Dragon Age: Inquisition
【どらごんえいじ いんくいじしょん】
ジャンル
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ロールプレイング
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対応機種
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プレイステーション4 プレイステーション3 Xbox One Xbox 360 Windows
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メディア
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【PS4/PS3/One】BD-ROM 【360】DVD-ROM
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発売元
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エレクトロニック・アーツ
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開発元
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BioWare
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発売日
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2014年11月27日
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定価
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7,300円(税別)
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レーティング
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CERO:D(17才以上対象)
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判定
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良作
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概要
『Mass Effect』シリーズや『Star Wars: Knights of the Old Republic』などで知られるBioWareが手掛けたファンタジーRPG。
剣や魔法、エルフやドワーフなどといった王道ファンタジー要素を基盤にした重厚な世界観が売りの『Dragon Age』シリーズの第3作である。
The Game Awardにおいて2014年 Game of the Yearを受賞した。
ストーリー
竜の時代9:41年、テンプル騎士団のあまりにも厳しい魔法管理体制に反感を覚えた魔道士たちが蜂起したことで、セダス大陸の各地で紛争が起きていた。
全面戦争を招きかねない一触即発の状況の中、最後の望みは教皇ジャスティニア5世が開く「講和会議」に託された。
しかし、そこで事件は起きた。講和会議の最中、巨大なエネルギーの爆発が突如として彼らを襲った。
教皇を含めた出席者は全員死亡し、爆発跡に残った「ヴェイルの裂け目」からは無数の悪魔や魔法生物が湧き出る大惨事となった。
この爆発から奇跡的に生還したのは主人公ただ一人だった。左手に刻まれたヴェイルの印には、裂け目を塞ぎ、混沌へと陥ったセダスを救うための十分な力が宿っていた。
特徴
アクション性控えめの堅実な戦闘システムは受け継ぎつつも、全体的にスピーディになっている。
障壁・ガード
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主に魔道士や戦士のアビリティによって生成され、どちらもキャラクターへのHPダメージを吸収する一時的なバリアのような効果を持つ。
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今作には回復魔法と呼べるものが存在しないため、これらを用いて敵の攻撃を防ぐ必要がある。
ポーション
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回復アイテムや攻撃アイテムはパーティメンバーが各自のスロットに装備しておいたものを使用する。そのうちの1つ、全員が共通で装備している「回復ポーション」は、使用可能な個数もパーティで共通であり、拠点を訪れるまで再補充できない。
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ポーションがぶ飲みによるゴリ押しを抑制するとともに、前述の回復魔法廃止と合わせて障壁やガードを効果的に活用する必要性を高めさせている。
戦術カメラ
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フィールド上で特定のボタンを押すことで戦術カメラに移行し、カメラを自由に動かしながら戦場を俯瞰することができる。
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この間は時間が停止するので、パーティメンバーに指示を出したり、敵の能力を調べるなどして、じっくりと戦略を練ることができる。
クラフト
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戦闘や採集で獲得した素材を利用して武器や防具を生産する。
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設計図の各スロットに指定された数の素材を当てはめていく。この時に使う素材はカテゴリ(鉱石・布・革)が一致していれば何でもよく、素材やそれを使用するスロット(メイン・サブ・攻撃・防御)で発揮される効果が変わるので、同じ設計図でも異なる性能の装備品を作ることができる。
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ゲーム中盤に差し掛かると「上級生産」を行えるようになる。低確率で入手できる名品素材をクラフトに使用することで、特別なエンチャントが付加される。攻撃命中時に特定のアビリティを追加発動させたり、装備品のスペックを底上げさせたりなど、恩恵はさまざまである。
戦略テーブル
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主人公たる審問官とそのアドバイザーたちはここで作戦会議を行う。
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テーブルの地図上にあるポイントを選択することで、審問会に集った人員を派遣して各地の問題への対処および調査を始める。現実での時間が経過することで成果が分かるようになっている。
