本稿では『ファイナルファンタジーIV』『ファイナルファンタジーV』『ファイナルファンタジーVI』のPS版を、3点セットの一般流通版である『ファイナルファンタジーコレクション』を代表として解説しています。
判定は『IV』が良作、『V』『VI』は劣化/良作となっています。
ファイナルファンタジーコレクション
【ふぁいなるふぁんたじーこれくしょん】
| ジャンル | RPG |  
 | 裏を見る裏を見る裏を見る | 
| 対応機種 | プレイステーション | 
| 発売元 | スクウェア | 
| 開発元 | トーセ | 
| 発売日 | 1999年3月11日 | 
| 定価 | 7,140円 | 
| 配信 | ゲームアーカイブス:各1,200円 | 
| IV | 2012年6月27日 | 
| V | 2011年4月6日 | 
| VI | 2011年4月20日 | 
| 備考 | コンビニ限定で分売:各5,040円(税込) | 
| IV | 1997年3月21日 | 
| V | 1998年3月19日 | 
| VI | 1999年3月11日 | 
| 判定 | IV | 良作 | 
| V VI
 | 劣化ゲー | 
| 良作 | 
| ポイント | 『IV』『V』『VI』共通でダッシュなどが改善 移植度は『IV』>>(超えられない壁)>>『V』>『VI』
 『V』『VI』は長いロード・処理落ち・音楽劣化あり
 『VI』はオマケが追加された一方でEDの同期が破綻
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| ファイナルファンタジーシリーズ | 
 
概要
コンビニ専売として発売されているPS版『FF』シリーズ『IV』『V』『VI』の3作をひとまとめにして一般発売したもの。その内『VI』の単品版が同じ日に同時発売をしていた。
パッケージやレーベルだけが異なるのみで、ゲーム内容は単品版・コレクション版共に全くの同一。
いずれも問題点がほぼ共通のためまとめて記載する。
ゲーム内容は基本的にSFC版そのままのベタ移植で、新たにCGムービーなどが追加された程度。後のGBA版のような追加ダンジョンや追加アイテムは一切無い。
改善点及び評価点
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×ボタンを押しながら移動することで、ダンジョンや町を通常の2倍の速さで移動できる「ダッシュ」が標準追加された。特にダッシュ機能が一切無かった『IV』で重宝する。
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なお、SFC版『V』『VI』では本来ダッシュのためにアビリティ「ダッシュ」や「ダッシューズ」が必要だったが、PS版ではこれらと標準実装のダッシュを組み合わせると2倍ダッシュ(歩きの4倍速)にできる(『ライブ・ア・ライブ』における幕末編主人公・おぼろ丸のダッシュに近い)。だが、こちらは障害物に引っ掛かりやすくなり使いやすいものではない。
 もっとも、これらのアビリティを使用中は×ボタンを押さなければ済むだけで、さらに制御さえできれば早解きにも使えるので、問題点という程のものではないが。
 
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SFC版並に高速で保存・再開ができる「メモファイル」機能が追加された。
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コントローラーの複数のボタンを同時押しするソフトウェアリセットによるやり直しが便利であるが、メモファイルは本体のボタンでリセットしたり電源を切ると消滅する。
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通常のセーブでは時間がかかるため、ボス戦前などで全滅に備えるためのセーブはこちら、プレーを終了する際は通常のセーブと使い分けるとよい。
 
 
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セーブ仕様の変更によるデータの耐久性の向上(全作品)、セーブ可能数の増加(『IV』除く)。
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SFC版はバッテリーバックアップのため消えやすいが、これはメモリーカードによるフラッシュメモリバックアップなので消えにくい。
 毎回通常のセーブだと時間がかかるので、上述のメモファイルを併用すると快適。
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『V』『VI』はセーブデータをメモリーカードの空きブロックのある限り作れるが、『VI』は後述の「やりこみじいさん」用にも1ブロック必要。
 なお、『IV』は「空きブロックに関わらずメモリーカード1枚に4枠合計2ブロックを1個固定」となっているため、『IV』に限りデータ保存数はSFC版と同じである。
 
