マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ ぴちぴちっとライブスタート!
【まーめいどめろでぃー ぴちぴちぴっち ぴちぴちっとらいぶすたーと】
ジャンル
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歌ってハモるアクション
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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発売元
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コナミ
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発売日
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2004年3月18日
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定価
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4,980円
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プレイ人数
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1~4人
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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良作
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バカゲー
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ポイント
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ミス=歌が音痴になる 下手にプレイするのが面白い異色の音ゲー GBAで驚異のボーカル曲14曲収録を実現
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概要
2003年4月から2004年12月にかけて全91話が放送されたアニメ「マーメイドメロディーぴちぴちピッチ」のゲーム化第3弾。
ゲーム第1作の『マーメイドメロディーぴちぴちピッチ』をベースに様々な新規要素を追加した作品となっている。
原作は、北太平洋の国のマーメイドプリンセス「るちあ」が中学生「七海るちあ」として、7年前の海難事故から命を救った少年「堂本海斗」に正体を隠しながら中学校生活を送りつつ、仲間のマーメイドプリンセスである「宝生波音」「洞院リナ」と共に水妖と戦うというストーリー。
「歌で戦うバトルヒロイン」という後年のアニメにも通ずる斬新な設定なのだが、新人をメインに据えた結果、主役であるマーメイドプリンセス達の歌がとにかく下手(通称:ぴちぴちボイス)で敵が音痴な歌を聴かされて苦しんでいる様にしか見えないというシュールな展開や、
行き当たりばったりに展開されるカオスなストーリー、詰めの甘さが目に付く作画や設定、妙に多い放送事故などが合わさり、メインターゲットの女児だけではなく大きなお友達にも強い印象を与え、カルト的な人気を博した。
ゲームシステム
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アニメ作中の楽曲に合わせて流れてくるノーツを頼りにリズムよく十字ボタンやABボタンを押す『DDR』のようなレイアウトのオーソドックスな音ゲー。
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十字ボタンは歌、ABはリズムに対応する。リズムの入力に成功すると、スコアに応じて後述のモードで使用するコインを入手できる。
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難易度は「やさしい」「ふつう」「むずかしい」の3種類。オプションではノーツの配置を変更でき、通常の「いつもの」、毎回初期配置がランダムで入れ替わる「きぶん」、演奏中にランダムで入れ変わる「きまぐれ」から選べる。
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全モード共通で演奏中のゲームオーバーという概念が存在せず、どんなに下手くそな演奏でも最後までプレイすることができ、これが後述のバカ要素に繋がってくる。
モード紹介
ひとりでピッチ
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とことんピッチ
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フリープレイモード。クリアすると演奏のリプレイを3曲まで保存することができる。
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つづけてピッチ
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持ち点が無くならないように目標スコアに収めて100曲のクリアを目指す上級者向けモード。このモードでしか出てこないお邪魔オプションもある。
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アニメでピッチ
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本作で新たに追加された、アニメ1期39話までのダイジェストを見られるモード。お約束として毎回アニメと同じく戦闘パートのライブが挟まる。
いっしょにピッチ
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通信プレイ。4人まで同時にプレイ可能で、同じ曲を協力してプレイする「なかよくピッチ」、全曲をつづけてピッチと同じルールで協力プレイする「どこまでピッチ」、対戦モードの「しょうぶでピッチ」という3つのモードがある。
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しょうぶでピッチでは歌やリズムの入力成功で溜まる左右のゲージを消費して、おジャマアイコンを送り相手の演奏を妨害出来るという特殊ルールが存在する。
ライブでピッチ
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とことんピッチで保存した演奏にムービーを付けて、アニメの
