本稿ではPS用ソフト『最終電車』と、PS2移植版『最終電車』に加え、続編であるPS用ソフト『19時03分』の紹介をしています(いずれも判定はなし)。
最終電車
【さいしゅうでんしゃ】
ジャンル
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サウンドノベル
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対応機種
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プレイステーション
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発売・開発元
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ヴィジット
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発売日
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1998年2月26日
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定価
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5,800円
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廉価版
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1999年11月2日/1,980円 2001年11月1日/800円
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判定
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なし
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ポイント
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標準やや下くらいまで増量 1作目の最大の欠点は解消
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ヴィジットサウンドノベルシリーズ
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概要
大阪のメーカーであるヴィジットが世に出した8本のPS用ノベルゲームの第2弾で、同社が展開していた『ハイパーノベル』シリーズの第2作。
シナリオは、後に『ラブプラス』などを手掛ける大迫純一氏が担当。
システム
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システムとしてはオーソドックスなノベルタイプADVであり、よく言えば「完成された」悪く言えば「ありきたりな」ADVとなっている。
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人物はすべて『かまいたちの夜』のようなシルエット描画になっている。ホラーという都合上この描画は相性がよく、「切り飛ばれた頭だけがこちらに話しかける」などかなりショッキングなシーンでも幾分かは落ち着いて望むことが可能。
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セーブは選択肢ごとになっており、途中でのセーブは不可。また路線図風シナリオチャートが存在する(下記)。本作は選択によるシナリオ分岐が多いため、全て読み解くには必須となる。
評価点
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グラフィックはフルCGであり、当時としてはレベルが高い。
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車両のモデルは大阪市営地下鉄(現・Osaka Metro)と思われる。
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電車の路線図を模した「シナリオチャート」画面が用意されており、自分がどこのルートを読んでいるのかわかりやすい。
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セーブは手動だが、最大4箇所まで付箋を置いておくことができ、再開時はその好きな所から始められる。
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シナリオは、ホラー・ギャグ・脱出ものなど複数用意されているが、設定がそれぞれ微妙に干渉し合っており、読み返す事で様々な小ネタが仕込まれていたことを発見できる。
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例を挙げると、「恋の始発駅編」で「鎮魂の章」と「最終戦隊編」に関する小ネタが登場する。
問題点
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シナリオのバリエーション的には富んでいるのだが、全体の分量は、PSソフトとしては多いとは言えない。
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とは言っても、シリーズ前作の『あかずの間』よりは遥かに豊富だが。
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ムービースキップ機能が無い。場面が変わるたびに列車が走っているムービーが入るものだから鬱陶しい。
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主人公は他の誰かにそう言われたわけでもないのに、なぜか「自分達はチームで自分はそのリーダー」という妙な拘りを持っており、地の文でことあるごとに「リーダーの俺が指示を出さないと皆終わりだ」と語るため、正直ウザい。
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もっとも、独善者ではないので同じノベルゲームの『彼岸花 (PS2)』の主人公よりは遥かにマシだが。
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全てのシナリオを読むと、後日談の隠しシナリオが始まるのだが、そのデータ上では一度しか読むことができない。
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サウンドテストやムービー鑑賞などのおまけ機能は一切無い。
総評
『あかずの間』の分岐が少なすぎたということもあるが、本作はシナリオの模様替え具合や舞台設定の特異さなど、良い意味での独自性は出ている。
『ハイパーノベル』シリーズの代表作という扱いなのか同シリーズの中で唯一、PS2用ソフトとして移植も行われたのだが…。
最終電車(PS2版)
【さいしゅうでんしゃ】
ジャンル
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サウンドノベル
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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ヴィジット
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開発元
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ブレイク
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発売日
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2002年4月25日
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定価
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5,800円
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判定
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なし
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ポイント
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たった1年後の移植版 なのに追加要素はわずか 何故この時期に出した?
