マジカルチェイス
【まじかるちぇいす】
ジャンル
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横シューティング
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対応機種
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PCエンジン
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メディア
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4MbitHuカード
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発売元
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パルソフト
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開発元
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クエスト
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発売日
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1991年11月15日
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定価
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7,800円
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判定
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良作
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オウガバトルサーガ関連作品リンク
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概要
数多くのシューティングがリリースされ、シューティングハードとしての地位を確立させた1991年期のPCエンジン界に突如現れた一作。
『コットン Fantastic Night Dreams』に次ぐ魔女っ子STG。ダークな世界観でお笑い路線という変化球的なストーリーだった向こう側と違い、明るい色使いでポップで可愛い世界観になっている。イメージとしてはファンタジーゾーンや星のカービィシリーズに近い。
発売、開発元が無名なメーカーであり、特に前評判が高かったわけではないが、本作の魅力溢れる内容は、多くのPCエンジンユーザーを虜にしていく事になる。
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すでに発売元のパルソフトは経営難であり、本作の発売の翌年に倒産してしまう。開発元のクエストも、まだ『伝説のオウガバトル』や『タクティクスオウガ』といったSFCの傑作を出す前のマイナーメーカーであり、ユーザーの知名度は低いものであった。
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パルソフト経営難の件もあり、ソフト在庫は極めて少なく、それでいて本作の人気は口コミで広がった為、入手が極めて困難な状態が続いた。これがPCエンジンのプレミアソフトとしての事の始まりといえよう。
ものがたり
魔女修行中のリプルは、恐ろしーい魔女の先生との約束を破って、禁断の本「ねむれる悪魔」の表紙を開いてしまいました。
するとどうでしょう。突然その中から6匹の悪魔が現れ、そのまま逃げ去ってしまったのです。
さァー大変、この6匹の悪魔をつかまえ、またもとの本の中に戻さないと一大事です。
リプルは約束を破ったバツとして、カエルにされてしまうのです。
ガンバレ!リプル!!友達の星の精、くるるんとぐるるんを連れ冒険の旅に出発だッ!
(説明書2ページ目より引用)
ゲームのルール
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ゲーム前に3段階の難易度を選ぶ事になる。難易度は「らくらく(簡単)」「わくわく(普通)」「どきどき(難しい)」があり、らくらくは3ステージで途中終了、他2つは6ステージ構造である。
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残機無しのライフ制。ライフ及び「えりくさぁ」が全部無くなるとゲームオーバーになる。
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「えりくさぁ」は持っている状態でライフが無くなると、それと引き換えにライフが全開するアイテム。ショップでしか購入できず、1つしか持てない貴重品である。
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IIボタン押しっぱなしでショット、2回連続で押すとストックしているアイテムを使用可能。またIボタンで自機の周りに付いているオプションの配置の固定/解除、IIボタンを押しながらIボタンでオプションの射撃方向(自機の移動方向の逆を向く)の固定/解除が行える。
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敵を倒すと「くりすたる」が出現、それを集め、ショップに入ると買い物ができる。
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ショップはステージ1~5は道中に出現、ステージ6はステージ開始前に強制出現し、道中には一切登場しない。すなわち、ステージ6のみはショップに頼る事ができず、忍耐勝負になる。
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ショップ内にはメインショット(装備)の変更、ライフ回復、移動スピード変更、など様々なものが売られている。それらをいかに計画、効率的に購入するかが、本作をプレイする上での攻略の鍵となる。
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多くのRPGのショップとは違い、物を売る事はできない。すなわち、装備を買い換えると前の装備は消滅する為、アバウトな購入は先の戦況を不利にさせていく事は必至である。
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各ステージにいるボスを倒せばそのステージはクリア、ボーナスとしてライフ回復とクリスタルが少し貰える。らくらくのステージ3及び、他のステージ6をクリアすると、それまでの結果によりスコアが計算されゲーム終了になる。
評価点