使い回しライブさながらに再生してくれる。後述のシステムにより最大のバカ要素に。
あつめてピッチ
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ライブで集めたコインを使ってクレーンゲーム「キャッチでピッチ」や神経衰弱「あわせてピッチ」をプレイしSDキャラの人形やカード、ポスターを集めて飾るモード。
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スロットやハイアンドローでコインを賭けたギャンブルができる「そろえてピッチ」「くらべてピッチ」、カラオケ付きで楽曲を聴くモードもある。
ヒッポでピッチ
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歌詞を入力し4曲から選べる童謡のメロディーで、るちあ達のお供のペンギン「ヒッポ」に歌を歌わせるモード。
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なお、NGワードはないので文字制限の範囲内なら好きなことを言わせ放題。
ヒッポじゃなかったら大変なことになっていた。
あなたのピッチ
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背景の壁紙とカーソル、プロフィールのプリンセスを変更できる。
おバカな点
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音ゲーでミスした時に楽曲から返されるリアクションと言えば、一般的な音ゲーだと「楽曲が途切れる」「不協和音になる」「プレイヤーは音を足すだけで曲そのものは変わらない」といったところだろう。しかしこのゲームは一味違う。
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歌がノーツの判定と連動しているため、ミスすると音程が外れたり曲に遅れてしまい、押せないと歌詞が飛んでしまう。つまり音痴になってしまうのである。
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ノーツを1つミスしただけで突然素っ頓狂な歌声がスピーカーからひり出されてしまうので、その破壊力に初めてプレイした時は爆笑すること請け合い。
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「むずかしい」で失敗しながらプレイすると音程外しまくり、歌詞飛びまくりで、もはや水妖じゃなくても「モウヤメテ~!」と頭を抱えるようなクオリティの歌唱に。本当に音痴な女の子の歌を聞かされているような真に迫る下手さを感じられる。
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百聞は一見に如かず、気になる方はこの動画を見てほしい。
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スタッフがアニメ版の扱いをどこまで知ってこの要素を仕込んだのかは定かではないが、前述の通り歌の下手さが一部でネタ的に評価されていた側面のある作品なので、(ある意味)原作でウケていた要素をゲームの面白さに昇華することに成功している。
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このシステムの毒牙は原作の時点で歌唱力が評価されていたリナや、主題歌を歌っていた神戸みゆき氏にも及んでいて、もちろん彼女らの歌う楽曲も音痴にできる。
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加えて、前作は主人公3人の曲と主題歌のみの収録だったが、本作では「敵の方が断然上手い」とまで言われた水妖側の歌い手・ブラックビューティーシスターズと、るちあをも超えるヤバい歌唱力で畏れられた4人目のマーメイドプリンセス
かれん様
が参戦。もちろん彼女らの(ry
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とことんピッチモードでは演奏のリプレイを3曲まで保存できるのだが、この保存する楽曲に演奏の出来は問われない。
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これをライブでピッチで再生すると、無茶苦茶に崩壊した曲でもキャラクター達が良い感じの演出をつけてノリノリで歌ってくれるので爆笑必至。
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普通にパーフェクト状態の曲を聴くならあつめてピッチのカラオケモードでできるので、このような楽しみ方をするために用意されているとしか思えない機能である。ぴちぴちボイスファンは自分だけの究極の1曲を目指そう。
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以上のように本作はミスしても笑える、むしろ「わざとミスしてプレイヤーの手でアニメの楽曲を更に音痴にするのが面白い」という異色の音ゲーなのだ。
評価点
技術面
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なんといってもGBAでテレビサイズのボーカル曲が14曲も収録されているのが驚異的。ボーカル曲があるGBAソフトなら本作以外にもいくつかあるが、これだけの曲数を用意した作品は他に類を見ないだろう。
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るちあ、波音、リナの3人ボーカルの曲は選んだキャラによって担当する譜面が変わるので、実質14曲+10曲収録。音ゲーとして見てもボリュームも十分。
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収録曲
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太陽の楽園〜Promised Land〜(ヒッポ)
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Legend Of Mermaid(3人)
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Super Love Songs!(3人)
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大事な宝箱(るちあ)
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恋はなんだろう(るちあ)
