サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~
【さくらたいせんすりー ぱりはもえているか】
ジャンル
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ドラマチックアドベンチャーゲーム
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対応機種
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ドリームキャスト プレイステーション2
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発売・開発元
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セガ オーバーワークス(DC版開発元)
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発売日
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【DC】2001年3月22日 【PS2】2005年2月24日
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定価
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【DC】8,190円 【PS2】5,040円
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レーティング
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【DC】セガ審査:全年齢推奨 【PS2】CERO:15歳以上対象
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廉価版
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【PS2】SEGA THE BEST 2008年10月23日/2,940円
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判定
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良作
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サクラ大戦シリーズ
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概要
『サクラ大戦』シリーズのナンバリングタイトル第3作。
前作までは大正時代風の架空世界の日本を舞台としていたが、本作では同時代のフランス・巴里(パリ)が舞台。
新ハードであるドリームキャストの性能を活かした超大作ギャルゲーとなった。
広井王子氏によれば、本作のストーリーの元ネタは森鴎外の小説「舞姫」とのこと。
ゲーム内容
ストーリー&キャラクター
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帝都から巴里へ
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本作はシリーズの主人公である大神一郎が、軍の留学派遣で巴里を訪れるところから物語が始まる。本人は知らされていなかったが、過去の2作の戦いで帝国華撃団・花組を率いて「魔」との戦いに勝利した大神を、欧州防衛のために新たに設立された巴里華撃団・花組の隊長として据えるためである。大神は、新たな団員を率いて、新たな花組を一から作り上げ、巴里を狙う敵と戦う。
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部下となるヒロインは5人と前作・前々作よりは減っているが、天真爛漫ではあるが少々おバカな修道女エリカ・フォンティーヌ、誇り高い貴族令嬢グリシーヌ・ブルーメール、幼いがしっかり者のサーカス芸人コクリコ、総計すると懲役千年もの罪を犯した大悪人のロベリア・カルリーニ、欧州育ちだが本土の女性以上に大和撫子らしい北大路花火、と個性的かつ魅力的な女性ばかり。前作までの8人のヒロインとは全くキャラが被っていない上に、チームとしての5人のキャラクターバランスがしっかり取れているのも見事といえる。日本に残してきた帝国華撃団のメンバーも、ストーリー中盤でゲストキャラクターとして登場する。
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キャストもエリカ役の日高のり子氏やグリシーヌ役の島津冴子氏、コクリコ役の小桜エツコ氏にロベリア役の井上喜久子氏、花火役の鷹森淑乃氏など実力派の声優を起用。
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とりわけ井上氏はそれまでのおっとりした役柄からは想像がつかない程の悪党声を演じ、本作を期に『マクロスF』や『海賊戦隊ゴーカイジャー』『メタルギアソリッド3 スネークイーター』で魅力的な悪役を演じている。また、鷹森氏は声優業を休業し主婦業に専念していたため本作が事実上の復帰作となる。
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本筋とは直接関係のない要素ではあるが、町の住人の多くに連続イベントが設定されており、異邦人である大神に対して、巴里の人々は当初は冷たく当たるが、イベントをこなして親密になっていくことで徐々に巴里の住人として大神を迎え入れるようになる。その変化が実感として感じられるように作られているのも、本作の魅力といえよう。
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そして、本作の最大の見せ場は、エピローグである。当初から大神の巴里赴任は一時的なものと決まっており、留学期間が終われば日本に戻ることになる。つまり、ストーリーを通じてヒロインとどれだけ親密になっていても、最後は別れが待っているのだ。
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元ネタの小説「舞姫」ほど悲惨ではないが、それでも本作のラストは物悲しく、切ない。だが決して救いようがない訳ではなく、「いつかまた会える」という希望に満ちた雰囲気をプレイヤーに与えてくれる。
アドベンチャー
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アナログLIPS
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シリーズ初登場。ドリームキャストのゲームコントローラのアナログ方向キーを生かしたシステム。
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選択肢は一つしかないが、選択画面内部に青色のバーがあり、このバーの高さを調節することで強調しているか、抑え気味なのかを選択できる。
戦闘システム
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ARMS