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『VI』には図鑑や設定資料などが見られる「おまけモード」が追加されている。
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さらに、これまでのプレイでのキャラクターの成長度やクリア歩数などを記録した「やりこみじいさん」を閲覧することができる。
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やりこみじいさんはキャラごとに「やり込み度」を判定してくれるが、非常に残念な事に設定ミスで14人中4人しか100%にできない。
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ギル、クリア時の歩数、キャラごとの能力値などの最大値と最小値が記録される。
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このやり込み度は後のGBA移植版には登場しなかったため、PS版限定の要素となった。このためPS版限定でのやり込みが行われることもある。
 
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『IV』だけは移植度が非常に良い。
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音質の劣化は皆無で処理落ちもほとんどない。さらに移動周りが改善されているため、『IV』に限って言えば立派な良移植の部類であると断言していい。
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ロード時間が『V』『VI』より若干長いという意見もみられるがそこまで気になるほどではない。
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ただ、上述した『IV』セーブデータの仕様(メモリーカード1枚にセーブデータ最大4個まで)は「そこまで再現しなくても」と思うところでもある。
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『V』と『VI』はというと…(詳しくは問題点へ)。
 
問題点
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CD-ROMによる読み込みのため、特に『V』『VI』にて画面の切り替え処理がSFC版よりも遅くロード時間が長い。
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シリーズが後の作品ほど顕著で、『VI』ではメニュー開閉や戦闘のエンカウント前後に毎回2~5秒前後の読み込みが挟まる。
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『IV』だけはゲーム全編をRAMに貯めこんでいるらしく、ロードを感じない。
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一方で、戦闘中のみウィンドウのスクロールが遅い、魔法の演出と効果音がずれるという細かい問題点もある。
 
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また、戦闘中などに派手な演出が発生した際、処理落ち…もとい、演出がスローモーションになる。
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『VI』のエンディングはシーンと音楽がどんどんずれていく。ガウのシーンなのにセリスの音楽が流れたり、鳴り終わるまでにムービーが始まってしまったりする。
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これに関しても『IV』だけはそれほど見受けられず、後述する音質の事もあり『IV』と『V』『VI』とで移植度の差を指摘される事となった。
 
 
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『V』『VI』はエンカウントや一部の魔法、ボス撃破時などのエフェクトが変更されている。
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『V』『VI』の音楽や効果音などの音質がSFC版から若干変わっている。ちなみにSFC版では植松伸夫氏の自作サウンドドライバで再生されていた。
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単に音質が変わっただけではなく、特定の音色が「違う音」というレベルで別物になってたり、パートごとの音量バランスが変わっている他、16ビットFF特有の透明感が無くなり全体的にペタッとした音質になっている。
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分かりやすい例が『V』の第1世界のフィールド曲『4つの心』。主旋律が潰れバックの音と音量バランスが逆転している。
 
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『V』の「ダンジョン」をはじめ『V』『VI』にはエコーが効果的に使われている楽曲が多数あるが全てエコーが無くなっている。
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その他、カルナック城脱出イベントなどで流れている「急げ! 急げ!」が雑音と化している、ロンカ遺跡のBGM「ムジカ・マキーナ」の機械音がおかしいなど、一発で劣化してるとわかる曲が多数。 
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そんな中、やっぱりというべきか『IV』だけはトラック再生を用いており、音質もほぼ同じとオリジナルに忠実である。
 
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オープニング移行前とエンディング移行前にCGムービーが追加されたが、ゲーム内のドット絵とイメージが大幅に異なるデザインとなっている。
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CGの方はゲーム中のドットでなく天野喜孝氏のイメージイラストを元にしていることが理由なのだが、ここでも格差が生じてしまっている。
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『IV』と『VI』はキャラがイメージイラストをベースにしていたためかムービーの評判は決して悪くないが、『V』に限っては元々デフォルメイラストやドット絵のイメージが強い作品であったため、ムービーはあまり評価されていない。
 