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色使いがカラフルで鮮やか。自機や敵、背景に至るまで丁寧な描き込みがされている。主人公の女の子「リプル」が可愛い。
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PCエンジンの性能を限界まで引き出した演出。
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PCエンジンでは不可能といわれた多重スクロールによる演出が実現されている。
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それでいてPCエンジンのSTGにありがちな処理落ちやスプライト欠けなどがほとんど発生しないという技術力の高さを存分に引き出している。
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崎元仁・岩田匡冶コンビによる、内蔵音源の性能を存分に発揮したBGMの評価は極めて高い。
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裏技でサウンドテストが聞ける。思う存分名曲を堪能すればいいさ。
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2013年にはまさかのサウンドトラック化がなされている。
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適度なゲームバランス。
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ショットをその場の相性に合った買い換えを行う事により、戦況を幾らか緩和できる。これにより、シューティング初心者でもある程度楽にクリアできる。
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逆に上級者には買い物せずにクリアするという目標もある。くりすたるは全ステージクリア後にそのままボーナススコアとして加算されるので、ハイスコアを狙うのなら、買い物をしない過酷なプレイが求められるのだ。
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あえて普段使わないショットで攻略する楽しみもある。
賛否両論点
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巨大な敵や派手な展開が少なく、迫力に欠ける。
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STGでお約束な画面からはみ出るほどの巨大な敵などの存在はなく、ボス敵も自機より少し大きい程度に収まっており、派手な爆発などの演出はない。
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それ故に処理落ちやスプライト欠けが起こらずに常時スピーディな展開を楽しむことができるので、一概に悪いことではない。
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難易度は若干控えめ。
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高難易度のどきどきモードですら、他のSTGに比べてしまうとそこまで凶悪な難しさではないので、上級者には物足りない内容かもしれない。
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一応買い物を縛ることによってそれなりの難易度は得ることができる。
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ライフアップやエリクサーを買わずにクリアする事で高いスコアボーナスも得られる。
問題点
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ステージが少なめで、ややボリューム不足なところ。
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スムーズにクリアするとだいたい30分前後で終わってしまうため、他STGと比較するとプレイ時間は短めと言える。
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PCエンジンのSTGにおなじみのキャラバンモード(5分間スコアアタック)もない。
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スコア稼ぎが熱いゲームな割に、セーブやスコアランキングは用意されていない。
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ショットの性能差が激しい。
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2面で購入できる「すいんぐ」が火力・範囲共に揃っており、ほぼこれだけで突破できるほど高性能。
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その他火力が高くボスすらも瞬殺できる「ばぶる」、最終盤限定だが威力が高い上に貫通力と弾速で道中が楽になる「×4すぺしゃる」もかなり強力。
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一方で「ばうんど」は正面に出ないため非常に当てづらい、弾速も遅く弾切れを起こしやすい、威力も低いと明らかに弱い。
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「うぇーぶ」「ほぉみんぐ」は弱くはないものの、どちらも目に見えて欠点が多くて使いづらい性能となっている。
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ショットの選択の幅が狭い。
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ショットの種類はそれなりにあるが、すぐに店のラインアップから消えてしまい、以降は再登場しないため、ショットの種類が多い割に選択の幅が狭い点が惜しまれる。
総評
PCエンジンの性能を限界まで引き出した細かな作り。
発売元の倒産により出荷数が少ないことでプレミア化したのが惜しまれる良作といえる。
再販、配信、移植
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発売されてしばらく経ってもなお、絶大な人気で購入希望者が殺到した為、当時のPCエンジンゲーム誌である「PC Engine FAN」から通信再販された事がある。ゲーム雑誌そのものがゲームを販売するのは異例中の異例であり、本作の人気を象徴するエピソードとなっている。もちろんこの再販版もプレミアが付き、今現在は入手困難である。