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前作までは、スクウェアの升目で区切られたマップ上で駒となる敵味方のユニットを動かして戦いが繰り広げられる、ウォーゲームとしてはよくあるタイプの戦闘システムだったが、本作では「ARMS」と呼ばれるシステムに完全に刷新。3Dポリゴンで構成された升目の存在しない戦闘フィールドの中で、行動力が続く限り自由に移動、攻撃、防御、回復などの行動が取れるようになった。移動できる範囲や攻撃できる範囲は自機を中心とした円で表示され、アナログスティックを使ってドット単位の位置取りが行える。
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また、各メンバーの必殺技演出も、ハードの性能向上を活かしてド派手なものになっている。
メカニック
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個性化されたデザイン
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前作までに登場した主人公側の霊子甲冑は基本的に全員が同じ仕様で、使用する武器と色が違う程度だったが、本作からはメンバーごとに機影が変わるほどのカスタマイズがされるようになった。メカデザイナーは元サンライズの明貴美加氏が担当。
評価点
シナリオ&演出面(評)
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舞台の一新
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シリーズ三作目ということでマンネリが出やすい時分ではあったものの、メンバーと舞台設定を一新して(ハード的な意味でも)新天地での第一歩として成功した。
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前作がヒロインの人数が増えた事もあってシナリオが長くなり、周回が更に厳しくなったが、ヒロインの人数が5人となったことで、ヒロイン個別のEDを見るギャルゲー的側面でも遊びやすくなった。
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シナリオの大筋はシリーズの特徴でもある王道展開が多く、前作までの登場人物が救援に駆け付けるシナリオ等、燃える展開も多い。
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巴里の人々
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本作では華撃団の関係者だけでなく、巴里に住む一部の一般市民にも立ち絵が用意され、彼らと交流する事が出来る。これにより舞台が遠い異国の地になったにもかかわらず、今まで以上に街の平和を守るという任務に感情移入出来るようになった。
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進化した映像表現
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アニメとCGの違和感のない融合を目指した「ネオCG」と名付けられたムービーは見事に成功しており、特にOPはゲーム史上屈指の名作と名が上がる事も。
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前作まで採用されていたアドベンチャーパートの壁紙を廃止し、キャラクターの立ち絵や背景、劇中のムービーが全画面に表示されるようになった。
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また技術力の向上により、ムービーの再生が画面の暗転を経ずにシームレス化された。これを更に応用し、ムービーを再生→途中で選択肢を挟む→再びムービーを再生するといった場面もあり、臨場感が増した。
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戦闘パートのユニットとマップの全てがポリゴンで作られるようになった事に伴い、自由なカメラワークとロボットの豊かなモーション表現が可能となり、アニメさながらのイベントシーンがムービーに頼らずにリアルタイムで描写出来るようになった。
システム面(評)
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サブキャラクターの仕様
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今まで隊員のみだった信頼度のシステムが、上述の巴里の人々を含めたサブキャラクターにも適用されるようになった。
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個別EDを迎える事は出来ないが、彼らの信頼度を一定値まで上げる事でラストに特別なイベントが用意される他、後述の2周目以降のやり込み要素の条件にも関わってくる。
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アドベンチャーパートのフリー移動の改良
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今まで一部のシナリオを除き、華撃団の施設内のみに限られていたフリー移動だが、本作では本部のテアトル・シャノワールとその周辺のモンマルトル一帯を探索することが出来、巴里の街の雰囲気を楽しめる。
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探索範囲が増えた事でイベントの見逃しが懸念されたが、移動経路にイベントがある場合は移動を中断して立ち会うかスルーするかが選択出来るといった配慮がなされている。
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戦闘システムの一新
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今までは必殺技や「かばう」コマンド等、演出は凝っていたがSRPGとしては特徴の薄いゲームだった。アクションゲームのような操作感の「ARMS」を採用する事で、シリーズ独自の魅力を打ち出すことに成功した。
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大幅に増えたミニゲーム
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各ヒロインのミニゲームだけでなく、本作ではポーカーやブラックジャック、スゴロクと一体化したスロットなどが遊べるカジノ、更には『ベア・ナックル』をベースにした2Dアクションゲームが収録されており、ミニゲームの作り込みに関しては間違いなく歴代最高となっている。
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やり込み要素の強化
