Outlaws / Outlaws + A Handful of Missions

【あうとろー】

ジャンル FPS
対応機種 Windows
発売元 Lucasarts
Lucasfilm/Disney (DL配信版)
開発元 Lucasarts
発売日 1997年4月7日
定価 620円(Steam)、$5.99(GOG.com)
配信 Steam、GOG.comにてDL配信中(+HoM版)
判定 良作
ポイント 西部劇を題材としたFPS
リロードと狙撃の概念を導入
リアル系FPS最初期の作品


概要

ルーカスフィルムのゲーム部門、ルーカスアーツが手掛けた1997年発売の西部劇を題材とした初のFPS。
1995年の『Star Wars: Dark Forces』に利用されたゲームエンジンである「Jedi engine」を使用しており、「リロード」「スタミナ」「スコープ狙撃」の要素を明確にゲームプレイに組み込んだ、時代を先取りした複数のシステムが最大の特徴。
このため、擬似3Dではあるのだが区分上はスポーツ系FPSではなくリアル系FPSに相当するという独特な立ち位置の作品となっている。


ストーリー

ゴールドラッシュに湧く西部開拓時代のアメリカ西部。

悪徳鉄道業者のボブ・グラハムは、鉄道進路上の人間を強引に立ち退かせるべく無法者たちを雇い、それによって多額の金を稼ぐことに成功していた。

悪党に襲われた父親の死を切っ掛けとして多くの無法者を葬ってきた元保安官のジェームズ・アンダーソンは、妻アンナと一人娘サラと共に農場で慎ましいが穏やかな生活を送っていた。しかし彼の農場もグラハムの線路敷設計画の進路上にあり、グラハムの命を受けた無法者たちが家へとやってきてしまう。

雑貨屋で買い物を済ませたジェームズは、帰路で燃える家と瀕死の妻を発見する。死に際の妻から娘が浚われたことを知ったジェームズは、家の跡地に妻を埋葬する。

再び死んだ父親の愛銃を握ったジェームズは保安官時代の経験を頼りに、娘の奪還と妻の復讐を遂げるため愛馬と共に西部を奔走していく。



ゲームシステム

  • 基本的なゲーム進行は『DOOM』と同様。
    • 敵を各種武器で倒し、ギミックやトラップを乗り越えてキーを収集し探索範囲を広げていく。ただしステージの最後にはボスキャラが存在し、ボスと銃撃戦を行い撃ち殺すことでステージクリアとなる。
  • 画面左下の弾が装填弾薬、数字が残り所持弾薬、画面中央下の温度計がスタミナ(水中時は酸素)、画面右下が選択中のアイテムと現在の体力。所持アイテムは[キー・]キーで選択し、Enterで使用する。
    • 鍵などは自動で使用するが、バールは選択した状態でスタックした扉の前に立ち、選択することでドアをこじ開けることができる。またスコップを用意した状態で特定箇所で使用することで足元を掘れる。
    • アイテム「ボイラープレート」はアーマーとしての役割を担っており*1、入手頻度は少ないものの撃たれた際のダメージを軽減することができる。
  • Shiftキーでダッシュし、Xボタンでジャンプ、Cキーでしゃがみ、Spaceキーでドアやオブジェクトの開閉・移動。Lキーでランタンを点火して周囲を照らす。
    • Rキーもしくは右クリックで弾丸を一発装填(長押しで自動装填)、左クリックで発砲する。ZまたはQキーでセカンダリ射撃を行うことができ、ファニングショットや着火、単発射撃など複数武器で利用できる。
  • 武器は複数存在し、距離や人数といった状況によって使い分けていく。
    • パンチ
      • 素手。威力はあまりないが、保安官ミッションでは賞金首の捕獲が可能。プライマリでストレート、セカンダリで素早くジャブを打つ。
    • ピストル
      • 拳銃弾を利用する拳銃。射程距離は2番目に長く、威力はそこそこあるため、FPSには珍しく終盤まで第一線で活躍する。
        装弾数は最大6発だが、リロードは一番早い。セカンダリボタン押しっぱなしで連射速度が速いが拡散が大きいファニングショット(連射)を放つ。
    • ライフル
      • 単発式ライフル。武器の中では一番射程距離が長い。
        さらに道中でスコープを入手することでスコープの取り外しができるようになり、長距離狙撃で狙いをつけやすくなる。また、装弾数も多く、ピストルには劣るが発射後の隙も短いので、近距離でも使いやすい。見落とされがちだが、この銃もゲーム開始時から所持している。
    • 単銃身ショットガン
      • 装填数が1発のみの散弾銃。1発撃つたびに装填し直すため攻撃後の隙は大きいが、ピストルの4割の射程距離と、ある程度まとまった状態で散弾を発射するため、至近距離からある程度離れた距離までそれなりに強い一撃をお見舞いすることができる。
    • 二連ショットガン
      • 2発同時発射(プライマリ)と単発発射(セカンダリ)を使い分けられる装填数2発の水平二連ショットガン。プライマリは単銃身ショットガンの2倍の量の散弾を発射する。単銃身ショットガンと比べると射程が少し長く(ピストルの半分)、散弾の拡散もある程度まとまっているため、至近距離からある程度離れた距離まで二発同時発射の強力な一撃をお見舞いすることができる。一発ごとに装填しなおすため二発撃った際の隙は単発ショットガンよりもさらに大きい。
    • ソードオフショットガン
      • 銃身を切り詰めた水平二連ショットガン。上2つのショットガンと違い弾の拡散もかなり大きく射程が短いため、近距離で数人の敵をまとめて相手するのに適している。一応こっちも2発同時発射(プライマリ)および単発連射(セカンダリ)の使い分けが可能。
    • ダイナマイト
      • セカンダリ攻撃ボタンで葉巻を使って着火し、プライマリ攻撃キーで投擲する。爆発で広範囲にダメージを与え、道中に存在するひび割れた場所を破壊可能。ただし爆発させるにはあらかじめセカンダリ攻撃ボタンで火をつけるか、銃で攻撃して火をつける必要がある(これは道中落ちているダイナマイトも同様)。火をつけてないダイナマイトは再度拾うこともできる。火をつけたまま投げずに持っているとボイラープレートを持ってない限り爆発でダメージを受けて死ぬ。
    • ボウイナイフ
      • 投げて攻撃できるが射程は短い。セカンダリ攻撃ボタンで投げずに刺して攻撃する。入手機会は比較的少ない。保安官ミッションでは捕獲に使用する。
    • ガトリング砲
      • 終盤で入手する武器。高威力、高い連射速度、リロード不要と一見強力だが使用中は移動できないため、敵の攻撃をかわすのが重要になるBad以降の難易度で使うにはデメリットが大きい。