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Splash Dream(るちあ)
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Ever Blue(波音)
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Star Jewel(リナ)
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Rainbow Notes♪(ヒッポ)
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世界で1番早く朝が来る場所(3人)
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夢のその先へ(3人)
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KIZUNA(3人)
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黒の協奏曲~concerto~(BBS)
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オーロラの風に乗って(かれん)
※ヒッポは神戸みゆき氏の曲担当
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しかも曲をそのまま流しているわけではなく、別々に収録した伴奏とボーカルを同時に流すという手法を取っているため、先述した「プレイヤーの操作に連動してリアルタイムで歌だけを音痴にする」という演出を可能としている。
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アニメでピッチモードでも敵の攻撃で伴奏が止まり歌がかき消されるなど、原作の戦闘シーンの再現で効果的に活用されている。
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おまけモードのヒッポでピッチも曲は童謡4曲だけとはいえ、GBAの性能で合成音声による手入力歌詞の歌唱を実現していて技術的に目を見張るものがある。
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ユーザー層に合わせてボタンさえ押せていれば、アニメでピッチモードの目標スコア程度は「むずかしい」でも簡単に達成できる一方、オプションにはつづけてピッチモード限定オプションや「きまぐれ」など当時の本家DDRでも採用されていないような苛烈なものが存在。これらオプションを付けた状態でのクリアは音ゲーに慣れたプレイヤーでも手こずるほどで、高難易度側への調整も妥協していない。
キャラゲーとして
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アニメでピッチモードでは、各エピソードでアニメ本編のスチルをふんだんに使用し、ライブに至るまでのストーリーをSDキャラ達の漫才形式で見られる。
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ダイジェストではあるが原作の持つカオスな魅力がより凝縮され、内容を知っていてもこれはこれで面白い。逆に原作を知らない人にもアニメに興味を湧かせる作りとなっている。
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ライブが始まると毎回演奏前に3人の変身シーンがアニメで挿入され、
「ぴちぴちボイスでライブスタート!」
、などお約束のセリフをボイス付きで決めてくれる。28話のアクアピッチブレスレット入手後は2段変身もしっかりムービーで再現されるなど原作再現の演出も出来が良い。
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とことんピッチモードでは波音やリナの曲でパーフェクトを取ると
「プリティー・シュガー・ピッチ!」
や
「クール・シャイン・ピッチ!」
などアニメでは披露していない決めゼリフをボイス付きで言ってくれるが、これは花森ぴんくの漫画版に登場するセリフ。このようなかなり細かいネタまで拾われている。
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あつめてピッチモードのクレーンゲームで入手できるSDキャラのドット絵も、やたらと種類が豊富で作り込まれている。
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ゲームには未登場のココやノエルなども含めたマーメイドプリンセス全員にポーズや衣装違いの主要キャラなど基本的なところから、34話に登場したアワビの妖精アウリ、21話のビーチクイーンコンテストでリナが欲しがっていた優勝商品の最新型壁掛けテレビ、ワイン片手にバラ風呂に浸かるガイト様などマニアックなチョイスまで64種類。
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アニメでピッチモードのSDキャラとポーズが被っているものもあるが流用せず、ぬいぐるみっぽく描き分けられていてドッターの職人芸が光る。
賛否両論点
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納期第一のキャラゲーの宿命ではあるが、アニメでピッチモードはアニメ第1期の全52話中39話と非常に中途半端な話数しか収録されておらず、楽曲も1期の中では最終決戦で歌う「KODOU」だけが未収録で画竜点睛に欠く。
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発売日の2004年3月18日は無印50話が放送された週。2期の放送が決定したのは当時の暴露話によると番組中盤の2003年9月のことで、開発中は放送中に発売できるかがはっきりしていなかったのだろうが、結果的に見るともう少し発売時期を遅らせて1期全話を収録してほしかったところ。
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開発側も納期の都合さえなければ39話以降も作るつもりだったのか、エピソード一覧では明らかに40話以降のスペースが空いている他、39話のクリアデータを再開すると40話が表示されるバグがある(内容は普通に39話)。