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仕様上、信頼度適用の対象外となっていた主人公の大神に対して、独自の要素となる隊長値と経験値が新たに設けられた。共にアドベンチャーパートの行動によって変動し、前者は必殺技のタイプ、後者はパラメータや必殺技の威力に影響を及ぼす。
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2周目以降、隊長値と経験値に加え、メインとサブキャラクターの信頼度が一定値を超えている場合、終盤にて最強の必殺技を使えるようになる。
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射程こそ短いものの、範囲はなんとマップ全域、威力も雑魚であれば確実に一撃で倒せる等、文字通りの必殺技である。これまでのシリーズを踏まえたファン必見の演出もあり、この必殺技の解禁を目指すのが1つの目標となる。
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これまで劇中のムービーやBGMがクリア後のおまけとして鑑賞出来たが、本作からはイベントイラストも含まれるようになった。また本作のみ、戦闘パートのユニットの3Dモデルも対象となっている。
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更に、ゲーム発売後に半年以上に渡ってドラマダウンロード(DLC)が配信される等、ゲームクリア後も長期に渡って楽しめるように意欲的な試みも行われた。
問題点
シナリオ&演出面(問)
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大神とヒロインの事情
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今までは選んだヒロインと共に過ごす姿が描かれる、ヒロインと結ばれたその後とも取れるEDだったのだが、本作はヒロインの手紙を胸に日本へ帰るEDであり、別れが強制されてしまう事には残念な声も多かった。
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逆に『サクラ大戦2』までのヒロイン達からすると巴里にて大神に浮気をされてしまうという事になり、浮気をしない(誰もヒロインを選ばないED)は本作に存在しないのでヒロインは誰かを絶対に選ばなければいけない(強制的に浮気させられる)事で残念な声が上がっている。その結果帝都花組派・巴里花組派どちらからも不満が残るEDになってしまっている。
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『2』の続編という設定上ある意味仕方がないのだが、大神と本作ヒロインの行く末は続編の『4』に委ねる結果となった。
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終盤のシナリオ
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終盤にて、黒幕から敵の怪人に纏わるある真相が明かされるが、『1』程ではないにしろその部分がかなり唐突。
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黒幕自身は中盤辺りから登場し、真相に関する現実の歴史とも符合するある単語を繰り返すのだが、その単語について知識があったとしても終盤の真相を突き止めるのは難しい造りとなっている。
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また、ヒロインたちが戦意を失う展開についても不評が多い。
この下りを大まかに説明すると「黒幕が巴里華撃団一同に初めて対面した時に、ヒロインたちの出生に関する『ある真実』を明かす。そしてその秘密を知ったヒロイン全員が『自分たちのこれまでの戦いは正しかったのか』と思い詰めて戦意を失ってしまう」という展開。
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問題は、プレイヤー目線で「真実を明かされる」ことと「戦意を失う」ことが線で結びつかず、感情移入できないところ。
プレイヤーが思わず「だからなんだよ」と言いたくなるような明かされた真実の突拍子の無さもさることながら、黒幕の手により巴里の大部分が危機的状況に陥り、自分たちも大量の敵に囲まれた中ですら『自分たちのこれまでの戦いは正しかったのか』と悩みだすため、プレイヤーを置いてきぼりにしてしまう。
システム面(問)
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戦闘パートが簡単すぎる
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SRPGとしては比較的優しい難易度のサクラ大戦シリーズだが、その中でも本作は最も簡単な部類に入る。爽快感は確かにあるが、それ以上に歯応えが無いという意見も多い。
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原因として挙げられるのが敵の攻撃力不足がある。加えて、前2作まで有限だった回復が行動ゲージを消費する代わりに何ターンでも使用可能な他、隊長コマンドの「山」が優秀過ぎる(防御と回復に必要な行動ゲージがそれぞれ1つと3つに減る)等、初めて「ARMS」を採用した所為か、明らかに練り込み不足な点が見受けられる。キャラゲーとしての側面も強いので調整不足で難しすぎるよりはマシではあるが。
総評
ヒロイン総入れ替え・新規の舞台と、大胆な刷新を行いながら、旧来のファンからも広く受け入れられ、シリーズの中興の祖ともいえる作品となった。今でも根強い支持を集めている1作である。
余談
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OPの評価と制作費について
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プロダクションIGが製作したオープニングは上記の通り非常に評価が高く、本作どころかDC自体を語る上でも度々話題に上がるほどである。
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そのクオリティから「億単位の制作費が掛かっているのでは」とよく言われているが、これはムービーを見たファンの勝手な推察であり、サクラ大戦Vまでのシリーズディレクター・セガ元社員の
大場規勝
が正式に「
何千万かはかかっているが、そんなに何億とかはかかっていない。ネットの噂は嘘。
」と明言している。
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噂の出所は主に大型掲示板2ちゃんねるであり、10年以上に渡って定期的にスレッドを立て続けていたのが一般的にも広がってしまった結果である。本当に実際に高い製作費だと言われて信じるに値する高いクオリティだったせいもあり信じるファンが続出してしまった。
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本作のPS2版の初回プレスには、『V』の体験版が収録されている。
最終更新:2024年07月11日 09:08