PRINCE of PERSIA
【ぷりんす おぶ ぺるしゃ】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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AppleII、Macintosh、IBM-PC、AMIGA、Atari ST、 PC-9801VM/UV以降、X68000、NES、マスターシステム、 スーパーファミコン、メガCD、PCエンジン、ゲームボーイ、 ゲームギア、ゲームボーイカラー、Xbox 360
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発売・開発元
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Brφderbund
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国内発売元 |
【PC98/X68k】ブローダーバンドジャパン 【SFC/GB】メサイヤ(日本コンピュータシステム) 【PCE】リバーヒルソフト 【MCD】ビクター音楽産業
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発売日
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【PC98】1990年7月20日
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定価
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【PC98】8,800円
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判定
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良作
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概要
『カラテカ』の作者であるジョーダン・メックナー氏が次に製作したアクションゲーム。
発売当時は同作同様に非常に滑らかな動きをすることが話題となり、ミリオンヒットを達成した人気作となった。
初出はApple II向けに1989年10月3日に発売され、翌年1990年には様々な機種へと移植された。
日本向けの初移植は1990年7月20日発売のPC-98版である。1991年以降には家庭用ゲーム機にも幅広く移植され、知名度を上げることになった。
ストーリー
ペルシャ国王サルタンは国を離れて戦地へと赴き、その間、国政は腹心のジャファーに任された。
しかし彼は邪な心を持っており反乱を起こす。
まんまと権力を手に入れたジャファーは正統なペルシャ国王になるために、サルタンの姫との婚姻を画策する。
その頃、旅の途中でペルシャに訪れた若者がいた。彼は姫と知り合い、やがて恋仲となる。
しかしそれはジャファーにとっては障害以外の何物でもなかった。
若者を地下牢へ投獄し、姫を王宮の最上階に幽閉して婚姻を迫るジャファー。
だが姫は頑として受け入れなかった。
業を煮やしたジャファーは、砂時計を姫の前に置き、最後の一粒が流れ落ちるまでの間に結婚か死かの二者択一を迫る。
一方、若者は見張りの隙を突いて牢から脱出。囚われの姫を救い出すため走り出したのだった。
特徴・システム
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サイドビューのアクションゲーム。様々なトラップが施された迷宮(全13面)を突破し、囚われの姫を救出に行く。
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動きは多彩で、走ったりジャンプしたりはもちろん、よじ登ったりぶら下がったりなどもできる。これらの動きを組み合わせて進んでいく。
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迷宮には石の板が敷かれていて、これが動きの単位となっている。走ると一歩で二枚分進む。トゲだらけの床を進むことが出来る忍び足で一枚分。助走しないジャンプで二枚分飛べ、助走すると三枚分飛べるなど。
この動きの単位はトラップを突破するタイミング取りの基準となる。助走をつけて落とし穴の二枚前でジャンプで三枚分飛び、そのまま一歩走って二枚分進み、ジャンプして三枚分飛ぶ、というような感じでタイミングを取っていくのだ。この練りこまれた動作が、一種のアクションパズル要素を生み出している。
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ただし、動きが必ず板の長さの単位に収まる訳ではなく、実際は微妙なズレが出ている。調整をしないでいい加減に動くと死に繋がることもしばしば。
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よくある残機制ではなく「制限時間制」を取っている。制限時間がなくなった時点でゲームオーバーになる。
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制限時間内ならいくら死んでも構わないが、タイムリミットが訪れる前に全てのステージをクリアしなくてはならない(バージョンによっては途中セーブが可能)。
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死んだ場合は攻略中のステージの最初からに戻されるが、それまでに経過した時間は巻き戻らないため大幅なタイムロスになる。そのためじっくりと迷宮を探索している余裕はない。マップ構成と攻略法をある程度頭に入れた上で、スムーズに進んでいかないとまず間に合わない。
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また、本作の主人公は体力制(初期値3ポイント)であり最大値を上昇させる手段もあるが、戦闘と移動それぞれで1ダメージまたは即死の条件が設定されており、行動に制限がある。リアルな人間として考えると相当な身体能力を持つキャラクターだが、決してスーパーマンではない。
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例えば、通常の状態では二段下に落ちただけで1ダメージを受けてしまい、三段目以上の高さから落ちると即死してしまう。壁にぶらさがりながら慎重に降りることで、もう一段分安全に降りることができるようになる。その仕様上、原則として四段以上の高さから無事に降りる手段は無い。
機種によってはたった一段下への扱いについても制限があり、「壁にダッシュジャンプしてぶつかり一段下の床に落ちる」「一段下の床に掴まろうとしてジャンプし壁にヒザを強打する」といった事象でも1ダメージとなる場合がある。ある意味リアル。
また、武器を持った相手との剣戟による戦闘場面もあるが「剣を抜いていない状態で敵の攻撃を受ける」と、どんなに体力があっても一撃で殺されてしまう。この点は原作者であるジョーダン・メックナー氏の過去作『カラテカ』の基本システム(構えを取らずに攻撃を受けると即死)をそのまま引き継いでいる。