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マーメイドプリンセスは7人いるのだが、話数やエピソードのカットの関係でアニメ終盤に登場する「ココ」や「ノエル」はアニメでピッチモードでは全く出番がなく、原作を見ていない人にはOPやあつめてピッチモードの景品などに出てくる謎の人になってしまった。
問題点
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GBAのスピーカー性能に対応する調整が行われておらず、実機でプレイすると音質が非常に悪い。
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女児向けアニメの主人公にしては低音な声のるちあはまだ聴きやすいが、高い声で力強く歌うかれんなどは音が割れる箇所もあり、酷いことに。
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ソフト側の設定にヘッドホンモードが用意されているので、メーカー側も(音ゲーではよくある話だが)ヘッドホンでプレイすることを推奨している。
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音痴機能をオフにすることができない。真剣にプレイしようにも、慣れないうちはどうしても気が散る。
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本作は1作目のバージョンアップ版にあたる内容なのだが、1作目の発売(2003年10月8日)から5か月しか間を置いていない。完全版商法としてもあまりに間隔が短い。
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しかもこの間、12月に2作目が発売されていて半年で3本もピッチのゲームが発売されるという超過密スケジュール。この点でも発売を遅らせる方が良かっただろう。
総評
原作アニメの時点で色々な意味で評判だったぴちぴちボイスの対象を全曲に広げて更に過激に楽しめるという、ファンにとっては
悪
夢のようなゲーム。
まさに「この原作にしてこのゲームあり」という作品で、癖の強いシステムを違和感なく調和させていることに開発者の「ぴちぴちピッチ」という作品への理解度の高さがうかがえる。
技術面も非常にハイクオリティで、おバカ要素を抜きにしてもとても出来の良いキャラゲーに仕上がっている。
余談
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ゲームに収録された時期(39話以前)の歌はとんでもないものだったが、原作ではちょうど39話以降辺りからキャスト陣の演技力と歌唱力が上達し、2期の「ピュア」終盤になるとかなり改善されている。本人たちの名誉のためにも、本作で興味を持った人はこの違いにも注目してほしい。
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意外にも本作(と1作目)は、国内で発売されたGBA作品で唯一のノーツに合わせてボタンを押すタイプの音ゲーである。
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GBでは『beatmania』や『DDR』『ポップンミュージック』の携帯機版を積極的に展開していたコナミだが、これらのシリーズはGBAでは一切新作が発売されず、本作以外では「テニスの王子様」を題材にしたミニゲーム集『みんなの王子様』に「Rhythm Rhythm Revolution」という「DDR」のパロディゲームが収録されていたのみ。
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他社の音ゲーでは任天堂の『リズム天国』があるが、ノーツが存在しないことが特徴の音ゲーで、主流の作品とは少々プレイ感が異なる。
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海外のみ発売の作品まで含めるとブリトニー・スピアーズを題材にしたダンスゲーム『Britney's Dance Beat』が存在する。
全曲の音痴バージョン
その他のピッチゲーム
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GBA マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ 2003年10月9日発売
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概要の通り1作目。本作はこの作品のバージョンアップ版であるが、こちらは1枚絵が中心の本作とは異なりライブ中に背景でマーメイドプリンセスの3人が踊るという独自の要素がある。
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ミスすると歌が音痴になる、ヒッポでピッチモードなど本作のバカゲー要素はこの作品の時点で存在。
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GBA マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ ぴちぴちパーティ 2003年12月18日発売
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この作品のみアニメのシナリオを追体験する双六ゲームとなっている。
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実物のボードとコマが付属していて、ソフトが1本しかなくてもこれを使うことで4人でプレイすることができた。
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その他、タカラが販売していた、テレビに接続して自宅で本格的なカラオケを歌える玩具「e-kara」用ソフトとして、ピッチゲーが8本リリースされている。アニメはこの玩具の販促番組という側面もあり、むしろこちらが本命だったともいえる。
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カラオケ専用の2本を除いて、カラオケの他にゲームが遊べるストーリーモードが収録されている。特に後期に展開された『ピュア』のシリーズは、漫画版作者の花森ぴんく書き下ろしのオリジナルの水妖が登場し、ファンにとってはかなりお宝作品。
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2008年12月18日に発売された「なかよし」の創刊55周年を記念して製作された『なかよしオールスターズ めざせ学園アイドル』にも七海るちあがゲストキャラとして登場している。
最終更新:2024年12月09日 22:36