評価点

数多くの西部劇リスペクト

  • 難易度表記が「Good」「Bad」「Ugly」*2、市街地や鉄道、渓谷、砦といったおなじみのロケーション、最終盤に流れるThe Extacy of Goldに酷似したBGM、追加ステージ集「Handful of Missions」*3など、西部劇のオマージュ要素が非常に多い。西部劇の知識があれば、見慣れた光景や演出が複数登場することに気付くだろう。
    • 特にサウンドトラックの出来は非常に良く、評価点の一つとして数多くのレビュアーから絶賛された。同エンジンの過去作『Star Wars: Dark Forces』同様にリアルタイムで曲が切り替わるシステムも採用されており、同一曲のループに飽きるといったこともない。

世界観とマッチしたリロードシステム

  • QUAKE II』や『Shadow Warrior』といった同時期のスポーツ系FPSと異なり、近接攻撃とガトリング以外の全ての武器には手動装填が必要となる。一見面倒な仕様だが単発銃の多い西部劇の世界観には合っており、またリロード作業自体にはほぼ時間が掛からないため「出会い頭に発砲しようと思ったが弾層が空、素早く一発だけ装填して早撃ちで射殺」といった芸当も可能。
    • リボルバーにカチカチと素早く連続して装填する様は小気味よく、ゲームプレイに戦略性を追加する本作独特のアイデアとしてしっかりと機能している。

FPSではじめてのスコープの本格的実装

  • 道中でスコープを手に入れることでライフルの狙撃時にズームが使えるようになる。FPSとしては初めて「覗き込む」タイプのスコープシステムを実現しており*4、画期的な要素だった。

一撃必殺の絶妙な難易度

  • 「撃って避ける」が主体のスポーツFPS全盛期には珍しく、遮蔽物を駆使したリアル型のゲームプレイを特徴としている。
    • 武器にはリロードの概念が存在し、適当に撃ちまくっていれば即座に弾丸が尽きる。難易度Bad以上では食らうダメージも跳ね上がり、拳銃弾でも3発も食らってしまえばプレイヤーは死亡する。
    • しかし敵も味方も使用する銃は単発式のため、どの難易度であっても「先に弾を撃ち込んだほうが勝つ」という実に西部らしいゲームバランスを採用している。どの難易度であっても敵の攻撃頻度は変わらない(=撃ちこむ隙がある)ためゲームバランスは破綻しておらず、システムを理解しクリアリングと遮蔽物を駆使した戦術で挑めば最高難易度であろうとクリアが見えてくる。

2Dながらしっかりと処理された当たり判定

  • jedi engineの性能向上により3Dエンジン並みの判定処理を実現しており、例えば「柵の間に見えた脚を撃ち抜く」といった『DOOM』などでは不可能な芸当もこなすことが可能。またプレイヤーの判定も同様であり、木箱や机のといった低いオブジェクトの裏でしゃがむことで敵の銃弾を完全回避できる。
    • 3Dが主流となった現代の『カバーシューター』に相当するマップ設計となっており、「遮蔽物の裏でしゃがんで敵の攻撃を避けつつ、側面に回りこんで相手を倒す」といった現実的な行動が可能。当時のほかのFPSでは重要視されていなかった「しゃがみ」ボタンだが、本作ではなくてはならない重要な要素となっている。