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アクションパズル要素が色濃く、マップの随所に仕掛けられたトラップを突破する事に主眼が置かれている。
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トラップは深く空いた3段もしくはトゲ床の穴、仕掛けによって開閉する格子、乗ると落ちる板、床から飛び出す槍、ギロチンなどがある。一つ一つのトラップは単純なものだが、それが複数組み合わさる事で、単純に回避するだけでなく攻略に工夫を必要とするギミックとなってる。
そしてトラップはいくら体力があろうとも引っかかれば一発死。このため、慣れるまで非常によく死ぬ。
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上述の通り、数は少ないが、敵キャラとの戦闘もある。刀による剣戟(攻撃と防御が可能)で相手の体力をゼロにすれば勝ちとなる。だが、ボスキャラクター以外は必ずしも倒す必要はなく、攻略優先でなんとか逃げるという選択もある。もっとも、簡単に逃げさせてくれるわけではないが。
評価点
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ぬるぬる動くアクションゲーム
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一歩キャラが動けばその特徴はすぐ分かる。当時の他のアクションゲームと比較すると、動きの滑らかさが段違いであり、とてもリアルな動きを見せてくれる。主人公の勢い良く走る姿や着地した時のしゃがみポーズ、よじ登る時の力の入れ加減など、まさに生きているかのよう。発売当時は余りに滑らかで気持ち悪いとまで言われたほど。
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これは、実際のモデルとなる人物の動きを写真で撮影し、それをトレースして作画に活かす「ロトスコープ」という手法によるもの。
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この手法は古くはディズニーが初の長編アニメ作品『白雪姫』を制作する上で、キャラクターの動きに写実的なリアリティを取り入れドラマ性を高めるために初めて用いた手法としても知られている。
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最初に発売されたAppleII版は280×192というファミコン並みの解像度だが、にもかかわらずこの生きているような動きが見事に表現されているのだ。
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数々のトラップを攻略する楽しさ。
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前述の通り、動きの単位がある程度決まっているのでパズル的に突破できる。どこで助走して、どのタイミングで飛んで…等々。トラップに対しカチッとはまるような攻略法を見出していく楽しさがある。
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コース突破の要領が分かれば、ゲーム本来の目的であるタイムアタックに必然的に挑戦することになる。これがまた緊張感があって変わった楽しみができる。アイテム取得や戦闘すらタイム短縮の対象とし、ひたすらに速さを追い求めていくプレイは難しいが、バッチリ決まった時の快感は大きい。
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やけにリアルな惨殺描写。
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本作の描写のもう一つの特徴。トラップに引っかかった時の様子が妙にリアル。ギロチンに真っ二つにされた体、槍に串刺しになった有様、高所からの墜落死…。
どれもみな「痛そう」では済まない死に様が、リアリティを重視したゲーム展開に花を添える。
問題点
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操作性が少々やっかい。
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「ボタンを押した瞬間にプレイヤーの命令通りに行動する」というようなものではなく、主人公の歩幅やジャンプに必要な助走距離、踏み切りのタイミングなど様々な要素を前もって把握することを前提とした、良くも悪くもリアル志向な操作性になっている。この手のアクションゲームとしては類例がごく限られており、まともに動かせるようになるまで相応の練習が必要となる。
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総じてトライ&エラーを経てプレイヤー自身の腕前の熟達が求められる玄人向けのゲームであり、ライト層やアクションゲーム初心者には難しい。
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プラットフォームの変遷に伴ってトラップやギミックの種類こそ増加しているが、基本的にトラップは一撃死であり、回避手段も変わり映えがしない。やや単調さを感じる部分もある。
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一部機種では、一定の状況になった際に激しい処理落ちが発生する。複数のトラップが同時に機能するような場所は仕方ないと思えるが、流石に単純に戦闘するだけで処理落ちはあんまりである。
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主人公とほぼ同じ姿をした特殊なボス「シャドーマン」(一部機種には登場しない)の対処方法が、ゲーム中ではノーヒントである点。
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「シャドーマンにダメージを与えると主人公もダメージを受ける」(逆も同様)という厄介極まりない特性を持っており、その特性に対する解法はゲーム中ではヒントが一切無い。だからといって「マニュアルプロテクトのように取扱説明書には攻略法が記載されている」のかというとそうでもなく、機種によっては取扱説明書でも断片的なヒントしか記載が無いので、取扱説明書がプレイヤーの手元にあったとしても解法が分かる保証は無い。
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当時の洋ゲーらしい点ではある。
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解法自体は不自然なものではなく、推理によって導き出せる類いである。
総評
一目で分かるその滑らかでリアルな動き。さらに仕掛けの謎解きから行動の最適化まで、パズル要素の濃いゲーム性。それらを備えた本作はこれまでに無いゲームだった。
実際の人間のモーションをトレスしたその動きはまさに生きているかのよう。そして巧みなトラップはそのリアルな動きを十分際立たせる。
