻はなく及第点と言っていい出来。
また原作ありきのキャラゲーとしても、グラフィックやボイスの出来はよく、ファンアイテムとしては満足できる内容だろう。
一方でウリであるはずのお色気要素は、「マジでギリギリを攻めるローグライクRPG」を名乗るには物足りない表現に留まっており、原作並の描写を求めてプレイするとガッカリ感は否めないだろう。
最終更新:2025年09月26日 09:49