RPGツクール95
【あーるぴーじーつくーるきゅうじゅうご】
ジャンル
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RPG製作ソフト
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対応機種
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Windows 95~XP
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発売・開発元
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アスキー |
発売日
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1997年3月28日
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定価
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9,800円
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廉価版
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VALUE!:2001年11月21日/3,800円
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判定
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なし
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ポイント
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アスキーRPGツクールシリーズラストナンバー Windows専用ツクールの始祖 これから生まれた名作は有名 愛用者はいるが現在では環境的に厳しい
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ツクールシリーズリンク
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概要
『RPGツクール』シリーズのWindows専用版のデビュー作品。前作『RPGツクールDante98 II』からわずか8ヶ月の間をおいて発売された。
開発は『RPGツクールDante98II』と同時期か、あるいはやや被ったためなのか、『Dante98II』で追加された要素は『95』にはあまり反映されていない。そのため、前作よりもむしろ前々作『Dante98』の正統進化作と表現したほうが良い作品である。
本作最大の特徴は、ゲーム制作だけでなくプレイ中もマウスで操作が出来ることである(勿論キーボードでの操作にも対応している)。
この点は当時のパソコンユーザーのスタイルによくマッチしており、続編である『RPGツクール2000』に移行しない理由としてこの点をあげるユーザーもいた。
また、本作はWindows用であることに加え、当時少しずつインターネットが普及し始めた時代だったことが重なり、ユーザーたちはネットワーク上に作品を盛んにアップロードするようになった。
これにより、ツクールで作った作品を公開出来るという一つの目標が生まれ、PC版のツクールシリーズの需要が格段と増加した。
本作が発売されたのとほぼ同時期に、ムック「ログイン ソフコン」で開催されていたコンテストパークもインターネットに移行、少額ながら賞金も出ることもあって、受賞を目指してツクラーと呼ばれるツクールユーザー達が日夜作品製作に心血を注ぐようになった。
評価点
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簡単に作れるという基本思想はそのままに、インターフェースが使いやすくなって機能も追加されたのでより本格的な作品が作れるようになった。
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現在のツクールシリーズに近い(というよりは原型となった)制作環境となっており、『2000』以上にシンプルなので制作難易度はかなり低い。
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コンテストパークにおいて当時最も隆盛だったのは『95』であった。当時はRPGが主力ジャンルであった面もあるが、本ツールのハードルが低かった事も事実である。
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それ以外のツールは本作に次いで使いやすい『シミュレーションRPGツクール95』以外はジャンルがジャンルだけにツールをもってしても難解なものが多かった。
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能力値などのパラメーターや定型文を自由に決められるようになった
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成長率を曲線形式で設定が可能になり早熟、晩生、退化といった設定ができるようになった。
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魔法効果率を%で設定が可能「特定魔法を半減」、「特定魔法は必ず効いてしまう」といった設定も可能になった。
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敵を倒すと「○○を倒した」といった文が流れるが、これも自由にイジることが可能である。
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選択肢が「4択まで、かつ自分で返答を設定可能」、「魔法グラフィックや戦闘背景の設定可能」と基本部分も進化している。
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アイテム入手やパラメーター増減等で数値のランダム設定ができるようになった。
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ゲーム内の画面サイズが大きい
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『2000』は320×240という小さな画面サイズだが、『95』は640×480となっている。明確に『95』が勝っていると言える点はここである。
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画面の色数が16色から256色へと増加
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ドット絵をさらに細かく描くことが出来るようになり、ディティールアップに貢献した。
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フロッピーにデータを入れるための機能が付属
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ゲーム次第では多くのフロッピーに分ける必要があるものの、そういった形でインストーラを生成することが可能だった。
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あまり大作を作ってしまうと何枚も必要となるため、大容量作品には向かない。
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配布条件が緩和された
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これまでのツクールは個人配布或いはコンテストパークへの投稿以外は禁止されておりプレイして貰うハードルが高めであった。
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今作はネット配布は勿論、有料RPGとしての配布も認められておりより制作意欲が湧く物となった。
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サンプルゲームがかなり豊富
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ツールとしての可能性を示すため様々なタイプの作品があり、デフォルトを活かした作品から独自の技術で高度な作品にしたものまでバラエティ豊か。
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短編形式や戦闘がないものも存在し、「大作を作らないといけない」と言う考えに陥りやすいビギナーの気負いを解きほぐす効果も併せ持つ。
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それらは中身を見ることができるので、初心者にとっては大変頼もしい助力要素である。
賛否両論点
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RTPを必要としない
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本作以降は、ゲームをプレイする際にデフォルト素材のデータが入れられたプレイ用データ「RTP」を必要としたが、本作はそれがなく、起動アイコンはスペックが合えばどのパソコンでも使用可能。