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修正されている細かな怪現象や不具合もあるが、前述した通り多くのバグはSFC版そのままで移植。ある意味致命的な『VI』の回避率バグなどは修正されていない。
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もっとも発売当時『VI』の回避率バグについてはあまり知られておらず、開発側も把握していなかったと思われる。
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また『IV』のアイテム増殖バグなども修正されず残っているので、うまく使えば役には立つ。
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これらとは別に、『IV』と『VI』では一部のバグが修正・仕様変更されており、一部SFCとの違いがある。
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PS版で修正された『VI』のバグは、オペラ劇場で崩壊前に戻る技、機械装備技など。また、ガウに武器を装備させるとあばれるでバグる事があったため、ガウは勲章が装備不可になった。
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キングベヒーモスの落とすアイテムが変更され最強武器の1つ「バリアントナイフ」の2本目が入手できなくなっているが、おまけのモンスター図鑑では落とすアイテムとして明記されてしまっている。
 元々キングベヒーモスがバリアントナイフを落とすこと自体がデータ上のバグであり、PS移植の際に参照するデータ位置が変わって落とすアイテムが変化してしまったらしいのだが、モンスター図鑑の記述はSFC版準拠なのかバリアントナイフのままというややこしいことになっている。
 
 
総評
長いロード時間や音質劣化が問題だが、他機種でのプレイ環境を持たないのであれば現在でも買う価値はある。
ただ、『IV』と『V』『VI』で移植の質に壁がある上に後発作品ほど劣化度合いが顕著になっているため、「どうしてこうなった…」と思えてしまうのも事実。
GBA版の『IV』『V』『VI』とは相違点が多いが、どちらも善し悪しがあるので考えての購入を勧める。
余談
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見た目こそ全く変わっていないが、実は『IV』については全く同じに見えるように1から作り直されていることが明言されている。
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その点については、「SFCとPSではドットの比率、画面のモザイク処理・回転移動などハードの仕様が異なり、そのままの移植は困難であり新しくプログラムを作る必要があった。」と当時のゲーム雑誌での開発者インタビューで語られていた。
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それでも流石に完璧な再現とまではいかなかったのか、飛空艇などの乗り物で移動時のマップを斜めから見た緑地がベタ塗になり、SFC版とはかなり雰囲気が変わってしまっている部分もある。
 
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攻略本も出ているが『VI』偏重であった。
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表紙も目次も『VI』のものが使われている。
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総ページ数は223ページあるが61ページから『VI』の攻略である。7割以上が『VI』なので実質『IV』『V』簡易攻略というおまけつきの『VI』の攻略本といっても差し支えない。
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元々『IV』『V』は単品販売された時期に単独で攻略本が出ているので、この二作がないがしろにされているわけではない。そちらもあまり詳細な攻略情報は書いていないが…。
 
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コンビニ限定であった単品版はそれぞれ中古価格がコレクションと同程度の価格になっていることがある。
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単品版は生産数が少な目だったせいと思われる。特に『VI』はコレクションと同発のためか輪をかけて少ないため、他2作より相場が高めである。
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なお単品版は、パッケージやレーベル以外の内容はコレクション版と全く同じである。
 
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『V』『VI』における長いロード時間や音質の劣化については、同時期に発売されたPS版『クロノ・トリガー』も同様の問題点を抱えている。
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PSアーカイブスで単品販売されたが、1本あたり1,200円とWiiのVC版の900円に比べるとやや割高な価格設定になっている。
 一応、PSP版『FFIVCC』やプレミアム価格がついているGBA版『V』『VI』より安い価格で携帯機(PSP/PSV)で遊べるという利点は存在する。
最終更新:2024年06月16日 09:30