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派遣する時は3人のアドバイザーから1人を選択する。アドバイザーによって対処方法が異なり、完了までにかかる時間や報酬も変わる。部隊の指揮官であるカレンなら兵士を動員したり、外交官であるジョゼフィーヌなら現地の貴族と交渉したりなどといった具合である。
マルチプレイヤー
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プレイヤーたちは審問会の精鋭部隊という設定で、4人でチームを組んでダンジョンを攻略していく。
キープ
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オンラインに接続していれば、過去作にてプレイヤーが下した重要な選択の諸々を「ワールドステート」として引き継いで物語を始めることができる。
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Dragon Age Keepというインターネット上のサービスを利用することで、ワールドステートを一から編集することもできる。デフォルトのワールドステートでは登場しないキャラクターもいるため、とりあえずいじってみてもよい。
評価点
広大で美しいマップ
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パッケージの説明ではオープンワールドと謳われているが、本作はワールドマップから行きたい地域を選択して冒険する箱庭スタイルをとっており、厳密にはオープンワールドではない。
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とはいえ、個々のマップスケールは過去作と比べ物にならないほど大きく、自由度の高さはオープンワールドに匹敵するレベルである。起伏を意識して丁寧に作り込まれた地形は景色や探索の面でプレイヤーを飽きさせない構造になっている。
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砂漠や雪原、森林などをはじめとして気候豊かなロケーションが用意されている。これらを一度のプレイで訪れることができるのは、単独の地域で完結するオープンワールドRPGにはあまりない強みである。
圧倒的なボリューム
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キャラクターのレベルキャップは低めに設定されており、育成に関してはやり込みの限度があるが、有り余るサブクエストとテキスト量、探索要素がそれを補っている。
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真面目にサブクエストを消化していくだけでも100時間以上は要する。アップデートで収集済みの設計図や貴重品を一部引き継げる機能が実装されたため、周回プレイもしやすくなった。
ドラゴンとの迫力ある戦闘
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過去作ではせいぜい1、2体程度としか戦うことができなかったハイドラゴンが、今作では10体までに増え、より作品名にふさわしくなった。
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生息地域によって強さや攻撃方法の異なるハイドラゴンは手強く、戦闘中の専用BGMと相まって緊張感をもたらしている。
インタラクティブ性の高いストーリー
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審問会や仲間の運命を左右することがある数々の選択。
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ストーリーの節目で迫られる決断はどちらかが常に正解とは言いきれないケースが多い。仲間たちに対して八方美人な態度を取り続けることは難しく、しばしばプレイヤーを悩ませる。
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主人公の種族や連れているパーティメンバーによって周囲の反応が変わることもあるため、プレイごとに新しい発見がある。
賛否両論点
AIカスタマイズの簡略化
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前2作で使われていた「作戦」システムは、JRPGで言うところの『ファイナルファンタジーXII』における「ガンビット」にかなり近い仕様だった。条件分岐を組み合わせてパーティメンバーの行動パターンを細かくカスタマイズできるのが特徴のシステムだったが、今作では廃止されている。
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プレイヤーが設定できるのは各アビリティの使用可否や回復ポーションの使用頻度などにとどまっている。
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AIが作戦の項目数上限にとらわれなくなり柔軟性が増した。作戦のカスタマイズが容易になったことで戦術を組み立てるためのハードルが低くなった。
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予測しにくくなった仲間の行動は理にかなっていない場合がある。結果としてプレイヤーが直接指示を出す頻度が多くなり、RTS的な戦闘スタイルを好まないプレイヤーにはストレスを感じさせる要因になってしまっている。
あっさりしたメインクエスト
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主人公の仲間たちはさまざまな思想や野望を抱いて審問会に加わるものの、セダスを脅かす「古の者」を倒して平和を取り戻すという目的は同一であり、シナリオの大筋は勧善懲悪に徹している。
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一旦どん底に落ちかけてから再度団結するという映画的な見せ場などは基本を押さえているが、そこで盛り上がってからの話が長く、人によっては中だるみを感じやすい。よく言えば王道的で、悪く言えば地味である。
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プレイヤーに過度な干渉をしないため、冒険の自由度は高い。また、最終DLCの「招かれざる客」では本編で張りっぱなしだった伏線を綺麗に回収しており、評価が高い。
1人乗りのマウント
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特定のクエストをこなすことで、馬などのマウントに乗ることができるようになる。
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マウントは徒歩より移動速度が速く、坂道に若干強く、落下ダメージを無効化することもできるため、マップ移動が幾分か楽になる。
