ドンキーコング リターンズ
【どんきーこんぐ りたーんず】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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Wii
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発売元
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任天堂
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開発元
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Retro Studios
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発売日
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2010年12月9日
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定価
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5,800円
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配信
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【WiiU】2015年1月21日/2,700円
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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良作
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ポイント
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SDKシリーズを彷彿とさせる絶妙な高難易度 それでいてリトライが苦にならない中毒性
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ドンキーコングシリーズ
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概要
『ドンキーコング64』から11年ぶりに発売された、スーパードンキーコングシリーズの新作。
ちなみに英語版タイトルは『Donkey Kong Country Returns』。『スーパードンキーコング(Donkey Kong Country)』の復帰作という位置付けがより明確なタイトルになっている。
開発元がレア社からメトロイドプライムシリーズのレトロスタジオに変わったことで、発売前は仕上がりを不安視する声もあった。
しかし、蓋を開けてみればスーパードンキーコングシリーズ経験者・初心者共に楽しむことができる高品質なアクションゲームに仕上がっていた。
シリーズ旧作からの変更点
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ライフポイント制が導入された
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最大ライフは2。つまり敵やトゲに当たっても1回は耐えられるようになった。またステージに落ちているハートを取れば回復もできる。過去のシリーズからすれば破格ともいえる強化だが、本作の高い難易度からすると妥当と言える。
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後述のディディーにも同点分のライフがあるため、3回までならセーフということになる。
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ただし、穴などに落ちたり、乗り物に乗っている時の激突は即ミスとなる。
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今回ディディーコングは一人プレイではドンキーのオプション扱いで、ディディーがくっついているとジャンプ時にバレルジェットで多少滞空出来るようになったり、ローリングが強化されたりする。
なお一人プレイではディディーはドンキーのダメージを肩代わりすることになる(上述通り2ダメージでディディーは退場)。
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ステージ構成はマリオシリーズに近くなり、クランキーコングから「もんキー」を買えばルート分岐も出来るようになった。バナナコインを使うが、値段はかなり低め。
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クランキーコングは今作では店を切り盛りしている。ステージ内で手に入るバナナコインを使うことでもんキーだけでなく1UPバルーン、ライフ増強などの便利アイテムを買えるが、恒例のヒントも忘れていない。
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クランキーコングの性格も、かなりの説教家だった旧作から随分角が採れて、茶目っ気のある好々爺となっている。やはり寄る年波のせいか。
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口調は穏やかながら「また、すぐに戻ってくることになるかものう。」と、毒舌は一応健在である。
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2人同時プレイができるようになった。
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これまでの2人プレイは1Pと2Pが交互にステージをクリアしていく形式か、1Pと2Pで操作を交代する形式であり、プレイしていない方のプレイヤーは暇を持て余すことになっていた。
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本作では1Pがドンキー、2Pがディディーを操作して1つのステージを同時に遊べるようになっている。ただ、ディディーのほうが明らかにドンキーより制御しやすいためディディー無双になりがちだったり、ステージクリアが目的ならそもそも1人でプレイするべきだったりするが。
評価点
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1つ1つのステージの完成度が非常に高い。
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難易度は高いものの、細部まで書き込まれた美しいグラフィックや多彩で斬新なステージギミック、新旧織り交ぜた高品質な音楽のおかげで、何回死亡しても先に進みたいというモチベーションが維持できる。
