加藤一二三九段 将棋倶楽部

【かとうひふみくだん しょうぎくらぶ】

ジャンル 将棋
対応機種 スーパーファミコン
発売元 ヘクト
開発元 夏システム
発売日 1997年5月16日
定価 4,980円
判定 なし
ポイント SFC将棋最終作
初心者も歓迎
問題集は厳しい
加藤一二三関連作品
心技流 / 倶楽部 / 教室 / 道場


概要

バリエ発売の「朝日新聞連載 加藤一二三九段将棋 心技流」に引き続き加藤一二三九段監修の将棋ソフト第2弾。プロ棋士監修第8弾と同時にSFC将棋の最終作でもある。
今回はバリエからではなくヘクトから発売。価格が抑えられた代わりにかなり簡素化されている。
簡素さから考えるとヘクトが過去に発売した『将棋倶楽部*1』『新・将棋倶楽部*2』に続く三作目と思われる。

内容

  • 本作はCPU対局と加藤九段からの出題が用意されている。こちらも最初から全ての要素を選ぶことが出来る。

評価点

加藤一二三九段の要素

  • 加藤一二三九段の問題に挑戦
    • 本作で唯一の加藤九段の要素である。全部で100問、1~50が詰将棋7~11手詰め、51~100が次の一手問題の構成となっており、かなりの労力が費やされていると言える。詰将棋を繰り返しやっていけば終盤の棋力アップが望めるだろう。
    • 記録は残らないが最初から全問選べる仕様になっている。
    • 問題を選択する際は心技流では1問ずつ移動するのみであったが、本作では10問ずつの移動も出来るようになっておりアクセスし易くなった。

ゲーム性

  • 初心者から上級者までカバーする難易度
    • 居飛車振り飛車などの戦法をオーダーする事が出来る。棋力も安定しているのでそれなりの目安にもなる。
    • 終盤は特に強い。詰みや必至がある場合は確実に詰ませて来る。更には自玉の詰みは防いでポカやトン死は絶対にやらないので実力でねじ伏せるしかない。
  • 駒落ちハンデが充実
    • 心技流ではプレーヤー側が駒落ちするのみだったのに対して、CPU側にも駒落ちをしてもらえるようになった。
    • 香落ち~十枚落ちまで用意されており、幅広いプレーヤーに対応可能。
    • FCからSFCの将棋作品は初心者お断りばかりであったが、SFC最終作になってようやく初心者でも楽しめる作品が出て来たと言えるだろう。
  • 操作性
    • ボタン一つで盤面と駒台を往来、盤面の質感、互いの利きエリアの表示のON・OFFなど色々切り替えられるので快適である。
  • 音声読み上げ機能も健在
    • 対局中には勿論、次の一手問題でも最初に相手の指し手を読み上げてくれる。
    • 音声読み上げも行われる。急ぎの際はOFFにする事も出来る。
  • これらは同社の「新・将棋倶楽部」では既出であるものの「心技流」には無かったものばかりである。

賛否両論点

  • AIの棋力の強さは1種類のみ。
    • 時間をかけて序中盤が14級・レーティング200で終盤が10級・レーティング600あたりの強さがあるので、初心者は弱いAIも選びたかったという声もある。しかし、戦法のオーダーや駒落ち対局(10枚落ちでは王と歩9枚のみで勝ち易い)もあるので多くのプレーヤーには対応していると言える。
    • 流石にSFCでプロの棋力を再現出来るはずはなく加藤一二三九段の棋力には到底及ぶものではない。しかし、SFC最終作だけに下手なPS作品よりも強く「早くて強い」という触れ込みは伊達ではない。
    • パックマンが刺さる。終盤では粘って来るが3枚換えと香銀による飛車の鹵獲の後なら押し切れるだろう。
  • 問題集の難易度が高い
    • 詰将棋は第1問から7手詰めと厳しい。次の一手問題の方も解説がなく分かり辛いので余計に難解である。