ゲームとしても様々なトラップを潜り抜ける楽しさがあり、タイムアタックに挑戦する楽しみもある。
操作性を熟知し、そのうえでトライアンドエラーを繰り返して覚えるタイプの高難度のゲームであるが、そうした作風にやりがいを覚えられるプレイヤーであれば楽しめるだろう。
余談
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360にて『プリンス・オブ・ペルシャ・クラシック』として、2007年配信された。描画自体は3Dだが、ゲーム操作は2Dとなっている。
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リトライしても時間が巻き戻るようになっており初心者にも優しいシステムになっている。
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2010年に『プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂』を元にした映画が公開されている。ただ、内容は元のゲームのシナリオとはほとんど関係ない。
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『ASSASSIN'S CREED』は元々このシリーズのスピンオフとして製作されていた。初期のタイトルは『Prince of Persia: Assassins』だった。
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PS2で発売された『時間の砂』3部作の開発で培われたノウハウが、後にユービーアイソフト最大のフランチャイズとなる『ASSASSIN'S CREED』シリーズを生み出すこととなった。
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ゲームの背景世界や物語は『千夜一夜物語』をモチーフにしている…と思われがちだが、実はどちらかと言うと映画『バグダッドの盗賊』の1940年版の方が直接的なネタ元になっている部分が多い。
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ゲームの物語は映画とは比較にならないほど単純だが、宿敵が魔法使いで名前がジャファーという部分は同じ。
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結果的に、シナリオや背景の一部に同じ映画を参照しているディズニーのアニメ映画『アラジン』と一部の設定がかぶっているが、ディズニーの映画の公開は1992年、このゲームの発売は1989年であり、なんとこちらの方が早い。
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ちなみにSFC版17面、特に中ボスの登場シーンは1974年の映画『シンドバッド 黄金の航海』へのオマージュだと思われる。
その後の展開
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人気作であったため、必然的に日本移植版も製作されている。
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本作が日本国内で人気作品となる大きな要因になったのは、アルシスソフトウェアが手掛けたPC98版である。
AppleII版の2倍の解像度とデジタル8色モードによって描かれた緻密なドット絵表現で、開発者のジョーダン・メックナーが絶賛したことで知られている。
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PC98版では、13ステージにラスボスとの最終決戦の場面が追加され、オリジナル版のラスボス戦は中ボス扱いとなった。
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また、当時アルシスソフトに在籍していた山中季哉氏が手掛けるオリジナルBGMが、全場面に用意された。独自のオープニングやエンディングのビジュアルの追加など、単純な移植でなくリメイク作の様な出来となっている。
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上記の通り様々な追加要素や改良点がある為か、国内メーカーが手掛けた移植版は基本的にPC98版がベースとなっている。
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日本におけるCS機ではSFC/MCD/PCE/GB(海外のVirgin Games開発)でも移植版が発売されている。PC98版に引き続きアルシスソフトウェアが手掛けたSFC版は、基本システムを踏襲しながらも内容は大幅なアレンジが施されている為、詳細は後述。
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PCE版やMCD版はステージ数はPC98版と同じであり、ドット絵の雰囲気もPC98版に近いものになっている。こちらはCD-ROMの容量を生かしたビジュアルシーンやアニメーションデモを追加している。
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なお、MCD版の開発元は公式にはビッツラボラトリー(タイトル画面に表示)だが、実質的にはゲームアーツとビッツラボラトリーとの共同開発である。
続編・派生作品
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『プリンス・オブ・ペルシャ』(SFC 1992年7月3日発売)
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開発は先述の通り、PC98版を手掛け原作者から称賛されたことのあるアルシスソフトウェア。原作やPC98版に無かった要素が、自然な範囲で多く追加されている点が特徴。
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ストーリーと基本システムは原作から踏襲されているが、元の雰囲気を残しながらも「制限時間が原作の2倍でステージ数が20に大幅増加」という構成の強化を施され、BGMもPC98版を手掛けた山中季哉氏に加えて中野哲也氏らの手によって全て新曲に差し替えられており、パラレルワールドのようなアレンジ版となっている。
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シリーズの中では異色作と言える内容だが、SFCソフトであることや『ゲームセンターCX』で取り上げられたことなどから、日本での知名度は高い。
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『プリンス・オブ・ペルシャ2 ザ・シャドウ アンド ザ・フレーム』(PC/SNES/GENESIS 1993年発売)
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日本語版は一部のPC版にしか存在せず、日本での知名度は低い。Xb版の『時間の砂』にはPC版『2』も収録されている。