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ただ、マウント使用中は操作していないキャラクターが一旦フィールド上から消え、冒険中に自動発生するパーティメンバーの会話(バンター)もなくなるため、探索が味気無く感じられる。
プレイヤースキルの介入しにくい戦闘
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敵をターゲットして行うオートアタックが戦闘の基盤を占めている。
問題点
ローカライズの質
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スパイク(現在はスパイク・チュンソフト)がCS版のローカライズ及び販売を行っていた前2作と違い、今作はエレクトロニック・アーツが発売元である。
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全体を通してぎこちない表現が多く、冒険中に拾って読むことのできるメモなどは真面目に読もうとすると混乱しやすい。
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固有名詞やシステム用語の日本語訳の統一が徹底されておらず、戦闘の面でもプレイヤーを混乱させている。
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敵を弱体化させる「Pitch Grenade」は「酸のグレネード」と訳されているが、たまに「傾斜グレネード」となっていたり、説明文にも「傾斜をつける」と書いてあったりしてよく分からないことになっている(使っても地面が傾くわけではない)。
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「Fear (恐怖)」と「Panic (パニック)」は異なる状態異常効果として区別されているにもかかわらず、一部のアビリティでPanicが恐怖と訳されているなど混同が見られる。
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装備品などのオプション効果として適用される「命中」と「回避」はそれぞれ「Attack」と「Resist」を指し、キャラクターの与えるダメージ及びダメージ耐性を増加させる効果のことである。日本語訳から実際の効果のイメージがつきにくいだけではなく、ローグクラスが持つ攻撃回避能力との区別がつきにくい。
新規プレイヤーに不親切な世界観
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過去作をプレイしていないプレイヤーにとっては固有名詞の数々が説明不足と感じられる部分がある。隅々まで世界観を理解しようとするならば、外部のソースを使って自身で補完せざるを得ない。
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あらすじで記述しているようなテンプル騎士団・魔道士対立の理由はシナリオ中で直接的な説明がなく、実際には講和会議が爆破されるシーンから物語が始まる。『Dragon Age 2』をプレイ済みでないと、なぜ争いが起きているのかよく分からずに両者と戦うことになる。
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初代の『Dragon Age Origins』で主役を務めていたグレイ・ウォーデンたちはストーリー中盤で審問会と接触する。しかしウォーデンの成り立ちに関する説明が少ないため、ここでも登場人物からの置いてけぼり感を喰らうことになる。
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ファンタジーRPGでおなじみの魔法や魔法使いは、セダスでは一般的に危険なものとみなされている。精霊や悪魔とのつながりが強くなって支配される恐れがあるというのが主な理由だが、本作ではその仕組みがイベントシーンなどで見せられないため、説得力に欠けている。
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敵勢力についてはほぼ新規の登場であるため、大局的なシーンではそれなりに没入することができる。
職業バランスの偏り
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新たに加わった障壁・ガードという戦闘メカニズムは、「これまで必須に近かったヒーラーを排除してパーティメンバーの固定化を防ぐ」という開発者の意図をひとまず達成できている。
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その代わり、ガードを維持しながらヘイトを引き付けられる盾役戦士や、仲間に障壁を与えることのできる魔道士の重要性が高まってしまっているため、この点に関して言えば実質的には改善されていない。必ずしも必須ではないが、少なくとも高難度のプレイでは通用しない。
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特に、与えたダメージの一部を障壁として吸収できる上級クラス「魔導騎士」は魔道士ながら生存力に優れ、アップデートで実質的な弱体化を受けた後も魔道士一強の座に居座り続けている。
総評
同世代の大作と比較した際、『Dragon Age:Inquisition』は特別ストーリー構成やグラフィック技術で抜きんでているというわけではない。その本作がゲームオブザイヤーに輝いたのは、純粋なRPGとしての奥深さを追求する姿勢が評価された結果だろう。
反射神経やエイム力ではなく思考で敵に勝ちたいという戦略家や、とにかく広大で色彩豊かなフィールドを歩き回りたいという好奇心旺盛な冒険家で、かつ洋ゲー特有のダークな世界観とクセの強いキャラクターに抵抗がないゲーマーは手に取ってみる価値がある。
『Dragon Age』シリーズの一番の売りは、なんといっても濃密な世界観である。舞台背景に興味を持ったならば、過去作や有志作成の用語集Wikiで補完することをおすすめしたい。
余談
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恋愛要素の面でも自由度が高いBioWare製RPGにおいて、同社の人気シリーズである『Mass Effect 3』に引き続きにゲイ(男性主人公のみが恋愛可能な男性キャラクター)が登場した作品である。
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なお、日本語版では規制されているが海外版ではロマンスシーンで女性キャラクターは乳房が丸出しとなっている。
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ゲームエンジンは前作と前々作では自社の「Eclipse Engine」を使用していたが、本作では同じEA傘下であるEA DICEのFrostbite 3が採用されている。
その後の展開
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2024年11月1日に10年ぶりのシリーズ最新作『ドラゴンエイジ: ヴェイルの守護者』がPS5/XSX/Winで発売された。
最終更新:2024年11月01日 18:04