遊☆戯☆王 モンスターカプセル ブリード&バトル
【ゆうぎおう もんすたーかぷせる ぶりーどあんどばとる】
ジャンル
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シミュレーションゲーム
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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コナミ
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開発元
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コナミコンピュータエンタテイメント新宿
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発売日
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1998年7月23日
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定価
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5,800円(税別)
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判定
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なし
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ポイント
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遊戯王の初ゲーム化作品 育成・バトル共に中々の完成度 1人プレイはややボリューム不足 ブルーアイズ無双 「まあ、あせっても仕方ないからの。」
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遊☆戯☆王 関連作品リンク
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概要
原作に登場した「カプセルモンスターチェス」を題材とした、遊戯王初のゲーム化作品。
モンスターを用いてのバトルはもちろん、タイトル通りモンスターの育成も可能。
システム
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ブリードモード
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駒となるモンスターを育成するモード。
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箱庭にモンスターを配置し、食事や運動をさせて鍛えるのが基本の流れとなる。
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モンスターの種族は「すいちゅう」「とり」「はちゅう」「しょくぶつ」「どうぶつ」「むし」の基本6種族と、突然変異によって発生する「あじん」「ふし」「りゅう」「むしゅ」の4種、合計10種族が存在する。
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また、種族とは別に「ガッツ」「クール」「インテリ」の3タイプが存在し、一定期間ごとにそれぞれの種族、タイプに対応したモンスターに進化する。
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タイプは主に食事によって決定され、「にく」ならばガッツ寄りに、「さかな」ならばクール寄りに育つなど、意識的に誘導できる。
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一方で、種族は基本的に変化しない。突然変異によってのみ変化が発生するが、変異先の種族は決まっている。
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モンスターは任意のタイミングで駒にすることができる。ただし、一度駒にすると箱庭に戻すことはできない。
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育成中には原作のキャラクターがアドバイスやコメントをくれるほか、天候が変化するなどのイベントが発生することも。
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バトルモード
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育成したモンスターを用いてバトルを行うモード。
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使用する駒の数は6体。このうち1体はルーレットで「金のカプセル」となり、モンスターとしての戦闘は不可能になる。ルーレットは一応目押しが可能だが、速度が速いため狙ったモンスターをカプセルにするのは困難。
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バトルのシステムはマス目式のマップを用いたターン制のシミュレーション。ただし、駒は1ターンに1体しか動かせず、一般的なシミュレーションゲームよりも原作通りチェスのようなボードゲームに近い。
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また、移動後の攻撃は可能だが攻撃後の移動は不可能、必殺技は移動前にしか使えないなど攻撃側の制約が多く、一気に攻め込むよりもじわじわと相手を制圧するような戦いが求められる。
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自分側のモンスターを2体選んで合体させることが可能。合体したモンスターはタイプと重ねられた種族をベースに誕生する。モンスターを1体消費するが、それを補って強いステータスになり、どんどん重ねてステータスをさらに伸ばすことも可能。
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勝利条件は「相手の駒を全滅させる」もしくは「金のカプセルを破壊する」のどちらかを満たすこと。
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バトルに勝利すると自分のモンスター1体と、倒した相手モンスターの1体を選択してトレードすることができる。なお、相手に拒否権は無い。
評価点
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モンスターの総数は100種を超え、原作に登場したモンスターも多数。
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育成時にはそれぞれのモンスターが固有のモーションを見せてくれる。時々、見た目からは想像もできないような動作をするモンスターもおり、見ていて飽きない。
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「トリガン」の「疾風鋭嘴斬」や「イカニンジャ」の「すいとん」など、原作出身モンスターの特技は再現されているものが多い。
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おなじみの《青眼の白龍》も「B・E・Wドラゴン」として堂々参戦。同じく原作初期やOCGで有名な《ホーリー・エルフ》や、TRPG編のラスボスである「ゾーク」も登場する。
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OCGにも登場するモンスター《タイホーン》のデビュー作でもあったりする。
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オリジナルのモンスターの特技も各モンスターの個性が出ており、色々なモンスターを使ってみる楽しみがある。