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初代の後日談としてストーリーが展開する。前作は終始城内が舞台だったのに対し、今作では城外の洞窟や遺跡など様々な屋外フィールドを冒険する。ストーリー性も強く、前作とは趣が異なる。
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『プリンス・オブ・ペルシャ3D』(Win 1999年9月22日発売 DC 2000年12月6日発売)
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シリーズ初の3Dアクション化。主な特徴として移動中から戦闘モードに入ることで操作形態が変化したり、最初は丸腰で牢屋に放り込まれた状態から脱出する方法や要所で解決策を探るなど謎解きの要素が多くなった。
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『プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂』(PS2 2004年9月2日発売)
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原題は『Prince of Persia:Time of Sands』で、まさかの3D新作。開発はユービーアイソフト モントリオール・スタジオが中心となって作られている。
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サブタイトルにある通り「時間」を操る、当時としては斬新なギミックが盛り込まれている。プリンスの多彩かつ滑らかなアクションも好評で、一定の人気を得た。
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なお、現在『時間の砂』のリメイク版がPS4/One/Win向けに開発されているが、何度も延期を繰り返したあげく開発がデザイン段階に戻っているらしく、発売時期は未定となっている。
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『プリンス・オブ・ペルシャ ケンシノココロ』(PS2/Xb 2005年10月13日発売)
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原題は『Prince of Persia: Warrior Within』で、『時間の砂』の続編。内容は基本的に前作と同じ。
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ストーリーでは、前作において「時間の砂」を解き放ち歴史を変え時の番人「ダハカ」に追われる身となったプリンスが「時の島」へと赴く。
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『プリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂』(PS2 2006年6月15日発売)
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原題は『Prince of Persia: Two Thrones』で、『時間の砂』3部作の完結編。プリンスと別人格・ダークプリンスを使ってゲームを進めていく。
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プリンスは剣を、ダークプリンスは鉄製の鞭を武器として使用し、ダークプリンスの鞭でしか進めない場所も多々ある。
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また、一撃で敵を葬り去ることができる「スピードキル」が導入されたほか、馬車などの乗り物に乗って戦う場面がある。
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『プリンス・オブ・ペルシャ』(PS3/360 2009年1月22日発売)
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『時間の砂』3部作のシステムと『ASSASSIN'S CREED』で使われていた「Scimitarエンジン」を使用した、『プリンス・オブ・ペルシャ』のリブート版。
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『時間の砂』3部作と直接的なつながりはなく、いわゆる独立した世界の作品であり、ナンバリングもサブタイトルもないため、初代と区別する便宜上『プリンス・オブ・ペルシャ(2008)』と呼称されることが多い。
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『プリンス・オブ・ペルシャ 忘却の砂』(PS3/360/PSP 2010年6月24日発売)
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原題は『Prince of Persia:Forgotten Sands』で、『時間の砂』3部作の直接的な続編に当たる。
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『ASSASSIN'S CREED』シリーズで培った要素をいろいろ盛りこんだため、さらにスピーディな展開を見せるような作品に仕上がっている。時間を操る要素ももちろん健在。
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なお、日本未発売のWin版はユービーアイソフトの認証サーバーとゲームデータを同期するDRMが組み込まれており、常時接続した状態でないとセーブはおろかゲームプレイ自体もできない代物だった。
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当時はサーバーダウンもかなりの頻度で発生したり、本作以外にも同DRMが組込まれていた別のゲームでは数日もプレイできない事態が起きていたことから多数の批判も上がっていた。
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ただ、このシステムが後のユービーアイソフトの配信プラットフォーム「Uplay」「UBISOFT Connect」の礎になったのは間違いない。
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『プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠』(PS5/XSX/PS4/One/Switch/Win 2024年1月18日発売)
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13年半ぶりとなるシリーズ完全新作。新主人公・サルゴンが王国からさらわれた王子を救うため、偉大なカーフ山へと旅に出る。
最終更新:2024年03月11日 21:12