問題点

対局について

  • AI同士の対局が見れるのは良いのだが1手ずつプレイヤーがボタンを押していかなくてはならない。
    • 望む局面を考えさせたり、詰将棋を解かせることは出来ない。
    • 感想戦があり、「進む」はテンポが良いのだが「戻る」は画面が暗転してテンポが悪い。

問題集の扱い

  • クリアしても特になし
    • CPUに勝っても簡素なメッセージが出るのみでエンディングはない。
    • 問題集も、最初から全問選べるのは良いが問題を解いても印は付かないので既に解いたかも分からない。全問解いても何も起こらない。
  • ヒントが出ない
    • 心技流では各問毎に丁寧にヒントが用意されていたが本作は一切ない。
  • 総当たりでクリア出来る
    • 間違った手を指しても思考ルーチンが咎めに来る訳でもなく1手巻き戻されるだけである。応手は正解した際のみに行われて、不正解なら戻る。頭で考えるよりもひたすら手を動かした方が楽。
    • 心技流と同様、詰み上がりが2通り以上ある問題は1種類以外は不正解で1手戻される。
  • 次の一手問題
    • 最初に後手の指し手で始まるのだが、元の局面は表示が一瞬のみで分かり辛い。
    • 1手正解を選んだ時点でクリアというと楽な印象だが、選択肢はなく局面全体から自分で正解手を指さなければならないので非常に難儀である。
      • 正解した後も指し手が局面をどう動かすのか全く解説が無いので分かり辛い。これに関しては本当に棋力がないと正解に辿り着く事も、それの意味を理解するのも難しいだろう。

ボリュームの少なさ

  • 加藤一二三九段のゲームでありながら本人の画像が一切登場しない。
    • 氏の名局再現も実装されていないのが寂しいところ。
  • オートセーブも一切行われなくなっている。
  • BGMはタイトルの1つのみ。対局中、勝利、敗北などの曲は一切ない。

その他

  • 駒落ちでは上手が「王」になるのがセオリーだが「玉」になっている。
  • と金の読み上げが相変わらず「と」ではなく「成り歩」。

総評

心技流に比べ価格の低下に伴い削減された仕様もあるものの、初心者から上級者まで多くの方々に楽しめてもらえるようにはなっている。
プロ棋士監修にしては解説がないなど不完全な部分も多いものの、100問という膨大な出題など強い魅力もあり、加藤一二三九段のファンで腕に覚えがある方に限るが買って損はない。

余談

  • ヘクトは数年前にFC将棋の最終作『将棋名鑑'92』『将棋名鑑'93』を発売している。
    • 同社は『本格派対局将棋 将棋倶楽部』『本格派対局将棋 新・将棋倶楽部』を発売している。そして本作を以ってFC将棋に続きSFC将棋もヘクトで幕を閉じた。
    • 『囲碁倶楽部』は96年1月26日発売。SFCで囲碁を製作してあるとおり高い技術力を持ち合わせているのは間違いない。
      • 作中に加藤九段とあるが、加藤一二三九段ではなく、加藤正夫九段である。
  • 加藤一二三九段監修の将棋ソフトとしてはバリエから発売されたSFC『朝日新聞連載 加藤一二三九段将棋 心技流』、GBCで『加藤一二三 九段の将棋教室』、2018年に発売されたSwitchソフトの『ひふみんの将棋道場』がある。
    • ひふみんの将棋道場は全くの初心者から始められるようになっている。

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最終更新:2023年05月14日 21:32

*1 「将棋倶楽部」は1995年2月24日発売。プレーヤーと3段階の強さのCPUと対局するだけの内容、駒落ちは平手~飛角落まで用意されている。

*2 「新・将棋倶楽部」は1995年9月22日発売。前作に比べると、プレイヤー同士、コンピュータ同士の対局、戦法の指定などが出来るようになった事、駒落ちも平手~十枚落ち(玉と歩が9枚だけになる)まで追加されたという仕様がある。