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モンスター図鑑も存在し、各モンスターの紹介文もある。なぜか「一見〇〇だが実は××」という設定が妙に多く、全体的にシュール。
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戦闘システムはシンプルだが、なかなか奥深いバトルが楽しめる。
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モンスターは種族ごとに移動方式が決まっており、全体的に癖が強い。
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一般的なシミュレーションゲームのように「上下左右、方向転換しながら進める」という移動方法を持つのは「むしゅ」族のみ。
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「とり」族は移動力が総じて高く、水地形を超えることもできるが、移動できるのは「斜め一直線(方向転換不可)、もしくは前方1マス」と、前方への移動に向かないため一気に敵陣に切り込むのは難しい。
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「しょくぶつ」族は「斜め(方向転換可)、もしくは前方1マス」と移動方式だけ見れば「とり」族の上位互換だが、水を超えられない上に種族全体の移動力が総じて低め。
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比較的癖が無いのは縦横斜めに進める「どうぶつ」「あじん」族だろう。縦横にしか進めないが水地形に入ることのできる「すいちゅう」族も扱いやすい方である。
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こうした移動の癖の強さから、うっかりすると主力モンスターの動きが封じられてしまったり、一気に自陣に切り込まれて金のカプセルを叩かれたりすることもある。
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モンスターのタイプ「ガッツ」「クール」「インテリ」にはジャンケンのような三すくみがあり、有利なモンスターにはダメージが増加し、不利な相手には減少する。
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この点からも、単純な能力の優劣だけで戦いが決まらなくなっている。モンスターのステータスで負けていても、駒の動かし方次第で勝利が可能。
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BGMの質が総じて高い。育成・バトル共になかなか時間を取られるゲームだが、長時間聴いていても飽きない。
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海馬戦と闇遊戯戦のBGMは後のシリーズ作品でも使用されている。古さやマイナーさからあまり認知されていないが、この作品が初出である。
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原作のキャラクターがボイス付きで登場する。
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台詞の数そのものがあまり多くないとは言え、ほとんどのセリフにはボイスが付いている。ただしフルボイスではなく、場面によって喋ったり喋らなかったりする。
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古い作品であるため、キャストはいわゆる「東映版」の声優。ただし、双六、モクバ、獏良については東映版とも異なる本作独自の配役。『デュエルモンスターズ』の声優とそれほど変わらない雰囲気のキャラクターが多いが、遊戯の声は大きく異なるため、デュエルモンスターズ以降から入った人は面食らうかもしれない。
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キャラクターデザインも東映版準拠なので、海馬瀬人は緑髪。
通称キャベツ社長。
問題点
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一部CPUが異常な長考を行う。主に双六と闇遊戯は1~2分単位の長考を数ターン連続で行うことが当たり前のようにある。
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その間、「まあ、あせっても仕方ないからの」「フフ・・あせりは禁物だぜ」とプレイヤーの神経を逆なでするような発言をする。お前は少しくらい焦れ。
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長考した分だけ賢い行動を取ってくれればまだ良いのだが、散々考えた挙句に正面の相手にただ攻撃をするだけだったり、同じ場所を往復するだけだったりと、お世辞にも賢いとは言えない。
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なお、終盤の相手でもなぜか海馬はそれほどの長考をしない。モンスターや地形に特別な違いは見られないのだが、一体何を考えているのだろう?
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モンスターのステータスを桁外れに強化すると全てのCPUが長考を連続するようになった事例が報告されており「何らかの基準で数値化した戦力差が相手の思考時間を増加させているのではないか」という説がある。
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一人プレイ用のキャンペーンモード(いわゆるストーリーモード)がボリューム不足。
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対戦相手は表遊戯、城之内、杏子、モクバ、獏良、双六、海馬、闇遊戯の8人だが、しっかり育成したモンスターを使用する場合海馬までは消化試合と言ってもよい難易度。
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海馬と闇遊戯はさすがにそこそこの強さのモンスターを使用するが、CPUがあまり賢くない上にこちらの特技も考慮してあまり襲って来ないこともあるためそれでもあまり強くはない。
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しかもこちらも特技を警戒して回避しまくっているとなんと闇遊戯ですら降参する。
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そのため、せっかく色々なモンスターを育成できるのに一人プレイではバトルがすぐにマンネリ化する。
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闇遊戯は3の倍数の周回時にのみ隠しモンスターの「ゾーク」を使用するのだが……。
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特技の「カタストロフィー」は範囲内の敵全員に大ダメージを与える強力な技だが、ゾーク自身の移動力の低さから複数体が巻き込まれることはまず無い。そしてステータスも他の闇遊戯のモンスターと比較して特別高くはない。つまり目立って脅威になるほど強くはない。
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一応これでも当時のレギュラーキャラクターは大体出演しているのだが、本田や野坂ミホが全く登場しないのは惜しい点。
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せめて同じキャラクターでも周回ごとに違う駒を使用するような変化が欲しかったところ。
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モンスターごとの格差が非常に大きい。
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「むし」族や「とり」族のモンスターは総じて体力が非常に低いものが多い。