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ステージの背景自体が大きく動くギミックが多く、スイッチを押すと背景が崩れ新たな足場が組み立てられる、画面奥・手前側に向けられたタル大砲で移動するなど、ダイナミックで飽きの来ない展開を楽しめる。また、ステージごとに何らかの新しいギミックが用意されている事が多く、次のステージを進めていく楽しみのひとつとなっている。
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たとえば「サンセット海岸」というステージはその名の通り夕焼けに照らされているが、その逆光が非常に美しく、影絵と合わせてお洒落な雰囲気を演出している。このステージ専用のアレンジBGMも高評価。
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トロッコステージにおいても、「クリスタルアドベンチャー」ではレールに予想外のことが起こる斬新なギミックが評価されている。
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気兼ねなくトライ&エラーに勤しめる構成
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難易度が高いのと同時に再挑戦もしやすくなっており、ミス回数が評価に影響することも全くない。
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アクションの腕に自信がなくても後半では中間ポイントが複数用意されていたり、クランキーコングの店でライフバルーンや救済アイテムが購入できたり、バナナ・コイン・バルーンやライフなども各ステージ中に大量/高頻度で配置されている。
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ステージギミックも死にながらでも覚えればちゃんとクリアできるものばかりなので、やり込み要素を無視すればとりあえずエンディングまでは行ける。
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エリア選択も自由にできるため、残機が減ってきたらクランキーの店で溜めたバナナコインを使ったり、簡単なステージに戻って稼いだりすれば、まずゲームオーバーになることはない。
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どうしてもクリアできない人のために『スーパーマリオギャラクシー2』で導入されたおてほんプレイも採用されている。
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やりこみ要素が多彩
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ステージにはパズルピースとKONGパネルが散らばっており、パズルピースを全て集めると、そのステージのBGMが聞けるようになったり、ジオラマが鑑賞できるようになったりする。KONGパネルについては1UPボーナスがなくなったものの、全て揃えることで隠しステージが追加される。
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そして隠しステージのパズルピースを全て集めてもそれで終わりではない。一度クリアしたステージではタイムアタックを遊べるようになるし、隠しステージもクリアすると「常にライフ1・ディディーなし・左右反転」という高難易度モードが開放される。
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初代SDKプレイヤーへのファンサービス。
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色々と変更点はあるもののDKアイランドが舞台だったり、『スーパードンキーコング』のリメイクBGMが多くの場所で使われていたり、ボーナスステージが初代仕様だったりする。
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オートセーブが採用され、コースをクリアするか出るかでセーブされる。また、エリア移動も自由に出来るようになった。
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さらにエリアごとにステージ選択時BGMが微妙にアレンジされるという力の入れようである。
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バナナやコインが非常に簡単に、しかも1ステージでも大量に稼げるようになった。コインに至ってはステージの設置数が増えただけでなく、連続で3回以上敵を踏むだけで1枚以上ゲットできるボーナスについても序盤から狙える機会が多かったりする。
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そしてこのバナナコイン、僅か15枚で7UPと交換できる。…等価が違うとはいえスーパーマリオシリーズからすれば卒倒しそうなほどに凄まじいバランスの取り方である。
賛否両論点
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これまでのシリーズとの比較
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今まで主人公の顔の形だった1UPアイテムのバルーンのデザインが、ただの赤い風船になってしまったりと非常に没個性。
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また緑の2UP、青の3UPバルーンは存在しない。ショップで買えるのはあくまで1UPバルーンの束である。
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水中ステージが存在しない。水は穴と同じ扱いであり、今までスイスイ泳いでいたコング達がなんと今回は水に入ると溺れて即ミス。
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手動タル大砲のデザインが、『2』『3』における「矢印バレル」に変更されている。
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従来はタル大砲(飛び込むと即、矢印の方向に発射)として使われていた為、旧作プレイヤーは若干の違和感を覚える。
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出演キャラクターに関する賛否
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本作では、スーパードンキーコングシリーズでお馴染みだったコングファミリーとアニマルフレンドの大半が出演しない。