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ただし、その分作品のファイル容量は莫大。ナローバンドでCD-Rも普及していない時代であり、ダウンロードにも作品の保管にも苦労がつきまとった。
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そもそもRTPはファイル容量の肥大化を避けるためのシステムであり、『95』のファイル容量平均が数十MBであるのに比べ、「2000」のファイル容量は全てデフォルト素材で作ると数百KBである。
問題点
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能力上昇系の魔法を設定するとゲームバランスが崩壊する
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なんと本作ではマップ上でも能力上昇魔法が使えてしまう。つまり、敵に挑む前にフルにブースト魔法をかけたうえで挑めるというとんでもない仕様がある。
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これを逆手にとったゲームもあり、活用出来ないことはないが、基本は「味方側は能力上昇魔法を使えないようにする」をデフォルトにせざるを得ず、その点は自由度が低かった。
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細かいバグの多さ
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特に致命的なのは選択肢分岐がバグることがある点。分岐に正しく繋がらなかったりするのだが、常態的なものではないので、いつ再現されるかハッキリせず、困った事態になりがち。
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状態異常のバランスがおかしい
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毒と言えば「毎ターン最大HPの何分の一削られる」というのが主流であるが、本作は一律で5しか減らない。そのため毒を受けた際の痛手は薄い。
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戦闘後はスリップダメージとなるため、流石に戦闘後は治癒させないとまずいが、戦闘中ならよほどカツカツのHPでもない限り無視出来る。
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平均的なHPを下げればある程度対応は可能だが、本作のバランス上は非現実的な対応策である。
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麻痺は行動不能となる状態異常だが、自然治癒しない。敵にかけると死ぬまで行動不能に出来るため、味方側に使わせるとバランス崩壊する要素になる。
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隠れパラメータになっている「魔法防御力」
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これはキャラクター本体に設定するものではなく、装備出来るアクセサリーで左右するものになっている。おかげで魔法防御でキャラの個性を出すのが難しい。
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1イベントが「必ず4ページ」という仕様
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条件をなしに設定すればないものとして出来るが…。
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この仕様は『Dante98』の頃からのものである。ユーザーから特に不便だという声が聞かれなかったため、そのままになっていたのであろう。
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『Dante98II』にある新要素が導入されていない
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「条件分岐」「ループ」「変数」の3つが特にあげられている。「変数」は製作の自由度にかなり影響を及ぼすため、かなりネックな問題点である。
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そもそも本作は『Dante98II』とは別ライン同時進行の開発であり、作者が違うため設計思想が根本的に異なっている。『2000』は『Dante98II』の作者の作品であり、これらの要素はまとめて導入されている。
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ただし、当時はまだツクールシリーズが過渡期であった事と、当時はネット環境がまだ整っていない時期であった。不具合が起きても全てのユーザーがパッチを当てられるとは限らなかったし、下手に複雑化すればメリットよりも難易度の高さで挫折して早々に作るのを辞めてしまう可能性もあったので一概に批判出来るものでもないのだが…
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全てのファイルが同じフォルダに一纏めになっている
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グラフィック、midi、マップデータ、イベントデータ、果ては実行ファイルまで同じフォルダに展開されるため見映えが非常によろしくない。
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特に実行ファイルが大量のファイルに埋もれており見つけるのも一苦労だったため、ユーザー開発のランチャーソフトも製作されたほどであった。
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『2000』以降はファイルごとに専用のフォルダに格納するようになり、管理しやすくなった。
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さらに、ゲーム進行データの保存/ロードが何故かWindowsデフォルトのファイルシステムを使用しており、デフォルトの保存先が起動したゲームのフォルダであるため、さらに増えたファイルに埋め尽くされる結果に…。
総評
現在となっては物足りない面が多く制約が目立つツールだが、当時はこれ以上ないというほど「簡単製作」と「本格的」を融合させたツールだった。
自らが構想したシナリオや設定をRPGという形で作成して投稿し、第三者から評価してもらえる喜びは何ものにも代えがたい達成感と快楽があった。
そしてこのツールは最も手軽かつ本格的にRPGを作成できる素晴らしいツールであった。それ故に当時のツクラー達は、寝る間すらも惜しんでこのツールと睨めっこしていたのである。
様々な名作が本作でツクられ、中には製品化を果たした作品も存在する。
『2000』が登場するまでの約3年間、本作はツクラー達の夢を実現させるソフトとして重宝され、様々な伝説的作品を生み出す契機を作った。
RPGツクール史上に大きな足跡を残した作品といえるだろう。
その後の現状
発売から20年近くが経過した現在では、仕様と採用環境の面ではさすがに厳しい部分が多い。
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初期ツクールゆえに凝ったランダム要素やボタン操作によるイベント等を作ることはできず、極々オーソドックスなRPGしか作れない。
シナリオや設定などで上手く個性付けをしなければ、結局は既存の無個性な作品ばかりしか出来ないということになる。
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逆を言えば「凝ったシステムは使わないベーシックなRPG」を作る程度なら最適なツールではあるが。
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現在、ツールとして対応している機種はXPまでであり、それ以降のものには対応していないため使用は基本不可能。
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なお、対応OSとなっているはずのXPの時点で、既に環境によってはマップチップ以外何も表示されない不具合が出たりしていた。
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制作されたゲームはプレイ自体は可能だが、動作保証はされておらず、プレイ環境が年々狭まっているのは否めない。
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当然、使用素材も当時のスペックに合わせたものしか使用できない。
『2000』登場後は流石にツールとしての完成度の違いや、時代のこともあってユーザーのほとんどはそちらに流れた。
にもかかわらず、使いやすいこちらを愛用していたツクラーもおり、ただ「機能面が物足りない」だけでは捨てきれないツールだったと言える。
そのため、ツクール2000発表後も、移行するための予算がなかったためなどの理由もあろうが、95製の作品が衰えるまでにはそこそこ時間を要した。
余談
最終更新:2019年10月14日 21:47