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本作の体力の最大値は255であり、元から体力の伸びやすいモンスターならば簡単にカンストするのだが、前述の種族のモンスターは高くても150程度が限界の種が多い。
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特に「むし」族は、まともに体力が伸びるのがブルーシザーとハイパーシザースの2体くらい。最強種のハイパービートルも他と比べればマシだが、それでも170程度が限界。
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さらに言えば「むし」族は移動方法が非常に特殊で、どれだけ移動力を上げても動ける距離が伸びないという仕様を持つ。そのため「むし」族自体が非常に不遇。
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また、特技の格差も目立つ。非常に分かりやすいのはB・E・Wドラゴンの「バーンアウト」だろう。
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対象は単体だが射程は3マスとそれなりに長く、生半可なモンスターならば即死するほどの威力を持つ。しっかり育成したモンスターでも2発食らえばまず間違いなく終了。
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一応入手は難しいが合体やレア卵からの育成次第でも入手可能で、しかも後者は最初の表遊戯の時点で入手可能で工夫次第で最強ステータスまで育てられる。
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「ギガトン」は本作トップクラスの問題児。
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自分より高い位置にいる全員に40の固定ダメージを与える技「ギガサンダー」を持つ。射程はマップ全域で、高低差の多いマップでは相手の動きを極端に制限してしまう。
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戦闘フィールドの一つ「キュレネーの森」は初期配置の時点で大幅な高低差が付いている。キャンペーンモードの城之内戦ではこのフィールドを使用することになるのだが、城之内は毎回高い位置に陣取りたがるため、ギガトンがいればギガサンダーを連発するだけで終わってしまう。前述の通り1ターンに1体しか駒を動かせないため、低い位置に避難させる暇すらない。
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その他、直線状の敵全てにダメージを与えつつ移動できるアルマザウルスの「アルマアタック」、自身のタイプを変化させることで単純な殴り合いでは無敵に近い能力を誇るデモニスの「デモニスチェンジ」などは非常に強力。
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一方で、使えないモンスターの特技はとことん役に立たない。進化前のモンスターの特技ならば仕方ない部分もあるが、高ランクのモンスターでも役に立たない特技を持つものが多い。
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代表的なものはスワピローなどが持つ指定1マスに障害物を設置する技だろう。たった1マスを封じた程度で敵の動きを大幅に制限できるようなマップが無く、仮に移動を制限できても敵の射程外から攻撃する手段を別に用意しなければ本当に一時的に動きを止めるくらいしかできない。
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トラップラントの「吸血」はHPを10、攻撃防御を5ずつ奪う技だが、敵を前にして悠長に誤差程度のステータスを奪っている暇はなく、味方を相手に使うにしても最大5回しか使用できないため大幅なステータスアップは見込めない。そして当然だが吸われたモンスターは弱体化する。いずれの場合にせよ使い道がまるで無い。
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また、これを言ってしまうと身も蓋もないのだが、ほとんどの攻撃特技は威力・射程共にバーンアウトの劣化である。移動力などを含めれば他のモンスターを使う利点も皆無ではないが……。
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ブリードモードに不透明な点が多い。
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ブリード時のステータスが駒としてのステータスにどう影響するのか具体的な説明がない。そのため駒にした際にどんなステータスになるのかは実際に駒にするまで確認できない。
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そのくせ一度駒にしたモンスターは二度と元に戻せないため、確認したければセーブ&ロードが必須。
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二つの箱庭を連結させ、2体のモンスターを同時に育成することができるのだが……。
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この際、モンスターの隠しパラメータである「きょうぼう」が高いと喧嘩をすることがあり、どちらかのモンスターが死亡することがある。
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死亡したモンスターは完全に消滅する。当然駒にすることもできず、育てた苦労が水の泡。
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「せっきょく」が高い場合は特殊な卵を入手できる場合があるという利点もあるにはあるのだが、特殊な卵はバトルでも入手可能であり、喧嘩のリスクを負ってまで連結させる利点は非常に薄い。
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B・E・Wドラゴンやホーリー・エルフが参戦する中、遊戯がカードゲームで使った主力モンスターが未参戦。
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せめて《デーモンの召喚》や《ブラック・マジシャン》は登場してもよかったのではなかろうか。
総評
ブリードとバトル、どちらの要素も所々に問題点が散見されるが、しっかりゲームとして楽しめる完成度に仕上がっている。
手塩にかけた強力なモンスターで敵を蹴散らしてもよし、あえて進化前のモンスターを使用し、立ち回りで格上のモンスターを倒す楽しみを見出してもよし、とやりこみの余地は多々ある。
キャラゲーとしては今では珍しい東映版準拠のキャラクターや、原作初期にチラッとしか登場していないカプモンのモンスター等、濃い遊戯王ファンなら考古学的な価値もある。
それだけに、一部CPUの長考やキャンペーンモードのボリューム不足も目立ってしまうのが惜しい作品である。
余談
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キャンペーンモードで海馬に勝利した後のシーンが非常にシュール。
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「たとえ俺に勝てても闇遊戯に勝たなければ最強は名乗れない、残念だったな」といった内容の小悪党のような台詞を吐き捨てるように言った後、立ち絵が回転しながらフィールドに落下していく。
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CPUが使うモンスターの一部には『バードン』や『リザードン』等他作品のキャラクターの名前が付けられている。
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ハードがハードなだけにヤバい名前だがスタッフは何かそれらのゲームでも興味を持ったのだろうか?
最終更新:2024年08月02日 12:52