前者はクランキーコング、後者はランビとスコークスのみ。
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しかもスコークスは、やりこみ要素コンプのアイテムの接近を知らせる為のアイテムとしての登場であり、冒険に協力してくれない。しかもアイテムとしての合図もややわかりにくい。
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さらに、今回の敵は新キャラである「ティキ族」であり、これまでの敵陣営だったクレムリン軍団は本作には一切関与しない。
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久しぶりの新作なのに、彼らが敵でなくて寂しいという声が多い。
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ちなみに本作で登場したティキ族は早速3DS『マリオカート7』に登場する。開発元が同じである関係か。
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そのくせ「おたすけピッグ」なる謎のオリジナルキャラが登場する。
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絡みもなければ台詞などもなく(登場自体なんの説明もない。ゲームでも「おたすけピッグ」と名乗ったりしない)、ただ中間地点に立っているだけ。操作方法を教えてくれたりお手本映像を見せてくれたりといった役目を担ってはいるが、ドンキーコングシリーズではすでにそうしたサポート用キャラとしてキャンディーコングやファンキーコングがいたはずである。彼らを登場させずにぽっと出の新キャラを使うことに対する否定の声は強い。
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ちなみに設定も「本名、年齢ともに不明。たまたまジャングルに住み、たまたまドンキーコングたちの手助けをする。」(原文まま)と、どこか投げやり感がある。こんなのに出番を奪われたコングファミリーの心境やいかに…
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やたら高い難易度
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とにかく「何回もやり直して覚えろ」と言わんばかりのステージ構成。その上後半になると強制スクロール面が多くなる+トロッコなどに代表される乗り物ステージはあらゆるミスが即死、通常のステージでも揺れる足場(バランス床)や崩れる地形など、即死の伴う同じようなパターンでプレイヤーを殺しに来る場面がやたらと目立ち、道中で気の休まる場面が段々と減っていく。
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KONGパネルを集めることで解放される隠しステージの難易度は輪をかけて高い。そもそもろくな足場がない上に中間ポイントが存在せず、ミスしたら問答無用で最初からやり直しという仕様もこれに拍車をかけている。
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ミラーモードも難関。左右反転・ディディー抜きもそうだが『スーパードンキーコング』と違い、ライフ制のおかげで多少強引な突破も成り立つゲームバランスに仕上がっている為、たった一度のミスさえ許されない本モードは厳しい。
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ただ、乗り物ステージに限っては元からミス=即死なので反転以外に影響する部分が少ないのが救い。
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やりこみ要素が豊富になった一方、密度も高くなり1ステージ中になすべき事柄が増えすぎてコンプが面倒になっている。
問題点
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操作性にクセがある。
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特にローリングの「移動入力中にコントローラを振る」のが厄介。これ自体は遊んでいけばすぐに慣れるが、今度は「静止時や方向下入力時+コントローラを振る」のアクションである息吹やハンドスラップとの兼ね合いでローリングが暴発しやすくなり、ミスに繋がることが多くなる。
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トライ&エラーを繰り返したり、タイムアタックなどでずっとプレイしていると腕が疲れてしまう。
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ドンキー自身の挙動も慣性が強めで、ミスやダメージに繋がりやすい。
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このこともあって「GCコントローラ/クラシックコントローラーに対応していたら……」という声が後を絶たない。
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スーパードンキーコングに存在した「ローリング攻撃を敵に当てると、攻撃時間が延長される」というものが無いため、それに慣れていると思わぬ場面で接触事故を起こしてしまう。
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全体的に「崩れる」「揺れる」「落ちる」といった、プレイヤーに素早く移動することを強いる地形トラップの類がやたら多い。
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そのパターンに伴って、強制スクロールでもないのに先を急ぐように強要されるステージが非常に多い。
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2P同時プレイでは各々のミスで残機を消費する。
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これ自体は普通の仕様だが、問題はジェットバレルやトロッコ。これらは2P同時プレイでも強制的に操作や判定が一人分の共用になるのだが、ミス時に残機が2減少するというとんでもない仕様のため、死にゲーの要素が悪い意味で助長されてしまう。
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当然、残機がよほど潤沢でない限りステージ構成が判明した時点で1Pモードに戻す事になるが、これもまた面倒。
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ラスボスステージの構成が不親切。