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ドリームキャストのサービス機能の一つ「ドリームライブラリ」にて配信された事もある。しかし、ステージ途中で絶対にクリアできない不具合があり、ゲームとしての機能を果たしていなかった。
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ドリームライブラリとは、近年で言うところのWii Uのバーチャルコンソールのようなサービス。メガドライブとPCエンジンの一部のソフトがプレイできたが、当然ながら今はサービス停止している。
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1998年4月10日にWindows向けPCゲームとして移植された。発売元はボーステック。
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基本的な内容は原作と同じだが、背景など一部外見に相違が見られる。BGMはPCエンジン版と同じものをCD-DA再生。
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なにせ1998年のゲームなので、現行OSでのプレイはまず不可能である。また2000ではインストールすらできない。
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XPではインストールは可能だが正規の方法ではパッドが正常に動作しない(非公式の修正パッチが存在する)。
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Windows10 64bit版でも互換モードでプレイ可能(上記パッチ含む)だが、あくまで非公式である。またユーザー毎の環境の差が大きいため、動かなくても泣かないこと。
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やはり昔のゲームであり、今入手するのはかなり厳しい状態である。
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2000年8月4日にはゲームボーイカラーにも移植された。タイトルは『マジカルチェイスGB ~見習い魔法使い賢者の谷へ~』。発売元はマイクロキャビン。
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敵の弾の一部が弱くなっていたり、どきどきモードが削除されるなど低難易度化。ショット数が大幅に減るなどのハードの制限による多くの変更が成されているが、シューティングとしての基本的な出来はしっかりとしており、オリジナルの売りである擬似3重スクロールも見事に再現されている。
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エンディング曲がらくらくモードエンディング曲のみになり、PCエンジン版で通常エンディングで流れた曲は削除されている。変わってPCエンジン版でサウンドテストでしか聞けなかった没曲が、操作説明コーナーのBGMとして流れる。
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ゲームボーイカラーの性能を限界まで使いきったスクロール演出の再現は見事だが、その分サウンドが割りを食うことになっている。しかしBGMの再現度も頑張っている方。
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ショップの店員がカボチャ頭のおじさんから女の子に変更されている。
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余談であるが、移植スタッフはたったの一人だけである。
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しかし、これもまたプレミア化してしまっている。つくづく、プレミアとの縁が深いゲームである。
余談
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海外版ではメーカー表示がクエストのみとなり、主人公リプルをはじめとする一部グラフィックが変更されている。
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『伝説のオウガバトル』と『タクティクスオウガ』に武器として本作の主人公リプルの名が付けられた杖「リプルズロッド」「リプルズスタッフ」が登場する。
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アイテム説明にて「偉大なる魔女リプル」と紹介されているため、今作の功績が認められたのかもしれない。
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さらに両作の「パンプキンヘッド」はショップのカボチャ男そのものである。
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某ゲーム誌にて、「バーチャルコンソールに配信して欲しいPCエンジンソフトベスト10」という企画において、本作は断トツだった。(ちなみに2位は『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』(当時はまだ未配信))
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PCエンジンminiへの収録熱望も多かったが、それもかなわなかった。
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今作を強くオマージュ、リスペクトしている作品は多い。
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『デザエモンプラス』に収録されている「リトルチェイサー」はタイトルのみならず、主人公がピンクの魔女っ子であることなどから、今作の影響を強く受けている作品とされている。
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後の時代の魔女っ子STG『トラブル☆ウィッチーズAC ~アマルガムの娘たち~』は「主人公が見習い魔女で名前もリプルを思わせる「プリル」」「ショップでお買い物、ショップ店員がカボチャの被り物をしている」という要素やパワーアップショットに今作と同じものが有るなど、今作を思わせるオマージュ要素が強い。
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『メイドさんを右にミ☆』もショップ店員としてカボチャを被った紳士が登場している。
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また、製作者の紫雨陽樹がワンダーウィッチ用ソフトとして開発していた「Silkey Shooting」も今作オマージュの強い魔女っ子STGである。
最終更新:2024年04月18日 06:27