やりこみ要素「ヒストリカルミッション」

  • 賞金首の牛耳る拠点へ赴き、対象を捕獲するか射殺してその得点を競うという前日譚かつおまけ要素の「マーシャルトレーニング」が存在。砦には複数の進入手段が存在するなどゲーム『HITMAN』のような一本道でない面白さがあり、単体でも楽しめる。
    • クリア時のポイントによって拠点のお楽しみマップが解禁、射的やイースターエッグ要素との戦闘、インディージョーンズ一作目の洞窟などが楽しめる。
    • また、「Handful of Missions」*5版では南北戦争や山、川沿いの町といった豊富なロケーションも追加。本編とは関係ないものの、ボリュームは多く楽しめる内容となっている。

ドラマチックに描かれるカットシーン

  • かなり渋いカートゥーンテイストで描かれており、多彩な表情や3DCGを折り混ぜた描画など非常にクオリティが高い。ストーリーも王道の復讐譚としてかっちりと纏まっており、変に複雑な構造でないため非常に分かりやすい。

問題点

擬似3Dエンジン

  • ルームオーバールームによる多重マップなど実質的なエンジン性能は3Dエンジン並みではあるものの、カートゥーンテイストを生かすため2Dスプライトによって敵や銃を描画している。当時既に3D化の波が到来していたため、見た目のインパクトの無さから不振の原因となってしまった。
    • テイストからの選択としては間違ってはおらず、既に『帝国の影』や後継エンジンであるSith engineを採用した『Star Wars Jedi Knight:Dark Forces II』が本作と同年に登場していたことからも分かるように決してLucasartsに3Dエンジンの開発技術が無かったわけではない。

本編自体は短い

  • 「南北戦争」「雪山」といった追加マップや実質的な過去編である賞金首捕獲ミッション「マーシャルトレーニング」といったやりこみ要素が充実しているため、それらを制覇するとなればかなりのボリュームとなる。しかし本編ボリューム自体はあまりなく、慣れれば即座にクリア可能。
    • クリアタイムを競うSpeedrun.comにおける本作の記録は20分40秒*6。もっとも、ストーリーは一つの西部劇作品として小奇麗に纏まっているため、無駄な尺稼ぎがないという点では良さであるとも言える。

敵のHP表示がない

  • 本編においてはあまり不満点にはならない部分だが、マーシャルトレーニングで賞金首を捕獲する際に問題となる点。賞金首は拳かナイフで止めを刺すことで捕獲扱いとなるものの、体力をどの程度削ったかを知る手段が存在しない。
    • 唯一の対処法は『銃弾を一発当てるごとに退避してクイックセーブし、死んだらロードしてナイフに持ち替えて投げる』というもの。作業感が否めずやや面倒な部分。

システムを理解しなければ難易度は高め

  • 最低難易度「Good」のみ『DOOM』並みのスポーツ系操作でもクリアできるのだが、難易度「Bad」および「Ugly」は敵の命中率・威力が跳ね上がり別のゲームと化す。
    • このため、最低難易度が普通だと想定して他の難易度を選択した場合そのゲーム性の違いに戸惑ってしまう。当時リアル系シューターは少なかったため、戸惑いの声もあった。

総評

Lucasartsの当時の他作品の例に漏れず、安定した品質を保ちながらも革新的要素を取り入れた意欲作。
QUAKE II』などが発売された3DFPS黎明期にもかかわらず擬似3DエンジンであるJedi engineを採用したことで興行的には振るわなかったものの、まさに西部そのものな雰囲気やゲームシステムは一部ゲーマーや批評家から絶賛、カルト的な評価を獲得した。

カバーアクションを本格的に取り入れたシューターとしては実質的に最古参の一つとも言える作品である。FPS史に名を残すほどではないものの、そのアイデアには光るものがある。


余談

  • ゲーム中のリボルバーの描写において、シリンダーを横に振りだして装填する*7というミスがある。
  • 本編自体は終始シリアスだがイースターエッグは豊富に仕込まれており、UFO内部で牛を解体しようとするエイリアン、「サム&マックス」のマックス、発砲してくるサングラスをかけた犬、獰猛なリス、「レイダース/失われたアーク」の黄金像、「ジュラシックパーク」などいたるところにネタが仕込まれている。

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最終更新:2023年09月16日 00:29

*1 元ネタはバック・トゥ・ザ・フューチャー PART3のシーンからだが、そのシーンの元ネタが「荒野の用心棒」である

*2 元ネタは「続・夕陽のガンマン」の原題「The Good, The Bad and The Ugly」

*3 元ネタは「荒野の用心棒」の原題「Fistful of Dollars」

*4 例えば『ゴールデンアイ 007』の発売は本作より後であり、かつ狙撃は覗き込みではなく画面ズームで行う

*5 本編発売後にオンラインやプロモーション用のディスクで配信された無料の追加ミッションパック。追加内容はシングルプレイ用の4ミッションとマルチプレイ用の5ミッションで構成されている。現在のDL配信版では最初から本編に同梱された内容になっている。

*6 もちろん敵との交戦をほぼ無視した場合の数字だが

*7 本来は撃鉄横のカバーを開けて装填する。そもそもこの銃はシリンダーが固定されているので振り出すことができない