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敵や障害物に当たると即ミスの縦スクロールステージのあとでラスボス戦であるため、ラスボス戦に到達するまで時間がかかり、かなりイライラする。
この縦スクロールステージでミスすると初心者救済アイテムが持ち込めなくなってしまう点も大きい。
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DKバレルも入口にしかないため補充が利かず、一度でもミスするとステージを出ない限りディディーコングなしで戦うしかなくなってしまう。
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サウンドテストですべての曲を聴けないどころか、公式サントラにも入っていない曲がある。オリジナル、アレンジ共に名曲揃いなために残念。
総評
開発元の変更から発売前は出来映えを不安視されていたが、いざ発売してみるとその完成度はまさにプレイヤーが待ち望んでいた「スーパードンキーコング」そのものと言っていいほどであった。
難易度や出演キャラクターに対する批判は少なくないが、元々難しいステージの目白押しだった本シリーズは純粋にアクションゲームの手応えを求めるプレイヤーが多い。
これに加えて練り込まれたステージギミック、美しいグラフィック、高い難易度とそれを苦に感じさせないバランスの取れたゲーム設計が見事に傑作の名に相応しいゲームへと昇華させている。
まさに、2D横スクロールアクションゲームの一つの到達点と言っても差し支えない本作。腕に自信のあるプレイヤー・初心者ともに是非プレイしてもらいたい。
余談
日本版CMのナレーションは、アニメ版ドンキーコングでドンキー役を務めた山寺宏一が担当している。ドンキーのセリフの演技もアニメ版に寄せており、視聴していた人にとっては懐かしく感じるかもしれない。
ドンキーコング リターンズ 3D
【どんきーこんぐ りたーんず すりーでぃー】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ニンテンドー3DS
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発売元
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任天堂
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開発元
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Monster Games
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発売日
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2013年6月13日
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定価
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4,800円
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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良作
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ポイント
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イージーモード搭載でアクション初心者も安心
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概要(3DS)
ニンテンドー3DSへの移植作。ただし単なるベタ移植ではなく、3DSならではの立体視への対応や新モード・コースの追加などが行われている。
変更点(3DS)
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立体視に対応。もともとステージやコングたちのダイナミックな動きやアクションが特徴な作品であることもあり、立体視との相性は抜群。操作が難しいと感じたならば3Dボリュームを切ればOK。
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難易度の追加。Wii版そのままの「オリジナルモード」と「ニューモード」から選択可能。
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「ニューモード」では初期ライフや救済アイテムが増え、アイテムは一度に3つまで装備可能。さらにコース途中でミスしてもアイテムが消滅することがなく、コース内でアイテムを使わなかった場合は再度装備可能になる、アイテムの価格が下がるなど、難易度が大きく緩和されている。
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各エリアをテーマとした新コースの追加。モード問わず条件を満たせば遊ぶことができ、ニューモードではこのコースを遊ぶための条件も緩和されている。
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ハードが変わったことにより、「リモコンを振る」必要があったアクションがボタン操作だけで出せるようになった。
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ただし、キーコンフィグが2種類しか存在せず、何故か十字キー・スライドパッドの変更とタルなどを「持つ・つかむ」動作とハンドスラップなどのボタン配置が連動しているのがほぼ唯一の難点。
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また、移植元同様ハンドスラップの操作方法が『スーパードンキーコング』と違うので、同作に慣れ親しんだプレイヤーは混乱する。旧作の操作に近づけられるようにできるなど、キーコンフィグの種類を増やして欲しかったところ。
総評(3DS)
もともと難易度が高めな作品ではあるが、比較的遊びやすくなっているニューモードを搭載。さらに新コースを追加するなどで、Wii版のプレイヤーにもある程度新鮮味を持たせている。
Wii版と比べて特に劣化した部分は見当たらないため、そちらのプレイ経験の有無を問わずお勧めできる良移植である。
余談(3DS)
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2024年6月18日のNintendo Directにて、本作をさらにSwitchへ移植した「ドンキーコング リターンズ HD」が2025年1月16日に発売されることが公表された。
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全80コースで、3DS版(追加コース込み)と同内容となっている。
最終更新:2024年12月05日 06:23