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概要(PS2)
上記の『最終電車』のPS2移植版。定価はPS版と同じ5,800円。
システムはオリジナル版とまったく同じで、続編とセットにされているわけでもない。
また、シリーズ第4作『閉鎖病院』に存在したムービースキップやメッセージ早送りなどの便利機能も一切フィードバックされていない。
PS版との変更点(PS2)
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新シナリオが追加された…という触れ込みなのだが、実際は既存のシナリオの結末を1つ増やしただけ(救いのあるオチではあるが)。
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追加エピソードは、本家とは別のシナリオライター(『マリア』シリーズと同じ福田桐枝氏)が書いている。
評価点(PS2)
問題点(PS2)
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追加エピソード中、「事故にあってタンカーに乗せられる」という記述がある(「担架(タンカ)」の誤記)。
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ギャグシナリオ「最終戦隊編」のBGMが、妙な曲に変更された(不評)。
総評(PS2)
この様にほとんど「分岐1本増えた」程度の改変である。この程度なら(ドルビーデジタル以外なら)PSソフトでも充分出せる。
『あかずの間』などと比べてしまえばマシとは言え、元々『最終電車』自体がPSソフトとしてはシナリオのボリュームが少ないゲームで、おまけモードなども一切無いソフトだった。
何よりも分からないのは、既にベスト版や再廉価版が存在しており、特に希少価値があったわけでもないタイトルを何故この時期にPS2で出したのかということである。
ドルビーデジタル対応に変更するだけで再販するほどとは思えないし、PS版のソフトはPS2本体でも問題なくプレイできるので、ますます移植した意味がわからない。
ちなみに、この前年に出た再廉価版の定価は税込み840円。即ち本作は、実質新規分岐1本の為に5,000円定価が跳ね上がった計算になる。
大きな改悪を受けたわけではないので「楽しく遊べれば値段なんかどうでもいい」と考えるのならば買えばいいだろう。
だが、廉価版が存在することを知らずにこちらを買ってしまったプレイヤーからはボッタクリの謗りを受けても仕方ないだろう。
19時03分 上野発夜光列車
【じゅうくじさんぷん うえのはつやこうれっしゃ】
ジャンル
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サウンドノベル
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対応機種
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プレイステーション
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発売・開発元
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ヴィジット
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発売日
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1999年3月4日
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定価
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5,800円
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廉価版
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2000年8月3日/1,980円
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判定
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なし
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ポイント
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ヒロインは14歳
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概要(19時)
大阪のメーカーであるヴィジットが世に出した8本のPS用ノベルゲームの第4弾で、同社が展開していた『ハイパーノベル』シリーズの第3作。
シリーズ前作『最終電車』のストーリー上の続編であり、シナリオも前作に引き続き大迫純一氏が担当。
特徴(19時)
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主人公は2人用意されており、それぞれにメインシナリオとサブシナリオが1本ずつ存在する。
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隠しとして3人目の主人公が存在するが、そのシナリオは一本道である。
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男性主人公は28歳だが、ヒロインは14歳。
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女性主人公は前作のヒロインと同一人物だが、前作の主人公の事は地の文で「あの人」と1度触れられただけ。交際している様子は無い。
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ちなみにトゥルーエンドで彼女は別の男性とキスをしている。
評価点(19時)
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さらにレベルが上がったグラフィック
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実在の寝台特急「北斗星」が舞台となっており、CGの再現度も高い。人物は変わらずシルエット表示。
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「北斗星」は2015年に廃止となったが、牽引機関車として登場するEF81 80は2024年現在も現役。なぜか青函トンネル区間でも2パンタ状態のまま列車を牽引しているというツメの甘さはあるが…。
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シナリオ面での向上
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「恐ろしい」ではなく「おぞましい」という旨の言葉が登場するが、それこそが本作の核となる。
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またタイトルにある「19時03分」という時刻も大きなカギとなっている。ネタバレになるので詳しくは記せないが…。
問題点(19時)
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トリックが実はかなり甘い
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推理好きならば途中で予測が付くレベル。また全体的な雰囲気が他のヴィジット作品と違い非リアル路線なのでやや人を選ぶ。
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シナリオ自体は良いのだが、推理作品が好きなユーザーは拍子抜けしてしまうかもしれない。
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ボリュームの不足
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これはもうシリーズの伝統というか、本作だけの問題でもないが…。
総評(19時)
良くも悪くも「ヴィジットのサウンドノベル」であり、他の関連作品を楽しめたならば恐らく問題はない。
だが、PSのサウンドノベルは『かまいたちの夜』など名作が多く、それらに埋もれてしまい勝ち。
また移植やアーカイブ配信もされておらず、知名度自体が低いのも残念な所。
トリックの甘さに目をつぶれるならば、是非。
公式サイトの体験版について
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※ネタバレ注意
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本作は発売当時、ヴィジットのサイト上で体験プレイが可能だった。体験といっても、現在の様なレベルのWEB体験版やダウンロード可能なものではなく、実際のストーリーと同様のノベル文章がHTMLで表示され、選択肢がリンクになっていて、クリックすることでその選択肢を選んだ場合の次の文章が表示されるページに飛ぶ、という時代を感じさせるものであった。
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この体験プレイでは本編の序盤が疑似体験でき、文章の内容は基本的に製品版と同様だが、1点だけ違う点があった。
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冒頭の男性主人公が電車に乗ってすぐケンカに巻き込まれる場面で、上手く選択肢を選んで勝利した場合、相手が逃げていく際に「土蔵破りに使うような怪しい工具」を落としていく。さらに、男性主人公がそれを「何だこりゃ」とゴミ箱に捨ててしまう。
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ちなみにディスクとして存在する別の体験版では、落としていくものが「見たことのない工具の付いた十得ナイフ」に変わっていた。捨てられるのは変わらず。
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本編をプレイしていれば、このケンカの相手の男が本編の惨劇の引き金を引いたことは確実で、この工具が貨物車への侵入の際に使用されたと容易に想像できる。
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冒頭のケンカで、そのために必要な道具を男性主人公が意図せず奪取・破棄してしまったということは、この後は本編の惨劇は丸ごと発生しなかった可能性が高い。
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結局、製品版では冒頭のケンカで勝利しても相手の男は何も落とさず、この一連の描写は丸ごと消えてしまった。ケンカ自体は発生するが、勝とうが負けようが一切ストーリーに影響しない。
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ヴィジットのサイトも自然消滅してしまった今、この一連の描写が当初どういう予定だったのかはもはや不明だが、本編とは全然異なるストーリーへと進んだのかもしれない。あるいはそれが製品版のサブストーリーで、ルート分岐方法が変わっただけなのかもしれないが。
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最終更新:2025年04月21日 19:59